都内のライブハウスの控室
晴陽「はいこれ、被り物でーす!」
晴陽が用意したのは、よくハロウィン等で見られるアニマルキャップと、目の周りを隠すベネチアンマスクである。
雪路「あの、これは…?」
晴陽「ほら、あたし達一応元業界人だったわけだしさ、思い出されたら困るじゃん? こうして
頭と目を隠せば正体隠せるし、インパクトも残せるでしょ?」
雨打「一応、考えてはいるんですね。」
晴陽「記念すべき初のライブだからね~♪ あ、あたしの靴は底が高いから、身長
ごまかせるんだよ?」
晴陽はウキウキしているが、未だ【足りない何か】に引っ掛かりを感じている他の4人は、陽気になることができないでいた。
御雷「そ、そういえば晴陽ちゃん。バンド名はどうしたん?」
晴陽「ん~?」
出雲「ライブにエントリーするとき、チームの名前書くだろう? 何て名前にしたのさ?」
出雲が質問すると、晴陽はニコニコしながら、近くのホワイトボードに書き込んでいく。そして書き終えた文字を読み取ったのは、雪路だ。
雪路「【Vanguard Of Revenge】…?」
晴陽「略して
御雷「ヴォアって……イノシシみたいやね。」
雨打「いきなり提案されたんですから、間違っていないのでは?」
雨打が棘のある言い方をするが、晴陽は笑ったままである。
スタッフ「【Vanguard Of Revenge】のみなさん、お願いしまーす!」
晴陽「は~い! よっし、みんな行こう!」
ドア越しからのスタッフの声に晴陽は返事をして、キャップとマスクを着ける。4人も急いでキャップとマスクを着け、控室を後にする。
ステージに立った5人。ライブハウスはギュウギュウになるほど客員がいるイメージがあるが、客と客の間に大きい間隔があるほど少なかった。
御雷『なんか、少なくあらへん?』
雨打『こんなもんじゃないですか? バンドは大体人気ある人達に客とられるんですよ。』
雪路『わたくしは、これでいいです。緊迫感が、和らぎます。』
出雲『まぁ、初級ステージと思えばいいんじゃないかな? …続くかわからないけど。』
4人はコソコソと話しながら、マイクの調整をする晴陽を見る。当の本人からは、明らかに緊張感を感じない。
晴陽『よし、こっちは準備できたけど、みんなはいい?』
晴陽が問いかけ、4人はうなづいて肯定する。だが、心の中では不安が渦巻いていた。もし【足りないもの】がこのままわからなければ、自分達はバンドを続けようとは思わないからである。
晴陽《じゃあ、あたし達VORの初ライブ、この一曲に込めちゃうから。覚悟して聴いてね。》
そう言って真剣な顔になった晴陽は、御雷に合図を促す。晴陽の曲のイントロは、ボーカルである晴陽が単独で歌い出し、しばらくして他の4人がついていくというものだ。御雷がドラムスティックをカチカチと鳴らし、晴陽が歌い始める。
《----------------------------------------------------------》
「「「「!!!!??」」」」
4人は驚愕する。練習の時も見せた晴陽の圧倒的歌唱力。しかし今の彼女から発せられる歌声は、その時とは比べ物にならない。観客だけでなく、メンバーの自分たちすら魅入られてしまう。そして、自分達のパートに入るのに気づいたのは、4人同時だった。
出雲『(ぐっ、これは…!)』
雪路『(昨日までの自分では駄目です……今の晴陽の、圧倒的な声に合わせなければ……。)』
御雷『(晴陽ちゃん、今の今までこれだけの
雨打『(ああもう、無茶振りさせてくれますね!!)』
文句を言いたい気分ではあるが、晴陽の歌声に比例しなくなる演奏は、自分達のプライドが許さなかった。4人の演奏は晴陽の歌を、晴陽の歌は4人の演奏の良さをだんだんと引き出していく。
歓客1「ねぇねぇ、ヤバくない、あれ?」
観客2「あれでライブハウス初めてだなんて信じられないよ……。」
観客3「逃げ出したくなるくらい怖い…けど、最後まで聴いていたくなる!」
観客のほうも、だんだんと盛り上がってくる。そして演奏は、クライマックスに近づいてくる。
“お客さんだけじゃない……
“晴陽…これが君の本気なんだね……やっとわかったよ、僕らに足りなかったもの”
“ええでええで、こうゆうの!! ウチのハートにビリビリが流れてくるわ!!”
“こうなりゃ、やけっぱちです……付いてってやろうじゃないですか!!”
“こんなにも熱く、激しく…でもなぜでしょう、凄く心地が良い。これが、わたくしたちのバンド”
…………パチパチパチパチ
いつの間にか自分達の演奏が終わっていたことに気づいたのは、静寂の中から観客達の拍手が聞こえてからだった。4人が晴陽のほうを見ると、彼女も息を荒くしているのがわかる。
晴陽《今日は聴いてくれてありがとう。改めて自己紹介するね。あたしは、ボーカルの“サニー”。
続いてあたしの同志、ギターの“クラウド”、ベースの“レイン”、ドラムの“サンダー”、
そしてキーボードの“スノウ”。みんな、“音”で挨拶して。》
それを聞いた4人は、それぞれ自分の楽器の音を鳴らす。それに対して、観客が小さく拍手してくれる。
晴陽《拍手ありがとう。次の活躍がいつになるかは未定だけど、その時はまた聴いてくれると
嬉しいな。それじゃあみんな、サヨナラ!》
拍手の中で、VORはステージを降りていく。
・・・・・・・・・・・・
雨打「それで、説明してもらえますよね?」
控室で晴陽は、4人から険しい視線を受けていた。まぁ、本番でいきなり本領発揮され、自分達もそれについていかなければならなかったのだから、当然だろう。さっきまで笑顔だった晴陽も険しい表情になっていた。
晴陽「…まず、ごめんなさい。あたし、おねーさん達を試してました。」
素直に頭を下げる晴陽。その回答は、ライブ後の4人にとって予想できないわけではなかった。
晴陽「申し訳ないとは思ってた。でも、復讐を遂げるにはどんな音の変化にも対応できる、
それこそプロにも負けない資質を持ったメンバーを集める必要があったの。」
御雷「せやから、今日まで本領を隠しとったわけやな~。」
晴陽「それと、ライブ当日まで、付いてきてくれる器がおねーさん達にあるか
確かめたかったの。」
出雲「まぁ、最後の最後まで確かめてみたいって思いはあったからね。」
雪路「あの…それで、晴陽から見て、わたくし達はどうですか?」
雪路の質問に、晴陽は真剣な表情のまま顔を上げる。
晴陽「全員合格。あとは、大人達に復讐する意志と覚悟が……おねーさん達にあるか。」
そしてしばらくの沈黙。先に口を開いたのは、御雷だ。
御雷「ええよ! ここまで実力を合わせられた5人や! このチームで復讐なんて面白そうやん!」
出雲「あのライブで、君は足りないもの……【限界を感じさせない演奏】を教えてくれた。そんな
リーダーなら、付いて行ってもいいと思う。」
雨打「はぁ……分かりましたよ、やってやりますよ! ただし、妥協は一切許しませんから!」
雪路「むしろわたくしから、お願いしたいです。お願いです、わたくしを入れてください。」
4人は、VORに入る覚悟を決めた。それを聞いて晴陽の表情は、パアッと明るくなる。
晴陽「うん! これからよろしくね、御雷、出雲、雨打、雪路♪」
雨打「決まった瞬間呼び捨てですか……。」
御雷「あはは、面白いリーダーやね。」
こうして正式に結成が決まった
待つものとは……。
雨打「そういえば、ライブの時の私達のハンドルネーム…。」
晴陽「えへへ、かっこいいでしょ?」
雨打「いえ、ダサいと思いますけど?」
晴陽「ガーンッ!!」
次回から、原作キャラ出せるかも…?