少女はホームレスだ。名前もない。
首まで伸びたボソボソ乱れた灰色の髪、捨てられていたボロボロの服を着込み
気がついた時からこの場所にいた。どうやって過ごしていたか、
以前の記憶が無く、帰る場所も家族も分からず、半年経つ。
こんな小さな少女が1人で、半年間生きていられるのは
少女がいる環境が良いおかげだろう。
その地域は飲食店が多く、店裏に忍び込めば廃棄されたパンや、賞味期限切れの加工食品などの宝が山ほどだ
少女はそれを食べて生きていた。
雨が降れば身体を洗い、その近くの橋の下に雨宿りし、そのままそこにダンボールで部屋を作り
捨てられた服や布を集めて生活していた。
「まーた、変な夢見た…」
ボサボサの灰色頭を掻きながら少女は布団がわりにしていた服達をどかし、ダンボール小屋の入り口のボロ布のカーテンをくぐり、小屋から出て、そのまま橋の下から出る。
朝日が彼女を包み、一日の始まりを全身で感じ取りながら身体を上へ伸ばしていた。
すると、腹部から、ぐぅ…と
空腹を告げる腹の虫の鳴き声が鳴った。
「さて…まずは朝ごはんだな…」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
少女は街を歩く。
そこはロンドン。有名な観光スポットが豊富で、
歴史を感じさせる建物とモダンなデザインの近代・現代建築が良い感じなバランスで共存し、特徴的なスカイラインとダイナミックな都市風景の中、
学園へ向かう学生達や観光客で溢れていた。
その中を少女はのそのそと、不自由な左足に苦戦しながら歩いていた。
生まれついての障害のようで上げにくく、動かしずらい。
後ろからどんどんと歩く人々に追い抜かれながら拾ってから使い続けた杖を上手く使い、ゆっくりと進む。
ふと、前を歩く家族達を見て彼女は思う。
(僕にもあんな両親がいたのかな…)
記憶が無いと自覚して半年が経つ。
いつも住民を見て思うのが、自分の側にいない両親や、記憶を失う以前の暮らし。
(思い出せない…)
どんなに思い出そうとしてもやはり、思い出せない。
少女はため息を吐き、ふと聞こえた声に気がついた。
周りをチラリと横見する。
「また、あいつか…」「やぁね…汚い」「おい見ろよ…」「汚らわしい…」「ふん…」
(………)
ボサボサ髪にボロボロの衣服、汚れた川の近くで住み着いた嫌な匂いの彼女を見る周りの住民の目は汚いものを見る目だ。
少女は視線と言葉を浴びながら、動かしずらい左足を必死に上げながら歩くスピードを上げた。
少女は居心地の悪さを感じながら裏の路地へ入って行った。
(どうしてこんな目に合っているんだろうな…)
路地裏は人が少なく、今日に限っては人がおらず、
少女は安心しながら進んでいく。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
朝飯目的で向かっていたパン屋の裏に着いた。
今日は何にありつけるかなと少女はワクワクしながら
その場にあるゴミ箱を漁り始める。
ーーーーその日、少女は最悪に陥る。
ゴミ箱漁り廃棄されたパンを手に取った瞬間、
後ろから頭を衝撃が襲う。
「ぎゃ」
「がはは、なんだ、臭えが顔は良いじゃないか」
「なー?言っただろ?こいつは遊びがいがあるぜ」
衝撃で倒れた状態で頭に痛みを感じながら少女はその声の主を見た。
さわやかな顔をした男とバンダナの男だ。この男達に殴られたのだと少女は知り、焦った。
逃げる為に起き上がろうとした、だが…
「おい逃げんなよ」
「ぐぁ」
少女は足を踏みつけられ抑えられた。
よりにもよって障害のある足をだ。
動けず少女は叫ぼうとするが少女の顔をバンダナの男が殴る。
「おまえ何助けなんて求めてんだよ、いい思いさせてやるから大人しくしろよ」
鼻血を流した少女の顔を覗きながらバンダナ男は笑う。
腕を引っ張られ、壁に叩きつけられてしまう。
「ひぃ、た、助けて…!」
「見ろよ、こいつ小便漏らしてるぜ」
「大丈夫だよー遊ぼうな」
暴漢のその手が少女の首に向かってくる。
(なんで、、こんな、こんな…)
少女は考えてしまった
このまま自分はこの人生に幕を閉じるのだと
「い…嫌だ、いや…!」
せめてもの抵抗で、男の腕を払った。
男は笑う。その小さな少女の抵抗と怯える姿に、
「 」
急に静かになった。
音が消えた。
正確に言えば少女自身の中から。
いつも聞こえて当たり前のように感じていた音が、無くなった。
この違和感。自分の…脈が
鼓動が、心臓が、止まっているような…
(何が…)
困惑に包まれた少女の耳にドサリと音が流れる。
目の前を見れば、少女を襲おうとしたバンダナ男が倒れている。
その地面は血に染まっていた。
暴漢の男は伸ばした腕と首が切断されていた。
「ーーーーぁ?」