首領クリークが気を取り直してグランドラインを目指す話 作:めたろば
おれはボロボロのマストを見上げて倒れていた。
原因は分からない。
いつからこうしているのかも分からない。
マトモに何も喰えてねェからかも知れないし、
斬られて血を流しすぎた可能性だってある。
「首領……!」
声をあげようとしても口が渇いて掠れ声しか出ない。
「餓え」で死ぬのと「鷹の目」からのキズのせいで死ぬのはどちらがマシだろうか……。
どうせなら後者の方がまだ箔がつく。
……まぁ、実際はガレオン船ごとまとめてぶった斬られただけなのだ。
自分みたいな下っ端は直接狙われてすらいない。ただの巻き添えだった。
……手も足も力が入らない。
このまま朽ちて終わるのだろうと思った。
ドン!
これは「首領」じゃない。
誰がが出てきたり、大きな音が鳴った時の「ドン!」だ。
おれは泣いた。
ウーツ鋼の鎧に身を包んだ巨体が、
どこから略奪してきたのか、ズタ袋を引っ提げてそこに立っていた。
「オイ……!息があるヤツはいるか……!!」
「 」
「………」
「………!!」
「…………」
「ハァ ハァ 」
「………」
「………首領クリーク!」
「 」
息、ないのか。
下っ端だからとイビってきた先輩も、
なかよく略奪したお宝で豪遊した奴らも、ほとんど骸になっていた。
後から知った話だが、五千人いた船員はこの時には百人あまりになっていたらしい。
「『メシ』と『水』だ。食え」
首領の従い、俺はメシをとにかくかっ込んだ。
普通、海賊は奪った肉があれば自分だけで宴をするだろう。
あれだけの餓えだったのだから、首領だってまだ満足には食べていないはずだ。
首領が食べたのは、せいぜいピラフ一皿と水ぐらいか……(見聞色の覇気)
これも十中八九、海賊らしくヨソから奪ってきた食料には違いない。
だが、飢えたおれ達にメシを分け与えてくれたその姿は「海賊」というより「ヒーロー」のソレに近い。
悪党は肉があっても自分たちで宴をやるだけだからな……。
ついガキの頃にみた北の海の冒険譚に出てきたヒーロー達を思い出して、食いながら涙を流した。
「食ったヤツは動け。すぐに新しい船を奪りに行くぞ……!」
ヒーローと重ねたのは撤回する。
やはり首領クリークは海賊の中の海賊という他なかった。
おれも戦力として役立とう、そう思いカトラスを拾い上げた瞬間、
「!?」
おれは目が眩んで再び地面に倒れた。
隣でも、メシを得て復活したと思っていた戦闘員が泡を吹いて痙攣している。
毒ガスか?
首領クリークはいざとなれば味方ごと攻撃することも辞さない。
「勝てばよい」という考え方なのだ。
が、別に今はいざという時ではない。
…
……
しばらく経ち、なんとか症状は落ち着いた。
これもあとから知ったが、この症状は「リフィーディング」
というらしい。
飢餓が長く続いたあとに急激に栄養補給をすると、心不全や呼吸困難、内蔵への障害が起こる……なんともままならない話だ。
おれたちは結局、ソレで苦しんだというわけだった。
だが、たいしたものなのは首領クリークだ。
コメでできたピラフはGIが高く、食後の糖の吸収が極めて早く襲撃直前に愛食する海兵もいるほどらしい。
それにしても餓死寸前だったというのにあれだけ補給してリフィーディングも起こす気配がないのは超人的な消化能力という他ないだろう。
「よし…と…」
今度こそ動けるようになったので、フリントロックの銃やカトラスを拾い集めて武装、首領の後に続いた。
…
……
ここから先は、麦わら海賊団と対決し、ルフィを水に落として実質相討ちになるもギンさんが首領クリークを腹パンで止めたり色々あって「負けた」感じになるんじゃねェかと思う(見聞色の覇気)
分かり切っていることをわざわざ伝えてもしょうがない。
気になるのは「その後」だ。
俺はどうにか艦隊を再編成して、偉大なる首領クリークが偉大なる航路に挑戦する姿を見たいと心底願ったのだった。