もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・   作:ゾキラファス

100 / 197
 遂に100話まで行きました。これも全て皆さんの感想や評価、お気に入り登録のおかげです。本当にありがとうございます。
 正直、ここまで長くなるとは思ってませんでした。完結目指してこれからも書きますので、どうかよろしくお願いします。

 それと今回は前にとったアンケートの内容を反映させています。

 まさかの1万文字越え。毎回これくらい書けたらいいのにね。にしても酷いタイトル。


立花京佳とラブホテル

 

 

 

「くっそぉぉぉぉ!!いきなり夕立とか聞いてねーぞーー!!」

 

 白銀は雨の中、両手に買い物袋を持った状態で走っていた。

 

「白銀!とりあえずあそこの建物の下に行こう!そうすれば雨宿りくらいはできる筈だ!」

 

「そうだな!そうしよう!」

 

 京佳と一緒に。

 

 2人は先ほどまで、いつもの激安スーパーへ行っていた。本日のお買い得商品を買う為だ。なお、本日のお買い得商品は卵である。なんと1パック70円。安い。

 しかしスーパーへ行ったその帰り道、突然雨が降り出したのだ。それもかなりの土砂降りが。

 

「はぁ。全く最悪だ」

 

「そうだな。おかげで全身ずぶ濡れだよ」

 

 偶然見えた建物の下、そこにあった小さいテラス屋根みたいな部分で白銀と京佳は雨宿りをする事にした。

 

「これが所謂ゲリラ豪雨ってやつなのかな?」

 

「そうだろうな。こうして経験するのは初めてだよ」

 

 雨宿りをしながら空を見上げると、未だにバケツをひっくり返したような雨が降っている。そして雷の音も聞こえる。ちょっと怖い。

 

「白銀。ここにいても、落雷で怪我したりはしないよな?」

 

「多分大丈夫だぞ。都心の雷ってみんなビルの屋上にある避雷針にいくって言うし」

 

「そうか。少し心配しすぎか」

 

「しっかし止まないな…。これあとどれくらい降るんだ…?」

 

 他愛の無い会話をしながら雨宿りをする2人。今朝の天気予報ではこんな事言っていなかったのに、これだ。そして止む気配が全くない。おかげで、いつまでここで雨宿りするかわからない。

 

「あーもう最悪だ。制服の下までグッショリだよ」

 

 京佳はそう言いながら、スカートの丈を絞っている。そして京佳のその言葉を聞いた白銀はドキリとした。制服の下、つまりは下着。今の京佳はそこまで濡れている。そう考えると、何かよからぬ事を考えてしまう。

 

「っとそうだ。念のため荷物確信しよう」

 

 あまりこの事について考えるべきではない。そう思った白銀は、自分が背負っているリュックの中身を確認し出す。塗れた事による被害を見る為だ。

 

(えっと、スマホは動くな。流石防水タイプ。そして、この参考書はダメだな。乾かしたらまだ使えるかもしれないけど。あとさっき買った卵とマヨネーズは大丈夫っと。まぁ濡れてるだけだしな)

 

 結果、被害は参考書1冊だけですんでいた。しかしこの参考書は既にほぼ終わっているものなので、実質被害は無しに等しい。

 そうして白銀がリュックの中身を確認していると、

 

「くしゅん!」

 

「え?」

 

 隣から可愛らしいくしゃみが聞こえた。白銀が隣を見ると、そこには京佳が両手で自分の身体をさすりながら立っていた。

 

「立花。もしかして今のは」

 

「私だよ。ちょっと身体が冷えてきたみたいだ…」

 

 京佳がそう言うのも仕方が無い。既に季節は冬に入っており、最高気温が15℃を下回る日々が続いている。そんなただでさえ寒い日なのに、京佳も白銀も全身ずぶ濡れだ。

 そして人間は、濡れた服を着ていると急激に体温が下がっていく。そうなれば、くしゃみのひとつくらいするだろう。

 

「大丈夫か立花?」

 

「ああ。まだ大丈夫だ…くしゅん!」

 

 白銀が心配するが、京佳は大丈夫と答える。だが、明らかに体が小さく震えている。あまり大丈夫には見えない。またくしゃみしてるし。

 

(これはほっとくとマズイな。立花が風邪をひくかもしれない。せめて濡れた服を乾かせる場所でもあれ…ば…)

 

 白銀が京佳を見ながら心配している時、白銀は少し動きと視線を止めた。その視線は京佳を見ている。今の京佳は全身雨で濡れている状態だ。つまりそれは、制服がピッチリと体にひっついている状態でもある。

 その結果、京佳のボディラインがかなりはっきりとわかる様になっていた。特にお尻がまずい。形が良く、程良い肉の付いた臀部がかなりはっきりと見えている。残念ながら下着は透けていないが、下着のラインとかはギリ見えそうだ。

 

 そんな扇情的な京佳を見た白銀は、

 

「ふん!」

 

 ビルの壁に思いっきり頭をぶつけるのだった。邪な思いを痛みで上書きする為である。

 

「どうした白銀!?」

 

「いやー!急に頭を打ち付けたい気分になってなー!こうすると気分が晴れるんだよ!」

 

「そ、そうなのか?でも、それ痛く無いか?」

 

「全然大丈夫!」

 

 突然の白銀の奇行に驚く京佳。もの凄く痛そうだったが、白銀が大丈夫と言うので、それ以上は聞かない事にした。なお、この時の白銀は内心めっちゃ痛がっていた。コンクリートに頭をぶつけたからそりゃそうだろうが。

 

(ええい!今はそんなことよりこの状況をどうするかだ!立花は文化祭で演劇をやるって言ってたし、もし風邪をひいて、それが長引いたりしたら大変だ。どこかに体を温められて服も乾かせる都合の良い場所ってないか?)

 

 京佳の身を案じた白銀は、何とかしたい思う。そこでどこか体が温められて、濡れた服も乾かせる場所が無いか模索。だが、そんな都合の良い場所なんてある訳がない。

 

「ん?」

 

 そう思っていた時、ある看板が見えた。

 

『ホテル 1部屋3000円から。乾燥機あり!』

 

 それは今、白銀に必要なものが全部揃っている場所だった。何とも都合よく見つかった。まるで天よりの助けである。

 

「立花!ちょっといいか!?」

 

「え?どうした白が…くしゅん!」

 

「そのままだと風邪をひくかもしれないだろう?今からあそこに行こう。ちょうどリーズナブルな値段だし、乾燥機もあるし」

 

 白銀が見つけた看板に指を指しながら京佳に説明する。

 

「……へ?いやでもあそこって…!?」

 

「金なら心配するな。あれくらいなら俺でも払える。ほら行くぞ」

 

「ちょ、ちょっと白銀!?」

 

 驚いた様子の京佳の手を引きながら、白銀は看板のあるホテルへと歩き出す。

 

 こうして2人は、すぐそこにあったホテルへと入っていった。

 

 

 

 

 

(なんだここ?)

 

 白銀が最初に思ったのは、違和感である。なんというか、想像していたホテルのロビーと全然違うというのだ。普通のホテルのロビーというもは、それなりの広さがあるロビーにスタッフがいるもの。

 だが2人が入ったホテルにはスタッフらしき人影は見当たらない。あるのは沢山の液晶画面と、それに写っている沢山の部屋。

 

(まさか…)

 

 ここで白銀は感づいた。人気の無いロビー。沢山の液晶画面。それに写る部屋。そしてその下の書かれている料金表。そこには『休憩。宿泊。フリータイム』の文字。これらが意味するものはただひとつ。

 

(ここラブホじゃねーかぁーー!?)

 

 それはここが普通のビジネスホテルではなく、ラブホテルだという事だった。

 

 ラブホテル。

 それは、恋人同士が性的な行いをする場合に宿泊するホテル。普通のホテルと違って1泊する事があまりなく、休憩という形で小時間利用される事が多い場所でもあるため、利用料金も安い。

 また、サービスも非常に充実しており、食べ物に飲み物、果てはカラオケやホームシアターまで完備しているホテルまである。最近ではそのサービスの多さで、決して恋人同士だけの利用ではなく、1人でも、そして友人同士でも利用されるホテルでもあるのだ。因みに日本国内には、推定3万5千軒存在していると言われている。

 

(いやいやまずいまずい!これは非常にまずい!!)

 

 焦る白銀。ただのビジネスホテルかと思えばラブホテルだったのだ。これが自分1人だけならまだ笑話で終わるが、今自分の隣には京佳がいる。そして白銀は、先ほど京佳を強引にここに連れてきている。つまりこれは京佳に、そういう行為をする為に連れ込んだと思われるかもしれないのだ。

 

(いや待て!まだ立花がここをそういうホテルだと認識していないかもしれないじゃないか!だったら別に変な事されると思われる事も無い!)

 

 もし京佳がここをただのビジネスホテルを勘違いしていれば、言葉巧みに京佳を誘導し、体を温めさせればいい。そうすれば風邪もひかないだろうし、変な勘違いをされる事も無い。そう思った白銀が京佳を見てみると、

 

「……」

 

 そこには顔を真っ赤にしている京佳がいた。

 

(全然普通にそういうホテルって気が付いとるーーー!?そして間違いなく勘違いしてるーーー!?)

 

 そういった知識に乏しいかぐやだったら騙せたかもしれないが、一般的にそういう知識のある京佳は無理だった。しかもただ顔を赤くしているだけではなく、全体的にもじもじしている。これは間違いなく、京佳が勘違いしている証拠だろう。

 

 つまりこれから自分は、このホテルで『そういう事をされる』と。

 

「え、えっと…白銀って…結構強引なんだな…」

 

「違う立花!これは違うんだ!」

 

「ただその、私、初めてだから、色々リードしてくれると助かる…」

 

「立花違う!マジで違うんだ!説明!説明をさせてくれ!」

 

 このままでは色々マズイ。そういうつもりじゃ無いのに、そういうつもりでここに来たと捉えられてしまう。なので白銀はまず弁明をする事にした。

 

 その後、2人しかいないロビーで白銀は弁明をした。このままでは、揃って風邪をひくかもしれない事。偶然見えた看板に乾燥機とあったのでここに入った事。そして断じて、そういう意味でここに入った訳では無い事等。白銀はそれらの事をしっかりと説明した。

 

「そ、そうか。そうだよな。いきなりここに入った時は何事かと思ったけど、そういう事だったのか。はは…」

 

 白銀の必死の説明を聞き、京佳も落ち着きを取り戻した。少し残念がっている様にも見えるが。

 

「くしゅん!」

 

 そしてまたくしゃみをする。本格的に風邪をひきそうだ。

 

「立花。とりあえず、部屋に行こう。このままだと本当に風邪をひいてしまう」

 

「そうだな。そうしようか…くしゅん!」

 

「それと言っておくけど、マジでそういった事はしないから。信じてくれ」

 

「ああ。信じるよ」

 

 こうして2人は部屋をひとつ借りる事にした。

 

 

 

「ここか」

 

 エレベーターに乗り、2人がやってきたのは3階の角部屋だった。そしてフロントで手に入れた鍵を差し、部屋に入る。

 

「へぇ。中は割と普通の部屋だな」

 

 部屋の中にはダブルのベットがひとつ。液晶テレビがひとつ。後はソファとテーブルがあり、奥の方には浴室があった。これだけ見ると、少し高級なビジネスホテルに見える。そして部屋を見渡した白銀は、まず浴室へ向かった。

 

「よし。ちゃんと乾燥機もあるな」

 

 浴室には乾燥機に洗濯機がちゃんとあった。これで濡れている制服を乾かす事が出来る。だが、白銀はここである事に気が付いてしまった。

 

(あれ?ドアのガラス、透けてね?)

 

 それは浴室の脱衣所にあるドア、そのガラスが透けている事だった。実はラブホテルの浴室のガラスは、透けている事が多いのだ。これでは外からでも中の様子が丸見えだ。だがもう今更どうしようもない。

 

「立花。先に入ってくれ。俺は部屋の暖房で身体を温めておくから」

 

「いいのか白銀?白銀だってずぶ濡れだろう?」

 

「大丈夫だ。前に雪の中ピザ配達のバイトだってした事あったが、あの時も風邪はひかなかった。まだ耐えられる」

 

「…そうか。わかったよ。でも、ここのドアのガラスって…」

 

「俺は後ろを向いている。絶対にそっちは振り向かない」

 

「…わかった。信じるよ」

 

 とりあえず白銀は、浴室とは反対方向の壁を向く事にして、京佳にシャワーを使わせる事にした。そう言うと京佳は脱衣所へ行き、白銀は上着を脱いでそれをハンガーにかけ、部屋の暖房スイッチをオンにする。

 

(よし俺!平常心だ!常に平常心を保つんだ!!)

 

 そして壁を向きながら、精神を落ち着かせようとする。だが簡単にはいかないだろう。だって今、自分は女の子とラブホに来ているのだ。そしてその女の子は、現在脱衣所にいる。

 

 シュルシュル  パサッ

 

 おまけに現在、布が擦れたり落ちたりする音が聞こえている。つまり今、自分の後ろにあるドア1枚挟んだ向こう側では、京佳が服を脱いでいる。もしここで振り返れば、京佳の下着姿、もしくは生まれたままの姿を拝めることができるだろう。

 そういった事を考えてしまうと、白銀は自分の体温が上がるのを感じた。心音もうるさく、脈も速い。

 

(でもダメだ!それはダメだ!俺だって男だから、そういうのが見たい気持ちはあるけど!でも絶対にダメだ!!)

 

 正直に言うと振り返ってみたい。そしてこの目で、そういった姿を拝みたい。だがそれは超えてはならない一線だ。

 

(そうだ念仏を唱えよう。煩悩退散煩悩退散!!)

 

 その後、白銀は念仏を唱えるのだった。

 

 

 

 一方京佳はというと、

 

(う、後ろに…白銀がいる…!私、白銀の直ぐ後ろで、服脱いでいる!!)

 

 なんか変な気分になりそうになってた。だが、自分の好きな男の子のすぐ後ろで服を脱いでいるのだ。それに扉越しとはいえ、ガラスは完全に透けている。白銀が振り返れば、いつでも見られてしまう。

 

(な、何これ?何か変な気分…)

 

 その状況が京佳を妙に高ぶらせる。

 

(でも白銀だったら、別に隅々まで全部見られても…って違うから!それじゃあまるで私が露出狂の変態じゃないか!!)

 

 ブンブンと頭を振って自分を落ち着かせる京佳。これでは下手すると、変な嗜好に目覚めるかもしれない。

 

(温水の前に、1度冷水浴びよう…)

 

 そして京佳は自分が着ていた私服や下着を全て乾燥機に入れて、シャワーを浴びるのだった。

 

「…ん」

 

 1度冷水を浴びて頭をすっきりさせ、その後直ぐ温水を浴びる京佳。冷えてた体が温まってくる。

 

(それにしても、こういうとこのお風呂ってジャグジーなんだな)

 

 浴室には当然浴槽があるのだが、それは普通の浴槽ではなくジャグジーだった。あの泡が出る丸い形のやつである。

 

(もし白銀と一緒に入ったら、多分お互い向かいあって…)

 

 京佳は想像する。白銀と一緒に風呂に入るところを。そして入って、お互い生まれたままの姿で向かい合いそのまま。

 

(何を考えてるんだ私はーーー!?)

 

 ラブホに2人で来ているという特殊な状況が、京佳に冷静な判断力を失わせていた。このままではいけないと思った京佳は、再び冷水を浴びる事にした。

 

「ひゃんっ!?」

 

 そして思ったより冷たく、冷水が全身にかかってしまったので変な声が出た。

 

 その後、念のためにと思い念入りに全身を洗い、体を温めて京佳はシャワーを浴び終えて浴室から出ようとしたのだが、ある事に気が付いた。

 

(き、着替えが無い…!)

 

 そう。着替えである。今日、白銀と京佳は突然ここに来てしまっている。当然、着替え何て用意している筈が無い。そして京佳の制服や下着は、今も乾燥機の中だ。

 

(どうしよう…。このままじゃ私、は、裸のまま白銀の前に…!)

 

 いくら京佳でも、そういう事をする訳でもないのに、裸で白銀の前に出る勇気はない。そんな事が出来るのは痴女くらいだろう。

 

(あれは…)

 

 どうすればいいか考えていると、ある物が目に映る。

 

 

 

 

 

 京佳がシャワーを浴びている最中、白銀はずっと念仏を唱えていた。態々姿勢を正し、両手を合わせてである。

 

 しかし、

 

 シャワァァァァ

 

 耳に入ってくるシャワー音。そして直ぐ向こう側で京佳がシャワーを浴びているという事実。更にここはラブホ。それらが合わさった結果、白銀は全く煩悩が消えずにいた。

 

(つーか何でシャワー音聞こえるんだよ!壁薄いのかここ!?それともラブホってこういうものなの!?)

 

 何度も冷静になろうとしているが、全然冷静になれない。小数点を数えたり、藤原の様に頭をからっぽにしようとしているが、全然ダメ。効果がまるで無い。

 

(そうだ。音が聞こえるからダメなんだ。丁度テレビがあるし、ここはニュースでも見よう)

 

 そこで今度は、テレビを見て落ち着こうとした。リモコンを手に取り、テレビの電源を入れる。この時間なら夕方のニュースをやっているだろう。そしてテレビが点くとそこには、

 

『やあぁん』

 

 裸の女性が映し出された。それも絶賛、そういう事をしている最中の映像で。それを見た白銀は、恐ろしく早い動きでテレビの電源を切った。

 

(しまったぁぁぁ!!こういうところのテレビって態とこういう映像しか映らないんだったぁぁぁ!!)

 

 ラブホのテレビは普通と違い、やらしい映像が見れるようになっている。白銀はそれを失念していた。あと一応言っておくと、チャンネルを変えたら普通にニュースだって見れる。だが今の白銀にそんな事を考える余裕などない。

 

(くっそ最悪だ!より変な感じになってきた!)

 

 元からまずい精神状態なのに、それがより一層悪化した。更にたった今見た映像。それが白銀の頭の中で何度も再生される。

 

 それもテレビに映っていた女性ではなく、京佳で。

 

 何度も頭の中で再生する。京佳のあられもない姿が。聞いた事も無い嬌声が。そして自分の名前を呼ぶ声が。こうなってはもう悪循環である。1度そういった事を考えてしまうと、もう消せない。それらを消すには、より大きな何かが必要だろう。

 

(もう何でもいい!隕石でも彗星でもいいからここの近くに落ちてきてくれ!ていうか助けて神様!)

 

 遂に神頼みをする白銀。その時だった。

 

「し、白銀…。あがったぞ…」

 

 脱衣所から京佳の声が聞こえたのは。

 

(ま、まずい!今この状態で立花とまともの喋れる気がしない!)

 

 精神上、割とピンチの白銀。このままでは変なボロを出してしまうかもしれない。そこで白銀は、舌を思いっきり噛む事にした。正直、それだけでどうにかなるとは思えないが、何もしなよりマシだろう。

 

「そうか。なら次は俺が…」

 

 そして白銀はミスを犯した。先程京佳がシャワーを浴びる際、決して見ないと言っていたのに、それがさっき見た映像のせいですっぽりと頭から抜けてしまっていたのだ。

 その結果、京佳の声がした方に普通に振り向いてしまった。そして白銀が振り向いたそこには、

 

「へ?」

 

 身体にバスタオルだけを巻いている京佳が立っていた。

 

「「……」」

 

 何も喋れない。というか頭が追いつかない。この状況を理解できない。それだけじゃない。今、白銀は完全に京佳に見入ってしまっていた。だってバスタオル姿である。いつぞやの水着と違って、バスタオルだけである。つまり、布1枚だけ。その下には何も無い。ここでバスタオルを剥ぎ取れば、そこには桃源郷が広がっているだろう。

 それだけじゃない。そのあまりにも露出の多い京佳の姿に見入ってもいた。肩が大きく出ていて、バスタオルの丈も膝上どころか股下10cmといった感じ。下から除けば色々見えてしまうのは間違いない。

 まさに風呂上りというその姿。あまりにも扇情的、もといエロイ。故に白銀は何も言えないし、動けずにいたのだ。結果、じっと京佳を見てしまった。

 

「……白銀のえっち」

 

「ああ!悪い!!本当に悪い!!」

 

 京佳に小声で言われ、白銀はとっさに壁の方を向く。

 

「な、なぁ立花。どうして、そんな恰好を?」

 

「着替えが無かったから、苦肉の策だ…」

 

「……成程」

 

 白銀は理解した。急にここにきたのだ。着替えなんてある訳無い。だがしかし、バスタオルだけというのは心臓に悪すぎる。このままでは、理性の糸が切れてしまうかもしれない。

 

「じゃあ!今度は俺がシャワー浴びてくるから!立花はそこで暖房にでもあたってゆっくりしててくれ!」

 

 なので白銀は、とっととその場を後にする事にした。そして決して京佳の方を見ない様に蟹歩きで脱衣所へと入って行った。

 

(あーーー!マジで心臓止まるかと思ったぁーーー!!)

 

 脱衣所に入った白銀は、大きく深呼吸をする。危なかった。本当に色々危なかった。危うく、雄の本能に従いそうにもなっていた。

 

(ここに来るまでは俺も寒かったけど、もう全然寒くないな…)

 

 でも流石に風邪をひくかもしれないので、白銀もしっかりシャワーを浴びる事にした。そしてふと、乾燥機に目をやる。乾燥機は絶賛稼働中だ。今、この中では京佳の制服と下着が乾かされている。

 

 というか見えてしまっている。黒い服に紛れて、白い布が見えてしまっている。あれは間違いなく下着だろう。

 

「よし。先ずは冷水を浴びよう」

 

 これ以上ここにいるとマズイと思った白銀は、さっさと浴室へと入ろうと決める。直ぐに身に着けていたものを脱ぎ、近くにあった籠に中に入れて浴室の扉を開ける。そしてシャワーを冷水にして、頭から思いっきり浴びるのだった。

 

(うぉぉぉ!!消え去れ煩悩ーーー!!)

 

 その姿、まるで滝行に挑む修行僧。その後白銀は、暫くの間冷水を浴びていたが、流石に寒くなった来たので温水を浴び始めた。

 

 

 

(本当にどうしよう…)

 

 そして京佳。白銀がシャワー室へと言った後、彼女はベットに腰掛けていた。だがその心に中はもういっぱいいっぱいである。いくら着替えが無いと言っても、バスタオル姿というのはどうかと今更思い始める。もしかすると、白銀に『異性の前で簡単に素肌を晒す女』と思われたかもしれない。

 

(というかこれじゃ本当に、白銀とそういう事をする前みたいじゃないか…)

 

 それだけじゃない。先にシャワーを浴びて、ベットで待っているというこの状況。本当にそういう事をする前みたいだ。そういった事があり、本日の京佳はあまり冷静じゃない。

 

(でも、四宮に勝つためなら、いっそこのまま白銀と…)

 

 そして考える。心より先に身体をつなげてしまえばいいのではないかと。もしここで白銀に迫り、そういった事をしてしまえば、白銀は絶対に責任を取るだろう。

 それに京佳自信、自分の身体が非常に強い武器になる事を理解している。この身体ならば、白銀をとことん満足させる事も可能だろう。そうすれば、かぐやにだって勝てる。

 

(って何をバカな事を。落ち着け私)

 

 だがこれはかなり卑怯な手段だ。優しい白銀の心の隙間に入るこむ姑息で卑怯な手段。というか流石にこんなやり方で結ばれたくも無い。使うにしても、あくまで全ての策が無くなった時の最終手段である。

 

(とりあえず、テレビでも見よう。そうすれば落ち着くだろう)

 

 そして京佳は、自分を落ち着かせるべくテレビを見る事にした。

 

 なおその結果は、先程の白銀と同じである。

 

 

 

 

 

「これしかないかぁ…」

 

 シャワーを浴び終えた白銀。勿論、彼にも着替えなんて無い。結果として、腰にバスタオルを巻く事となった。

 

(つーかこれじゃマジで事前見たいじゃねーか…俺本当になんでここに入ろうなんて言ったんだ…)

 

 いくらあのままでは風邪をひくかもしれなかったかと言っても、流石にラブホはマズかった。既に精神が限界に近い。こんなことなら多少お金がかかってでも、タクシーを呼んで京佳を自宅へと送ればよかった。そう思いながら白銀が脱衣所から出ると、京佳が背中を向けた状態でベットに座っていた。白銀はなるべく京佳の方を見ない様にしながら、反対側のベットに座る。

 

「えっと、立花。もうじき乾燥機止まるだろうから、その後俺が使ってもいいか?」

 

「あ、ああ。いいよ」

 

 このままずっと無言は耐えられない。なので他愛の無い会話をする事で気を紛らわす事にした。

 

「そういえば、演劇の練習は順調か?」

 

「まぁね。結構台詞が多いけど、何とか通しでやれるくらいまでは覚えてるよ。そういう白銀は、バルーンアートだっけ?」

 

「ああ。まだしっかりと練習している訳じゃないけど、しっかりとしたものを作る予定だよ」

 

「ふふ、そうか。なら文化祭の時はお願いしようかな」

 

「おう。その時は好きなの作ってやるよ」

 

 会話が弾み、気まずい空気が薄れていく。これならば、もう変な考えになる事もないだろう。

 

「立花は王子役だったか?個人的な感想だが似合ってるよな。絶対に人気が出るぞ」

 

 話題は京佳の演劇の話、その役割へとなっていく。

 

「でも、やっぱり私は不安だよ」

 

「え?どこかだ?」

 

 しかしここで少し暗い雰囲気を出す京佳。白銀は理由を聞いた。

 

「いやだって、文化祭には初めて秀知院に来る人もいるだろう?そういった人から悪人面みたいな人がいるって言われて、学校にクレームが来ないかって…」

 

 京佳は自分の顔がコンプレックスだ。中学生の頃に上級生に薬品を浴びせられ、大火傷をした顔が。その結果、それまで友達と思っていた人たちに気味悪がられ事が。そして今でも、この顔の事で何か言われるんじゃないかと思うと怖いのだ。

 

「立花。ちょっといいか?」

 

「?」

 

 京佳がそんな話をすると、白銀が真面目な声のトーンで、

 

「こっち向いてくれ」

 

「え」

 

 こっちを向けと言い出した。

 

「え、えっと」

 

「いいから」

 

「あ、うん…」

 

 少し戸惑った京佳だが、直ぐに振り返って白銀の方を向く。振り返ると、白銀も同じ様に振り返っていた。結果、2人はベットの上で向き合う形となる。そして白銀は、

 

「左手をどけてくれ」

 

 京佳にそうお願いをした。今の京佳は、何時もの眼帯をしていない。雨で濡れたので乾燥機に入れている。その為、京佳は自分の左手で顔の火傷ある左側を隠している。それを白銀は、どけて欲しいと言った。

 

「え、でも…」

 

「頼む」

 

「……」

 

 白銀が頭を下げる。それを見た京佳は、ゆっくりと左手を顔からどけ、両手を胸の前に置く。

 

 京佳の顔の左側がさらされる。そこにはあまりにひどい火傷の跡。普通の人なら、どうしてもひいてしまうだろう。

 

「し、白銀?」

 

「やっぱり変じゃない」

 

「え?」

 

 だが白銀は違う。京佳の顔を真っすぐ見て言う。変じゃないと。

 

「前にも言ったが、立花の顔は全然変じゃない。気味が悪くも無い。普通だ。誰がなんと言おうと普通の顔だ。というか、どっちかって言うと綺麗な顔だ」

 

「……」

 

「そりゃあ、世の中には心無い事を言う奴だっているだろう。でもな、誰が何と言おうと立花の顔は変じゃない。俺が保証する」

 

「……」

 

「もし文化祭の演劇で立花の顔の事を変に言う奴がいたら必ず俺に言え。絶対になんとかしてやる」

 

 白銀ははっきりと宣言する。

 

「ありがとう、白銀」

 

「おう」

 

 京佳はそれを受け取った。そしてもし本当に文化祭で変な輩がいたら、絶対に白銀に言おうと決める。

 

(ああ。そうだった。これが、白銀御行だ)

 

 京佳は思い出す。1年生の頃、白銀は京佳に同じ様な事を言った。それがきっかけで京佳は白銀へ関心を示し、いつしか恋心を抱くようになっていった。

 

(やっぱり私は、君が好きだ…)

 

 京佳は、やはり自分が目の前の男が好きなんだと再確認する。どうしようもなく好き。今すぐにでも、この想いを伝えたい。そして、かぐやにだけは渡したくない。

 

(絶対に、文化祭で君に想いを伝えるよ。例えどんな事があっても)

 

 ここで好きだと言っても、流石に受け入れて貰えるとは思えない。だからこそ、万全の状態で文化祭に挑もう。京佳はそう決意する。

 

 

 と、そんな良い感じの雰囲気の時だった。

 

 

『ふああん。そこ~~』

 

「「え?」」

 

 突如、2人の部屋に妙な声が聞こえる。声がする方を見てみると、テレビが点いていた。

 

 そしてそこには、男女の営みがまざまざと映し出されている。

 

 実は先ほど京佳がテレビを付けた時、京佳はテレビのリモコンをベットにおいていたのだ。そして今、運悪くベットに置いていたリモコンを踏んでしまった。結果、テレビの電源がつき、にアダルトな映像が流れだす。それを見た2人は、今の状況を確認する。

 

(いや俺何してんの!?お互いバスタオル巻いてるままの状態で向かい合ってるとか!!)

 

(何してるんだ私は!?今バスタオルしか着けて無いんだぞ!?それなのに白銀とこんな近距離で向かい合うなんて!?)

 

 パニックになる2人。このままではいけない。なんか色々マズイ。直ぐにどうにかしなければならない。そして白銀はリモコンを探す事にした。

 

「た、立花!リモコン!リモコン探せ!!」

 

「ま、待ってくれ白銀!バランンスが!!」

 

 ベットにあるであろうリモコンを探す白銀。しかしその時、

 

「うぉ!?」

 

「きゃ!?」

 

 白銀はベットの上でバランスを崩し、そのまま京佳の方へ倒れてしまった。そしてそのまま、京佳をベットに押し倒したのだ。

 

「「……」」

 

 何時かの体育倉庫の焼き直し。いや、場所が場所だけにあの時以上だろう。因みにテレビは消えている。恐らく、倒れた拍子にリモコンを押したのだろう。

 

「「……」」

 

 無言で向かい合う2人。しかも倒れた拍子で、京佳のバスタオルはかなりはだけている。あとほんの少しバスタオルが動けば、女性としての部分が見えてしまう程に。そんな京佳を、白銀は思わずまじまじと見てしまう。

 仰向きになっているというのに、しっかりと健在している双丘。それは京佳が呼吸をするたびに上下に動く。更に下に目をやると、バスタオルの丈が股下10cmどころか、既に2cmほどしか無いくらいになっている。そのため、京佳の太腿が露になっている。

 そして綺麗で柔らかそうな肌。もしここでこれを触れば、どんな感触か想像も出来ない。

 

 つまり率直言って、今の京佳はとんでもなくエロかった。

 

(や、ヤバイ!動けない!動かないといけないのに動けない!)

 

 このままの状態で良い訳が無い。何とか動かないといけないのに、白銀の本能が動くなと言う。そして白銀も、それに無意識に従っていた。

 

(もしここで、バスタオルを剥ぎ取ったら…)

 

 そこにあるのは間違いなく素晴らしいものだろう。未だに拝んだ事の無い女体。それが今、目の前にある。それもあと少し手を伸ばせば、全てが見れる程に。だが、白銀の理性がそれに待ったをかける。このまま手を伸ばしてはいけないと。今すぐ立ち上がって、距離を取れと。理性がそう言っているのに、白銀はそれに中々従えない。

 

 そんな時だった。

 

 

 

「白銀…いい…よ?」

 

「っ!?」

 

 

 

 京佳がとんでも無い事を言ったのは。

 

「ん…」

 

 そして京佳は目を閉じる。まるでこれから行われる事全てに、目を瞑ると言わんばかりに。

 

「た、立…花…」

 

 良い筈無い。なのに白銀の右手は、ゆっくりと京佳の左胸へと向かっていく。10cm、7cm、5cm、3cm。そして遂に、白銀の右手が京佳の左胸に当たろうとしたその時、

 

 プルルルル! プルルルル!

 

「「!?」」

 

 部屋の棚に置いてたスマホが鳴り響いた。

 

 それを聞いた白銀は直ぐに立ち上がり、スマホの方へと歩き出す。

 

「えっともしもし?ああ、圭ちゃんか。どうした?え?あーとな、ちょっと雨宿りしてて。帰りが遅くなる。いやごめんって。後でまた電話するから。ああ。じゃ」

 

 電話の相手は妹の圭だった様だ。どうやら、兄の帰りが遅いので電話をしてきたらしい。

 

「えっと白銀。私は着替えてくるから」

 

 京佳はそう言うと、脱衣所へ向かっていった。だがこの時、バスタオルがはだけているのをあまり直さなかったので、京佳の背中が丸見えだった。というかお尻も見えていた。

 

「っ!?」

 

 白銀は直ぐに顔をそむける。そしてそのままベットに腰かけたまま、京佳が着替えて出てくるのを待つのだった。

 

 

 

 

「雨、止んだな…」

 

「そうだな…」

 

 1時間後。そこには雨が止んだ夜空。そして白銀の京佳の2人は、ホテルから出て歩き出す。あの後、京佳は脱衣所で着替えて、その後に白銀の制服を乾燥機に入れて乾かしだした。

 そして京佳は部屋に設置されたソファに座り、白銀は脱衣所で体育座りをして自分の服が渇くのを待っていた。そして制服が渇き、もう用は無いとしてホテルから出てきたのだ。

 

「……」

 

「……」

 

 会話が無い。というか出来ない。気まずいからだ。だってつい先ほどまで、恋人でも無いのにあわや一線を超えかけたのだ。正直、場の空気に酔っていたのもあるだろう。だがそれでも、あの時の自分たちはどうかしていた。そう思わずにはいられない。

 

「なぁ、白銀…」

 

「何だ、立花…」

 

 無言で歩く中、京佳が白銀に話しかけてきた。

 

「さっきのあれは、お互い無かった事にしないか?」

 

「……そうだな。お互い、さっきの事は忘れよう」

 

 京佳の提案を白銀は受け入れる。そうでもしなければ、このまま妙に意識してしまいそうだからだ。だったら忘れよう。その方がいいと思った。

 

「あ、じゃあ私はこっちだから…」

 

「ああ。じゃ、また明日…」

 

 そしてお互い、途中で別れてそれぞれ帰路に着くのだった。

 

 だがその時、

 

「白銀!」

 

 京佳が白銀を呼び止めた。

 

「えっと、どうした立花?」

 

 白銀も足を止めて、京佳の方へ振り返る。すると京佳は、

 

「私、あんな事は、白銀じゃないと言わないから!!ていうか白銀以外に言うつもりないから!!」

 

 さっき忘れようと言った話を蒸し返す様な事を言った。

 

「え?」

 

「じゃ!」

 

 そして言うだけ言って、京佳はその場から足早に去っていった。

 

(いやどういう事!?もしかしてそういう事!?え!?)

 

 白銀は混乱しながら、暫くその場で立ち尽くすのだった。

 

 

 

 そしてその日の夜

 

「煩悩退散煩悩退散煩悩退散!」

 

「だからおにいうるさい!!」

 

 白銀は自室で煩悩を消し去ろうとしていた。

 

(私は、私はなんて事をぉぉぉ!!)

 

 そして京佳はベットの上で悶えていた。

 

 

 




 はい。と言う訳でのラブホ回でした。正直、書いてて凄く楽しかった。やっぱり、書いてて自分が楽しいのが1番かもしれない。

 次回も体調に気をつけなが頑張る。この時期、変に寒暖差激しかったりするし。

圭ちゃんからの電話が無かった展開(R18)

  • 書いて欲しい
  • 別にいらない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。