もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・   作:ゾキラファス

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 本編の今後の展開に詰まってしまったのでお茶濁し回の番外編です。3話で終わる予定。本編を楽しみにしていただいた方々、申し訳ありません。

 何時の間にかこの作品を書き始めて2年が経過しました。2期アニメが放送終了後に書き始めて、つい先日3期も放送終了。時がたつのは早いですね。

 そして遂に、本作のお気に入りが1400人を突破しました。これも全て、皆様のおかげです。今後も多少の寄り道はするでしょうが、これからも完結目指して執筆しますので、何卒よろしくお願いいたします。


特別編 四宮かぐやは入れ替わる(一)

 

 

 

(今日は会長はバイト。藤原さんは部活。石上くんは何かの用事で伊井野さんは風紀委員の会議。珍しく立花さんと2人きりですね。まぁ、だから何と言う話ですが)

 

 ある日の放課後。かぐやは生徒会室へと向かっていた。先程かぐやが思った通り、今日は生徒会室には2人しかいない予定である。

 しかし、だからといって特別何かある訳では無い。恐らく、何か適当な会話をしながら仕事をするだろう。

 

(何か会長の事を聞ければいいんですが)

 

 もしかすると、京佳との会話の中で白銀との事が聞けるかもしれない。その時は情報収集でもしようとかぐやは決める。

 

 丁度同じ頃、生徒会室には京佳がいた。京佳はソファに座り、生徒会の仕事をしようとしていたのだが、

 

「あれ?今度の会議で使う資料はどこだ?」

 

 使う筈の資料が無いのに気が付く。

 

「あ、しまった。職員室に資料を取りに行かないといけなかったんだ」

 

 そして、職員室へ資料を取りにいかないといけないのを思い出す。このままでは仕事が出来ないので、京佳はソファから立ち上がり職員室へ資料を取りに向かおうとする。

 

 そして生徒会室の扉を開けた瞬間、

 

「わ!」

 

「きゃ!」

 

 かぐやとぶつかってしまった。

 

「「つ~~~!!」」

 

 人間、突然の痛みには弱いもの。それが頭ともなればなおさらだ。因みに、ぶつかったのは京佳の顎とかぐやの頭である。結果、かぐやと京佳はその場で悶絶しながら座り込んでしまう。暫くすると、痛みも引いてきたので、ぶつかってしまった相手に声をかける。

 

「す、すまない。大丈…」

 

「いえ、こちらこそすみま…」

 

 そして顔を上げた瞬間、

 

「「え……?」」

 

 2人は動きを止める。

 

「「わ、私…?」」

 

 何故なら今2人の目の前には、自分がいたからだ。

 

 かぐやの目にはかぐやが写っており、京佳の目には京佳が写っている。先程まであった痛みも忘れる程の衝撃。まるで目の前に突然鏡が現れるか、ドッペルゲンガーでも出てきた気分だ。

 

 そして直ぐに異変に気付く。

 

「これはどういう…え?何この声?」

 

「どういう事、ん!?両目が見えてる!?」

 

 かぐやは自分の声が明らかに違う事に驚き、京佳は自分の左目が見えている事に驚く。声だけなら喉の調子が悪いで済むかもしれないが、失明している筈の左目が見えているのはありえない現象だ。

 

「ひょ、ひょっとして…」

 

「こ、これはまさか…」

 

 次第に自分たちの状況を理解し始める2人。目の前に現れたもう1人の自分。普段とは違う声。見える左目。つまりこれは、

 

「「私たち、入れ替わってるーーー!?」」

 

 かぐやと京佳の中身が入れ替わっているという事だった。

 

 

 

 

 

「えっと、これは一体どういう事なのでしょうか…」

 

「そんなの私が聞きたい…」

 

「ですよね…」

 

 2人しかいない生徒会室。そこに設置されたソファに対峙するように座る2人。片方は京佳になってしまったかぐやで、もう片方はかぐやになってしまった京佳だ。

 今、2人はどういう訳が中身が入れ替わってしまっているというあり得ない現象を体験している。

 

「まぁ、こういうのを知らない訳じゃないが…」

 

「そうなんですか?」

 

「ああ、所謂お約束ってやつだ」

 

 かぐやになっている京佳が発言する。所謂、お約束だと。

 

 入れ替わり展開。

 古くから日本の漫画やドラマで取り扱ってきた展開。男と女が入れ替わってしまい、普段とは違う生活に戸惑いながら様々な問題を解決していく。視聴者や読者に受けが良いので、一定の需要がある題材でもある。最近だと大記録を作った彗星が落ちてくる某映画が有名だろう。

 

「しかし、まさかこんな事が本当にあるとは」

 

「そうですね。私もこのような摩訶不思議な体験は初めてです」

 

 だが、まさか自分たちがそんな事を体験できるなど思いもしない。ある意味では貴重な体験なのだが、それはそれとして元には戻りたい。

 

「にしても、なんか変な気分だな。自分と会話すると言うのは…」

 

「ですね。しかも喋り方が何時もと違うから違和感が凄いですよ」

 

 なんせ目の前には自分がいる。それも普段の喋り方とは全く違う自分が。この違和感が凄いのだ。正直、気持ち悪い。なので元に戻りたいのだが、戻しかたなんてわかる筈も無い。

 故に困っている。どうすればいいのかと。

 

(それにしても…)

 

 京佳になっているかぐやは、どうすればいいかと考える一方、何時もの身体とは全く違うある部分に意識を向ける。

 

 たゆん

 

 それは藤原より大きなその胸。四宮かぐやは貧乳である。故に自分の胸が重たいと感じる事など今まで1度も無かったし、胸の重さで肩が凝るというのも理解出来なかったし、巨乳の女性に対して敵意を向ける事も少なくなかった。

 

 しかし今だけは違う。

 

(これが、目測B89の重さですか…)

 

 生まれて初めて感じる胸の重さ。これならば肩が凝るのも納得だ。かぐやは日ごろから、自分の胸がもう少しだけ大きければと思っている。藤原や京佳程のサイズはいらないが、せめて伊井野よりは大きくなりたいと思っていた。

 何なら悩み過ぎて、本気で豊胸手術も考えた事があるくらいだ。

 

(あーもう最高じゃないのこれ!もし私に最初からこれだけの大きさがあったなら会長なんてイチコロだったでしょうに!)

 

 女として、やはりどうしてもコンプレックスに感じる胸の大きさ。それが今や、生徒会でも随一の大きさを誇る胸となっている。もしこのサイズが元のかぐやの体にあれば、確かに白銀もイチコロかもしれない。

 

「にしても、これは凄いな」

 

「え?」

 

 かぐやが京佳の胸の重さに満足している時、かぐやになった京佳も何かに感激していた。

 

(まさか、胸が小さいから身軽でいいとでも?)

 

 京佳の発言を聞いたかぐやはそう思った。日ごろ、藤原と一緒に肩が凝ると話していた京佳。それが今では貧乳ボディだ。あれなら肩が凝る事などまずないし、走る時に胸が邪魔になる事もないだろう。

 

(よくも私の身体を侮辱しましたね…許しません)

 

 確かにかぐやの身体は一部が貧しいが、それでも17年生きてきた自分の身体なのだ。それをその様に思うなど許せない。

 

「立花さん、一体何が凄いんですか?」

 

 かぐやは京佳に説教すべく話しかける。

 

「だって左目が見えるんだぞ?例えこれが一時の出来事だとしても、こんなに嬉しい事はないよ」

 

(あ…)

 

 しかしかぐやになった京佳の返答を聞いた京佳になったかぐやは思わず口を閉じる。そして自分の視界を今1度確認。やはり、左目が見えていない。目を開けている感覚はあるのだが、全く見えない。真っ暗だ。

 ふと目の前のかぐやになった京佳に視線を向けると、とても嬉しそうにしていた。何度も顔の前で手をかざす。その度に、左目が見えているのを確認して嬉しそうにする。

 

 京佳は中学の頃、とある事件に会い左目を失明している。その為、普通の人より視野が狭いのだ。左目が見えていないので、そこになにがあるか分からず、左足をぶつけた事だって何度もある。

 

 それが今だけ両目共に綺麗に見える。医者からも現代の医学では治らないと言われた左目が、かぐやの身体になっているので綺麗に見えている。京佳はそれが嬉しくて仕方が無い。それこそ、泣き出しそうなくらい。

 

(私は、何て最低な考えを…)

 

 自分の考えが、ひどく恥ずかしくて最低な事だと気づくかぐや。自分は胸が大きくなって嬉しがっていたうえ、相手が胸が小さくて身軽になったと思ったと勝手に勘違い。

 しかし京佳は両目が見える事に感動。嬉しがるところが天と地ほど差があった。

 

(もう少し自分の視野を広く持ちましょう…)

 

 そしてこれを教訓にして、今後はもっと色んなところに目を向けようと誓う。

 

「ところで、どうする四宮?」

 

「どう、とは?」

 

「この後だよ。どうすれば元に戻ると思う?一生このままなんていうのは流石に、なぁ?」

 

 かぐやになった京佳が、京佳になったかぐやに話しかける。内容は、今後の事。何時までもこのままなんて言い訳無い。お互い、自分の生活があるのだ。なので元に戻らないといけないのだが、どうすればいいかなんてわからない。

 

「そうですね。医者に行くのが普通だとは思いますが、正直医学でこの現象が治るとは思えません」

 

「だな。私も同意見だよ」

 

 とりあえず医者に頼る事を考えてみたが、医者に行ってこの現象が治るとは思えない。もしかすると、貴重なサンプルとして何かの実験材料にされるかもしれない。流石にそんなのごめんだ。

 

「私が読んだ漫画とかだと、同じ様な衝撃を与えれば元に戻ったりするが」

 

 かぐやになった京佳の発言に耳を傾ける京佳になったかぐや。顎に手を当てて、思案する。

 

「現状他に手もありませんし、1度やってみますか?」

 

「そうだな。やってみよう」

 

 かぐやの言う通り、今現在他に手が全く無い。ならば例え漫画の手だとしても、やる価値はある。もしかすると、本当にそれだけで元に戻るかもしれない。そして2人はソファから立ち上がり、生徒会室の中央に移動する。

 

(目線すっごい高い…)

 

 その途中、普段の京佳の目線の高さにかぐやは驚く。京佳はかぐやより20cm以上身長が高い。普段のかぐやと目線の高さとはまるで違う。

 

「どうした四宮?」

 

「いえ、何でも」

 

 だが今はそんな事を気にしている場合じゃない。一刻も早く元に戻らないといけない。そしてかぐやは目の前にいる自分の頭を手でつかみ、京佳は目の前にいる自分の肩を掴む。これで準備完了だ。

 

「「せーの」」

 

 そしてお互い、頭を振りかぶってぶつけた。

 

 

「「っ~~~!!??」」

 

 鈍い音がする。同時に2人に痛みが走る。痛い。ただ痛い。結果、再びその場に座り込みながら悶絶する2人。

 

「も、戻ったか?」

 

「い、いえ。全然」

 

 しかも全く戻っていない。目の前には相変わらず自分がいる。

 

「この方法は、もうやめましょう…痛いだけですし、全然戻る気配ありませんし」

 

「そうだな…そうしよう…」

 

 結局、ただ痛い思いをしただけだった。2人は頭を押さえながら再びソファに座る。

 

「こういう話が得意そうな石上くんはいませんし。どうしたら…」

 

 石上は漫画が好きだ。そんな彼であれば、この入れ替わり現象の事ももっと詳しく知っていたかもしれない。もしかすると、元に戻す方法もわかるかもしれない。

 

「なら電話してみるか?」

 

「え?」

 

 すると、かぐやになっている京佳が今度はそう提案してきた。

 

「石上なら知っているかもしれないんだろう?なら1度電話してみればいいんじゃないか?」

 

「そうですね。この際猫の手でも借りたい気分ですし」

 

 そう言うと、かぐやは自分の鞄からスマホを取り出す。

 

「ところで、どう電話する?」

 

「え…?あー…」

 

 しかしここで問題発生。今のかぐやは京佳である。もしもいつも通りの話し方で電話すると、違和感を覚えられるかもしれない。そもそも正直に『入れ替わったんです』と言っても信じて貰えるかわからない。

 もしかすると、それが原因で『電波な人』なんて噂が流れるかもしれない。それは嫌だ。電波は藤原1人だけで十分なのだから。

 

「よし。私が立花さんになりきります」

 

「なりきる?」

 

「安心してください。私は四宮の人間。それくらいの演技造作もありません」

 

 なのでかぐやは京佳になりきる事にした。そうすれば石上に不審がられる事も無いとして。

 

「なら私のスマホを使え」

 

「そうですね。そうしましょう」

 

 そして京佳のスマホを使い、石上に電話する京佳(かぐや)。

 

『もしもし?どうしたんですか立花先輩』

 

 数回のコールの後、直ぐに石上が出る。そしてかぐやは京佳になりきりながら喋り出す。

 

「うむ!ちょっと用事があってな!」

 

 なりきれてなかった。

 

(いや私ってそんな感じぃぃぃぃぃ!?)

 

 つい叫びたくなるかぐや(京佳)。だって自分はそんな言い方しない。絶対にしない。

 

『は?え?どうしました?なんか何時もと違う感じがするんですけど』

 

 現に石上も凄く違和感を感じている。

 

「あ、ああ。すまない。実はちょっと聞きたい事があってな」

 

『は、はぁ?』

 

 変な方向に舵を切ってしまったと思い、直ぐに軌道修正する京佳(かぐや)。

 

「実はな、少し前にクラスメイトからある漫画を借りたんだが、その漫画が男女で中身が入れ替わるものなんだ」

 

『あー。よくある題材ですね』

 

「で、結構面白かったんだが、まだ続きが発売されてないんだよ。そこで、こういう漫画って最後はどんな風になるか聞きたくてな。例えば、どうやって元に戻るとかとか」

 

 漫画好きな石上に食いつかせるべくそういう設定で話を進める京佳(かぐや)。これなら石上も話をするだろう。

 

『大体予想はつきますけど、言ってもいいんですか?楽しみとか減りません?』

 

「大丈夫だ。気にしないしな」

 

『まぁそういう事なら』

 

 1度ネタバレへの断りを入れて、石上は話し始める。

 

『王道なのは、ぶつかったら元に戻るってやつですね。後は、キスをしたら入れ替わるからまたキスをするとか。他には寝てたらいつの間にか入れ替わってて、そしてまた寝たら元に戻っているってやつですかね?』

 

「き、キス?」

 

『あ。それはかなり特殊なんであんまり気にしないでください。あと稀に戻らない結末もあって、その時は吹っ切れてそのまま生きるってのもあります』

 

「へ、へぇ…」

 

 少し顔を赤くする京佳(かぐや)。色々情報を得る事が出来たが、やはり漫画の知識なのでどれもオカルトのようなものだった。

 

「わかりました。ありがとうございます、石上くん」

 

『は、はぁ…どうも?』

 

 そう言うと京佳(かぐや)は電話を切った。

 

「とりあえずお話は聞きましたがだ、どれもこれだーってのはありませんでした」

 

「そうか。まぁ、仕方が無い」

 

 結局、どれも解決策になりそうにない。状況は振り出しに戻るどころか全く進んでいない。

 

「念のため、今後の事を考えないとな」

 

「そうですね。どうにか元に「それだけじゃない」はい?」

 

「もしもだ四宮。私達が、一生このままだったら?」

 

「……」

 

 かぐや(京佳)の言葉にはっとする京佳(かぐや)。仮にこのまま元に戻らなかったら、それぞれ中身が別人のまま生活をする事になるかもしれない。京佳は普通の一般家庭の子だ。もし今後2度と元に戻る事が出来なくても、かぐやならばどうとでもなる。

 

(私は別にいい。でも、立花さんは)

 

 だが四宮かぐやになってしまう京佳は違う。かぐやは日本最大の財閥「四宮家」の令嬢だ。かぐや本人は幼い頃より様々な教育を受けてきたので、魑魅魍魎が跋扈する四宮本家でも生きていける事ができる。

 だがもしこのまま元の戻らず、かぐやの中見が京佳のままで、その事が本家の連中に知られたら、利用される可能性が非常に高い。なんせ中身はただの一般人なのだから。

 そうなればかぐやになってしまった京佳の身に待っているのは、ただ四宮本家に利用され続ける道具としての日々。そこに、幸せなど絶対に無い。

 

「……」

 

 これはあくまで、2度と元に戻らないという前提の話だ。だが現状、元に戻る手段が無い。このままでは本当に、今後どうなるかわからない。そうならない為には、何とかしてでも元に戻らないといけない。

 

 そして京佳(かぐや)は、

 

「あの、立花さん」

 

「何だ四宮?」

 

「とりあえず、今晩はウチに泊まりません?」

 

「え?」

 

 かぐや(京佳)にそう提案した。

 

 

 

 

 

 

 おまけ

 

「なんかさっきの立花先輩、変だったな。何て言うか、四宮先輩みたいな喋り方だったし。ていうか何でいきなりあんな電話してきたんだろう?」

 

 

 




 少し前に取ったアンケートの結果を参考にした番外編です。番外編なので本作の本筋にはあまり関係ないと思っていて下さい。

 最初は君の〇はみたいな朝起きたら入れ替わる展開にしようと思ったのですが、それだけ京佳さんに早坂の正体がバレてしまうので却下に。

 とりあえずあと2話程、お付き合いください。

 次回 メイド2人とベテラン執事、めっちゃ頑張る。
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