もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・ 作:ゾキラファス
頭の痛い日が続く。おのれ低気圧。
「結局、今日は元に戻らなかったですね…」
「そうだな…」
風呂から上がった2人は、寝巻に着替えてかぐやの部屋にあるベットに座っていた。風呂からあがった後も、皆で様々な事を試してはみた。例えば自己暗示。例えば抱き合う。例えば握手等。だが結局、どれを試しても元に戻る事はなかった。
「後は寝るだけですか」
残った方法は寝る事だけ。某映画ではそれで入れ替わっていた。それで元に戻るかはわからないが、他に何も思い浮かばないので仕方が無い。
それに既に時刻は夜の11時。毎日12時過ぎまで勉強をしてから寝る京佳には少し早い時間だが、普段寝るのが10時頃のかぐやには遅い時間。その間の時間なので、寝るのにも丁度いい。このまま起きていても仕方が無いので、2人は寝る事に決めた。
「でも…誰かと一緒に寝るのは初めてですね…」
同じベットで。
「これ本当に必要なのかしら?」
「わからんが、使用人の人達がどうしてもと言うし…もしかすると、これが原因で元に戻るかもしれんし」
「それはそうかもなんですが…」
使用人3人の説得により、かぐや(京佳)と京佳(かぐや)は一緒のベットで寝る事になった。これが必要かどうかはわからないが、兎に角何でも試すと言った手前、断る事もせずやる事にした。
「それではお2人共、おやすみなさいませ」
「ええ。おやすみ高橋」
「おやすみなさい、高橋さん」
高橋が2人にあいさつをし、部屋から出ていく。これで部屋の中には、入れ替わっている2人だけ。
「それじゃ、おやすみなさい立花さん」
「ああ、おやすみ四宮」
そう言うと、2人は布団に潜り込み並んで床に就く。その距離は最早夫婦のようだ。
((なんか変な気分))
お互い、こんな距離で誰かと寝た事等なんて無いので変に意識していまいそうになる2人。こういう時はさっさと寝てしまうに限る。
(隣にいるのが会長だったらなぁ…)
(隣にいるのが白銀だったらなぁ…)
寝ようとしている時、2人は全く同じ事を思っていた。もしも隣にいるのが白銀だったら、それはどれだけ嬉しい事なのだろう。だが実際は自分と同じ顔が隣にある。というかいる。双子でも無ければホラーな光景だ。
((でも、いつの日か必ず…))
今はそんな光景だが、何時の日か必ず、目の前には自分の想い人を見る光景を作ろうと誓う。こうして2人は眠りにつくのだった。
翌朝
「「戻ってない!!」」
「ダメでしたか」
目が覚めた2人は、昨日と同じ現象のままだった。つまり、全く入れ替わりなど起きていない。寝て起きたら変わっているかもと思っていたが、全く変わっていない。起こしにきたハーサカもため息をつく。
「どうする四宮。今日学校だぞ?」
「本当にどうしましょう…」
頭を抱える2人。何故なら今日は平日。学校がある日だ。それなのに戻っていない。これでは学校に行くことが出来そうにない。
「学校を休むか?」
「それは考えたのですが、今日は各部活の報告書を全て纏めないといけないので、生徒会の人間が2人も抜けるというのは…」
「確かにそれはまずいな。他のメンバーが多忙を極めてしまう」
いっそ休もうとも考えるが、今日の生徒会業務は本当に忙しくなる予定なのだ。そんな中、急に生徒会メンバーが2人も抜けるというのは非常にまずい。他の皆に迷惑をかけてしまうし、何より白銀が頑張りすぎてしまう。白銀が好きな2人にとって、重要なのはそこだ。
(他の人達は別にいいですすけど、会長に負担がかかるのは…)
(他の皆には少し悪いが、白銀に凄く負担がかかるのはなぁ…)
白銀は責任感がかなり強い。そして与えられた仕事をきっちりしっかりやりとげるタイプだ。そんな彼なら、突然休んだ2人の仕事もしっかりとやるだろう。だがそれは、とても負担がかかる事を意味している。正直、それは避けたい。
なので出来れば学校に行って、白銀の負担を減らしたい。だが、このままの状態で学校に行くのも気が引ける。ただでさえ、入れ替わるという摩訶不思議な現象だ。
もしもこの事が学校の人達にばれたれ、絶対に面倒くさい。特に藤原とか。
そうやって悩んでいる時、
「こうなったら奥の手です」
「「奥の手?」」
ハーサカが提案をしてきた。
「ふんふんふん♪」
朝の登校時。ピンク頭の少女、藤原千花はご機嫌そうに鼻歌を歌いながら登校していた。彼女は朝来る途中、子連れの猫に出会って気分が良いのだ。人間、可愛いものが嫌いな人などそうはいない。可愛いものが見れたら彼女の様に気分も良くなるだろう。
「あ!おはようございますかぐやさーーん!」
校舎内に入る途中、見知った後ろ姿を見つける藤原。そして声をかける。
「……」
しかし、声をかけられたかぐやは無言で藤原を見つめるだけだった。
「あれ?どうしましたかぐやさん?」
いつもならちゃんと挨拶を返してくれるのに無言。藤原も不思議に思う。するとかぐやは、鞄からスマホを取り出してそれに何かを打ち込みだす。その後、藤原にスマホの画面を見せた。
『実は少し喉を傷めてしまって喋れないんです』
「ええ!?大丈夫ですか!?」
『はい。暫くすれば治ると医者にも言われましたので』
突然の報告に驚く藤原。その顔は本当に心配そうにしている。
「かぐやさん!私はかぐやさんとはクラスが違いますけど、何か困った事があったら遠慮なく言って下さいね!」
『ええ。ありがとうございます』
そしてかぐやが困っていたら助けると決めた。
(よし。これなら何とかなりそうだな)
一方、かぐやになっている京佳は安堵していた。現在、未だに入れ替わってしまっている2人。どうするか悩んでいた時に、ハーサカが提案した。
喋らなければいい、と。
先ず喉を傷めている設定にしておけば、喋らなくてよい。更にスマホのメモ機能を使い、自分が言いたい事を入力すれば意思疎通は可能。これなら変に喋ってボロを出す事も無いだろう。
因みに今かぐや(京佳)が使用しているスマホは、支給品である。最初は自分たちのスマホを使おうとしていたのだが、ハーサカの
『他人に自分のスマホ預けるの抵抗ありませんか?』という台詞にはっとした。別に2人には、他人のスマホを見る趣味は無い。
しかし、誰だって様々なプライベート情報が入っているスマホを、他人に預けるのは抵抗があるものだ。そこで態々新しいスマホを用意した。入っているデータは連絡先くらい。
これなら別に見られても大丈夫だ。だって何も入っていないから。
(兎に角、これで乗り切るしかないな)
未だに元に戻る方法がわからない以上、これで誤魔化すしかない。
「じゃあまた放課後に!」
『ええ。また』
そしてかぐや(京佳)は藤原と別れ、A組に向かった。
「おっはよー!四宮さーーん!」
A組に入ると、朝からテンションの高い早坂があいさつをしてくる。
『ええ。おはようございます』
「え?どうしたの?」
『実は少し喉を傷めてしまって喋れないんです』
「マ?大丈夫?」
『ええ。今日は喋れませんが、直ぐに治ると思いますし』
藤原の時と同じように、スマホを使って説明をするかぐや(京佳)。
「え?四宮さん大丈夫?」
「喋れないって本当?何かあったの?」
「大丈夫四宮さん?」
それを見ていたクラスメイトが、心配そうな顔をしながら集まってくる。
『大丈夫ですよ。直ぐに治ると思いますし』
同じようにスマホのメモ機能で説明するかぐや(京佳)。
「そうなんだ。あ!何かあったら直ぐに言ってね!」
「そうそう!何か手伝える事とかあると思うし!」
「遠慮なく言ってね四宮さん!」
そしてクラスメイト達も、藤原と同じように何かあったら頼って欲しいと言う。
『ええ。その時はお願いします』
そうメモを打つと、かぐや(京佳)は自分の席に座る。
(しかし、思ってたより四宮は慕われているんだな…)
席に座ったかぐや(京佳)は、クラスメイト達の反応を見てそんな事を思った。
(私が出会った頃は、あんなに冷たい目をしていて、周りから恐れられていたというのに…)
1年と少し前。
京佳が白銀に誘われ生徒会に入った時、初めてかぐやと対面した。その時のかぐやは、ひどく冷たい目をしていた。まるで人を道具か何かと思っている様に。
事実、その当時のかぐやは非情で近づき難い性格のせいで、周りから非常に恐れられていた。そしてついたあだ名が『氷のかぐや姫』。だが、今はその面影はもう無い。それはクラスメイト達の反応が物語っている。
(あの四宮がなぁ…)
何処か懐かしむかぐや(京佳)。その目はまるで子供の成長を実感する親である。
こうしてかぐや(京佳)の1日が始まった。
一方、C組。
「お前、マジでどうしたんだ?」
『喉を傷めたんだよ。だから喋れないんだ』
「だからってなんでメモでやり取りすんだよ。つか何で痛めたんだ?ヤケ酒でもしたか?」
『未成年なんだからお酒なんて飲めないだろ』
そこでは京佳になったかぐやと龍珠桃が話していた。朝、いつもの様に京佳に話しかけた桃だが、京佳の様子が明らかに可笑しいのに気づく。どうしたのか聞くと、喉を傷めて喋れないと言う。
「まぁあれだ。何かあったら言え。何出来るかわからねーけど」
『ああ。その時は頼む』
そう言うと、桃は自分の席に座る。
(とりあえずこれで何とかなりそうですね)
安堵するのは京佳になっているかぐや。朝、ハーサカこと早坂に言われた作戦を実践し、それが成功。これなら何とか今日1日は乗り切れそうだ。
(にしても、立花さんって龍珠さんと仲良いのね。まぁ同じクラスですし当然かしら?)
少し驚いた事があったとすれば、京佳と桃が仲が良かった事だ。桃は普段、不機嫌そうな顔をして過ごしている。更に気に入らない事があれば、乱暴な言葉を投げかける。なのに今は、どこにでもいる普通の少女の様な顔で話かけてきた。
(あの龍珠さんがねぇ…)
何処か懐かしそうな顔をする京佳(かぐや)。
「あの、立花さん」
「?」
そんな時、京佳(かぐや)に話しかけてくるクラスメイト達がいた。尚、全員女子である。
『何だ?』
スマホを使い、意思疎通を図る京佳(かぐや)。
「えっと、何か困った事があったら言って下さいね!私、お助けしますので!」
「わ、私もです!」
「私も!」
そして話しかけてきたクラスメイト達は、皆京佳(かぐや)が困っていたら助けると言い出す。
『ああ。もしもの時は色々頼む』
「「「は、はい!!!」」」
京佳(かぐや)はそんな皆にスマホでそう伝える。それを見た3人は。少し大きな声で嬉しそうにしながら頷く。その顔は、少し赤い。そして3人は京佳の席から離れて行った。
(あの表情は何でしょう?)
疑問符を浮かべる京佳(かぐや)。その時、ふと思い出した。
(そういえば、早坂が立花さんは女子人気が高いと言ってましたね。それに、今年のバレンタインでは沢山のチョコを貰ってましたし)
早坂が調査報告で、京佳が同性からの人気が非常にあるという事を。現にバレンタインでは、30個以上のチョコレートを貰っていた。この数は、生徒会メンバーでは1番である。
(要するにあの子達は、相手が助けを求めている時に助けて、その後の自分の印象を良いものとし、それから立花さんへ言い寄るって事かしら。なんて恩着せがましい子達なんでしょう)
何となくだが相手が何を思って近づいてきたかわかった。
(全く。仲良くしたいのなら素直に自分から言えばいいじゃないですか)
そして京佳(かぐや)はそれまでの自分の行いを棚に上げる様な事を思う。普段、全く素直にならないのは一体誰だろう。
そんな事を思いながら、京佳(かぐや)の1日が始まった。
放課後
(何とかなりましたね…)
特にトラブルも無く、1日を何とか乗り切り、放課後になったので生徒会室へ向かう京佳(かぐや)。その顔は少しだけ疲れている様に見える。
(他人になりきるって、大変なんですね)
理由は自分が自分では無いからだ。普段のかぐやは仮面を被る事もあるが、それはあくまで自分の本心を隠す為。完全に他人になりきるなんてやった事なんて無い。だが今は強制的になりきらないといけない。
(早坂って、凄いのね…)
何時も変装で様々な人間になりきれる自分付きのメイドの凄さを思い知る。そうこうしているうちに、生徒会室へたどり着く。
「あ、京佳さんこんにちわ~」
そこには藤原と白銀がいた。
『ああ。こんにちわ』
作戦通りにスマホを使ってあいさつをする京佳(かぐや)。
「ええ!?どうしちゃったんですか京佳さん!?」
『実は少し喉を傷めてな。今は喋れないんだ』
「ええーー!?京佳さんもですか!?』
『も?』
「実は、かぐやさんも今日は喉が痛くて喋れないって言ってたんですよ」
『そうだったのか。それは知らなかった』
勿論嘘である。なんせ当事者だ。知らない訳が無い。
「しかし立花もまで喉を傷めているとは。まさか風邪でも流行っているのか?」
「う~ん。どうでしょう?少なくとも私達のクラスにはそんな人いませんでしたけど」
あれこれ考える白銀と藤原。
「立花。他に何か異常はないか?熱っぽいとか、体がダルいとか」
『特に無いよ』
「そうか。だがもし気分が悪かったら直ぐに言ってくれ」
『ああ。もしそうなったら頼むよ』
白銀へそう返答した京佳(かぐや)は、
(会長が私を心配してくれている!?これはまさか、私に気があるからでは!?)
何時の様に脳内お花畑と化していた。
(いえ!落ち着くのよ私!今の私は立花さん!ここで多少気分が上がってしまうと立花さんに申し訳ないわ!)
しかし今のかぐやは京佳である。ここで何時もの様に『これはチャンス!』と思い白銀へアプローチを仕掛けては京佳に申し訳が無い。だがそれだけじゃない。
(それにもしもだけど、このまま会長に何かしらのアプローチをしたとしても、それは私にじゃなくて立花さんの功績となってしまうし)
かぐやの思う通り、もしこのまま何かをしても、それは全部京佳へと向けられる。今のかぐやは京佳なのだから。
その時、京佳(かぐや)に電流走る。
(いえ、待ちなさい。だとすれば、もしここで会長に嫌われる様な事をしてしまえば、立花さんが会長に嫌われる事になるんじゃ?)
今のかぐやは京佳だ。もしここで、いきなり白銀を殴ったりしてしまったら、間違いなく白銀は京佳によくない感情を向けるだろう。その結果、白銀は京佳の方を向く事が無くなり、あとはおのずと自分の方へと自ら歩みよって来る事間違い無し。
まるで悪魔の様な作戦であるが、損得勘定の大きいかぐやはこれを受諾。流石四宮家の令嬢である。
(そうと決まれば早速なにかやってみますか。例えばそう、会長に投げ渡す様に纏めた資料を渡すとか)
流石に殴る様な真似はしないが、白銀に対して失礼な態度を取る事にする。そして鞄の中から資料を取り出し、白銀が座っている生徒会長の机へと歩く。
だが、
『白銀。この資料に判子を頼む』
「ああ、わかった」
京佳(かぐや)は資料を投げ渡さず、普通にしっかり手渡しした。
(で、できない!会長にそんな失礼な事できない!!)
そもそもかぐやが、自分の意中の男にそんな事出来る訳なかった。氷時代ならまだしも、今は絶対に無理である。
(それによく考えたら、もしもこのまま元に戻らなかったら、それは私が嫌われて、私になっている立花さんが会長に好印象を持たれちゃうんじゃ…)
更に思う。もしも嫌がらせをして、白銀が京佳によくない感情を抱いてかぐやの方へ歩みよっても、元に戻らなければ意味が無い。現状、全く元に戻る気配が無いのだ。これでは自分で自分の首を絞める事になる。
(やめましょう…こんな事はやめましょう…)
結局、京佳(かぐや)はこの好感度下げ作戦を中止。何時も通りに過ごす事とした。そして再び資料整理をしようとした時、
(あれ?ノートが無い?)
鞄に入れたはずのノートが無い事に気がつく。
(もしかして、教室に忘れてきた?)
今日は移動教室は無かった。つまり、忘れているとすれば教室の筈。
『白銀。ノートを忘れてきたので取りに行ってくる』
「ん?そうか、わかった」
そしてノートを取りに、1度生徒会室を出ていくのだった。
(あれ?何か既視感が…)
だが扉に手を掛けたユ瞬間、京佳(かぐや)は既視感を感じる。
そしてその瞬間、
「「ぶっ!?」」
昨日と同じように、かぐや(京佳)と京佳(かぐや)はぶつかった。
「おい!?大丈夫か2人共!?」
「大丈夫ですか!?結構痛そうな音しましたけど!?」
心配し、白銀と藤原が口を開く。
「え、ええ。大丈夫で…」
「あ、ああ。問題な…」
痛そう薄くまっていた2人が顔をあげると、固まる。まるで石造の様に。
「どうした?」
「かぐやさん?京佳さん?」
そんな2人を見て、疑問符を浮かべる白銀と藤原。そうやっていると、
「「も、戻ったぁぁぁーーー!!」」
突如、かぐやと京佳が大声で喜びだした。
「やった!やりました!元に戻りましたよ立花さん!!」
「ああ!そうだな四宮!元に戻ったぞ!!」
「ええ!これでもうなりきる必要もないですね!」
「ああ!何時もの私達に戻れるぞ!」
手を取り合いながら喜ぶ2人。だってこれで元通りだ。もう身体や他人に気を使う必要も無い。誰だって嬉しいに決まってる。
「そうだ立花さん。よろしければ、今度四宮家が経営しているマッサージ店へ行きませんか?日ごろの疲れを取る為に。例えば肩こりとか」
「それはいいな。是非行こう。でもそうだな。私達だけじゃなくて皆で行かないか?女子会というやつで」
「まぁ、それは素敵ですね。是非そうしましょう」
この日、2人は前より仲良くなったのだった。そして今度、共に出かける約束をするのだった。
「「????」」
そしてそんな2人を見ていた白銀と藤原は、訳が分からず背中に宇宙を背負った。
これにて終了。
次回もちゃんと書けるようにします。
会長と京佳さんの過去編を予定しているのですが、見たいですか?
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見たい
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別にいらない
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長くなければいい