もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・   作:ゾキラファス

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 気づいている人もいるかもですが、感想の返信は大安の日にしてたりします。偶にうっかり忘れてたりしてますけどね。

 デート回2話目です。お納めください。


四宮かぐやと動物園デート(首尾一貫)

 

 

 

 

 

 『天気晴朗ナレドモ波高シ』とは、日露戦争における決戦、日本海海戦において当時の日本連合艦隊の参謀、秋山真之中佐が大本営に電文で送った言葉だと言われている。

 『天気晴朗』というのは、視界がとても良好で艦隊が戦う準備は整っているという意味。『ナレド波高シ』とは、波が高いので機雷が操作できず自艦隊の船体を傷つけるかもしれないので、日本艦隊が得意とする砲撃戦で戦うという意味だと言われている。

 

「はぁ…」

 

 だが今の白銀には、まさに自分の心境を表している様な言葉になっていた。つまり『今日はとても天気が良いですが、私の心境は荒波が押し寄せています』と。

 

 白銀は今。都内のとある動物園の入り口前で佇んでいた。ただの息抜きとして1人で動物園に来た訳では無い。

 

 今日白銀は、これからこの動物園で四宮かぐやとデートをする。

 

 今までかぐやとデートっぽいのは何度かあった。例えば1学期の映画館である。あれは自分たちが全く素直にならず、結局隣に座る事が出来ず微妙な結果で終わった。しかもあの時は『偶然偶々映画館で一緒になったので、どうせなら一緒に映画を観よう』という割と意味不明な言い訳をしながら行ったデート(笑)だ。

 しかし今回は違う。正真正銘、本物のデート。それもかぐやから誘ってきたデートだ。誘われた後、白銀はあまりの嬉しさに大声を出して、警察に職質された程である。それだけ嬉しかったのだ。

 

 本来ならば素直にこのデートを楽しめばいいのだが、今の白銀には100%楽しむ事は出来ない。

 

 何故なら白銀は今、四宮かぐやと立花京佳という2人の女子に好意を向けてしまっているから。

 

 そのせいで、白銀は最近ずーっと悩んでばかりだ。つまりかぐやと京佳、どっちを選べばいいのかと。元々白銀はかぐやに好意を向けていた。だが最近、白銀はいつの間にか京佳にも同じ様に好意を向けている事に気が付いてしまった。ただの好意ではなく、恋愛感情としても意味を持った好意を。故に悩む。今までの人生で1番というくらい悩む。

 

(だからこそ、このデートで…)

 

 そんな白銀だからこそ、今日のデートではある事を考えていた。それは、比較。今日のこのかぐやとのデートで、どういうところが京佳とのデートより良かったかと比較する事だ。本来ならば決して許される事では無い。実際白銀は罪悪感で胸が苦しかった。

 だが現状、そうでもしないと選べそうにない。2人には本当に悪いと思っている。それでも、しっかりと選ぶ為にはこうしないといけない。

 

(こんな事思いながらデートしてるってバレたら、俺山に埋められるかもな…)

 

 四宮家だったら山のひとつくらい所有しているだろう。そこに埋めてしまえば足も着かない。後は勝手に行方不明者として処理される事だろう。

 

(でも、選べない方がずっと嫌なんだ。だからこそ、しっかりしないと)

 

 白銀は来年海外の大学に進学する予定だ。その為もし2人のどっちかと恋仲になっても、日本で過ごせる時間はあまり多くない。だからこそ、しっかりとどちらかを選びたい。これはその為の行いなのだ。

 

「おはようございます、会長」

 

 そうやって悩んでいる時、後ろから声をかけられた。

 

 

 

 

 

 ここで時間を数分だけ巻き戻す。

 

 場面は白銀と同じく動物園入口前。しかし、白銀がいる場所より少し離れている駐車場にほど近いところだ。

 

「かぐや様。いつまでここにいるつもりですか?もうすぐ約束の時間ですよね?遅刻するおつもりですか」

 

「わかってる、わかってるのよそんな事は」

 

「だったらさっさと白銀会長のところへ行って下さい」

 

「そうなんだけどぉ!!」

 

 そこには物陰に隠れて、数十メートル先にいる白銀を見ている女子が2人。1人はかぐや、もう1人は早坂である。

 今日はかぐやのデートの日。それもかぐやから誘った本気のデート。なので朝からおめかしをし、早坂と様々な作戦を考えた状態で待ち合わせ場所である動物園前まで来ていたのだが、ここでかぐやはヘタれた。今になって、自分が非常に恥ずかしい事をしていたのではと思い、足がすくむ。

 そしてこうして、白銀から見えないところで隠れながら白銀の様子を伺っているのだ。

 

「本当にいい加減にしてください。ここまできて何ビビッてるんですか」

 

「別にビビってなんかないわよ!!これは精神統一をしてるの!!」

 

「だとしても1時間は長すぎです」

 

 早坂の言う通り、1時間も前からずーっとかぐやはこの状態。

 

「こうなったら首根っこ掴んででも白銀会長の前に引きずりだしますよ?」

 

「あ、あと少し…あと少しだけ待って…」

 

「はぁ…」

 

 ため息をつく早坂。これだといつもの流れになりかねない。そこで早坂は強行手段に出た。

 

 ガシッ!

 

「え?早坂…?」

 

「行ってらっしゃいませかぐや様」

 

 先ずはかぐやの腕を掴む。

 

「せーーーの」

 

 そして勢そのまま勢いよく、白銀がいる方角へかぐやを投げ出す様に隠れていたかぐやを投げ出した。

 

「ちょっとーーー!?」

 

 かぐやは早坂に抗議の声を出そうとするが、早坂は何も言わない。これでかぐやは、そのままバランスを取りながら白銀の方へ行かざるを得なくなった。こうでもしないと、かぐやはあと1時間はこのままかもしれない。だからこそ、力まかせにかぐやを白銀の方へ送り出したのだった。

 

(あーもう!やってやろうじゃないのよーーー!!)

 

 そして早坂に投げ出されたかぐやはバランスを取りながら白銀のいる方向へ歩き出す。こうなってはもう隠れられない。半ばヤケだが、これでようやくデートが始められる。

 白銀の方へ向かう途中、かぐやは息を整え、服装を綺麗に直し、表情筋を動かす。こうして準備を整えたかぐやは、白銀とのデートを開始するのだった。

 

「本当に頑張って下さい…かぐや様」

 

 そんなかぐやに、早坂は聞こえない小さな声で激励の言葉を送った。最も、かぐやには聞こえていなかったが。

 

 

 

 

「おはようございます、会長」

 

 こうして時間は元に戻る。

 

「ああ。おはよう四宮」

 

 後ろに振り替える白銀。そしてかぐやの姿を視界に収めた瞬間、動きを止めた。今日のかぐやの服装は、白のニットセーターに灰桜色のチェスターコート。下にはベージュとブラウンのチェックのロングスカート。足には茶色のブーディ。そして白っぽいハンドバックを持っていた。

 普段のかぐやは秀知院の黒の制服姿しか見ない。一応1学期や夏休みには私服姿を見てはいるが、あれとこれは全く別だ。今のかぐやはバッチリ冬仕様。全体的に少しモコっとしているのが凄くイイ。

 

「あの、会長?」

 

 以前、京佳と水族館デートをした際の京佳はそれなりに露出のある恰好だったが、これはこれで凄いイイ。私服というのは、何も露出があればいいという訳では無い。様はどれれだけ心を掴めるかが大事なのだ。

 

「えっと、会長?」

 

 尚、このかぐやの私服は全て早坂がコーディネートしている。最初こそかぐやに選ばせてみたのだが、出来上がったのはまるで中学生の様な落ち着いた服装。はっきり言ってダメだった。

 これでは白銀の心は動かないと思い、早坂が徹底的にかぐやをコーディネート。その結果がこの恰好だ。落ち着いていているがどこか大人な雰囲気を纏わせ、清楚っぽく綺麗に纏まった服装。それが白銀のハートを撃ちぬいた。

 

「か、会長?あの、どうしましたか?」

 

 今の白銀はこの姿を一瞬でも見逃さない様にかぐやをただ黙って見つめているだけの存在になっている。というか正直、この姿を自分以外に見て欲しくない。別に白銀は独占欲がすこぶる強い訳では無いが、こういった事は別だ。既に周りの人達がかぐやの事をシロジロ見ている。はっきり言って不快だ。

 可能ならばすぐにそういった者達を排除したい。と言ってもこの世から排除するのではない。白銀は優しいので人を傷つける事が出来ない為、あくまでこの場から排除したいだけだ。でも仕方が無い。そう思える程、目の前のかぐやはとても魅力的だった。

 

「会長!?本当にどうしました会長!?」

 

「は!?」

 

 ここで白銀は、かぐやにずっと話しかけれていた事にようやく気が付く。

 

「す、すまん四宮」

 

 慌ててかぐやに謝罪する白銀。

 

「あの、もしかして、変でしたか…?」

 

 一方かぐやは心配になっていた。早坂のコーディネートに従い、完璧な状態で挑んだデートだが、白銀の反応は芳しくない様に見える。出鼻を挫かれた気分だ。

 

(死にたい…)

 

 結果、かぐやは落ち込んだ。まるで石上の様に落ち込んだ。

 

「今日の四宮が凄く綺麗でな。つい見惚れてしまってたよ」

 

「え?」

 

 だが白銀の台詞を聞いて暗い気持ちが消えていく。

 

「み、見惚れてた、ですか?」

 

「ああ。なんか口にすると軽く聞こえるかもしれんが、そう思ってしまったんだから仕方が無い。凄く綺麗だぞ」

 

 白銀ははっきりとそう言う。綺麗だと。見惚れていたと。それを聞いたかぐやは、

 

(生きててよかった…!神様ありがとう…!)

 

 感激のあまり心の中で泣きながら神に感謝した。そして白銀はというと、

 

(あれ?俺めっちゃ恥ずかしい事言ってない?)

 

 我に返って急に恥ずかしくなっていた。

 

(いやでも仕方ねーじゃん!?マジで可愛いんだもん!!前にも四宮の私服は見た事あるけど、あれとは別方向で可愛いんだもん!!まるで冬の妖精か天使にしか見えないんだもん!!)

 

 やや女口調でやたらメルヘンチックな例えをする白銀。でもそれだけ白銀の脳裏には、かぐやの姿が焼き付いていた。恐らく一生消えないくらいに。

 

「そういう会長も、凄く素敵ですよ?」

 

「へ?」

 

 今度はかぐやが白銀に言う。今日の白銀の恰好は、白い長そでのシャツの上からうす茶色のダッフルコート。下半身には黒いジーンズ。足には白いスニーカーを履いている。そして肩からは、再び圭から借りたウエストポーチを下げている。

 因みにこれらは圭によるコーディネートではなく、京佳がモデルのバイトをしている会社が運営しているサイトを見て、可能な限り近い服装を自分で用意した結果だ。購入したものは長袖のシャツだけ。それ以外は全て家にあるのもで何とか代用した。

 というか、それ以外は京佳との水族館デートで着ていたものだったりする。でもしょうがない。白銀家は貧乏なのだ。そう簡単に新しい服を購入できたり出来ない。ダッフルコートは去年の秋に古着屋で購入したものだし、新しく購入した黒い長そでのシャツも1000円である。

 正直に言うと悪いとは思っている。別の女子とのデートで使った服をほぼそのまま流用しているのだから。でもこうでもしないとお洒落な格好なんて出来ないので、白銀は苦渋の選択でこうした。

 

(もう少しお金があればなぁ…)

 

 切実にそう思いながら、白銀はかぐやに喋るかける。

 

「そうか?俺のは全部安物だが」

 

「値段なんて関係ありません。今日の会長は本当にとても素敵です」

 

「そ、そうか…ありがとう四宮」

 

 かぐやの誉め言葉を聞いた白銀は、気恥ずかしくてつい顔を赤らめる。

 

(本当に素敵だわ会長の私服!まるでモデルじゃない!!)

 

 因みにかぐやのは本当に裏の無い言葉だった。今のかぐやは白銀とのデートというイベントのせいでいつもよりテンションが高めだ。

 そして昨日、メイドの志賀に言われた通りに今日は素直にデートを楽しむつもりなのだ。なので素直に思った事を口にした。でもモデルは言い過ぎたと思う。

 

(なんだか、胸がポカポカする…)

 

 するとかぐやの無い胸辺りが温かくなった。今までも稀にこういう事があったが、今日は特別温かい気がする。

 

(素直になったおかげなのかしら?)

 

 志賀の助言もあり、今日は首尾一貫して素直になる事にしているかぐや。最初こそ中々白銀の前に出る勇気が無くてうじうじしていたが、早坂に無理やり前に出されてようやく白銀と出会う。

 そして素直に自分の思った事を口にすると、胸が温かくなる。

 

(こんな事ならもっと早く素直になればよかったわね…)

 

 今までの自分は常に言い訳をして遠回り。その結果、いつの間にか京佳が追い付くどころか自分の優勢を覆し、かぐやを置い越してしまった。

 このまま今まで通り素直にならず過ごしていたら、まず間違いなく負ける。白銀を京佳に取られる。

 

(そんなの、絶対に嫌…!)

 

 だからこそ、今日のかぐやは何時ものプライドを投げ捨てて、素直になってこのデートを楽しむと決めている。そうすれば京佳の優勢を覆せるだろうし、何より楽しいデートになるだろう。

 

(よし、頑張れ私)

 

 何時もなら絶対に言わないであろう事を思いながら、かぐやは次のステップへと進む。

 

「それでは会長、行きましょうか」

 

「ああ、そうだな」

 

 こうして2人は入園券を購入すべく、チケット売り場へと向かった。

 

(俺今日、平常心保てるかなぁ…)

 

 ふと心配になる白銀。このままでは、かぐやの可愛さに当てられ、突拍子もない行動を起こすかもしれない。そうなればかぐやに引かれるだろう。

 

(それにしても、今日の四宮は積極的だな…)

 

 それにかぐやの様子も何時もと違う。何時のかぐやなら、もう少し控えめな部分がある。なのに今日のかぐやはどこか積極的だ。

 

(まるで、立花みたいだ…)

 

 それはまるで、自分が好きになってしまっているもう1人の女子の様に。

 

(っていかんいかん!今は立花の事は考えない様にしないと!)

 

 元々2人を比較するような意味合いで今回のデートをしている白銀。だが、今ここで比較する必要な無い。それはあまりにもかぐやに失礼だ。

 

(いやまぁ、比較している時点で失礼を通り越してしるんだけどさ…)

 

 最も、今更な部分もあるが。

 

(まぁ、今は四宮とのデートを楽しもう。そして全てが終わった後に、個人的に色々考えるとしよう)

 

 白銀は、比較するのはデートが終わった後と決めて、今からはかぐやとのデートを楽しむ事にした。

 

「ところで四宮。どうして今日は俺を動物園に誘ったんだ?」

 

「はい。最近の会長はとても疲れていた様に見えました。なので、忙しくなる前に息抜きを兼ねてお誘いしたんです。来週になれば、文化祭の準備でもう息抜きをする時間なんて無いでしょうから」

 

「成程。そういう事なら、今日は思いっきり羽を伸ばすとするよ」

 

「ええ」

 

 そんな会話をしながら、2人はチケットを購入し『異形種動物園』へと入って行った。

 

 列に並んでおよそ10分。遂に白銀達の番となった。

 

『いらっしゃいませせ。お2人様ですか?』

 

「ええ。そうです」

 

 自分から誘ったのだからと言うことで、チケットの購入はかぐやが行う事となった。料金表を確認すると、高校生1人1600円と書かれている。と、その横に気になる表示が見える。

 

(カップル割ですって!?)

 

 それはカップル割。もしこのカップル割を使えば、2人で3200円のところが2200円になる。1人500円引きだ。貧乏な白銀には非常に助かる料金設定。

 

(これは、前に立花さんがやっていた様に私もやるべきでは!?)

 

 京佳は前に白銀と水族館でデートした時、カップル割を適応させた。それは京佳が自分から『私達はカップルです』と言ったからだ。しかもその時、白銀は満更では無かった。

 思えば、あれがきっかけで白銀は京佳を意識し出したのかもしれない。

 

(そうよ。ここで踏みこまなくていつ踏み込むのよ。勇気を出しなさい私!!)

 

 かぐやは自分にそう言い聞かせ、カップル割を利用すべく受付のチケット販売員に言おうとする。

 

『チケットはどうなさいますか?』

 

 チケット販売員がそう聞いてくる。それに対してかぐやは、

 

「えっと、高校生2人です…」

 

 普通にそう言ってしまった。

 

(無理!!流石にそれは言えない!!だって恥ずかしすぎるもの!!)

 

 いくら素直に楽しむ予定のかぐやでも、流石にそこまで踏み込んだ選択は行えなかった。首尾一貫はどうした。

 そしてそれを遠くで見ていた変装した早坂は、深くため息を付いていた。

 

『わかりました。それではどうぞお楽しみに』

 

 結局普通に男女ペアで入る2人。

 

(いえまだよ!!ここからなんだから!!)

 

 そしてかぐやは再び自分にそう言い聞かせ、白銀との本気のデートに挑むのだった。

 

 

 

 

 

 同じ頃 都内某所

 

「どうかした京佳?」

 

「いや。どこかでなんか取り合えしのつかなそうな出来事が起きている気がして」

 

「んー?」

 

 白銀たちが動物園に行っている時、友人の恵美と共に買い物に出かけていた京佳は、何故か危機感を覚えるのだった。

 

 

 

 




 いよいよ始まる会長とかぐやのデート。
 見惚れる白銀。頑張るかぐや。見守る早坂。何かを察する京佳。果たしてどう転がるのか!?

 というか会長の苦悩書くのが本当に難しい。誰だよこんな3角関係物書こうとか思ったのは。

 次回も頑張ります。
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