もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・   作:ゾキラファス

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 朝日が昇るまでは日曜日の理論。

 いつも感想ありがとうございます。本当に励みになっております。

 今回もかぐや様回。


四宮かぐやと動物園デート(一進一退)

 

 

 

 

(よし。一先ずは会長と一緒に入る事に成功したわ)

 

 かぐやと白銀の2人は揃って動物園へと入る。周りには自分たち以外にも大勢の人がいた。子連れの家族や、自分たちと同じような男女2人組。またはおひとり様等。日曜日という事もあって、動物園に来ている人はかなり多い。

 

(最初はどこから行きましょう)

 

 園内に入ったかぐやは考える。一応色々と予定は作っているが、それはあくまでの大まかなところだけ。どの動物を見に行くとかは全く決めていない。

 何故ならかぐやは、動物にこれっぽちも興味が無いからだ。ペットを飼おうと思った事も、疲れたから癒されに動物を見に行こうとも思った事なんて無い。故にどういう動物を見ればいいかよくわからない。

 

「会長。見てみたい動物とかいますか?」

 

 こういう時は相手の要望を聞いてから動くべきだ。なのでかぐやが白銀に尋ねる事にした。

 

「そうだな。最初はキリンが見てみたい」

 

「キリンですか?」

 

「ああ。実は本物のキリンって見た事が無いんだよ」

 

「そうですか。マップによると右の方に行けば見れるみたいですので、行ってみましょう」

 

 白銀の要望を聞いたかぐやは、主導権に握るべく白銀にそう言い歩き出す。

 

 作戦1、白銀の隣を常にキープ。

 

 前日に考えていたかぐやの作戦のひとつ。常に隣にいる事で自分を意識させようというのだ。秀知院でもかなりの割合で白銀の隣をキープしているかぐやだが、最近はそれも少ない。

 原因は京佳だ。あの水族館デート以降、京佳はいつの間にか白銀の隣にいる様になっていた。恐らく水族館デートの気に乗じて白銀により一層自分を意識させる為だろう。

 おかげでここ最近のかぐやは、よく京佳に殺意の籠った目線を向けて生徒会で仕事をしている。そしてそれを見てしまった石上は恐怖で震えていた。

 

(そもそも私は副会長なのよ!?だったら会長の隣は私と決まっているでしょう!!なのに立花さんときたら!!)

 

 内心毒づくかぐや。そして今日は絶対に白銀の隣をキープしようと決意する。

 

「そういや四宮は動物園に行った事はあるのか?」

 

「はい。前に藤原さんに誘われて1度だけ来た事があります。来たのはここじゃありませんでしたが」

 

「そうなのか。藤原と」

 

 会話をしながらも、かぐやはしっかりと白銀の隣をキープしている。それも結構近い距離で。

 

(なんか今日の四宮近くないか?いつもこんなんだっけ?)

 

 そんなかぐやに、白銀は疑問符を浮かべる。

 

(そもそも何で四宮は俺をいきなりデートに誘ってきた?息抜きをさせたいから誘ったなんて言っていたけど、だとしても急すぎる。やはり何か裏があったり?)

 

 いきなり誘われた今日のデート。何時ものかぐやなら、あんなストレートな誘い方なんてしない。最も、それは白銀にも言える事なのだが。

 

(いや、今はそんな事を考えるのはよそう)

 

 だが今その事を考えても答えが出る気がしない。それならば、このデートをしっかりと楽しむ方が有意義だろう。

 

「あ、見えましたよ」

 

 そうこう考えているうちに目的の動物、キリンが見えた。

 

「でかいな」

 

「5メートルはありますしね」

 

 キリン。

 哺乳綱偶蹄目のキリン科キリン属に分類される偶蹄類。全身に赤褐色・黒と、淡黄色からなる斑紋があり、頭に5本の角が生えている首の長い全国の動物園で見れる事が可能な人気の高い動物である。

 

「おお…!」

 

 そんなキリンを、白銀は目を輝かせながら見ていた。

 

(ふふ、会長ったら子供みたいですね)

 

 そしてかぐやはそんな白銀を見て小さく笑う。童心に帰っている白銀が可愛く見えたのだ。

 

「お、餌やりもあるのか」

 

 白銀の目線の先にはキリン用の餌が売っていた。

 

「ご、500円…」

 

 しかし結構な値段がする。500円は白銀家の2食分のお金だ。簡単には出せない金額である。

 

(でもここで金をケチって、四宮にセコイと思われるのは嫌だしなぁ…あと純粋にキリンに餌やりたいし)

 

 1人悩む白銀。しかしその時、

 

「すみません。ひとつ下さい」

 

「はい、どうぞ」

 

「え?」

 

 かぐやがキリンの餌を購入した。

 

「会長。一緒にこれをキリンにあげませんか?」

 

 そして白銀にその餌の入った紙コップをを渡しながらそう聞いてきた。

 

「いや、でもそれは四宮が買ったものだし」

 

 躊躇する白銀。白銀はドケチではあるが、流石に好きな女の子に奢られるのは抵抗がある。だってダサイし。

 

「いや、ですか?」

 

「よしわかった。一緒にやろう。直ぐやろう」

 

 だがかぐやのシュンとした顔を見て掌を返した。

 

(押して駄目なら引いてみろ。早坂の言った通りね)

 

 勿論、先程のかぐやの様子は演技だ。早坂曰く『グイグイ行ってもダメな時は1度撤退すべし』という教えを真に受けそれを実施。結果として白銀と一緒に餌やりを出来る様になったので、この作戦は今後もどこかで使えそうである。

 そしてかぐやと白銀は、紙コップに入った餌をキリンへあげる為に、餌やり場へと上がっていった。

 

「おお、舌が結構長いんだな…」

 

「ふふ。そうですね」

 

 2人で一緒に餌をやるその姿は完全にカップル。しかも肩が触れ合っているのでかなりのラブラブカップルに見える。事実、周りにいた動物園のスタッフも微笑ましいものを見ている顔をしている。

 

(なんて幸せなの…これこそまさにデートよ…)

 

 かぐやは幸せの真っただ中にいるのを自覚。これならばさっさと素直になってデートをしておけばよかった。そうすればもっと早く、こんなに幸せな時間を味わえたというのに。もっと言えば、京佳に追いつかれる事なんてなかっただろうに。

 

(そうよ。だからこそ、今日のデートは今までの分を全て取り返すべくとことん楽しむんだから!)

 

 これ以上京佳に何か行動を起こされる前に、このデートで一気に引き離さいといけない。だがそれはそれとして、白銀とのデートも楽しみたい。その両方を叶えるべく、かぐやはより一層決意を固める。素直になって、デートを楽しむと。こうしてかぐやと白銀のデートは続くのだった。

 

 

 

「俺ばっかりが何か言うのは不公平だ。次は四宮が見たい動物を見に行こう。何がいい?」

 

 キリンへの餌やりを終えた2人。すると今度はかぐやの番だと思った白銀が、かぐやにそんな質問をしてきた。

 

「そうですね…」

 

 考えるかぐや。そもそも動物に興味が無いので、特に見たいと思う動物がいない。

 

「では、ふれあい動物コーナーで兎を見てみたいです」

 

「わかった。ならそこに行こう」

 

 なので女の子らしさをアピールする為、兎が見たいと答えた。白銀もそれを了承し、2人は動物と触れ合う事が出来る場所まで歩く。勿論、その間もかぐやは白銀の隣をキープして。

 

「すっごい沢山いるな」

 

 目的地に着いた白銀の目に映ったのは、沢山の小動物たち。兎にモルモット。ひよこにヤギなどだ。それらの動物が群れをなしている。因みに当然だが、それらの動物は種類ごとに分けられている。全て一緒にしてしまったら争いの元になるからだ。

 

「ふふ、ふわふわで可愛いですね」

 

 かぐやは兎コーナーへ行き、群れの中にいた1匹の兎を抱きかかえる。そして右手で撫で始めた。

 

(めっちゃ可愛い…)

 

 白銀は、そんなかぐやについ見惚れた。男の子というのは、動物と触れ合っている女子を見るとそう思う悲しい生き物なのだ。恐らく、これが子安つばめだったら石上も同じ反応をするだろう。

 

「そうだ会長。写真を撮ってくれませんか?」

 

 そんな時、かぐやが白銀にお願いをする。

 

「えっと、いいのか?」

 

「これはあくまでプライベート用ですので」

 

 家の事象で写真に写る事が禁止されているかぐやだが、これは完全にプライベートの写真。不特定多数に見せる事などないから問題は無い。

 

「えっとじゃあ、スマホを貸して「できれば会長のスマホで撮ってください。そしてその後に私のスマホに送ってください。」え?」

 

 ここでもかぐやは仕掛ける。写真を撮るのを自分のスマホではなく、白銀のスマホにしたのだ。こうすれば、白銀は自動的にかぐやの写真を手に入れる事が可能だ。そうすれば、白銀は毎夜かぐやの写真を見る事だろう。そして毎日かぐやの写真を見るという事は、おのずとかぐやを意識していく事になる。要は刷り込みに近い。

 

「じゃ、じゃあ1枚」

 

「ええ。お願いします」

 

「行くぞ。はいチーズ」

 

 そして白銀はスマホを構えて、兎を抱きかかえているかぐやの写真を1枚撮った。

 

「撮ったぞ」

 

「ありがとうございます会長。後で送って貰っていいですか?」

 

「ああ。必ず送る」

 

 そう言うと、白銀はスマホで撮ったかぐやの写真を見る。そこに写っているのは、まるで天使。時代が時代なら宗教画になっいるであろう1枚。大げさかもしれないが、白銀にはそう思える程に綺麗な1枚だった。

 

(マジで可愛い…スマホの待ち受けにしようかな…)

 

 一瞬そう思ったが、流石にバレた時に言い訳が出来そうに無いのでそれはやめる事にした。そんな時である。

 

「メェ~」

 

「ん?」

 

 かぐやの直ぐ後ろに、突然ヤギが現れた。

 

「おい四宮。後ろに」

 

 ヤギがいるぞと言おうとした時、そのヤギがある行動を起こした。

 

「メェ~」

 

「へ?」

 

 かぐやのスカートの端を口で摘まんで、首を上にあげたのだ。今日のかぐやはロングスカートである。普通に考えたら、これで京佳の様なラッキースケベなイベントなど起こりえない。

 だが普通じゃない事が起きた。それが今の状況だ。ヤギがかぐやのスカートの裾を口で掴んだせいで、かぐやのスカートが捲られた。結果、かぐやの黒いストッキングを履いている足が白銀の目に映った。

 

「見ちゃだめです会長ーーー!!」

 

 かぐや、とっさに白銀の目を指を使って潰す。これは痛い。絶対に痛い。

 

「ぎゃああああ!?目がぁぁぁぁ!?」

 

 白銀、その場でのたうちまわる。それを見ていた周りにいる来場客も何事かと思い驚いていた。

 

「ああ!ごめんなさい会長!あーもう!さっさとあっちに行きなさい!!ジンギスカンにしますよ!?」

 

「メェ~」

 

 かぐやはヤギを追っ払い、白銀に近づく。

 

「すみませんでした会長。あの、大丈夫ですか?」

 

「だ、大丈夫だ…ちょっと痛いけど…」

 

「本当にすみません…」

 

「いや、俺こそ悪かった…」

 

「いえ。私は気にしてませんので」

 

 嘘である。今のかぐやは、白銀にスカートの中身を見られたと思いかなりパニくってた。冷静に考えたら、どうあっても下着が見える程スカートはめくれてはいないのだが、今のかぐやのそんな事考える余裕はない。

 

(こ、これはもう、会長に責任を取って貰うしかないのでは!?だって下着よ!?嫁入り前の私の下着を見られたのよ!?)

 

 未だそういう事に初心なかぐやはそんな事を考える。というか下着が見られて責任を取るという話ならば、京佳はとっくに白銀とくっついているだろう。最も、京佳は既に下着を見られたという話では無いのだが。

 

(いえ落ちつくのよ私!冷静になりなさい!そもそも見えている訳ないでしょう!よくて膝までの筈!)

 

 かぐや、ここで冷静さを取り戻す。流石四宮家の令嬢だ。

 

「会長。ちょっと飲み物でも買いませんか?」

 

「そう、だな。少し休憩しよう」

 

 1度休憩を挟んで、お互いしっかりと落ちつく事にした。そして白銀とかぐやは、近くにあった自販機で同じ缶コーヒーを購入し、ベンチに並んで座るのだった。

 

「会長。次はどこか行きたいところはありますか?」

 

「そうだな。像とかライオンとか見てみたいな。後コアラとか見た事ないから見てみたい」

 

「いいですね。私もコアラは大好きです。ではこの後行きますか」

 

 そう言うとかぐやは、白銀と同じ缶コーヒーを開けて一口飲む。そして、

 

「あ、あれってもしかして鷹でしょうか?」

 

「え?どれだ?」

 

「ほら。あれですあの大きな鳥」

 

 缶コーヒーをベンチに置き、空を飛んでいる何かを指さす。思わず白銀も缶コーヒーをベンチに置く。

 

「いや。あれはカラスじゃないか?」

 

「そうですか。大きなカラスなので間違えてしましました」

 

 飛んでいたのは鷹ではなく大きなカラスだった。そして白銀が再び缶コーヒーを飲もうとした時、

 

「あれ?」

 

 自分の缶コーヒーがどれかわからなくなっている事に気づいた。

 

「どうしました会長?」

 

「いや。どっちが俺の缶コーヒーだったかなーって」

 

 ベンチにあるのは飲みかけの缶コーヒーが2本。銘柄も同じなので、どっちかどっちかわからない。人間、いくら記憶力がよくても無意識に行った事は覚えていないものなのだ。

 

「えーっと、どっちでしたっけ?」

 

「うーむ…」

 

 当然だが、これもかぐやの作戦のひとつである。要するにかぐやは、この期に白銀に間接キスをさせようとしているのだ。1学期にも同じ様な事をしているが、あの時は藤原が持ってきたコーヒーがアレな感じのやつだったので未遂に終わっている。

 だが今回は違う。邪魔者はいないし、飲んでいたコーヒーも大丈夫なやつだ。

 

(これなら今度は成功する筈!さぁ会長!早く私が飲みかけた缶コーヒーを選んで飲みなさい!)

 

 志賀に言われた事を忘れていつもの様にそんな風に思いながら白銀に念を送るかぐや。ここで白銀がかぐやの飲みかけを選べば、間違いなくかぐやを意識する。そこを突けば、白銀は今日のデート終わりにでも告白をするかもしれない。仮に告白をしなくても、かぐやの事は意識する。どう転んでもかぐやに損は無い作戦だ。

 

 だが作戦がそう簡単に行く筈も無かった。

 

「「あ」」

 

 何故なら2人がいるところに突然風が吹いて、缶コーヒーが地面に落ちてしまったからだ。当然落ちた缶コーヒーは、そのまま中身を地面に零す。

 

「「……」」

 

 沈黙する2人。白銀も多少ドギマギしていたのに、すーっと冷静になっていく。

 

「あー。買いなおすか?」

 

「いえ。もう充分です」

 

「そ、そうか。なら、行くか」

 

「そうですね…」

 

 そして2人は地面に落ちた缶コーヒーをゴミ箱に入れて、次の動物がいる場所に行くのだった。

 

(あーもう!風の馬鹿ーーー!!空気読みなさいよ!風のくせに!!)

 

 かぐやは天気にキレ散らかしていた。理不尽である。

 

 

 

 こうしてかぐやの実施した作戦は、成功したりしなかったりして午前中が過ぎていったのだった。

 

 

 

 

 




 かぐや様がフラれた場合の展開が本当に悩みの種。何か良い案ないかな。

 次回もかぐや様のデート回。もう少しお付き合いください。そして京佳さんの出番はもう少しお待ちください。

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