もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・ 作:ゾキラファス
そして初めて原作っぽいタイトルになった。
(白銀は昇降口だろうか…?)
衣替えも始まった梅雨。京佳は白銀を探しながら校内を歩いていた。本日は生徒会の仕事もオフとなり、先ほど生徒会室を出たところだ。
しかし京佳は、そのまま昇降口に行かず、傘を教室に忘れた事を思い出し、一度自分の教室に足を運んでいた。梅雨という時期は雨が降り、湿気で鬱陶しい季節なのだが、この時期ならではのイベントがある。
そう、相合傘だ。
1つの傘を2人が一緒に使い、肩がぶつかり、男女の距離が一気に近くなるイベント。
雨が多い梅雨だからこそ、チャンスも多い。
そして京佳はこの日、白銀と相合傘をするつもりだった。
白銀は雨の日は基本電車で通学をする。傘をさした状態では自転車の運転ができないためである。故に、近くの駅まで一緒に帰ろうとしていた。
(いた)
折りたたみ傘を手に、昇降口までやってきた京佳の目に白銀の背中が映り、声を掛けようとした。
しかし―――
「白が…」
「じゃあ、半分借りる…ってのはどうだ?」
「仕方…ないですね」
京佳が声を掛けるより前に、白銀はかぐやが手にしていた傘を手に取り、それをかぐやと共に使いだした。そして2人は、そのままゆっくりとした歩みで一緒の傘を使い昇降口より出て行った。
「っ」
その光景をみた京佳は、思わず言葉がつまり、その場で立ち止まり、ただ2人が去っていくのを見ている事しか出来なかった。そして2人が完全に見えなくなった後、京佳は下駄箱に寄りかかり、思わず傘を握りしめる。
悔しい
そんな思いが京佳の中に現れた。自分だって白銀と相合傘をしたい。一緒に帰りたい。隣を歩きたい。今思っている事が嫉妬だと分かってはいる。しかし、嫉妬が止まらない。それほど悔しかったのだ。白銀がかぐやを相合傘に誘ったことが。
恐らく、自分が白銀と2人きりだった場合、白銀から相合傘に誘う事はほぼ無いだろうう。白銀が京佳に自分の傘を貸してくれることはあるだろうが、一緒に同じ傘を使用するということは無い。
だって白銀は、かぐやの方に好意を向けているのだから。
そして京佳は、それを知っているのだから。
京佳はそう思いながら、その場から動けずにいた。そんな京佳に話しかける人物がいた。
「京佳ー?何してんのー?」
早坂愛である。
主人であるかぐやから『情報収集』を命じられ、京佳に近づいた少女。今では他愛のない会話をする程には仲の良い関係を築いている。
そんな早坂は、帰路に着こうとした時に、偶然京佳を見かけ話しかけた。
「…………早坂か」
「……マジでなんかあった?」
「ああ…ちょっとな…」
話しかけた早坂は、京佳の様子が少し変な事に気づいた。落ち込んでいる様に見えるし、悲しそうにも見える。正直、少し危うい様にも見えた。
「話くらいなら聞くよ?」
そして京佳から話を聞く事にした。
「はい」
「すまない…」
2人は自販機コーナーへと来ていた。早坂は京佳にパックジュースを手渡し、隣に座った。ジュースを受け取った京佳は、ストローを刺し、ゆっくりと飲み始めた。
「それで、何かあったわけ?」
早坂は京佳に質問をした。
早坂愛は四宮家の使用人である。主人であるかぐやから、京佳について色々情報を集めるように命令を受けていた為近づいた。先ほどの京佳は、何時もと明らかに様子が違った。故に、何かしらの情報が得られると思い、こうして話を聞く事にしていた。
「いや、ただ…私が目指している場所は遠いと再認識しただけだよ…」
「…それって、白銀会長とか?」
「そうだ……」
京佳はゆっくりと悲しげな声色で話し始めた。
「どれだけ頑張っても、どれだけ知恵を絞っても、まだまだそれだけじゃ遠すぎると、思ったんだ…」
それは普段なら他人に言う事のない思いだった。しかし、先ほど白銀とかぐやが相合傘をして帰っているのを見てしまった事により、京佳の精神状態は弱っていた。
それゆえ、このように早坂に自分の思いのたけを喋っている。
「あぁ…遠いな…白銀の隣は…」
その言葉は京佳の心からの言葉だった。
立花京佳は白銀御行の事が好きである。しかし京佳は、白銀を振り向かせるのが非常に難しい事を理解している。何故なら、白銀が好意を向けているのはかぐやであり、京佳はそれを知っているからだ。
恐らく、2人は両想いなのだろう。何故2人がそれぞれの想いを伝えないのかは知らないが、それでも現状の京佳に勝ち目というものは非常に低い。だからこそ遠いと思うのだ。白銀の隣が。白銀を振り向かせる事が。
「……」
京佳の話を早坂は黙って聞いた。
主人であるかぐやの為というのもあったが、純粋に友人として心配になった為でもあった。早坂が心配するほど、京佳が弱弱しく見えたからである。今早坂の隣にいるのは、何時ものようなクールさも、はっきりと物事を言う真っすぐさも無い。そんな京佳だった。
「すまない…みっともない姿をみせてしまって…」
「いや良いって…」
「話したら少しスッキリしたよ…ありがとう早坂」
「どういたしまして…」
京佳の謝罪と感謝の言葉を受け取った早坂は内心ホっとしている部分があった。早坂の主人のかぐやにとって、目下最大の障害になっている京佳がこれ程に弱っている。これならば、暫くはかぐやの障害になる事は無いだろうと。上手くいけば、このまま白銀の事も諦めるかもしれないとも思った。
「だが私は諦める事など決してしないぞ」
「へ?」
しかし京佳は、落ち込んでも折れる事はなかった。
「あの2人が正式な付き合いをしている恋人じゃない限り、私は足掻くぞ。必死にな」
京佳はゆっくりと立ち上がる。
「最後の最後まで戦って、この想いが完全に潰えるその瞬間まで、私は決して諦めない」
空になったパックジュースをゴミ箱捨て、早坂の方に振り替える。
「例えそれが、他者から醜く見られてもな。だって…」
そしてゆっくりと息を吸い、口を開いた。
「私は、白銀の事が大好きなんだから」
己の想いを胸に、立花京佳は再び決意を固めた。
「…すまない、どうもテンションが可笑しくなっていたみたいだ…」
「大丈夫だって…私もそういう時あるし…」
「…早坂、頼みがあるんだが…」
「わかってるって、誰にも今見た事は言わないから」
「すまない…」
京佳はハっと我に返り、頬を少し紅潮させようやく冷静さを取り戻した。人は、精神面が一時的に弱ると色々と可笑しくなるものだ。早坂もそれをわかっていた為そう言った。なんせ自身が仕えている主人が結構な頻度で可笑しくなるのをその目で見てきたからである。
「あ、雨やんだねー」
「ほんとだ。これなら傘も必要ないな」
京佳と早坂は空を見上げた。先ほどまでどんよりとした雨雲だったのに、今では晴れ間が見え、思わず1枚写真を撮りたいくらい見事な虹が出ていた。
「じゃ、あたし帰るねー」
「あぁ、ジュースありがとう、早坂」
「いいって、じゃねー」
早坂は京佳に別れの挨拶をしてその場を立ち去った。そして京佳も自販機コーナーから移動し、帰路に着いた。
(かぐや様…本当に今のスタンス変えましょうよ…逆転負けもありえますよ…)
帰路に着いていた早坂は、改めて立花京佳という生徒が主人のかぐやにとって強力な恋敵である事を再認識した。普通なら、意中の人が自分ではない人と相合傘をしているのをみれば折れるだろう。
しかし、立花京佳は落ち込みこそしたが、決して折れなかった。それだけではなく、より一層努力を重ねると宣言したのだ。これほどとは思わなかった。
(今日もかぐや様を説得しないとなぁ…まぁ、聞き入れないんだろうけど…)
早坂は屋敷に帰ったら、改めてかぐやを何とか説得しようと考えた。何としてもかぐやに素直になって貰わないと、いつの間にか京佳が白銀を取る可能性も十分にある。それが早坂の見解だった。
(でも2人とも羨ましいな…人をあんなに好きになれるなんて…)
帰路に着いている途中、早坂は少しだけかぐやと京佳が羨ましくなった。
今回は初めて少しシリアスっぽい展開に挑戦しました。
おかげで京佳さんがなんか重い感じになったかも知れないけど、これくらいならまだ大丈夫だよね?
次回は水着アビ〇イル引けたら。