もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・ 作:ゾキラファス
今後も完結目指して投稿頑張りますので、どうかお付き合いください。
今回は少し短め。
かぐやとの動物園デートを終えた白銀は、深夜に自宅のリビングで体育座りをしてため息をついていた。
「はぁ…」
ここ最近、ため息の数が増えた白銀。もしここに藤原がいたら『そんなにため息ばかりしていると幸せが逃げちゃいますよー!』とか言いそうである。だが実際、今の白銀は、まるで自分の手から幸せが逃げている気持ちになっていた。
「本当に、どうすればいいんだ?」
ため息の原因、それは勿論京佳とかぐやの事だ。
白銀は今、京佳とかぐやの2人の事を同時に好きになってしまっている。
これが小さい子だったら可愛げのある話で終わるが、既に高校生である白銀はそうもいかない。素直に言って最低だ。実際、前にそれとなく藤原や石上に相談した時はそう言われた。このままでいい訳が無い。
だからこそ、しっかりとどちらかを選ばないといけないのだが、選べない。1度冷静になって、それぞれの良い所を探したりもした。京佳とかぐや、それそれとデートをして、品定めするような事もした。だが、選べない。
これまで生徒会長として様々な判断を選んできた白銀だが、これだけは簡単に選べない。出来ればあと数か月くらいじっくりと考えたい。だがそうも言っていられない事情が白銀にはある。
白銀は既に、アメリカにあるスタンフォード大学へ行く事が決定している。そして早ければ、来年の夏休みの終わりには、アメリカへ渡米するかもしれないのだ。つまり、時間が無い。
もしもこのまま、どちらかを選らばずにズルズルと時間が過ぎてしまえば、どっちかを選ばずにアメリカへ行く事になるかもしれない。そうなったら、2人には簡単に会えないだろう。
それにもし、3年生になってからどちらかを選んだとしても、選んだ方と過ごせる時間があまり無い。そんのは嫌だ。折角恋人になれたのなら、可能な限り多く一緒に過ごしたい。
だからこそ選ばないといけない。それも可及的速やかに。しかし、どうしても選べない。
「はぁ……」
誰もいない薄暗いリビングで何度もため息をする白銀。その顔は、どこかやつれている様にも見える。何度もため息をしたせいで、幸せが逃げ出しているからかもしれない。
そうやって1人で悩んでいると、
「部屋の真ん中で何してんだ御行」
「父さん…」
職業不詳の父が帰宅した。
「ほい」
「ありがと」
手に持っていたコンビニの袋から缶コーヒーを取り出した白銀父。そしてそれを息子である白銀に渡す。受け取った白銀は缶コーヒーを開け、それを一口飲む。口の中に、コーヒー特有の苦みが広がる。
「で、どうした?こんな時間に1人で部屋の真ん中で体育座りなんてして」
「その前に聞かせてくれ。父さんこそ、こんな時間まで何してたんだ?スマホには『今日は遅くなる』としか連絡しなかっただろ」
時計を見ると、既に深夜の1時だ。息子として、父親がこんな時間まで何をしていたか問い詰める必要がある。なので白銀は、先ずはその事を聞く事にした。因みにだが、妹の圭は既に夢の中だ。
「いや。久しぶりに飲んでたんだよ。穴場の居酒屋見つけてな。一応言っておくが3000円くらいで納めたぞ。流石の俺もそこまで飲んだくれないし」
どうやら白銀父は飲みに行っていたらしい。確かに少し酒臭い。それならこの時間まで帰ってこないのも納得だ。
「で、お前はどうしたんだ?圭と喧嘩でもしたのか?」
今度は父が白銀に質問をする。
「あー。ちょっと…いや、かなり悩んでいる事があって…」
「ほう」
白銀の言葉を聞いた白銀父は目の色を少し変えた。
「そういう事なら言ってみなさい。息子の悩みを解決するのも父親の役目だ。これでもお前の倍は生きているしな」
そしていつかの様に、白銀の悩みに乗ると言い出す。
「……」
白銀は考える。自分の恋愛相談を、父親にするか否か。1人で悩んでいても答えが出ない時は、誰かに相談するのが良いのだろう。
しかし相手は実の父親。そして相談内容な恋愛関係。それも結構深刻な。正直に言うと少し、いやかなり恥ずかしい。
(でも、今は…)
しかしこの時、溺れる者は藁をもつかむという諺が白銀の頭に浮かんだ。ここまま1人で悩んでいても仕方が無い。むしろどんどん悩みの沼にハマって抜け出せなくなるかもしれない。ならば、例え実の父親でも相談するべきだと思ったのだ。
「実はさ、本気で悩んでいるだ…」
「ふむ、何にだ?」
「……恋愛で」
「ほう」
眉を吊り上げる父。興味津々の様だ。
「それで、どういった事で悩んでいるんだ?好きな子に渡す誕生日プレゼントとかか?だったらネックレス関係はやめとけ。引かれる。実際俺は、母さんの誕生日を初めて祝った時にそれ渡したら『何か重い』って言われた」
「え?待って、ネックレスって駄目なの?」
「多分人によるぞ。少なくとも母さんはダメだった。喜ぶ人は喜ぶと思うがな」
意外な事を知った白銀は驚く。実はかぐやの誕生日にはネックレスをプレゼントしようと思っていたのだ。だが父の話を聞いた白銀は、少し考えを改める事にした。引かれたくないし。
「もしかして好きな子と喧嘩でもしたか?そういう時はな御行、お前から謝れ。例え自分が悪くなくても先に謝れば、相手も自ずと謝ってくるもんだ。それが夫婦円満の秘訣だよ。まぁ、俺は妻に出て行かれた男だが」
「上げて落とすような事言うなよ。こっちも悲しくなるから」
どこか寂し気な顔でそう言う白銀父。
「あいつは元から結構なキャリアウーマンだったし、今は仕事もバリバリにしながら楽しく充実した生活をしてるんだろうか?そして若い男とよろしくしてんのかなぁ?もしかすると、既に子供がいたりするかもな。はぁ…せめてもう1回会いたい…そして話をしたい…」
「父さんやめてくれって。つーか泣くなよ。ほら、ティッシュ」
「おお、すまん」
息子からティッシュを受け取った白銀父はそれで目元を拭く。
「ってこれじゃ逆じゃねーか。何で俺が相談に乗ってるみたいになってるんだよ」
冷静になってみるとおかしい。自分が相談をするはずだったのに、いつの間にか逆になっている。
「あ、そうだった。よし御行。話せ」
それに気が付いた白銀父も仕切り直すようにそう言う。
「……わかったよ」
なんか釈然としないが、これ以上相談しないとまた逆になりそうなので白銀は話す事にした。
「実はさ、俺今、好きな子がいるんだけど…」
「うむ。それは良い事だ。恋は人を幸せにするからな」
「俺さ…今……2人の別々の子を…同時に好きになっちゃってるんだ…」
「……ほう」
遂に白銀は言った。今まで誰にも言わなかった悩みを打ち明けた。
「それで、どっちを選べばいいか分からずに悩んでいるってところか」
「……」
何も言わない白銀。だってその通りなのだから。というかいつもちゃらんぽらんな感じの父親なのに、どうしてこういう時だけこうも鋭いのだろう。
「御行。お前自身は、どうしたいんだ?」
白銀父は息子である白銀に尋ねる。
「……勿論、しっかりとどちらかを選ばないといけないって思ってる。いっそ2人共なんて考えは無いよ。そんなの最低な事だし。でも、本当に選べないんだ…」
そしてポツリポツリと、白銀は話し出す。
「こんな言い方は最低だけど、本当にどっちも素敵な子なんだよ。2人共美人だし、俺には出来ない事が出来る子だし、話していて凄く楽しいし、ずっと一緒にいたいって思えるんだ」
「……」
白銀父はそれを黙って聞く。
「でも、だからこそ選べないんだ。ちゃんと選ばないといけないのはわかっているのに、選べないんだ…本当に、どっちも素敵な子だから、選べないんだ…」
今まで胸に秘めていた事を全て話す白銀。話したおかげか、すこしだけ肩の荷が降りた気がした。人間、誰かに悩みを話すだけでも楽になるものなのだ。
そして息子の悩みを聞いた父は、
「贅沢だな」
バッサリと切り捨てた。
「御行。俺だって小さい頃、同時に2人の女の子を好きになった事くらいある。だがあれは、あくまでも子供特有の感情故の事だ。だが今のお前は既に高校生だろう。それなのにどっちも素敵な子だから選べない?なんて贅沢な悩みだお前」
「……」
「まぁこの際悩むのはいいさ。好きなだけ悩め。それが人生だ。だが、何時まで経っても結論が出ないのはダメだ。つまり優柔不断だな。それでは、好機を絶対に逃してしまう。諺でもあるだろう?二兎を追う者は一兎をも得ずって」
「……」
「お前このままだと、その2人の両方を手に入れる機会を失うかもしれないぞ?」
「そんな事わかってんだよ!!」
父親の言葉を聞いていた白銀が、突然大声で怒鳴った。
「態々言われなくてもわかってんだよ!俺がどうしようもない優柔不断で、未だにどっちかって決めきれていないダメな奴って事くらい!男だったら、ちゃんと早く決断しないといけない事くらいわかってるんだよ!!」
「……」
ご近所に聞こえそうなくらいの声量で怒鳴る白銀。だってそんな事、言われなくてもわかっている。誰よりも白銀自身が1番わかっている。これが図星を突かれた結果の八つ当たりなのもわかっているが、今の白銀はどうしても抑えられなかった。
「もういいよ!相談した俺が馬鹿だったわ!寝る!!」
そう言うと白銀は、ふて寝する為自室へ行こうとする。
「待て御行」
だがそれは父の言葉で止められた。
「何だよ」
「もう1回聞くが、お前自身はちゃんとどっちか決めたいんだよな?」
「そうだって」
「ふむ…」
考える人のように手を顎に当てて、何やら考えだす白銀父。
「ならその2人とデートしてみたらどうだ?そして自分とどっちが相性が良いかを見極めるんだ」
「もうしたよ。結果、どっちも相性が良いんじゃないかって思ってるし、どっちのデートも最高に楽しかった」
「マジか」
息子の悩みを解決すべく提案をしてみたが、息子は既にそれを実施していた。これには白銀父もびっくり。
「だったら1度距離を置け」
「距離?」
「どっちか決めきれないで悩んでいるのなら、先ずはその2人から距離を置くんだ。そうすれば、状況を冷静に見極めて、自分の気持ちを分析できる筈だ」
「ふむ…」
距離を置くという提案。それを聞いた白銀は考える。今の白銀は、2人の事ばかり考えている。だったらここで1度、2人から距離を取るというのは悪くない提案だ。父親の言う通り、それがきっかけでどっちかを選べるかもしれない。
「後はそうだな。これが1番だと思うが」
「うん?」
父親のその提案を受け入れようとしていた白銀だったが、白銀父にはまだ何かあるらしい。
「相談する事だな」
「いや、今まさに相談してんじゃん」
「俺にじゃない。俺以外の子にだ。お前だって学校に友達くらいいるだろう?」
「まぁ、それは…」
「だったら、心を許せる友達に相談しろ。俺より歳の近い子の方が、より正確な答えに導いてくれるだろうしな」
「……」
ちょっとだけ目から鱗の白銀。確かにそうだ。自分の父親に相談するより、良い解決策が出るかもしれない。
だが白銀は生徒会長だ。秀知院の生徒会長というのは、一種の象徴だ。生徒会長であるが故に、弱い所なんて他人に見せる訳にはいかない。
それに白銀は、どういう訳か百戦錬磨の恋愛マスターとして一定の男子生徒から認知されている。そんな自分だからこそ、そう簡単に人に恋愛相談なんてする事が出来ないのだ。
「言っとくが御行、誰にも相談せずズルズルと決断できなかったら、本当に何の成果も得られないぞ?」
父親の言葉にハっとする白銀。確かにそうだ。このまま1人で考えても答えが出そうになかったから、父親に相談したんだ。ならもう今更だ。
生徒会長だからなんて気にしている場合じゃない。そんな事より、どっちか選べないでいる方がずっと嫌なのだから。
「わかったよ。なら、学校でも相談してみるよ」
「ああ。そうしろ」
あれだけ悩んでいたのに、少しだけ心が軽くなった白銀。これなら、今日は熟睡できそうだ。最も、あまり時間はないが。そして寝ようとした時だった。
「しかしそうか。かぐやちゃんと京佳ちゃんの両方をなぁ…」
「ふぁ!?」
父が聞き捨てならない事を言ったのは。
「ちょ!ちょっと待て父さん!?何だよそれ!?」
「ん?だからお前が好きな子の事だ。かぐやちゃんと京佳ちゃんだろ?」
「な、何で!?」
「何でもこうも、何となくわかるだろう?」
今までずっと隠してきたのに、白銀父はそれを見抜いていた。
「頼む父さん。この事は誰にも言わないでくれ…マジで頼むから…」
「別に言いふらさないって。でも明日は唐揚げの気分だなぁ」
「わかった!明日の夕飯は唐揚げにするから…!」
ナチュラルに賄賂を要求する父親。白銀はそれを受け入れた。
(マジで恥っずい…)
相手が誰かわからない状態でも、実の父親に恋愛相談なんて恥ずかしいのに、相手が誰かわかっている状態だったのだ。これは恥ずかしい。本気で恥ずかしい。
「お、もうすぐ2時か。そろそろ寝るか御行」
「あ、ああ。そうするよ」
そう言うと白銀は、そそくさと布団へと入っていった。
(死にてぇ…)
そしてそんな事を思いながら寝るのだった。
白銀父が態々言ったのは、会長に強く自覚させるためです。あと白銀母の事は完全に妄想です。
次回はわからない。理由は台風。作者九州在住なもんで。因みにこれ投稿準備中も雨と風が酷いです。
とりあえず念のため避難準備だけはしておこう。