もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・   作:ゾキラファス

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 無事トーチ作戦が完了したので投稿。

 過去編、始まります。


過去編
立花京佳と出会い


 

 

 

 

 

『京佳。本当に大丈夫?』

 

「大丈夫だって。何とかなるよ」

 

『でもさ…秀知院って金持ちが通うボンボンの学校じゃん?そりゃ全員がそうだとは言わないけど、そういう奴らって大体平気で酷い事言ったりするじゃん。もしも京佳がさ』

 

「そこまで心配してくれるのはありがたいけど、本当に大丈夫だよ。いざとなったらどうにかしてみせるし」

 

 春。

 多くの人間が新しい出会いを経験する季節。それは京佳も、そして電話相手の恵美も例外ではないだろう。京佳は明日、国内有数の進学校でもあり、同時に数多くの御曹司や令嬢が通っている私立秀知院学園へと入学する。世間的には進学校と認識されている秀知院ではあるが、同時に金持ちのボンボン共が通う学校とも言われていたりする。

 そして恵美の偏見だが、金持ちの子供というのはロクな奴がいないイメージだ。そんな子供が通う学校、秀知院。恵美は左目に薬品による火傷を負い、物騒な眼帯をしている京佳がそこに掘りこまれるのが心配でたまらないのだ。もしかしなくても、左目の事で何かあるかもしれないから。

 

『あーーーもう!何で私は落ちちゃったんだろう!』

 

「そりゃ点数が足りなかったからだろう」

 

『そうなんだけどさぁ!ちょっとくらいまけてくれてもよくない!?こっちの事情を察してさぁ!!』

 

「いやダメだろう。ていうか無理だよ」

 

 電話越しに悔しがる恵美。実は恵美、京佳と一緒に秀知院を受験していたのだが、落ちているのだ。受験理由は、京佳が心配だから。

 中学生の時、京佳は左目の事でクラスメイトからかなりひどい事を言われている。そのせいで、京佳は本当にひどく傷ついた。

 だからこそ自分が守りたかったのだが、残念ながら落ちてしまった。結果、恵美は秀知院に比較的近い高校へ行く事となっている。

 

「そもそも、私も何時までも恵美に助けてもらう訳にはいかない。秀知院では、恵美の助けが無くても頑張ってみるさ」

 

 京佳自身、恵美がいない事に若干の不安を抱えてはいる。出来る事なら、秀知院にも恵美と一緒に通いたかった。だが恵美には恵美の人生がある。一緒に受験してくれたのはありがたかったけど、何時までも彼女の優しさに甘える訳にはいかない。

 

『……わかった。でも何かあったら絶対に言ってよね。助けるから』

 

「ああ。その時はお願いするよ」

 

 京佳の覚悟を聞いて、恵美も気持ちを割り切る。だがそれはそれとして、親友が助けを求めていたら絶対に助けると言う。それを聞いた京佳は、胸が温かくなるのを感じたのだった。

 

 

 

 

 

 入学した翌日。秀知院学園の京佳のクラスでは、HRの時間を使ってクラスメイト達が自己紹介をしていた。だがこの自己紹介、実はそこまで意味が無かったりする。何故なら殆どクラスメイト達は、既にクラスメイトの事を知っているからだ。

 秀知院は幼等部か初等部から入学して、エスカレーター式に高等部まで上がっている純院と呼ばれている生徒が殆どである。数年間ずっと一緒の顔ぶれなので、自ずと自分たちの学年の生徒くらいの顔は一通り覚えてしまうのだ。

 だがそうでない生徒もいる。それが混院と呼ばれている、高等部から受験をして入学ししてきた、外部入学の生徒達だ。

 全体でみれば1割にも満たない生徒数なのだが、各クラスに1人か2人はいる。そんな生徒達の為に、この自己紹介はあったりする。あと一応、今のクラスがどんな顔ぶれなのかを確認する為にも。

 

「では次の子、お願いします」

 

 そして遂に、京佳の番となった。

 

「立花京佳です。外部入学生ですが、よろしくお願いします」

 

 簡単な自己紹介をする京佳。そして自己紹介が終わった時、

 

「ねぇ…あれって…」

 

「ちょ!やめときなって!聞こえたらどうすんの!」

 

「おっきい…身長いくつあるんだろう…」

 

「こっわ…何だよあの眼帯…」

 

「なぁ。あいつひょっとして龍珠の関係者だったりしないか?」

 

 周りからひそひそと小さく囁く声が聞こえた。

 

(まぁ、こうなるよな…)

 

 京佳は身長と、自分の左目を覆っている黒くて大きな眼帯のせいで、何か言われる事は予想していた。つまり、これらの反応は予想の範疇だった訳だ。

 

(無視無視。気にしたってしょうがない)

 

 だからこそ、京佳はそれらの反応を無視する事にした。変に反応するとかえって面倒だから。

 

 その後もクラスメイトの自己紹介は続くのだったが、殆どの生徒は京佳が気になってそれらの自己紹介を聞いていなかった。

 

 

 

 昼休み。学生にとって至福の時間のひとつである。理由は空腹を満たす事ができるから。学食で昼食を獲る生徒。友人と家から持ってきた弁当を食べる生徒。購買で購入した昼食をクラスで食べる生徒等様々だ。その為、昼休みのクラスというのは基本的に和気あいあいと騒がしいのが普通である。

 

 しかし、京佳のクラスは違った。

 

 静かなのだ。本来なら女子がおしゃべりしたり、男子がバカ騒ぎをしたりするのに、皆一様に京佳の事をチラチラと見ている。

 

(居心地悪いな…出るか…)

 

 流石にこうも不特定多数に見られた状態で食事はしたくない京佳は、鞄から弁当を取り出してクラスから出て行った。

 そして出て行った京佳のクラスでは、

 

「や、やっと出ていった…」

 

「怖かった…」

 

「あの人絶対に堅気じゃないよね。なにあの眼帯。絶対に何かの傷があるよ」

 

「傭兵みたいだったよな。もしかし、本当に?」

 

「ばっかお前。いくらなんでも秀知院がそんな奴の入学認めるかよ……え?認めないよな?」

 

 皆が京佳の話題で持ち切りだった。女子にしては高い身長。整った顔。そして左目にしている眼帯。これらの要素がある人物が、何も話題にならない事などありえない。

 既に京佳のクラスメイトの中では、京佳は堅気じゃない生徒という共通認識が出来上がっていた。その後もクラスの生徒達は、京佳の事である事無い事を話すのだった。

 

「ちっ…」

 

 ただ1人、その光景を見て、気分を害している同じクラスの女生徒がいる事を知らずに。

 

 

 

(とりあえず、自分から話かけるのは最低限にしておこう)

 

 人気の無い校舎裏。京佳はそこで弁当を食べようとしていた。

 

(にしても、これは思ってた以上に前途多難かもな)

 

 思い出すはクラスメイト達の反応。皆が京佳に対して怖がっていたりしていた。この見た目ならそれも仕方が無いと京佳は思う。

 しかし、あんなあからさまなひそひそ話は正直やめて欲しい。京佳だって、傷つくのだ。

 

(まぁ、気長にやるとするか)

 

 だがまだ高校生活は始まったばかり。ここで諦めるような事はしたくない。時間をかけて、ゆっくりと周りに溶け込んでいけば良い。

 そして弁当を食べようとしたその時、

 

「え?」

 

「ん?」

 

 京佳の視界に何かが入った。顔をあげてみると、そこには金髪で目つきの悪く、制服の胸元を開けている男子生徒がいた。パっと見、かなり柄が悪く見える。

 

(誰だ?)

 

 少なくとも自分のクラスの男子生徒では無い。そうやって京佳が相手の事を伺っていると、

 

「ひょっとして、お前も俺と同じか?」

 

 唐突に男子生徒が口を開いた。それを聞いた京佳は、

 

「は?何言ってるんだ君?」

 

 頭に疑問符を浮かべながらそう答えた。突然、何の脈絡もなくそう言われたた誰だってそう答えるだろう。

 

「あ、ああ!すみません!今の言い方は言葉が足らなすぎました!ごめんなさい!!」

 

 とっさに謝る男子生徒。直ぐ謝るあたり、悪い人ではないのかもしれないと京佳は思う。

 

「それで、今のは一体どういう意味なんだ?」

 

 とりあえず今の言葉の意味を知りたい。そこで京佳は自分から聞いてみる事にした。

 

「えっとですね、貴方も俺と同じ混院の生徒なのかなっと思いまして」

 

「どうしてそう思ったんだ?」

 

「いや、何かシンパシーを感じて。あと、こんな人気の無いところで昼食を食べようとしているなんて、友達のいないぼっちくらいじゃないといないのかなーっとか」

 

「間違っていないけど失礼だな君は」

 

「あ、ごめんなさい…」

 

 どうやら彼も京佳と同じ混院の生徒らしい。そして京佳にシンパシーを感じたので、話しかけてきたようだ。

 

「でもまぁ、合ってるよ。私は混院の生徒だよ」

 

「そうでしたか。やはり俺と同じだったんですね」

 

 見た目こそ少し怖いが、こうして話してみると案外普通の男子生徒のようだ。最も、見た目については言えた義理じゃないが。

 

「とりあえず、座るかい?」

 

「いいんですか?」

 

「別に構わないよ」

 

「じゃあ、お言葉に甘えて」

 

 京佳に言われ、金髪の男子生徒は京佳の横に少し距離を開けて座る。そして手にしていたビニール袋から、半額シールの張られた総菜パンを開けた。京佳もそれに合わせるように、弁当を食べ始める。

 

「それで、君は結局誰なんだ?」

 

 沈黙に耐え切れなくなった京佳が金髪の男子生徒に質問する。

 

「俺…僕は白銀。白銀御行。今年入学したばかりの混院の生徒です」

 

「そうか。私は立花京佳。さっきも言ったが、君と同じ混院さ」

 

 男子生徒の名前は白銀御行。そしてどうも、京佳と同じ混院の生徒らしい。

 

「ところで、どうしてこんな場所に?」

 

 京佳が白銀に更に質問をする。最も、凡その理由は大体想像できるが。

 

「えっとですね。クラスにいてもちょっと居心地悪くて、昼休みの間だけでも落ち着ける場所があればと思って歩いていたら、ここに」

 

「ああ、成程」

 

 想像通り。彼も今のクラスでは居場所が無いらしい。だが、それは混院という事が原因だろう。京佳のように、あからさまに怖がられている訳ではあるまい。

 

「因みにえっと、立花さんは?」

 

「大体君と同じ理由だよ。まぁ私の場合、見た目もあるけど」

 

「え、あ…」

 

 京佳の言葉を聞いた白銀は、思わず京佳のじっと見てしまう。その目に映るのは、まるでアニメや漫画のキャラクターが使っているような黒い眼帯。

 それを見た白銀は、

 

「かっけぇ…」

 

「え?」

 

 ついそんな事を言ってしまった。

 

「ああ!ごめんなさい!今のは聞かなかったことにしください!」

 

 とっさに謝る白銀。そして手にしていた総菜パンを食べる。

 

(何言ってるんだ俺は。何か怪我でああなったかもしれないのにかっこいいとか)

 

 自分の失言に落ち込む白銀。どういう理由があったかは知らないが、隣の彼女は眼帯をしている。もしかするとそれにコンプレックスを感じているかもしれないのに、自分は相手の気持ちを何も考えずにそう言ってしまった。

 

(もう1回ちゃんと謝ろう)

 

 さっきみたいなとっさの謝罪ではなく、もっとしっかりとした謝罪をするべきだと思う白銀。今食べている総菜パンを食べきったら、謝ろうと決める。白銀は優しいのだ。

 しかし謝るため話しかけようとした時、

 

「えっと、かっこいいのか?これ」

 

 先に京佳の方が眼帯を指差しながら話しかけてきた。

 

「は、はい。かっこいいと思います。でも無神経な発言でしたよね。本当にごめんなさい」

 

「いや。気にしてないからいいよ」

 

 そう言うと、京佳は弁当箱に入っている卵焼きを食べる。どうやら本当に気にしていないようだ。

 

(初めてあんな事言われたな)

 

 今までこの眼帯のせいで、怖がられる事は沢山あった。何なら小さい子供に泣かれた事もある。しかし、横に座る白銀はかっこいいと言った。

 

(面白い子だな、彼は)

 

 そんな白銀の発言に、京佳は興味を引かれる。今まで出会ってこなかったタイプだからだ。ふと白銀を観察してみる。金髪に鋭い目つき。これだけなら不良と間違えられるかもしれない。

 しかし話してみると、とてもそういった人物ではない事がわかる。恐らく白銀は、かなり人が良いのだろう。そしてある事に気が付いた。

 

「そういえば、何でさっきから敬語なんだ?」

 

 それは白銀が京佳に対してずっと敬語なところだ。別にそれが悪い訳じゃない。ただ同じ1年生なのに、ずっと敬語なのが気になっただけだ。

 

「え?だって、立花さんって、先輩ですよね?」

 

 京佳の質問に白銀が答える。実は白銀、京佳の事をずっと混院の先輩だと思っていたのだ。落ち着いた喋り方。少し大人びいた雰囲気。これが京佳が年上であると、白銀を勘違いさせた。

 

「いや、私は今年入学したばかりの新入生だが」

 

「へ?」

 

 しかし京佳の言葉を聞いて、鳩が44口径120mm滑腔砲を食らったような顔をする白銀。

 

「同級生?」

 

「そうなるな」

 

 まさか同級生とは思わず、暫く固まる白銀。

 

「な、なんかすみません」

 

「いや、別に謝る事じゃないだろう」

 

 そして反射的に謝ってしまった。

 

(俺、さっきから謝ってばかりだな…はぁ…)

 

 白銀は自己嫌悪に陥りそうになっていた。その理由は京佳との事もあるが、大半はこの学校についてである。入学してまだ1日。元々入学する予定など無かったのに、父親が勝手に願書を提出し、試験を受けて、ギリギリの点数で合格をして秀知院に入学した白銀。

 最初こそ国内有数の進学校ということで気合を入れていたが、いざ入学すると、そこには既に仲の良い者同士で生成されたグループばかり。話しかけようにも、白銀はやや口下手の上に、相手は自分よりずっと金持ちな連中。下手な事を言って、何かされたらたまらない。

 だから白銀は、昼休みだけでも1人で落ち着きたいと思い、クラスを出て昼食を獲れる場所を探していたのだ。

 そこで出会ったのが京佳。何かシンパシーを感じて話しかけてみるが、さっきから会話が上手く弾まないし、自分は謝ってばかりだ。

 これらの事が連続して起こったせいで、今の白銀はかなり落ち込んでいた。

 

(にしても、すっげー落ち着いた喋り方だな。本当に同級生なのか?)

 

 改めて京佳を見る白銀。落ち着いた喋り方。どこか大人っぽい雰囲気。正直『実は3年生です』と言われても信じられる。さっきの会話も、まるで年上と話しているように感じていた。

 

(俺もこんな風に喋れたらなぁ…)

 

 少なくとも、今の自分では無理だろう。そう思いながら、白銀は食べ終わった総菜パンの袋を丸めた。

 

「っと、そろそろ昼休みが終わるな。行くとしよう」

 

「あ、そうですね」

 

 同じように弁当を食べ終わった京佳がスマホで時間を確認すると、昼休み終了まであと10分程。2人共正直戻りたくないのだが、戻らないと午後の授業が受けられない。

 

「ん?」

 

 2人揃って立ち上がった時、白銀はある事にかが付く。

 

(え?でかくね?いやでかくね!?)

 

 それは京佳が自分より大きい事だ。胸じゃない。身長がである。白銀も、同級生の中では結構な高身長に部類されるのだろうが、京佳は明らかにそんな自分よりでかい。女子でこれは相当でかい部類に入るだろう。

 

「どうかしたのか?」

 

「あ!いや!何でもないです!!」

 

 まさか『身長でかいっすね』なんて女子相手に言える訳もなく、白銀はとりあえず誤魔化す事にした。そしてそそくさと、自分のクラスに帰るのだった。

 

 

 

 

 

 夜 立花家 京佳の部屋

 

『それで京佳。どうだったの?』

 

 そこでは部屋着姿の京佳が恵美と電話をしていた。内容は勿論、秀知院での事である。

 

「そうだな。やっぱり授業は結構レベルが高いと思うよ。あと、周りのクラスメイトもどこかの企業の役員の子供だったり、会社令嬢ばかりだった。流石秀知院だよ」

 

 京佳も学校で見た事をそのまま恵美に伝える。

 

『ねぇ京佳?私が聞きたいのはそういう事じゃ無いってわかってるでしょ?』

 

 だが恵美はそんな事どうでもいい。聞きたい事は初めからひとつだけなのだから。

 

「……はぁ。わかったよ。正直に話す。案の定、周りからは怖がられたよ」

 

『それだけ?何か言われたりしてない?』

 

「今のところ、そういった事は無いよ」

 

 実際はひそひそと言われたのだが、京佳自身あまり気にしてない事なので、その事は伏せておいた。

 

『そっか。でも何かあったら遠慮なく言ってね!竹刀もって討ち入りするから!』

 

「そんな事したら県大会出られなくなるぞ」

 

『大会より友達の方が大事だから問題ないって』

 

「あ、ははは…」

 

 恵美が本当に討ち入りするかもしれないから。恵美であれば、どこかのゲームのように、秀知院生徒を千切っては投げて千切っては投げてをしそうだ。想像するその姿、まるで英国無双。

 

『それで、他には何かあったりする?』

 

 恵美が続けてそう質問をする。

 

 

 

「そうだな。面白い子に会ったよ」

 

 

 

 それに京佳はそう答えた。電話越しなので顔は見えないが、その時の京佳の顔はその日1番の笑顔だった。

 

 

 

 

 




 因みに恵美ちゃんは剣道の全国大会優勝経験者です。

 やっと書き始められる過去編。決して長くならないように頑張りたいです。例えるならワンピースの過去編よりは短くしたい。

 次回も主な登場人物は白銀くんと京佳さんだけの予定。
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