もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・   作:ゾキラファス

113 / 197
 捏造過去編2話目です。まだ日があるうちに投稿できたの、いつ以来だろう。
 これからも完結目指して書いていきますので、どうかよろしくお願いいたします。


 追記・感想や意見を頂けると作者が凄く喜びます。


立花京佳と白銀御行

 

 

 

 

 

『気持ち悪い…』

 

『まるでゾンビじゃん』

 

『お化けだろ』

 

『なんで学校にくるんだよ』

 

『あいつが一緒に居るだけで気分が悪い…』

 

 

 

 

 

『もう2度と学校にくるなよ、化け物め』

 

 

 

 

 

「はぁっっっ!?」

 

 悲鳴に近い声を出しながら、京佳は自室のベットの上で飛び起きる。その額には汗が大量に出ていた。京佳がこうなった原因は、たった今見た夢にある。

 

「また、あの時の夢か…」

 

 それは数年前、退院した京佳が学校に戻ってきた時の、当時のクラスメイト達の反応。その時の事を、京佳は夢に見てしまったのだ。ほんの数か月前までは、このような夢を頻繁に見ており、夜中に目が覚めてしまう事が多々あった。更に秀知院への受験勉強のせいもあって、当時の京佳は酷い寝不足に悩まされていた。

 

「京ちゃん?大きな声したけど、大丈夫?」

 

 自室の扉を開けて、母親の佳世が話しかけてくる。

 

「大丈夫だよ母さん。ちょっと夢見が悪かっただけだから」

 

「汗凄いけど?」

 

「……寝汗だよ」

 

「ふぅん?」

 

 母親を心配させまいと、大丈夫だと言い、安心させる京佳。しかし佳世は、娘がまたあの時の事を夢に見たのだと見抜いていた。伊達に母親をやってないのだ。

 

「京ちゃん。秀知院はどう?」

 

「授業のレベルはやっぱり高いよ。流石国内有数の進学校だ」

 

「そう。で、クラスではどうなの?」

 

「……」

 

 親友の恵美といい、母親の佳世といい、どうしてこうも見抜いてくるのだろう。

 

「ねぇ京ちゃん?今更言うのもあれだけど、態々秀知院じゃなくてもよかったんじゃない?他にも進学校って呼ばれている学校は沢山あったし。もし今の学校で嫌な思いしてるんなら、転入する事もできるわよ?」

 

 佳世は京佳に助け舟を出す。事実、入学式の時点で、京佳は周りからひそひそと言われているのを佳世は知っている。可能であれば、一言言ってやりたい気分だった。

 しかし、流石にその場で何か言うのは、今後の京佳の立場が悪くなるかもしれない。なのでぐっと堪えた。

 

「いや。あそこが良いんだ。進学校っていうのもあるけど、特待生の学費補助が他の学校より手厚いし」

 

「お金の事なら心配しなくていいのよ?私、これでも結構稼いでるんだし」

 

 佳世は数年前に夫が亡くなってから、文字通り必死で勉強をして、不動産鑑定士の資格を取った。その結果、今では結構な高収入となり、不自由なく過ごせている。他校への子供1人の編入資金くらい、どうって事ない。

 

「いや、ここで他校に編入なんて手段を取ったら、私は絶対に後悔する。折角勉強頑張って入学したんだ。だったら、多少の障害があっても、私は必ず秀知院をしっかりと卒業してみせるよ。それに、見た目の事で何か言われるのは、何も秀知院に限った話じゃないだろうし」

 

「そう…」

 

「うん、そう。じゃあちょっと早いけど、朝ごはんの準備してくるから。でもその前に顔洗ってくる」

 

「自分の身体よく見て?どうせなら顔洗うんじゃなくてシャワー浴びてきなさい」

 

「え?」

 

 佳世に言われ自分の体を見てみると、べっとりと汗をかいていた事に気が付く。パジャマは体にぺったりと張り付いているし、下着も汗で濡れている。正直結構気持ち悪い。

 

「……そうだね。じゃあ、ちょっとシャワー浴びてくる」

 

「ええ。あと、朝食の準備は私がしとくわ。食パンでいい?」

 

「うん。ジャムでお願い」

 

「了解」

 

 そう言うと京佳は洗面所へ向かい、先ずは汗を流し落とす為に、シャワーを浴びるのだった。

 

「はぁ…1度決めたらそのまま進もうとする頑固さはパパ似ね、本当」

 

 残された佳世は、小さくため息をしながら朝食の準備をする。

 

 

 

 秀知院に入学して3日。立花京佳に、まだ友達はいない。

 

 

 

 

 

「はぁ…」

 

 朝の新聞配達のバイトを終えた白銀は、決して広くはない居間で家族皆と朝食を食べながら、1人ため息をついていた。

 

「おにぃ。朝からため息とかやめて。こっちまで気分が悪くなるから」

 

「あ、ごめん。圭ちゃん…」

 

「おー。今日は結構風が強いみたいだなー。洗濯物が飛んでいかないよう気を付けないとな」

 

 因みに白銀父は、テレビの天気予報を見ながら納豆を食べている。行儀悪い。

 

「で?何でため息したの?」

 

「えっと…」

 

 圭の質問に口ごもる白銀。言いたくない。入学して3日も経っているのに、未だに誰とも碌に話せていないなんて。一応1人だけ話す事はあったが、あれ以来話していないなんて。

 

「えっとだな。秀知院の授業が思ってた以上にレベルが高くてな…それが大変で」

 

 なので白銀は、当たり障りのない事を言った。ようは誤魔化しだが。

 

「ふぅん。まぁ、確かにレベルは高いよね」

 

 圭は一応納得したようだった。そして朝食の卵焼きを食べる。

 

「そういえば圭。学校で友達とかできたか?」

 

 テレビを見ていた白銀父が、圭に質問をする。圭も兄御行と同じように秀知院に入学している。既に入学して3日。並みの学校なら、当人によっぽどの問題が無い限り友達の1人くらいはできるだろう。

 

(いやいないだろう。俺がいないんだし)

 

 白銀は1人、卵焼きを食べながらそう思った。

 

「まぁ、一応できたの、かな?」

 

「へ?」

 

 圭の返答を聞いて固まる白銀。自分が未だにぼっちなのだ。それなのに、妹が既に友達が出来ている訳がない。何故かそんな思い込みをしていた。だが現実はどうも違うらしい。

 

「前の席の子がさ、なんでかよくわからないけどすっごく話しかけてきて。しかもその子、なんか凄く交友関係広くてさ。そしたらいつの間にか、それなりに話せる人が出来ちゃって」

 

「女の子?」

 

「女の子」

 

「ほう。それは良い子だな。大事にしなさい」

 

「うん」

 

(ウソやん…)

 

 衝撃の事実。圭には既に友達と呼べる人が出来ていた。それも話を聞く限り、複数いるっぽい。

 

(マジかよ…中等部ってそんな和気あいあいな感じなの?)

 

 別に高等部が殺伐としている訳じゃない。だが今の白銀には、中等部がまるで別の学校のような場所に感じた。

 

「御行。お前はどうだ?友達の1人くらいできたか?」

 

 白銀父がそう質問をする。

 

「ま、まぁな。俺だって何だかんだ花の高校生だぞ?それこそ直ぐに話せる奴くらいできたさ」

 

「そうか。それは良い事だ」

 

 そう言うと白銀父はお茶を飲む。

 

(嘘は言ってねーし…)

 

 確かに白銀は嘘は言っていない。でもその話した奴とは、あれから会ってすらいない。

 

 

 

 秀知院に入学して3日。白銀御行に、まだ友達はいない。

 

 

 

 

 

「「あ」」

 

 昼休み。

 白銀は2日ぶりに校舎裏に来ていた。前回ここにきて依頼、他にどこか1人で食べれそうな場所は無いかと思って学校中を探していたのだが、そんな都合の良い場所は見つからなかった。

 それで結局、最初に見つけたこの校舎裏に来ていた。すると案の定、見覚えのある先客がいた。

 

「確か、白銀だったか?」

 

「あ、はい。そうです」

 

「いやだから何で敬語?」

 

「あ、すまん。なんかつい…」

 

 勿論京佳だ。既に京佳は昼食を食べていた。因みに今日の昼食はサンドウィッチ。

 

「とりあえず、座るか?」

 

「ああ。ありがとう」

 

 京佳に言われ、この前と同じように座る白銀。そして半額シールが張られた総菜パンを食べる。

 

「「……」」

 

 会話が無い。元々、白銀はよくしゃべる方ではなかったし、京佳も左目の事があるので、自分から喋りかけるような真似はあまりしない。

 結果、ただ2人の男女の間に、食事の租借音が聞こえるだけの妙な空間が生まれた。

 

(何か話しかけた方が良いのか?でも、何を話す?俺女子受けの良い話題なんて知らねーぞ)

 

 こういう時は、男から話しかけた方が良いと思っている白銀は、なんとか会話の糸口を見つけようとするが、これが中々見つからない。こんな事になるのなら、圭から何か色々聞いておけばよかったと後悔し始める。

 

「すまない。少し良いだろうか?」

 

 いっそ自分の好きな天体の事でも話題にしてみようかと悩んでいると、京佳の方から話しかけてきた。

 

「えっと、何だ?」

 

「ちょっと聞きたいんだが、どうして態々この学校を選んだんだ?いや、言いたくなかったら喋らなくてもいいんだが」

 

 京佳の質問。それは白銀の秀知院への入学理由だった。秀知院は、殆どと言って良い程に外部入学の生徒がいない。その数、全体の1%程。何故それほどの数しかいないかというと、それは秀知院が持っているイメージの『金持ちが通う学校』にある。

 その昔は、貴族や士族を教育する由緒正しい学校というイメージだったが、近年は所属している生徒のモラルの低下もあり、そのイメージは低下の一途を辿っている。そのような学校に、家や親が金持ちでも無いのに態々受験しようと思う人間は少ない。

 だがそんな数少ない混院の生徒である白銀。京佳は、そんな白銀がどうして受験したのかが何となく気になった。

 

「あー。実はな、本当はここじゃなくて、どっか普通の公立高校へ行こうとしてたんだが、俺の父親が勝手にここの願書を提出して、そしたらギリギリだけど受かっちゃって…」

 

 京佳の質問に、白銀は素直に答える。少し恥ずかしい話だが、それが事実なのだ。できれば誤魔化したいとも思う事なのだが、元々あまり嘘が付けない性格なうえ、そもそもここで嘘をつく理由が無い。だから正直に答えた。

 

「え?そうなのか?学歴が必要だからとか、ここでやりたい事があったからとかじゃなくて?」

 

 それを聞いた京佳はあっけに取られた。てっきり白銀も自分と同じように、何か目的があって入学したからだと思っていたからだ。

 

「ああ。いやまぁ、学歴はそりゃ欲しいが、別にここじゃなくてもよかったなーっとは思ってるぞ」

 

 総菜パンを食べ終わった白銀が答える。事実、白銀自身はこの学校に特別こだわっていなかった。確かに卒業できればそれなり以上の学歴はつくし、色々な保証も手厚い学校ではあるが、それでも特にこだわりはなかった。それを聞いた京佳は、

 

「凄いな」

 

 なんか関心していた。

 

「え?どこがだ?」

 

「いやだって、ここ秀知院だぞ?偏差値が全国屈指の。そんな学校に『親が勝手に願書を出して受験したら受かった』っていうのは凄いじゃないか。私だったら落ちてたよ」

 

「あ……」

 

 そう言われて少しだけはっとする白銀。言われてみればそうかもしれない。滑り込みの補欠合格とはいえ、合格は合格である。それも全国屈指の入学難易度を誇る秀知院に。これは確かに凄い事だろう。

 

「いや。運がよかっただけだよ。俺の実力じゃない。テストはマークシートだったし」

 

「運も実力のうちっていうだろう?それは君の力さ」

 

「そう、か?」

 

「そうだよ」

 

 あくまでも秀知院に受かったのは、運が良かっただけだと思っている白銀。しかしそんな白銀を、京佳は素直に褒める。

 

(嬉しいもんだな…)

 

 これまでの人生で、あまり人に褒められた事が無い白銀は、つい嬉しくなる。心なしか、顔がほころんでいる気がした。

 

「そういう立花さんは、どうしてここに?」

 

 今度は白銀が京佳に質問をする。

 

「私はここがレベルの高い学校だったのと、保証が手厚いというところだね」

 

「その言い方だと、立花さんは将来の目標とかが既に?」

 

「ああ。私は将来弁護士になりたいんだ」

 

 京佳には、弁護士になりたいという夢がある。詳細は省くが、中学の頃にそう決めた。その為には、兎に角沢山勉強をしなくてはいけない。弁護士になる為に必要な司法試験は、国内最難関レベルなのだ。

 秀知院ならば、授業のレベルも高いし、大学を受験する際に役に立つ事も沢山ある。だからこそ、京佳は秀知院を選んだ。夢の叶える為に。

 

「弁護士…凄いじゃないか…」

 

「まぁ、まだなりたいと思ってるだけだけどね」

 

「それでも凄いよ。俺なんかとは全然違う」

 

 白銀は素直に感心する。まだ高校1年なのに、しっかりと将来を見据えている。こういう人が、将来大成するんだろうなとも思った。

 そうやって会話をしていると、京佳が何かに気づいてポケットからスマホを取り出す。スマホに表示された時刻は、昼休みがあと少しで終わる事を示していた。

 

「そろそろ昼休みが終わるな。戻ろうか」

 

「そう、だな」

 

 京佳がスマホをポケットにしまうと、2人は揃って立ち上がる。

 

(やっぱでかいのこの子…)

 

 白銀は改めて、立ち上がった京佳の大きさに圧倒される。胸じゃない。身長にだ。

 

 そしてそのまま、未だに誰とも話せる人がいない、自分のクラスへ帰るのだった。

 

 

 

 

 

 放課後。京佳はバスに乗って、自宅へと帰っていた。その手には、英語の参考書がある。バス移動の時間を使って勉強するためだ。

 

「……」

 

 だが今の京佳は、あまり勉強に集中できていなかった。

 

(白銀…か…)

 

 その理由は白銀である。秀知院に入学してまだ3日だが、未だに京佳には友達どころか話せる人がいない。唯一の例外が、昼食を共にした白銀だ。

 3日前の昼休みに突然話しかけられて、そのままなし崩し的に昼食を一緒になり、自分と同じ混院で、流れで秀知院に入学したという男子生徒。

 

(教室じゃ、あんな会話は出来ないな…)

 

 京佳は自分の見た目のせいで、自分がクラスではあまり良い印象を持たれていない事は理解している。だからこそ、自分からクラスメイトには必要最低限の事以外は話しかけないし、なるべく教室にもいないようにしている。なので教室では、誰かと親し気に話すという事は出来てない。

 でも昼休みのあの校舎裏では、楽しく会話ができている。いくら京佳の心が強いといっても、決してダメージが無い訳では無い。誰とも話せないで1日が終わるのは、やはり寂しいに悲しい。

 そんな寂しい1日を送っている中、白銀という男子生徒は、京佳の寂しい学校生活に灯された光になりつつあった。

 

(また明日も、来てくれるかな?)

 

 そんな淡い期待をしながら、京佳は帰路に着くのだった。

 

 

 

 同じ頃、白銀はレストランのバイトへ向かうために自転車を漕いでいた。

 

「……」

 

 だが、その顔は沈んでいる。別にこれからのバイトが嫌な訳じゃない。むしろ今日のバイトは賄いが出るので好きな方だ。

 

(やっぱ、俺なんかとは全然違う子だよなぁ…)

 

 沈んでいる原因は、今日も昼休みに一緒に昼食を共にした京佳の事だ。最初こそ自分と同じ外部入学生の混院で、上手くクラスに馴染めていないボッチ仲間と思っていたが、話してみると彼女には既に目標があった。

 自分は親に流されるがままに秀知院を受けて入学したが、京佳は自分の意志で受験し入学した。それだけで既に自分とは全然違う。

 同じ混院の生徒ではあるが、ある意味京佳も純院と言われる秀知院のサラブレットの生徒達と同じかもしれない。

 

(でも、話している時間は楽しかったな…)

 

 だが、この前と今日の昼食の時間は楽しかった。未だにクラスでは誰とも仲良くなれず、やや息苦しい思いをしている白銀。正直、こんな学校になんてて入学するべきじゃなかったとすら思っていた。

 しかし今日の昼休みは、まるで友人と過ごしていたような楽しい時間だった。

 

(あの子が迷惑じゃなければ、また明日もあそこ行こ…)

 

 どのみちクラスでは居場所なんて無い。ならば、京佳が迷惑に思わない限りはあそこで昼食を食べようと白銀は決める。もし迷惑だと言われたら、その時は別の場所を探せばよい。トイレとか。

 

 こうして白銀は、バイトへ向かったのだ。

 

 尚、その日の賄いはガパオライスだった。

 

 

 

 

 




 因みに弁護士になる為に必要な司法試験は、本番前の予備試験と言われている試験の方が難しいらしいです。

 この時期の会長って、前生徒会長に話しかけられるまで、マジで学校に居場所なさそうなんですよね。嫌がらせとかは受けてなかったぽいけど。

 次回も過去編。暫く仕事以外やる事ないから頑張って書きたい。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。