もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・   作:ゾキラファス

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 私が書いている過去編は基本捏造です。
 だって原作が碌に過去編書いてないんだもん。


立花京佳と龍珠桃

 

 

 

 

 

 朝、京佳は教室の自分の席で授業の予習をしていた。京佳は地頭はそれなりに良い方ではあるが、それだけで成績が優秀になれる訳ではない。普段からこうして、こまめに勉強する事で秀知院の授業にだってついていけるのだ。

 

(居心地悪いな…)

 

 特におかしい光景ではない。京佳の他にも、自分の席で予習をしている生徒など沢山いる。しかし京佳は、今この時間がかなり居心地が悪かった。

 

「やっぱりさ、その筋の人だよね?裏稼業とか」

 

「そうに決まってるじゃん。あんな物騒な物顔につけてるんだよ?」

 

「じゃあさ、あの噂も本当なのかな?ここに来る前は世界中の戦場を渡り歩いていた傭兵だって…」

 

「ありえるんじゃない?あの左目だって、戦場で受けた傷跡だよ…」

 

 その理由は、こうして教室の隅でヒソヒソと自分の事を話している生徒がいるからだ。

 

(せめて私が聞こえないように話すか、私がいないところで話してくれ。そもそも裏稼業ってなんだよ。私は平凡な家の生まれだっての。というか眼帯しているから傭兵ってなんだよ。安直すぎるだろ…)

 

 態と聞こえるように言っているのか、それとも単に京佳に聞こえていないと思っているのか。どっちかはわからないが、言いたい放題だ。そのせいで京佳にとって今の教室は、かなり居心地が悪い。

 

(はぁ…明日から学校に来るのは時間ギリギリにするか?でもそれだと、遅刻するかもしれないしなぁ…)

 

 京佳がそうやって悩んでいた時、

 

「おい」

 

「「!?」」

 

 教室の窓際の席にいた、丸い帽子を被っている女子が口を開いた。

 

「さっきからぶつくさうるせぇんだよ。口閉じてろ。ぶっ殺すぞ」

 

「「ご、ごめんなさい!!」」

 

 鋭い目つきでそんな事を言われたら誰だってびびる。結果、先程まで京佳の事を色々話していた女子2人は頭を下げてその場から退散。

 そして自分たちの席に座り、口を閉じるのだった。

 

(もしかして、注意したのか?)

 

 先程からずっと京佳の事をヒソヒソと話していたが、誰もその事について何も言わなかった。

 しかし唯一、丸い帽子を被っている女生徒だけは口を開いた。京佳はそれが、先程の2人の事を注意したのではと思う。ふと帽子を被った女生徒を見てみると、イラついているような顔をして、窓の外を見ている。

 

(あの子は……誰だっけ?)

 

 残念ながら未だにぼっち状態が続いている京佳は、そのクラスメイトが誰か覚えていなかった。

 そして意識を切り変えて、予習を再開するのだった。

 

 

 

 

 

 その日、京佳のクラスは体育の授業があった。男子はペアを組んでキャッチボール。女子はペアを組んでバドミントン。

 そう、ペアだ。

 

「はい。それでは2人組を作って下さい」

 

(最悪だ…)

 

 2人組作ってー。

 それは一定の人間にとっての悪夢のような言葉。自分だけペアが作れずにウロウロしてしまい、最終的に教師とペアを組んだりする事があるトラウマ。これで2人組が作れない人は色々いるが、その理由は単純に友達がいない場合が殆どである。

 そして京佳には、現状白銀以外の友達がいない。更に周りにいたクラスメイト達も、京佳からまるで蜘蛛の子を散らすかの如く距離を取っていく。

 結果、京佳は見事に余ってしまった。

 

(この歳で先生と組むのはなぁ…仕方が無い。1人でバドミントンやってみよう。確かお手玉とかいうやつがあったよな?)

 

 恵美がいれば話は変わるのだが、残念ながら彼女はここにはいない。そして1人で寂しくバドミントンをやってみようとした時、

 

「おい」

 

「え?」

 

 後ろから声をかけられた。

 

「お前どーせ相手いねーんだろ?だったら私と組め」

 

 京佳に声をかけてきてのは、朝クラスで京佳の事をヒソヒソと話していた女生徒たちを脅していた、帽子を被った女生徒だった。

 

「あ、ああ。いいけど」

 

「じゃああっち行くぞ」

 

 まさか誰かに誘われるとは思っていなかった京佳は面食らったが、直ぐに目の前の帽子を被った女生徒とペアを組む事にした。

 

「ねぇ。やっぱり…」

 

「そうだよね…じゃないとペアなんて組まないよね…」

 

 そしてそれを見ていた周りの生徒たちは、朝の時と同じように何やら話していた。

 

「なんか言ったか?」

 

「「い、いえ!!」」

 

「ちっ!」

 

 それを帽子を被った女生徒は一言で黙らせる。

 

(随分凄みがある子だな…)

 

 そして京佳は、そんな女生徒を見てそんな事を思っていた。

 

 

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

 無言。

 京佳と帽子を被った女生徒は、ただひたすら無言でバドミントンをしていた。周りの女生徒たちは楽しく会話をしながらバドミントンをしているのに、この2人には一切の会話が無い。かなり特殊な光景に見える。

 

「えっと、ちょっといいかな?」

 

 沈黙に耐えきれずに、京佳が口を開く。

 

「んだよ」

 

「いや、どうして私をペアに誘ったのかなーっと思って…」

 

 それは純粋な疑問だった。未だにクラスメイトから怖がられている京佳。そんな自分をどうしてペアに誘ったのかがどうしても気になった。

 

「あ?んなもんお前も私と同じで1人だったから誘っただけだ。他意はねーよ」

 

「そ、そうか…」

 

 京佳の質問に答える女生徒。それを聞いた京佳は、少しだけ親近感を覚えた。そしてこの際にと思い、京佳は更に質問をする。

 

「ところで、名前はなんだっけ?」

 

「は?お前自分のクラスの奴の名前覚えてねーのか?もう1月は過ぎてるんだぞ?」

 

「す、すまない…」

 

「うぜぇ、謝んな……龍珠だ」

 

「そうか。よろしく、龍珠さん。あ、因みに私は」

 

「知ってるから言わなくていい」

 

「……すまない」

 

「だから謝んな」

 

 何だかんだ会話をしながらバドミントンをする2人。その間も、ラリーは続いている。

 

「お前身長いくつあんの?」

 

「……今は178cmだ」

 

「マジかよ。随分でけーな」」

 

「身長の事はあまり言わないでくれ。気にしてるんだよ」

 

「いいじゃねーか。それだけ高いと大抵の奴ら見下ろせるだろ。気分いいんじゃねーのか?羨ましいわ」

 

「そんな訳ないだろう。普通にコンプレックスだよ」

 

 遂にラリーが100回を超えようとしていた。それを見て、周りにいた何人かの女生徒たちが驚いている。

 

「はーい。それではそろそろ時間なので片付けましょうー」

 

「……だってさ」

 

「ああ」

 

 体育教師の言葉を聞いて、ラリーが止む。そして片付けを始めた。

 

「おい立花」

 

「何だ?」

 

「お前、どうせ1人だろ?だったらこれから体育の時間だけは私とペア組め。因みに異議は受け付けない」

 

「実質命令じゃないか。まぁ、いいけど」

 

「じゃ決まりな?」

 

 そう言うと、龍珠はすたすたと歩き出す。

 

(いや、これはチャンスじゃないか?)

 

 そして京佳はある考えが浮かんだ。

 

(未だに白銀以外に友達がいないんだ。だったら、この期に龍珠さんと友達になれるかもしれないじゃないか!)

 

 数日前、かぐやの血溜池での行動を見た京佳は、少しずつでもいいから、勇気を出して自分から皆に話しかけてみようと決めている。

 しかし、一朝一夕でそれが出来る筈もなく、未だにクラスではぼっちのまま。だが、今龍珠から体育の時間限定ではあるがペアを組むという約束を取り付けられた。ならばこの期に先ずは龍珠と仲良くなり、それからクラスに打ち解けていけばいいと考える。

 

(よし、次の体育の時はもっと話してみよう)

 

 出来れば教室に戻って話かけてみたいのだが、それはせめてあと1回体育の授業をしてからでいいと京佳は思った。ようはヘタれたのだ。

 そして次の体育の授業は3日後。それまでに、何とか今日より会話が弾むよう努力しようと決めるのだった。

 

 

 

 

 

「さて、紹介するね。今日から3日間、期間限定で生徒会で働く事になった龍珠桃さんだ。2人共、同じ1年生だからよろしくしてあげてね」

 

 しかしその日の放課後の生徒会室で、想像よりずっと早く龍珠と再会する事となったのだ。

 

「っそが…」

 

「いい加減観念したら?」

 

 そして当の龍珠はかなり苛立っている。誰が見ても相当機嫌が悪い。今この瞬間も貧乏ゆすりをしている。

 

「えーっと、初めまして。俺は、白銀御行って言う…」

 

「ああ?」

 

「すみませんでした」

 

 自己紹介をしようとした白銀だったが、龍珠の目力にやられてビビる。

 

「それで会長、3日間だけっていうのは?」

 

「頑なに入りたくないって言うからね。だから、2人と同じように先ずは体験させてみようと思ったんだ。そうすれば気が変わるかもしれないし」

 

「成程。しかし流石ですね。一体どうやって?」

 

「ちょっとお話をしただけだよ」

 

(何話したんだろうこの人…)

 

 どうみても難題そうな彼女をどうやって説得したかわからないが、そういう事が出来てしまうあたり、やはりこの生徒会長は凄い人だと京佳は再認識する。

 

「にしても、桃って名前なのか…」

 

「おいこら、名前は呼ぶんじゃねぇ。ぶっ殺すぞ」

 

「あー、ごめん」

 

 凄みのある子だが、名前は随分可愛らしい。だが当の本人はどうもそれが気に入らない様子。誰しも触れて欲しくない部分はあるのだろうと察した京佳は、龍珠が許可出さない限り名前で呼ぶのはやめる事にした。

 

「とりあえず、龍珠さんには会計をやってもらおうかな。はいこれよろしく」

 

「何で態々そんな面倒くさい役職を私が…」

 

 文句を言いつつも、龍珠は生徒会長から資料を受け取り会計の仕事を始める。

 

((あ。この子根は真面目だな…))

 

 それを見ていた白銀と京佳は全く同じ事を思った。

 

 

 

 生徒会の仕事が終わり、白銀はバイトへ。龍珠も足早に帰った後の生徒会室。京佳も帰ろうとしていた時、

 

「立花さん。少しだけいいかな?」

 

「え?」

 

 京佳は生徒会長に呼び止められた。

 

「何でしょうか?」

 

「うん。ちょっと頼み事があってね」

 

「頼み事?」

 

 どうやら何か頼みたいらしい。それも結構重要そうな事を。生徒会長の顔がそう語っている。

 

「こういう事言うのは少し違うかもなんだけど、どうか龍珠さんと仲良くしてくれないかな?」

 

 生徒会長が京佳に頼んだ事。それは龍珠との仲について。

 

「それは、元々そうするつもりでしたけど、どうして態々?」

 

 元より体育の授業での出来事により、京佳は先ずは龍珠と仲良くなろうと決めていた。しかし生徒会長は、態々念を押す形でそう言う。

 

「いや何、立花さんは龍珠さんと同じ生徒会で同じクラスの子でしょう?そういう子と仲良くなっていれば、後々良い事があるからね。何事も人間関係は大事だし。それに立花さんも、白銀くん以外の友達作りたいんでしょ?」

 

「ま、まぁ…」

 

 ぼっちの京佳に100のダメージが入った。

 

「そういう訳だから、どうかよろしくね」

 

 ニッコリとどこか胡散臭い笑顔でお願いする生徒会長。

 

「わかりました。さっきも言いましたが、元々そのつもりでしたので」

 

「それはよかった。それじゃ、気を付けて帰ってね?」

 

「はい。ではお先に失礼します」

 

 そう言うと、京佳は生徒会室から出て帰路に着く。

 

(とりあえず明日、お昼の誘ってみよう…)

 

 そして明日、さっそく龍珠をお昼に誘おうと決めるのだった。

 

「さてさて。これであの子にも、何か良い変化があればいいけど」

 

 一方生徒会室に1人残った生徒会長は、小さな声でぽつりとそんな事を言う。それが何を意味しているかは、彼にしかわからない。

 

 

 

 

 

 翌日 昼休み

 

「龍珠さん。一緒にお昼でもどうかな?」

 

「は?」

 

 昼休みを迎えてすぐ、京佳は龍珠をお昼に誘ってみた。そして誘われた龍珠は面食らい、周りのクラスメイト達は固まっていた。

 

「……ちょっとこい」

 

「……?」

 

 龍珠は京佳の腕を掴み、教室から出ていく。

 

「ね、ねぇ…あれってさ…」

 

「やっぱり、関係者だったんだ…」

 

「そうだよね。じゃないと、あの龍珠さんをお昼に誘うなんてしないし…」

 

「こえぇ…なんで俺このクラスなんだよ…」

 

「マジそれな。クラス替えしてほしいわ…」

 

 教室に残されたクラスメイト達は、口々にそんな事を言う。これを龍珠本人が聞いたら間違いなくキレるだろう。鬼の居ぬ間になんとやらである。

 

 

 

「てめぇ、何のつもりだ?」

 

「いや、だから一緒にお昼をと」

 

「意味わからねぇ。何で私を態々誘う?何が目的だ?あぁ?」

 

 場面は変わって屋上。そこには龍珠と京佳が対峙していた。龍珠は明らかに不機嫌な顔をしており、京佳に食ってかかる。今にも手が出そうな雰囲気だ。

 

「目的か。白状すると、龍珠さんと仲良くなりたいだけだよ」

 

「は?何だそれ?」

 

「私達は同じクラスで、そして一緒に生徒会に所属しているだろ?それに昨日一緒に体育でペアを組んだじゃないか。だったら、この期に仲良くなりたいと思うのはある意味当然だと思うが…」

 

 素直に自分の気持ちは言う京佳。だが龍珠はそれを聞いて顔をしかめる。

 

「ざけんな。信用できるか」

 

「いや信用とか言われても…」

 

 ゲームで言えば好感度が足りていない状態。よって龍珠は京佳の言葉が信用できなかった。

 

「そうか。だったら教えてやる。私はヤクザの娘だ」

 

 京佳の事が信用できない龍珠は、自分の事を京佳に話す。

 

「しかもただのヤクザの娘じゃねぇ。私の父親はヤクザの組長だ。おかげで私は周りから勝手に怖がられている。そんな私と仲良くなりたい?一緒にお昼を食べたい?信用できねーんだよ。絶対に何か裏があるだろう。そもそも何でペア組んだだけで仲良くしないといけないだよ。あと昨日ペア組んだのはお前以外誰も余ってなかったからだ。変な勘違いすんじゃねぇ」

 

 龍珠桃は、広域指定暴力団『龍珠組』組長の娘である。そのせいで昔から、本当に色んな事を言われてきた。

 

 『あの子を怒らせると大変な目に合わされる』

 『父親に告げ口されたら殺される』

 『あの子自身も何人か手にかけている』

 

 そんな事を沢山言われてきた。更にそれだけじゃなく、それまで仲良くしていた人も、龍珠がヤクザの娘だと知ったら、直ぐに離れていった。

 そういう経験があったせいで、龍珠は中等部の頃からずっと1人で過ごすようにしている。1人だらば、傷つく事が無いからだ。そんな経緯があったからこそ、龍珠は京佳の言葉が信用できない。

 

(こいつもどーせ、私がヤクザの娘って知ったらここから逃げだすだろ)

 

 昔みたいに、最初は何も知らなかったから仲良くしていたのに、父親がヤクザと知ったら即離れていく。もうそんなのは嫌だった。

 だから、こうして京佳に自分の事を話したのだ。どうせ傷つくなら、早い方がいいから。

 

(今度から、体育休むか)

 

 同時にこうなった以上、もう2度と京佳とペア組む事はないと思い、体育をサボろうとも考える。

 

「えっと、それがどうかしたのか?」

 

「は?」

 

 しかし龍珠の予想とは裏腹に、京佳はそこから逃げ出す事などなかった。

 

「聞いてたか?私の父親は…」

 

「聞いてたさ。でもそれがどうしたんだ?」

 

「……」

 

 龍珠、固まる。こんな反応されたのは初めてだ。

 

「そりゃ驚きはしたけど、だからといって君を怖がる事は無いぞ?そもそも本当に危ない人だったら、体育の時にペア組もうなんて言わないだろう」

 

「な……」

 

 京佳の言葉を聞いて目を見開く龍珠。今までそんな事、この学校で言われた事などなかった。

 一方で京佳も、親が〇〇だからと言って差別などするつもりは無い。そもそも本当にヤバイ人は、大人しく体育の授業を受ける事すら無いだろう。

 それに龍珠本人が、昨日は生徒会室で大人しく仕事をしていたのを京佳は見ているので、京佳は龍珠の事を『言葉は乱暴だが根は真面目な子』と認識している。

 しかし京佳の言葉を聞いた龍珠は、

 

「くっ…!」

 

「あ!ちょっと…!」

 

 その場から立ち去って行った。初めての出来事に混乱してしまった故の行動である。

 

「……怒らせちゃったのかな?」

 

 龍珠の心を読める訳じゃない京佳は、屋上で1人立ち尽くす。結局、その後屋上で1人でお昼を食べるのだった。

 

 因みにこの時、白銀は生徒会室で生徒会長と一緒にお昼を食べていた。そしてこの日は2人共弁当だったので、白銀は生徒会長とおかず交換をしていた。

 

 

 

 放課後、京佳は生徒会室へ向かっていた。

 

(仲良くなるって難しいな…私にも恵美くらいコミュニケーション能力があればよかったんだけど。でも大丈夫だろうか?昼休みの私との会話が原因で、もう生徒会室へ来ないとかないよな?)

 

 昼休み、京佳は龍珠と口論では無いが、やや衝突してしまい、龍珠はその場から立ち去ってしまっている。人は、何が原因で気分を損ねるかわからない。

 もしあの時の会話が原因で生徒会室へこなくなったら、生徒会長にどう詫びればいいかわからない。

 京佳がそんな事を考えながら歩いていると、

 

「あの、ちょっといいですか?」

 

「ん?」

 

 後ろから声をかけられた。京佳が振り向くと、そこには昨日京佳の事を教室でひそひそと話していたクラスメイトの女子2人がいた。

 

「えっと、何か用かな?」

 

 突然話しかけられて少し動揺する京佳。しかしそれを悟られるにはなんか嫌だったので、自分の内心を隠すためにもなるべく丁寧に要件を聞く。

 

「な、何で、龍珠さんに話しかけるんですか?」

 

「は?」

 

 そして目の前の女生徒からそんな事を聞かれ、京佳は面食らう。同時に、冷水をかけられたような気分にもなった。

 

「だ、だって、あの人ヤクザの娘なんですよ!?そんな怖い人に、どうして話しかける事が出来るんですか!?」

 

「そうですよ!もし何か機嫌を損ねたら、何されるかわからないのに!!」

 

「それに、噂では昔気に入らなかった同級生を海外に売り飛ばしたって言いますし!」

 

「他にもいっぱい噂があるんですよ!?なのにどうして!?」

 

 2人は何処か怯えながら京佳に言う。それを黙って聞いていた京佳は、

 

 

 

「君たちは、随分酷い事を言うんだな」

 

「「え?」」

 

 

 

 少しムっとした。

 

「どうして噂で人を判断するんだ?君達2人は、龍珠さんと1度でも話した事があるのか?」

 

「あ、ありませんよ!」

 

「そうです!だって、怖いし…」

 

「だったら猶更だろう。どうしてそうやって噂で人を判断するんだ?その人と直接話した事も無いのに」

 

「そ、それは…」

 

「そもそも、何故いきなり私にそんな事を言うんだ?はっきり言ってもの凄くびっくりしたぞ」

 

 京佳はそこがわからかった。ただのクラスメイト。それも昨日、自分の事をヒソヒソと話していた2人だ。そんな2人がどうして急にこんな事を言い出すのか。本当に謎である。

 

「「……」」

 

 京佳の質問に答えられず、2人は俯いて黙ってしまう。

 

 京佳がここまで言うには理由がある。そもそも自分自身がそういう目にあってきたからだ。元から身長で色々言われてはきたが、最近は左目にしている眼帯のせいで特に言われている。

 中学時代、仲が良かった友人の幾人かも、京佳が事件後こうなってからは、距離を置く者が出てきた。更にその後の学校生活で、その物騒な見た目のせいで色んな噂を流されたのだ。

 そして京佳は、そういった噂を言ったり、噂を鵜呑みしたりする人との関係を断ってきた。そういう人達は、絶対に後に面倒な事になるという確信があったから。

 だからこそ、京佳は見た目で人を判断しないし、噂は噂で片付ける。

 

「兎に角、私は噂で人を判断するのは嫌いなんだ。だから、もう2度とこういう事はやめてくれ。あと噂を鵜呑みにするのもやめた方がいいぞ。じゃないと、何時の日か取り返しのつかない事になるから」

 

 そう言い残すと、京佳はその場から立ち去ってしまう。そしてそのまま、生徒会室へと向かうのだった。

 

 

 

 廊下に残された女生徒2人。するとそこに龍珠が現れる。

 

「あの、龍珠さん…その」

 

「悪かった」

 

「「え?」」

 

 そして2人に対して頭を下げる。実はこの2人、龍珠に半ば脅されて京佳にあんな事を言ったのだ。龍珠が怖い2人は、大人しくそれに従っていたのだが、まさかその龍珠から謝られるとは思っておらず驚く。

 

「安心しろ。もう2度とこんな事させない。本当に悪かった。じゃあな」

 

 そう言うと、龍珠も京佳と同じように生徒会室へ向かうのだった。そして残された2人は、ただ茫然と龍珠の背中を見る事しか出来なかった。

 

「何か、2人共、思ってたのと、違ったね…」

 

「うん…」

 

 同時に女生徒2人は、京佳と龍珠に対する認識を変えるのだった。

 

 

 

「……」

 

 龍珠は無言で廊下を歩いていた。

 どうして龍珠が2人にあんな事を命令したのかというと、京佳の本心を探る為だ。昼休みのあと、龍珠は京佳の事である可能性を考えた。

 

 それは京佳が『誰とでも仲良くしている事をアピールする為に自分に声をかけた』という自分の評価を上げる事を考えていたという可能性だった。

 

 その可能性を考えた龍珠は昨日の2人を半ば脅しながら京佳に話けるよう命令。そこで京佳の本心を聞き出し、もし自分の思った通りなら生徒会室で殴ってやろうと決めていた。

 しかしそんな事は全くなかった。それどころか、京佳は噂で龍珠を判断していた2人の女生徒に説教する始末。

 

(あれは、嘘なんかじゃなかった…)

 

 龍珠は父親から、相手の嘘を見分け方のコツを教わっている。それ故、相手が嘘を言っているかどうか、凡そで分かるようになっていた。でも昼休みと先ほどの京佳は、間違いなく嘘を言っていなかった。

 

(信用、してもいいのかな…?)

 

 もう誰も信用したくないと思っていたのに、京佳の言葉で心が揺れ動く龍珠。そして無言のまま、生徒会室へ着くのだった。

 

 

 

 

 

「それで龍珠さん。今日で2日目が終った訳だけど、どうするのかな?」

 

「……」

 

 生徒会室で会計の仕事を終えた龍珠に話しかける生徒会長。しかし龍珠は無言だ。そんな2人を見守る白銀と京佳。

 そしてたっぷり考えた龍珠は、決断する。

 

「ちっ!毎日は来ねーぞ」

 

「ああ。気が向いた時、それとどうしても来て欲しい時だけでいいよ」

 

 遂に龍珠は折れた。これはつまり、龍珠が正式に生徒会に入る事を意味している。

 

「それと、立花」

 

「え?何だ?」

 

 突然京佳に話しかける龍珠。そして、

 

「昼休みは悪かった。本当ごめん」

 

 これまた突然京佳に頭を下げたのだった。龍珠はその性格上、相手になめられたら終わりと思っているが、筋は必ず通す。昼休みのあれは明らかに自分が悪い。だからしっかり謝る。

 

「いや。私もいきなりあんな事言ったからお互い様だよ、龍珠さん」

 

「さんはいらない。呼び捨てでいい」

 

「そうか。なら、これからよろしく、龍珠」

 

「ああ」

 

 こうして2人は親しくなった。そしてその後、何時の間にかお互い高等部で初めての同性の友達となるのであった。

 

「ところで龍数、その座り方は、色々見えちゃうと思うんだが…」

 

「あ?別に気にしてねーよ」

 

 京佳が注意する。何故なら龍珠は今、片足をソファに上げている。秀知院の制服を身に纏っているから、当然スカートを履いている。

 結果、龍珠のスカートは捲れてしまっているのだ。実際、龍珠の太腿はその大部分が見えてしまっている。あと少しで下着が見えそうなくらいに。

 流石に女の子としてはしたないので京佳は注意したが、本人は特に気にしないし改める事も無いみたいだ。

 

「おい白銀、てめぇ何さっきからチラチラ見てんだ?」

 

「み、み、み、見てねーし!?」

 

「その反応が答えだろ。童貞かよ」

 

「白銀…」

 

「待て立花!マジで違うから!本当に見えてはないから!!」

 

「それってつまり見てはいたんじゃ…?」

 

「……黙秘します」

 

 そして白銀は口を閉じて、黙々と資料作成をするのだった。

 

 

 

 

 

「おい立花。飯行くぞ」

 

「ああ、いいよ」

 

 翌日の昼休み。そこには、一緒に昼食を食べに行く2人がいた。教室を出るとき、またヒソヒソと話しているクラスメイトが何人かいたが、2人共それを全く気にせず教室を出ていくのだった。

 

 

 

 

 




 藤原や石上や伊井野がいないからワチャワチャしたお話が書けない。これだと過去編は基本シリアスになるかもしれない。何とかしてワチャワチャしたお話書きたいけど、この生徒会メンバーじゃねぇ…難しい。

 因みに生徒会長は、秀知院VIPの目線も欲しいから、それとずっと1人なのを知っていたから龍珠さんを誘いました。
 そして龍珠さんは、京佳さんが入学当初からその見た目で色々言われていたのを見ていたので、何となく京佳さんに親近感覚えたからペア組もうと誘ってます。

 次回もほどほどに頑張ります。

もしもかぐやが白銀にフラれたら、誰がかぐやを救えると思いますか?

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