もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・   作:ゾキラファス

123 / 197
 今年も、残り2週間も無い。早いですねぇ。


白銀御行は生徒会長

 

 

 

 

 

(眠い…ていうか気持ち悪い…)

 

 夏休みがあっという間に終わり、2学期が始まって数日、白銀は絶不調だった。寝不足で頭がぼーっとするのと同時に頭痛もする。更に目の奥がジンジンと痛み、そのせいで吐き気もする。

 普通、こうなったら直ぐに休むべきなのだが、今の白銀にそれは出来ない。何故なら、あと数日で期末テストがあるからだ。

 

(今度のテストだ。今度のテストで俺は、四宮に勝ってみせないと…!)

 

 白銀の目標の1つ。それは、テストでかぐやに勝つこと。その目標の為に、夏休み中の白銀は死ぬ気で勉強をした。平均睡眠時間が3時間と聞けば、その必死さがわかるだろう。

 だがこれほどの努力をしないと、秀知院のテストで1位になんてなれない。1位になれないと、かぐやに認識されない。そんなのは嫌だ。

 だから白銀は頑張った。人生で1番っていうくらい頑張った。

 

(あ、やばい…少し眩暈が…)

 

 だが流石に限界が近い。人間は、極度の睡眠不足になると体に異常を起こすのだ。

治す為には寝ないといけない。

 でもあと数日でテスト。ここで踏ん張らないと、テストでかぐやに勝てない。そうやってフラフラしていると、

 

「っと…白銀、大丈夫か?」

 

「え?」

 

 京佳が白銀の肩を支えながら話しかけてきた。

 

「ああ。大丈夫だ」

 

「嘘つけ。顔真っ青だぞ。ていうか目怖」

 

 白銀は何とか立つが、素人目に見ても顔色が悪い。あと目つきがヤバイ。流石にこんなの、誰でも心配する。

 

「とりあえず保健室へ行こう。1度ベットで寝た方がいい」

 

「いやそれは大丈夫だ」

 

 京佳が白銀を休ませようとするが、白銀はそれを断る。

 

「ここで寝る時間なんて無いんだ。あとほんの数日頑張らないといけなんだから」

 

「そこまで頑張る必要があるのか?体を壊したら元も子もないぞ?」

 

「若い内に努力しておかないといけないって言うだろ?俺は今がその時なんだよ」

 

「う、うーん…」

 

 普通なら、のまま無理やりにでも白銀をベットに寝かした方が良いのだろうが、白銀の必死さが伝わったのか、京佳もそれは躊躇する。

 

「兎に角、俺は大丈夫だ。コーヒー飲んだら治るし」

 

「それ絶対に治ってないから。麻痺してるだけだから」

 

 カフェインの過剰摂取で、白銀は危ない方向へ行きそうになっていた。このままだといずれ、カフェイン中毒で死ぬかもしれない。

 そして歩き出そうとしたその時、

 

「ぶ!?」

 

「白銀ーーー!?」

 

 白銀は足を躓き、廊下に顔から転んだ。

 

「大丈夫か白銀!?」

 

「だ、大丈夫だ…そんな事より早く問題集を…」

 

「いや流石にダメだ!悪いがこのまま保健室連れていくぞ!」

 

「ま、待って…大丈夫…本当に大丈夫だから…」

 

「ダメだ!せめて湿布くらい張らせてくれ!」

 

 そして京佳は、白銀を無理矢理保健室へと連れていくのだった。

 

 

 

 保健室

 

「全く。だから言ったじゃないか」

 

「すまん…」

 

 保険医に許可を取り、京佳は白銀の頬に湿布を張る。とりあえずはこれで大丈夫だ。

 

「白銀。やっぱり少し寝た方がいいって」

 

「それは本当にいい。それにもうずっと徹夜してるから、今寝たら俺絶対に朝まで起きないし」

 

「……白銀。今何徹目だ?」

 

「……7徹?」

 

「寝ろ。死ぬぞ」

 

 流石に酷い。いくらテストで1位になりたいから必死で努力しているとはいえ、これは酷い。

 因みに、人が寝ないで過ごした最長期間は11日らしい。なおその人は、7日目あたりから幻覚をみていたとか。

 

「本当に大丈夫だ。家でコーヒー飲んだら眠気は消えるし」

 

「でもだな…」

 

「心配してくれるのは本当にありがたいって思ってるよ。でも、ここが本当に頑張りところなんだ。だから、寝る訳にはいかない」

 

 白銀は目つきを一瞬だけキリっとさせ、奮起する。

 

「はぁ、わかったよ。でもテストが終わったら、しっかり寝るんだぞ」

 

「それは勿論だ」

 

 まるで母親みたいな事を言いながらも、京佳は白銀をこれ以上休ませようとするのをやめる。ここまで覚悟ガン決まりなのだ。これを邪魔するのは白銀に悪い。

 

「そうだ。今渡しておこう」

 

「え?何を?」

 

 何かを思い出したようで、京佳は鞄からある物を取り出した。

 

「はい。誕生日おめでとう白銀」

 

「……え?」

 

「あれ?もしかして、間違えてるか?確か今日だったと思ったんだが…」

 

 それは綺麗に梱包された紙袋だった。そして京佳は、たった今『誕生日おめでとう』と言った。

 そう。これは白銀への誕生日プレゼントなのだ。

 

「……」

 

 だが白銀は何も言わない。もしかして、本当に日にちを間違えたのかと京佳が不安に思っていると、

 

「そうか…俺今日誕生日だったのか…」

 

「え?」

 

 白銀は思い出したかのように呟いた。

 

「忘れていたのか?」

 

「いやだって、誕生日なんて、ここ数年碌に祝ってないし…」

 

 白銀家は貧乏であるため、誕生日を祝うなんてお金のかかる事しない。というか出来ない。なので白銀は、自分の誕生日を完璧に忘れていたのだ。

 

「えっと、受け取っていいのか?」

 

「勿論。だってプレゼントだし」

 

「じゃ、じゃあ遠慮なく」

 

 恐る恐る京佳からの、誕生日プレゼントを受け取る白銀。そしてゆっくり紙袋を開ける。

 

「これは、アイマスク?」

 

「レンジで温めて使うホットアイマスクだよ。この前、目が疲れているって言っていたから」

 

 入っていたのはホットアイマスクだった。京佳曰く、何度も使えるエコな品らしい。

 

「……」

 

「白銀?」

 

 白銀、固まる。ホットアイマスクを持ったまま、固まる。

 

「もしかして迷惑だったかな?だったら捨ててくれて構わないよ?」

 

 京佳はそんな白銀を見て、プレゼントが気に入らなかったからだと思ってしまう。

 

「マジで嬉しい…」

 

「え?」

 

「いやマジで嬉しい…!本当にありがとう立花…!」

 

「え?泣いてる?」

 

 しかし白銀は、本気で嬉しがっていた。泣きそうな程、嬉しがっていた。

 

「さっきも言ったけど、俺ほんとに何年も誕生日何て祝ってなくてさ…だから、これ本当に嬉しいんだ…マジでありがとう立花…」

 

「え、えっと、嬉しいなら、いいんだけど…」

 

 流石に予想外の反応だったので、京佳もビビる。そして白銀は決めた。このホットアイマスクは大事に使おうと。

 

「っと悪い。そろそろ時間だから俺帰るよ。立花。プレゼント、本当にありがとう」

 

「あ、ああ…」

 

 白銀は受け取ったプレゼントを再び紙袋に入れると、足早に帰宅した。

 

「まぁ、嬉しいならいっか」

 

 そして京佳も、本人があれだけ嬉しがっているのならいいと思い、帰宅するのだった。

 

「ん?」

 

 だがその途中、ある人物が目に留また。

 

 

 

「ふぃ~。重くてまいっちゃいますねこれ」

 

 部室棟近くの廊下。頭に黒いリボンを付けたピンク髪の女生徒が大きな箱を2つ、両手で持って歩いていた。箱の中には、彼女が所属しているTG部で使う新しいゲーム。この前顧問にお願いして購入したものだ。

 しかし、思っていたより重い。おかげで何度も休憩しながら、TG部の部室へと向かう羽目になっている。

 

「手伝おうか?」

 

「へ?」

 

「いや、重そうにしていたから、それを持つの手伝おうかと言ったんだが…」

 

 そんな彼女を見かねた京佳が、荷物を持とうかと尋ねる。しかし内心は不安な京佳。なんせ自分の見た目がこれだ。これまでも初対面の人にはほぼ全員怖がられてきている。

 心配で声をかけたものの、この子も怖がって逃げてしまうかもしれないと思ったが、もう遅い。そうやって京佳が不安がっていると、

 

「いいんですか!?ならおねがいします~!!」

 

 ピンク髪の女生徒は、笑顔で京佳の厚意に甘える事にした。

 

「え…?あ、ああ。なら上の方の箱を持つよ」

 

「ありがとうございます!」

 

 思いがけない反応に面食らった京佳だったが、直ぐに女生徒が持っている箱のひとつを

持つ。

 

「これは、どこに運べば?」

 

「TG部の部室です」

 

「わかったよ」

 

「それにしても身長凄いですね~。何cmあるんですか~?」

 

「この前計ったら179cmあった」

 

「なんと!もしやバレー部か女子バスケ部の方ですか!?それならその身長も納得です!」

 

「いや、部活には所属していないよ。生徒会の仕事が忙しいし」

 

「おお!生徒会に所属しているんですねか!?凄いですね!!」

 

 そして2人は会話をしながら並んで歩き出す。話しかけるのは、もっぱらピンク髪の女生徒の方だが。

 しかし京佳は別に迷惑に思っていない。むしろ、この会話を楽しんでいた。白銀とも龍珠とも違うタイプの彼女に、新鮮さを感じたからである。

 

「あ、ここが部室ですよ~」

 

 あっという間にTG部の部室へ到着する。そしてピンク髪の女生徒は、器用に片手で扉を開け、手にしていた箱をテーブルの上に置く。京佳も同じように、持っていた箱をテーブルに置いた。

 

「ありがとうございました~。本当に助かりましたよ~」

 

「構わないよ。それじゃ、私はこれで」

 

 長居は無用と思い、京佳はその場からそそくさと出ていく。そもそも出会って数分だ。そんな自分が、あまりここに長居するのはよくないだろう。

 部室に残ったのは、購入した新しいゲームの入った箱2つと、ピンク髪の女生徒のみ。

 

「いやー、初めて話しましたけど、良い人ですねー。見た目は少しおっかないですけど」

 

 そして彼女の、京佳に対する好感度が上がったのだった。

 

 

 

 

 

「四宮、今度の期末テストで俺と勝負しろ。もしも俺が負けたら、何でも1つ言う事を聞いてやる」

 

 別の日の放課後、白銀は廊下に偶然いたかぐやにそう告げる。

 

「いきなり何ですか?というか誰ですかあなたは。突然そんな事を言われても知りません。勝負がしたいなら別の人とでも勝手にしていて下さい」

 

 そんな白銀を、かぐやは怪訝な顔をして見ていた。でも仕方が無い。突然、名前も知らない男から勝負をしかけられたのだ。そりゃそうもなる。

 そしてそのような訳のわからない勝負に付き合う義理も無い。なのでかぐやは、白銀を無視して行こうとしたのだが、

 

「お前負けるのが怖いのか?とんだ臆病者だな」

 

「……は?」

 

 白銀の煽りに反応し、足を止めた。

 

「不調法者ね……名を名乗りなさい」

 

 先程とは違い、今度は静かに怒った顔をして、かぐやは白銀を睨め付けながら名前を尋ねる。

 

「生徒会庶務、白銀御行」

 

「白銀さんですか。その勝負受けてあげましょう。ただし、貴方が負けたら本当に何でも言いますよ?いいですね?」

 

「ああ、こっちこそ受けて立つ」

 

「それと、もしも貴方が勝利したのなら、逆に私が貴方の願いを何でも1つ聞いてあげます。それでお互いフェアになりますし」

 

「そうか。ならその言葉を忘れるなよ」

 

「勿論です。でも、あとで泣いて謝っても遅いですからね」

 

 普段、こういった勝負はしないかぐや。例え勝負をするにしても『敗北も処世術のひとつ』とかぐやは考えているため、本気で勝負をする事など無い。

 だが今回は違う。ここまで大げさに喧嘩、もとい勝負を売られたのだ。これを買わない、もしくは受けないなんてかぐやのプライドが許さない。なので今回のテスト、かぐやは珍しく本気も本気で挑むと決めた。

 

(叩き潰してあげますよ…)

 

 こうしてかぐやは、明日の期末テストに全力で挑むのだった。

 

 

 

 数日後。

 廊下には、1年生の期末テスト成績上位者50名の名前が掲示板に張り出されていた。何時もなら特に騒ぐような事でもない。だって上位陣は大体同じ名前しかいないのだから。

 しかし、今回は違った。

 

「うっそ……」

 

 1位 白銀御行  四九二点

 

 2位 四宮かぐや 四八九点

 

 そこにはあの四宮かぐやを2位に追いやり、1位に名前を刻む生徒がいたのだから。

 

「四宮さんが、2位?」

 

「そんな…!一体どういう事!?」

 

「誰だあの1位の白銀って奴?」

 

「さぁ?私は聞いた事ないけど…」

 

「俺知ってる!確か生徒会に所属している奴だ!」

 

 周りの生徒達も同様する。今まで1位を独占してきたかぐや。それが突然、名前も知らない生徒に負けたのだから。

 

「そん…な…」

 

 そして、当のかぐや本人は唖然としていた。というより、かなり大きなショックを受けていた。慢心も油断もしていない。文字通り全力で挑んだ今回のテスト。それなのに、負けた。

 

「っつ……!!」

 

 これは敗北だ。四宮かぐやにとって、真の意味での敗北だ。こんな結果、プライドの高いかぐやには到底受け入れられない。かぐやはつい、手に力を入れて握りこぶしを作る。それこそ、血がにじみ出るくらいに。

 

「おめでとう白銀」

 

「ありがとう立花」

 

「それにしても、本当に凄いな。学年1位だなんて」

 

「ま、俺も本気を出せばこんもんだよ」

 

「それはそうと、今日はしっかりと寝るんだぞ」

 

「勿論だ。9時には寝とくよ」

 

 そんなかぐやの心情など知らない白銀と京佳。2人はテスト結果を話ながらその場を立ち去ろうとしていた。京佳は素直に白銀の成績に関心し、白銀はかなりほっとしていた。

 もしこれでかぐやに負けていたら、目も当てられなかったからである。因みに京佳は今回19位だ。前回より少し下がってしまっている。

 

「あれが、白銀?」

 

「初めて見るな。もしかして混院か?」

 

「いやだとしても凄いぞこれ。四宮さん以外が1位になるなんて初めてじゃないのか?」

 

「だよな。あの白銀って奴すげーよ」

 

 周りにいた生徒達も、うっすら聞こえた会話から白銀が誰であるかを把握。殆どが中等部、もしくは初等部からエスカレーター式で高等部へ進学している生徒達にとって、白銀御行なんて見覚えが無い。恐らくは高等部からの外部入学、混院の生徒だろうとあたりをつけた。

 だがそんな事より、その白銀があの四宮かぐやに勝利した事の方に興味をひかれる。だってとんでもない下剋上なのだ。

 そしてこの日を境に、大勢の生徒が白銀という生徒を認識するようになっていくのだった。

 

「ところでさ、さっき白銀の隣にいた女子誰だ?えらい身長高かったけど」

 

「さぁ?あの子も混院の生徒なんじゃない?」

 

「つーか何だよあの眼帯。こっわ…」

 

「あ、私知ってる。C組の立花さんって子だよ」

 

「確か、龍珠さんと仲が良いんだっけ?」

 

「え?マジで?じゃあ、あいつも龍珠の関係者なのか?」

 

「そうなんじゃない?だってあんなに物騒な見た目だし」

 

「うっわ、最悪じゃん。なんでこの学校にそんな危ない人が2人もいるんだよ」

 

 同時に、白銀と一緒にいた京佳も大勢の生徒に認識されるようになる。最も京佳は、既に色々と噂のある子だったので、白銀より認知度はあるのだが。今もこうして、見た目が怖い物騒な子という噂をする生徒がかなりいる。

 しかしそんな時、

 

「やめようよ」

 

『え?』

 

「人の見た目や、誰かと仲が良いからとかいうだけで、そういう事言うのやめようよ」

 

「そうだよ。私達、少し前に立花さんと話した事あるけど、すっごい良い人だったよ」

 

 そんな噂をしている生徒に、噂話を静止するよう言う者が2人現れた。その2人は以前龍珠に言われ、京佳に色々龍珠の事を悪く言っていた京佳と同じクラスの女生徒達。あれから2人は、頻度こそ多くはないが、京佳や龍珠にあいさつをするようになっていた。

 最初こそおっかなびっくりではあったが、何度もあいさつをして軽い会話をするうちに、2人が特に物騒だったり怖かったりしない人物だと理解する。

 そしてそれからというもの、噂や見た目で人を判断しないと心に決めたのだ。所詮、噂は噂でしかないから。

 

「え、えっと…」

 

「急にこんな事言ってごめん。でも、そういうの、やめよ?」

 

「いや、でもさ…」

 

 だがそれでも人の見た目は重要だ。人は見た目が7割なんていう言葉もある。いくら2人がそう言っても、簡単には判断できない。

 そんな時、

 

「そうですよ~。人をそうやって判断しちゃいけませんよ~」

 

『ふ、藤原さん!?』

 

 男女共に人気のある女生徒、藤原千花が現れた。

 

「私ついこの間、立花さんに荷物を運ぶの手伝って貰ったんですよ。もしも本当に悪い人だったら、絶対にそんな事しないと思いますよ?それに話した事も無いのに、噂だけで人を判断するのはダメですって。そんなの酷いじゃないですか」

 

「ま、まぁ…それは…」

 

「そう、だよね…」

 

 人望のある藤原に言われてしまえば、流石に反論できない。その後その場にいた者たちは、少なくとも暫くの間は白銀や京佳の事を悪く言うような事はやめたのだった。

 

 

 

 

 

 生徒会室

 

「いやー、凄いね白銀くん。まさか本当に1位を取るなんて」

 

「お前、マジですげーな。素直に褒めてやるよ」

 

「そうだな。本当におめでとう白銀」

 

「ありがとうございます」

 

「まぁ、テスト前の白銀は少し怖かったが…」

 

「「あー…」」

 

「いや、あーって…」

 

 生徒会室では、生徒会役員の3人が白銀を褒めたたえていた。学園1位。これは本当に凄い事だからだ。

 そしてなにより、あの四宮かぐやに勝利した事が凄い。龍珠ですら、嫌味のひとつもなく褒めているのがその証拠だろう。

 

「にしても、あと少しで生徒会も終わりだな」

 

「そうだな。何だかんだであっという間だったよ」

 

 龍珠の言う通り、この生徒会もあと少しで活動終了。半ば強引に生徒会に入った龍珠だが、何だかんだで活動終了までは所属していたし、仕事もしっかりとこなしていた。

 白銀と京佳も、ここでしか経験できない出来事を沢山経験できた。だが、それもあと少し。

 

「会長は、また生徒会長選挙に出るんですか?」

 

「そのつもりだよ」

 

 そしてどうやら、生徒会長は再び生徒会長をやるべく、生徒会長選挙に出馬するらしい。実際、この1年間、彼はしっかりと生徒会長の責務を果たした。対抗馬がいても、土台の信用が違うので恐らく勝負にならないだろう。

 

「会長。よろしいでしょうか?」

 

「何だい白銀くん?」

 

 だが、そんな彼に白銀は挑戦する事を決めた。

 

「1学期に俺に言っていた事、覚えていますか?」

 

「秀知院に新しい風を吹き込めるってやつかい?」

 

「その後のやつです」

 

「ああ、そっちか。勿論覚えているよ」

 

 会長が言った事。それは『四宮かぐやの隣に相応しい男』の事だ。あの時会長は『生徒会長なら相応しい』と言っている。だからこそ白銀は、それを目指した。

 

「なので生徒会長、今こそ言わせていただきます」

 

 そして今、やっとそれに手が届きそうになっている。ならば、白銀が取る行動はひとつだけ。

 

「次の生徒会長選挙で、俺は貴方に勝ってこの学校の生徒会長になってみせます」

 

 それは宣戦布告。白銀は、目の前にいる会長に勝負をしかけた。それも、生徒会長選挙という勝負を。

 

「初めて会った時は自分に自信の無い子だったのに、成長したね白銀くん」

 

 そんな白銀を見て、会長は心底感心した。あの時とは全く別人。今の白銀には、しっかりと自信が備わっている。これならば、生徒会長選挙も勝てるかもしれない。

 

「ならば僕はこう言おう。やってごらん」

 

「はい。やらせていただきます」

 

 会長も、白銀からの挑戦を受けて立つ。これはまさに、白銀が乗り越えるべき壁。これを乗り越えないと、かぐやに相応しい男になんてなれない。だからこそ、全力で挑む。

 

「おー、まるで抗争直前みてーだ」

 

「物騒な例えだな。というか抗争って本当にあるのか?」

 

「あるぞ。詳しく聞くか?」

 

「……興味はあるけどやめとくよ」

 

 そんな2人を、龍珠と京佳は紅茶を飲みながら見ていた。

 

 

 

 

 

 半月後 生徒会長選挙 当日

 

「なぁ?どっちが勝つと思う?」

 

「やっぱ会長だろ?歴代でもあそこまで仕事が出来た人いないし」

 

「だよなー。でもさ、対抗馬の白銀って子も随分凄いらしいじゃん?」

 

「そう聞いてるけど、混院だろ?そういうのはなー…」

 

 体育館には大勢の生徒が、これから行われる生徒会長選挙の為に集まっている。事前調査では、会長が7、白銀が3だった。

 そもそもが成績優秀で、1年間完璧に生徒会長の責務を果たした男と、混院でつい最近まで殆どの生徒が名前を知らなかった男である。はっきり言って、白銀がこの選挙に勝つのはかなり難しい。

 

「はーい!応援演説をまかされた、子安つばめでーす!」

 

「うおおおおお!!」

 

「きゃあああ!つばめ先輩ーーー!!」

 

 会長の陣営は応援演説が始まり、それが終わればいよいよ白銀の演説だ。そんな白銀はというと、

 

「ひゅーーー!ひゅーーー!」

 

 舞台袖で過呼吸になっていた。

 

「大丈夫か白銀?」

 

「な、何がだ!?全然大丈夫だひょ!?」

 

「落ち着け。とりあえず1度深呼吸をするんだ」

 

「今にも吐きそうな顔してんじゃねーよ」

 

 ただでさえ勝率が悪い状況なのに、こんな状態では無理だろう。おかげで龍珠は、白銀が絶対に負けると思っていた。

 でもしょうがない。だってもの凄く緊張しているから。それにこれは1発勝負。小さなミスさえ許されない。今までの人生でこれ程の大舞台なんて経験の無い白銀は、初めて経験する大舞台に緊張し、こうなっている。

 

「もうすぐ会長の応援演説が終わる。それが終わったら白銀の演説だ。今のうちに体調を整えておかないと負けるぞ」

 

「わ、わ、わ、わかっている!大丈夫!大丈夫だ!!」

 

「とてもそうは見えない」

 

「これもうダメだろ」

 

 でもこれでは演説なんて絶対に無理だ。何とかしないといけない。それも、応援演説が終わるあと数分で。

 

(ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ)

 

 白銀はパニック寸前だった。テスト直前でさえ緊張して吐きそうになるのに、今の状態はその比じゃない。せっかくここまでこれたのに、これではチャンスを棒に振ってしまう。何度も深呼吸したり掌に人と書いて飲んではおるが、一切効果が無い。

 

『以上、子安つばめさんによる応援演説でした』

 

「あ…」

 

 そして応援演説が終わる。この後はいよいよ白銀の番だ。

 

「い、いくか…!」

 

 だが白銀はガチガチに緊張しているまま。まるでブリキの人形だ。

 

「白銀」

 

「え?」

 

 そんな白銀に、京佳は自分の両手で白銀の顔を無理矢理自分の方へ向かせて話しかける。

 

「男なら、自信を持ってドンと胸を張って行ってこい!」

 

「立花の言う通りだ。ここで弱気になってんじゃ、一生お前は生徒会長になんてなれねーぞ。男を見せやがれ」

 

「……」

 

 そして龍珠と共に発破をかける。時間があるのなら、もっと良い案の思いつくのかもしれないが、既に時間が全く無い状況ではこれが限界。

 

「ああ、行ってくる」

 

 だがこれがよかった。というかこれでよかった。2人にそう言われた白銀は、すっと心が軽くなるのを感じる。一種に催眠状態なのかもしれないが、おかげで緊張が無くなった。京佳が両手を離したと同時に白銀は、今度はしっかりとした足取りで壇上へ歩き出す。

 

 

 

 壇上に上がってきた男を、かぐやは静かに見ていた。

 

『1年生、白銀御行です』

 

 彼の名前は白銀御行。かぐやをテストで初めて負かした男子生徒だ。従者である早坂愛に調べさせたところ、混院の生徒でありながら、前生徒会長直々のスカウトを受けて生徒会へ入ったらしい。

 だがそんな事どうでもいい。重要なのは、かぐやに挑発をしテスト勝負を受けさせ、そして負けたという事実。

 しかも負けた時には『何でも1つ願い事を聞く』という条件を出して。テスト後、かぐやは白銀にその事を聞きに行ったのだが、

 

『いや、今は保留で頼む。近いうちに言うから』

 

 と白銀は言い、未だに白銀の願いは聞けていない。それ以来、かぐやは白銀を個体認識するようになり、そして次にテストでは絶対に負けないと誓った。

 

(それにしても…)

 

 ふと、かぐやは壇上で演説している白銀に目をやる。

 

 自信に溢れている。

 

 テスト前に会った時も自信はあったように見えたが、今はその時よるずっと自信に溢れている。一体彼に何があったかはわからないないが、目を引かれる。実際、周りの生徒達も皆一様に白銀を見ている。

 最も、それは白銀の雰囲気や演説内容だけじゃなくて、白銀がかぐやに勝ったという事実があるからこそなのだろうが。

 

(成程。その辺の無価値な雑草生徒では無さそうですね)

 

 そんな自信溢れている白銀に、かぐやはもう少しだけ興味を持った。

 

(今朝食べた物戻しそう…)

 

 尚、今の白銀は超頑張って虚勢を張っているだけだ。内心は今にも吐きそうだったりする。

 

『以上、白銀御行君の演説でした』

 

 演説が終わった後、皆拍手をする。決して拍手喝采とはいえないが、それでも混院で無名だった生徒の立候補者の演説としてはかなり大きな拍手。

 それはまるで、ここから始まる白銀の道を祝福しているようだった。

 

 

 

 

 

「おめでとう、白銀生徒会長」

 

「ありがとうございます」

 

 結果は、白銀が僅差で勝利。まさかの大番狂わせがおき、体育館内は一時騒然となった。そして当選した白銀と、落選した前生徒会長は、生徒が帰った後の体育館で話をしていた。

 

「それじゃ、これを」

 

 前生徒会長はそう言うと、何か箱を白銀に渡す。白銀が受け取った箱を開けると、そこには金で出来た触諸。

 

「これは…」

 

「それこそ、生徒会長の証である触諸だ。今度は君がそれを付ける番だよ」

 

 そう言われ、白銀は慣れない手つきで触諸を制服に付ける。同時に感じる、触諸の重さに少し驚く。

 

「重いですね…」

 

「ま、純金で出来てるからね。でもそれだけじゃなくて、それがこの学校の生徒会長の責任と立場と歴史の重さと捉えて欲しい」

 

「責任の立場と歴史の重さ…」

 

 長い歴史のある秀知院学園生徒会。そのトップである生徒会長は、生半可な立場では無い。本当に責任ある立場なのだ。

 そして白銀は、その責任ある立場に今日立った。余程の不祥事でも起こさない限り、白銀はこれから1年間はこの立場で頑張らないといけない。

 

「白銀くん。君はこれから本当に忙しい日々を送る事になる。でも、今の君ならそれを乗り越えられると思っているよ。だから、どうか頑張りたまえ」

 

「はい!」

 

 お世話になった前生徒会長に激励され、白銀は頭を下げる。

 

「会長。この半年間、本当にお世話になりました!」

 

「どういたしまして」

 

 そして心から感謝の言葉を述べるのだった。

 

「じゃ、さっそくだけど、最初の仕事を教えておくよ」

 

「最初の仕事?生徒へのあいさつとかですか?」

 

「いいや。片付けさ」

 

「はい?」

 

「この体育館にある椅子、これを全部片づけるのが生徒会最初の仕事だよ」

 

 白銀が後ろを振り向くと、そこには数百人分の椅子。これ全部を片付ける。普通にきつい仕事だった。

 

「あ、それと役員を決めないとね。最低3人いればどうにか生徒会が仕事ができるようにはなるよ。凄くキツイけど」

 

「あ、それは大丈夫です。既に決めていますし」

 

 

 

 

 

 翌日 生徒会室

 

「では、今日から新しい生徒会を始動させてもらう」

 

「よろしくお願いします」

 

「はい~、よろしくお願いしますね~」

 

「ああ。皆よろしく」

 

 そこには、新しい生徒会であるメンバーが生徒会室に集まっていた。

 

 ――――――

 

 第67期 秀知院学園高等部生徒会

 

 生徒会長 白銀御行

 

 副会長  四宮かぐや

 

 書記   藤原千花

 

 庶務   立花京佳

 

 ――――――

 

 本当は龍珠にも入って欲しかったのだが、本人がガチで嫌そうな顔をしていたので、仕方なく諦めた。

 因みに京佳は、白銀が誘ったら『いいよ』と秒で生徒会に所属してくれた。

 

 そしてやや不服そうな顔をしているかぐや。秀知院の生徒会長には、役員を自らの判断で決める事が出来る特権があるのだが、これはあくまで相手が了承してくれないと意味が無い。

 かぐやも最初は生徒会に入るつもりなんて無かったのだが、白銀とのテスト勝負で『負けたら何でも1つ願いを聞いてあげる』という約束があった為、致し方なく所属。

 

 そう。白銀はあの時の願いを『生徒会副会長をして欲しい』という願いに使ったのだ。

 

 勿論、これはかぐやと一緒に生徒会に所属していれば、話す機会が多くなるからという欲望塗れの想いからである。

 これで白銀は、想い人とかなりの頻度一緒に居る事ができるようになった。

 

 尚、書記に任命された藤原千花については『かぐやと仲が良い友人』というのを聞き、もしかしたらかぐやの好きな物とかの話を聞けるかもと思い採用。

 

 無論、私利私欲だけでは無く、本人たちの能力も考えて採用もしているが。

 

(ここからだ。ここから俺は必ず、四宮の隣に相応しい男となってみせる!!)

 

 まだまだ生徒会長になったばかりの自分では、とてもじゃないがかぐやに釣り合わない。だからこそここから更に頑張って、誰も文句を言えないくらいの生徒会長になってみせる。そう決意を固めて、白銀の多忙な日々が始まったのだった。

 

 

 

 

 

 因みに、白銀以外女子しか所属していなかったため、1部の生徒達から『ハーレム生徒会』と言われるようになり、それを聞いた白銀はちょっとだけ優越感に浸った。

 

 

 

 

 




 やっと初期メンバー揃った。
 因みに、白銀会長の応援演説は京佳さんがやりました。でも皆、彼女の見た目のインパクトのせいで、応援演説内容殆ど耳に入っていません。

 そろそろ過去編も終わるかも。

 次回も頑張って書きたい。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。