もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・   作:ゾキラファス

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ご安心を。決して最終回ではありません。


四宮かぐやは失恋する

 

 

 

(今日は良い天気ですね。これだけ天気が良いと、何か良い事があるかもしれません)

 

 放課後、かぐやは生徒会室に続く廊下から外を見ながら歩いていた。昨日まで連日雨だったというのに本日は晴天。本当に何か幸運な事でもありそうである。

 

(藤原さんは家の用事、石上くんも用事があるといってましたし、久しぶりに今日は会長と立花さんの3人だけですか…)

 

 先ほどかぐやには、藤原と石上の両名から本日は生徒会の業務を欠席すると連絡があった。それゆえ、今日は珍しく白銀、かぐや、京佳の3人での業務となる。かぐやは出来れば白銀と2人っきりで居たかったのだが、さすがに生徒会の業務に支障が出る可能性がある為自重した。

 そしてかぐやが生徒会室の扉に手を掛けたその時―――

 

「付き合ってくれ、白銀」

 

「ああ、いいぞ」

 

 生徒会室の中からそんなセリフが聞こえた。声の主は間違いなく京佳と白銀だった。そして今の2人のセリフが意味するもの。それは告白に他ならない。

 

「……」

 

 瞬時にそれを理解したかぐやは、黙ってその場から走り去った。

 

 

 

 

 

「それで、どうしたんですか?かぐや様?」

 

「……」

 

「かぐや様ー?起きてますかー?」

 

「……」

 

「せめてなにか一言言ってください…」

 

「……」

 

 あれから自宅に戻ったかぐやは、着替えもせず、夕食も食べず、風呂にも入らず、自室のベットの上でうつ伏せになっている。流石にこれはおかしいと思った早坂が、何度もどうしてそうなったのか理由を聞いているのだが、かぐやは一切反応を示さない。そして早坂が質問を続ける事1時間、とうとうかぐやが口を開いた。

 

「……終わったのよ…」

 

「はい?」

 

「何もかも…終わったのよ…」

 

「いや本当に何があったんですか…?」

 

 しかしその声にいつものような覇気は一切ない。まるで蚊が鳴いてそうな声である。早坂は主人のあまりの弱弱しさを目の当たりしたため、本気で心配し始めた。そしてかぐやの口から衝撃の事実を聞く事となる。

 

「今日…立花さんが…会長に告白したわ…」

 

「…は?」

 

「そして会長は…その告白を受け止めたわ…」

 

「え!?ちょ!!それマジですか!?」

 

「えぇ…この耳でしっかりと聞いたもの…」

 

 かぐやから発せられる衝撃の事実に、早坂は思わず声を荒げる。それも仕方ない。早坂からみても、かぐやと白銀は両想いにしか見えていなかった。どちらかが素直になれば直ぐに恋人となるだろうと。だがその読みが外れたのだ。それも自分が最も懸念していた『立花京佳と白銀御幸が恋人になる』という最悪の結末で。

 そしてかぐやから話を聞いた早坂は理解した。つまりかぐやがこんな状態になっているのは、失恋をしているのだと。

 

「明日から…しばらく学校休もうかしら…」

 

「休んでどうするんですか?」

 

「知ってる早坂?インドに旅行へ行くと…色々価値観が変わるらしいわよ?」

 

 かぐやは未だにベットにうつ伏せの状態で、学校を休んでインドへ旅行へ行くと言い出し始める。もし本当に行けば、どっかの誰かが数か月後に行くのをはるかに上回る形になるだろう。

 早坂もかぐやがかなり弱っているのを理解し、いっそ暫くは学校から距離を置くべきではないかと思い、かぐやの考えに同調することにした。

 

「まぁ、失恋したのであれば…そういう傷心旅行もありかと「待ちなさい早坂」はい?」

 

 しかし早坂がかぐやの考えに同調しようとした時、かぐやがベットから起き上がり、早坂の言葉に割って入ってきた。

 

「私は別に失恋なんてしていません」

 

「はい?」

 

「これはただ会長と立花さんが付き合っていると考えると、胸が苦しくてなって心が痛くなって涙が出そうになっているだけよ!決して失恋なんかじゃありません!」

 

「いや、どう考えても失恋でしょそれ」

 

「違うわよ!そもそもこれが失恋だっていうなら、そんなの私が会長の事を好きだったみたいじゃない!」

 

「えー…」

 

 そして自分は失恋などしていないと言った。この四宮家のご令嬢は、この期に及んでまだ自分の気持ちを偽っているのだ。ここまできて尚も自分に素直にならないかぐやに流石の早坂も呆れた。

 

「私は別に会長の事を好きでもなんでもなかったもの!会長と立花さんが交際しようと関係ありません!!」

 

 かぐやは早坂に強くそう言い放った。あくまでも、自分は白銀の事など好きではないと。

 しかし―――

 

「…じゃあどうしてそんな泣きそうな顔をしているんですか?」

 

「っ!!」

 

 早坂に言い返され、再び口を閉じるかぐや。

 早坂が口にした通り、かぐやは今にも泣きだしそうな顔をしている。まるで大事にしていた宝物を無くした子供のように。かぐやは暫く口を閉じていたが、暫くしてゆっくりと口を開いた。

 

「わかんない…」

 

「……」

 

「わかんないのよぉ…」

 

 そして、とうとうかぐやは泣き出した。白銀が京佳に取られたという事実。これがかぐやの心をかき乱しており、そのせいで考えが一切纏まらず、もう心の中はぐちゃぐちゃだった。それゆえ、心が限界を迎え、とうとう色んなものが決壊したのだ。

 

「泣かないでください…かぐや様…」

 

「ひっぐ…えぐ・・・」

 

 早坂はかぐやを自分の胸に抱きよせて、頭を優しくなで始める。そしてかぐやも、早坂に思いっきり抱き着き、そのまま泣きじゃくった。

 

「かいちょう…とられちゃったぁ…」

 

「はい…」

 

「くやしい…くやしいよぉ…はやさかぁ…」

 

「はい…」

 

 早坂の胸の中で泣きじゃくるかぐや。その姿はあまりにも弱弱しい。仮にかぐやの今の姿を、かぐやの事を知っている人たちに見せても、これがあの四宮かぐやだとは信じないだろう。それほど、何時ものかぐやとはかけ離れた姿だった。

 その後もかぐやはひたすらに泣き、数時間後、泣き疲れて眠ってしまった。そしてその間、早坂は1度もかぐやの傍を離れる事は無かった。

 

 

 

 

 

 翌日の放課後。

 かぐやは紙袋を持って生徒会室に向かっていた。しかしその顔は少しやつれている。昨晩あれだけ泣きじゃくったのだ。心身ともに疲れるのも無理はない。

 早坂からは今日は休んだほうがいいと言われたかぐやだが、根性で学校へ来ていた。全ては、しっかりと自分に踏ん切りを付けるために。

 

(お二人が交際を始めたのであれば、しっかりとそれを祝福しないといけませんものね…)

 

 かぐやは、白銀と京佳の2人を祝福し、自分の気持ちとしっかり決別するつもりだった。そうしなければ、前に進む事などできない。四宮家の者として、停滞するなど許されないのだ。

 しかし、生徒会室に向かうその足取りは重い。昨晩程ではないが、今もかぐやの心は乱されているからである。平静を保って、白銀と京佳に祝福の言葉を送れるかわからない。

 

(そもそも私は、会長の事を人として好きだっただけ…それ以上の感情なんて無い…無い、はずだもの…)

 

 自分にそう言い聞かせながら、かぐやは生徒会室前にたどり着いた。そして一度大きく深呼吸をして、扉を開ける。

 

「いやー!昨日は本当にありがとうな立花!妹と親父も喜んでたよ!」

 

「いや、礼を言うのは私の方だよ白銀」

 

 生徒会には白銀と京佳がいた。そして白銀は何やら機嫌がよさそうである。恐らく、恋人ができた事がうれしいのだろうとかぐやは思った。

 

「こんにちは会長、立花さん。随分と機嫌がよさそうですが、何かあったんですか?」

 

 かぐやは何とか平静を保ちながら自分から聞く事にした。正直に言えば聞きたくない。何故なら辛い現実を目の当たりにしてしまうからである。だが踏ん切りをつける為にもここは自分から聞かねばならないと思い、意を決して聞いたのだ。

 

「ああ、実はな…」

 

 そして白銀は、かぐやの質問に答えた。

 

 ―――――

 

 昨日放課後

 

「白銀、ちょっといいか?」

 

「どうした立花?」

 

「これを見てくれ」

 

 京佳が白銀に一枚のチラシを手渡した。そしてチラシを受け取った白銀はそれを読み始め、驚いた。

 

「米が半額だと!?」

 

 チラシには『本日限り!お米が半額!』と書かれていたのだ。多くの人間にとって、生活していると最もお金がかかるのは食費である。そして日本人の主食はお米。それが半額。貧乏である白銀にとってこれは朗報だった。

 

「で、更に下の方を読んでほしいんだが…」

 

「ん?下の方?」

 

 京佳に言われて白銀はチラシの下の方へ視線を下げた。するとそこには『ただし男女ペアに限る』と書かれていた。

 

「なんだこの少し面倒くさい条件は…?」

 

「そこのスーパーの店長の趣味らしい」

 

 余談だが、このスーパーの店長は『男女のカップルが一緒に買い物をしているのを見るのが好き』というかなり変な趣味を持っている。その為、自分の趣味の為にセールを行う時にこの条件を出していた。因みに実際に買い物に来るのは若いカップルではなく殆どが夫婦である。

 

「そして白銀、頼みがあるんだが」

 

「大体想像つくが、言ってくれ」

 

 白銀は京佳が何を言いたいが凡その予想がついていた。この会話の流れなら殆どの人間がつくだろうが。

 

「私の家も、そろそろお米が切れそうなんだ。だから条件を満たすためにも…」

 

「(スーパーへの買い物に)付き合ってくれ、白銀」

 

「ああ、いいぞ」

 

 こうして白銀と京佳はお米を半額で手に入れる手段を手に入れた。そして学校帰り、2人で目的のスーパーで一緒に買い物をして帰った。そして、それを見ていたそのスーパーの店長は終始笑顔だったらしい。

 

 ―――――

 

 

「という事があってな。少し持って帰るのが大変だったが、本当に助かったんだよ」

 

 白銀はかぐやへの説明を終えた。そしてそれを聞いたかぐやは―――

 

「そうだったんですか。それは機嫌が良いのも仕方ないですね」

 

 満面の笑みでそう言った。なんせ白銀と京佳が付き合い始めた訳ではないことが分かったのだ。先ほどまでまで落ち込んでいた気分が消え去るのも当然である。

 

「そうだ、お2人とも。実は新しい紅茶を持ってきたんです。今から飲みませんか?」

 

 かぐやは手にしていた紙袋を見せてそう言う。本当であれば、白銀と京佳のお祝いの品として持ってきた高級紅茶だったが、もう既にその必要もない。故に今この場で飲むことにした。

 その後、終始笑顔で白銀以上に機嫌が良いかぐやが持ってきた紅茶を生徒会メンバー全員で飲んだ。

 

 

 

 

 

 その日の夜 四宮家 かぐやの部屋

 

「という訳だったのよ。もう全く、会長も立花さんも人騒がせよね」

 

「……」

 

「それならそうと前もって私に言ってくれればよかったのに」

 

「……」

 

「そもそも冷静に考えたら、会長が私以外の女性を好きになるなんてありえませんものね。とんだ取り越し苦労よ」

 

「……」

 

「ん?どうしたの早坂?」

 

「いえ別に。よかったですねー。白銀会長と立花さんが恋人じゃなくてー」

 

「何よーその言い方はー」

 

 早坂は自分の主人が今回の件で実は全く何も学んでいなんじゃないかと一抹の不安を覚えたが、とりあえず元気になったので今回はこれでいかと思い、かぐやへ投げやりな返答をした。

 

 

 

 

 

(あれ?でもこれって結局、会長と立花さんが買い物デートしていることになるんじゃ…?)

 

 そしてかぐやは寝る直前、ふとそんな考えが頭をよぎった。

 

 

 

 




因みに購入したお米の持って帰り方
白銀 米を自転車のかごの中にいれて自転車を押して帰った
京佳 米を肩に担いで持って帰った。


次回は台風が過ぎて何もなければ…
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