もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・   作:ゾキラファス

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 今更ですが、この作品は別にかぐや様アンチとかじゃありません。

 でも今後かぐや様がフラれたりしたら、アンチに認定されるのかな?


四宮かぐやとサイン

 

 

 

 

 

(今日もまだ冷えますね。まぁ、学校内は暖房が効いていて暑いくらいですが)

 

 まだ寒いある日の放課後、かぐやは生徒会室に向かっていた。勿論、生徒会での仕事をする為である。だが今日はそれだけじゃない。

 

(さて、今日は昨日の事を確認しないといけませんね。幸い藤原さんは部活で遅れてきますし、邪魔はされないでしょう)

 

 かぐやは昨日、早坂と一緒にバラエティ番組を見ていた。普段ならニュース以外テレビはみないのだが、昨日見たバラエティー番組の内容が恋愛関係によるものだったのだ。最近、白銀が自分に好意を向けているであろうと思っているかぐやはこれに食いつく。

 そしてその番組内で、とある芸能人が言っていた事がある。

 

 それは、脈ありサイン。

 

 その芸能人曰く、脈がある異性は必ずいくつかのサインを行うというらしい。それらのサインというのが、

 

 ・頻繁に目が合う

 ・よく近くにいる

 ・恋人いないアピールをする

 ・ボディタッチをしてくる

 ・プライベートの話をしてくる

 ・笑顔が多い

 

 というものだ。

 

 これを真に受けた恋愛初心者のかぐやは、早速今日それらのサインを白銀が行っているかを確認しようと思ったのである。

 

(ま、会長が私に好意を向けているのはほぼ間違いありません。流石に全部は当てはまらなくても、半分以上は当てはまるでしょうね)

 

 自信満々なかぐや。白銀がかぐやに好意を向けているのはほぼ間違いない。これは最近、早坂も言っていた事。ならば脈ありサインを、白銀が行うのは必須だろう。

 

(最も、それだけで私と付き合えるなんて思わない事ですね。会長が身も心も、これからの人生すら全てを私に捧げるというのであれば付き合ってあげなくもありませんが)

 

 しかしかぐやは、白銀が自分に好意を向けているとわかっても自分から告白する事はしない。だって自分から告白なんてするのは、相手に膝まづくと同義だからだ。それはすなわち、負けを認めるという事。プライドの高いかぐやが、そんな事する訳が無い。

 

(ふふ、楽しみだわ。会長がどういった感じに私に告白をしてくるのか)

 

 気分を上げながら、かぐやは生徒会室へ向かうのだった。

 

 

 

 

 生徒会室

 

「失礼します。おはようございます会ちょ…」

 

 そして生徒会室に入った瞬間、かぐやは動きを止めた。

 

「白銀。ここの問題はどうすればいいんだ?」

 

「これか。これはだな、こっちの式を使って…」

 

「……ああ、成程、こっちの式を使うのか」

 

「まぁこれは間違いやすいからな」

 

 生徒会室では、京佳と白銀がソファに座っていた。それも隣同士に座って、お互いの肩が触れそうなくらい至近距離という状況で。

 

「な、何をしているんですか?立花さん?」

 

「ああ。おはよう四宮。いやな、今日あった小テストで間違えた問題があったから、その問題をどう間違っていたか白銀に教わっているんだ」

 

「そ、そうですか」

 

 どうやら勉強を教えて貰っていたらしい。白銀が学年1位の成績優秀者だ。そんな白銀から勉強を教えて貰うというのは、別におかしい事は無い。

 

(いやでもちょっと近すぎませんか?)

 

 問題なのは、2人の距離が随分近い事だ。白銀と京佳は友人同士なので、距離が近い事は変じゃない。でもこれはちょっと近すぎる。いくらなんでも近すぎる。

 

(いくらなんでもおかしいでしょうその近さは!?なんとかして2人を話さないと……ってそれじゃ私が嫉妬しているみたいじゃないのよ!?)

 

 今すぐ2人を引き離したいかぐやだったが、そんな事すれば自分が嫉妬していると認める事になる。そんなの認める訳にはいかない。だってかぐやは別に白銀の事が好きではないのだから。ただ白銀が全てを自分に捧げるのなら、ギリギリのギリギリで恋人になってあげなくもないと思っているだけだ。

 

「そうだ。紅茶淹れますね?」

 

「ありがとう四宮」

 

 ここで変に慌てると何を言われるかわからいので、とりあえず紅茶を淹れながら落ち着こうと考えるかぐや。

 

(落ち着くのよ私。ただ勉強を教わっているだけじゃない。数分もしたら離れるわ。それまでの辛抱)

 

 そう思いながら、かぐやは紅茶を淹れる準備をするのだった。

 

 

 

(やっぱり、白銀の近くにいると、胸が温かくなるな)

 

 一方京佳。白銀に勉強を教わっている彼女だったが、無論それだけでは無い。京佳は、白銀を自分に振り向かせるためにこうしている。白銀への恋心を自覚した京佳が最初に始めた事、それは距離感を近くするというものだった。今までは友人としてしか接してこなかった京佳だったが、これからは違う。自分だって白銀の隣に立ちたい。

 しかし現状、京佳は非常に出遅れている。その出遅れをどうにかするには、兎に角積極的に動かないといけない。白銀はかぐやの隣に立つ為に、数ヶ月間必死で勉強をしていたが、京佳にそんな時間はない。何故なら最初から全力でいかないと、絶対にこの恋は実らないからだ。

 故に先ずは物理的にも精神的にも距離を縮める。そして自分という存在を、白銀に意識させる。

 

「そうだ白銀」

 

「どうした?」

 

「この前また圭にあったよ」

 

「……圭ちゃん、なんか変な事とか言ってなかったか?」

 

「まさか。そんな話は全然していなかったよ。普通に楽しく話しただけさ」

 

「そうか。ならいい」

 

「それにしても、あんな可愛い妹がいて白銀は羨ましいな」

 

「まぁ、可愛いのは認めるけど…」

 

 さりげなく、白銀の妹である圭の話をする京佳。白銀もそれに乗ってきた。おかげで楽しく会話ができている。京佳は幸せな時間を過ごしていると実感した。

 

(え?何の話?一体なんの話をしているの?)

 

 一方でかぐやは穏やかではなかった。2人が自分が知らない話題で盛り上がっているからだ。圭という妹が白銀にいるのは知っているが、かぐやはまだ会った事が無い。おかげで完全に蚊帳の外。

 

(い、いいえ!あの話も気になるけどそれはそれ!今はサインです!)

 

 しかし今大事なのは、白銀の脈ありサインを確かめる方だ。もの凄くこの会話に参加はしたいが、今はほたっておく。どうせ参加できそうにないし。

 

「お2人共、紅茶をどうぞ」

 

「ありがとう、四宮」

 

「ありがとう」

 

「いいえ。どういたしまして」

 

 2人に紅茶を私、かぐやは白銀が座っているソファの正面に座る。

 

(さて、やりましょう)

 

 そしてかぐやは脈ありサインを確認するのだった。

 

「そう言えば会長。この前の卒業式に向けた会議はどうでしたか?」

 

「あれか。準備こそ大変だったが、なんとかなったよ。てか何で俺だけの参加だったんだろうな」

 

「その辺は学園長に何か考えがあったとしか…」

 

 何気なく会話をするかぐやと白銀。この時、白銀はちゃんとかぐやを見ながら会話をしていた。

 

(目が合ってる。でもこれは流石にサインとは言えないわね。そもそも会長はしっかり相手に目を見て話す人だし)

 

 よく目が合うという脈ありサインを確認はするが、そもそもこれはあまり意味がないように感じる。だって白銀は基本、相手の目を見て話すのだから。

 

(自分の近くにいる…これはどうかしら?確かに私は副会長だから会長の近くにいるけど、それは生徒会での仕事での話だし…)

 

 次に確認したのは距離感。白銀はかぐやの傍によくいるが、それは仕事をする為。これで距離感が近いというのは、違うだろう。

 

 ふとかぐやは、目の前の2人を見る。

 

「ここは、こっちの式を使って解けばいいぞ」

 

「成程。こっちか」

 

 目線の先には、未だに白銀から勉強を教えて貰っている京佳。その顔は楽し気だ。

 

(あれ?)

 

 それを見ていたかぐやは、思わず2人をじっと見る。2人をよく見ると、距離が近くて目もよく合っている。そして京佳も白銀も笑顔だ。

 更に先ほどの2人は、学校外のプライベートな話をしていた。昨日テレビで見た脈ありサインのうち、4つが当てはまっている。

 

(まさか…)

 

 この時、かぐやは嫌な考えを巡らせる。

 

 それは、京佳が白銀に好意を向けているのではというものだった。

 

(い、いやぁ…まさかぁ…)

 

 そんな事無いと思おうとするかぐやだが、額には汗が出ている。なんせ確認しようと思っていた6つのサインの内、既に4つが京佳に当てはまっているのだ。

 

(これは、予定を変更しなければ…)

 

 かぐやは白銀の脈ありサインを確認する予定を変える事にした。もし京佳が白銀に好意を向けているのなら大問題だ。

 だって白銀はかぐやに好意を向けている。そしてかぐやも本心では、白銀に好意を向けている。だというのに、そこに割って入ろうとしている者がいるのだ。

 はっきり言って、腹が立つ。本人に自覚は無いが、四宮かぐやは非常に嫉妬深い女なのだ。

 

(もし本当にそうだったら、この眼帯女を始末しないといけませんね…)

 

 そんな物騒な事を思いながら、かぐやは予定を変更するのだった。

 

 

 

 

 

「最近、母さんが忙しそうでね。家に帰りついたら直ぐに寝てしまうんだ」

 

「直ぐにか。それは相当疲れているな」

 

「ああ。でもだからといって、スーツ姿のままソファで寝るのは勘弁してほしい。いつもスーツにシワがついちゃうし」

 

「ああー。スーツのシワ取りって面倒だしなぁ。俺もクリーニング屋でバイトしていたからわかるよ」

 

「……」

 

 楽しくプライベートな話をする2人。

 

「白銀の手って、結構大きいんだな」

 

「突然どうした?」

 

「いや何。私の周りには白銀くらいしか男友達がいないからね。それで改めて見てみると、やはり男の子の手は大きいなって思っただけだよ」

 

「それはわかったが、何で態々手を触る?」

 

「好奇心だ。目の前にハシビロコウとかいたら触ってみたくなるだろう?それと一緒だよ」

 

「俺は珍獣か」

 

「……」

 

 白銀の手をそっと触る京佳。これは完全にボディタッチだろう。

 

「高校生になると恋人を作る人が多いらしいが、実際どうなんだろうな?」

 

「俺のクラスにはいるぞ。別の組の子と付き合っている奴が。まぁでも、だからと言って多いとは言えないんじゃないか?結局恋人を作る期間なんて人それぞれだろう」

 

「それもそうだな。私もいないし」

 

「……」

 

 さりげない恋人いないアピール。

 

(満点じゃないのよ…)

 

 およそ5分間で、かぐやは京佳の白銀への脈ありサインを全て確認した。これはもうほぼ間違いないとみていいだろう。

 

 立花京佳は、白銀御行に好意を抱いている。

 

(この女。よくもまぁ私と会長の間に割って入ってきましたね…どうしてくれましょう?)

 

 そしてかぐやは、京佳に殺意を抱く。こんな事許せる筈がない。今夜にでも四宮家の手の者に命令を出して、海か山にでも沈めないと気が済まない。

 

(大体、そんなデカイ図体をしていて会長の隣に立ちたいとでも?身の程を弁えなさい)

 

 随分酷い事を思うかぐや。彼女にとって、自分と白銀の恋路を邪魔してくる存在はそれだけ邪魔なのだ。これが昔から友達関係にある藤原でも、同じような思うだろう。例えば、胸ばかりに栄養の行く脳タリンとか。

 

(そうね。先ずは早坂を使って情報取集。人は生きているだけで何かしらの罪を背負うもの。この女も何か後ろめたい事のひとつやふたつしているでしょう。そして集めた情報を使って2人きりでお話をすれば、自ら生徒会を抜けていくでしょうね。そもそも庶務なんて雑用。1番生徒会にいらない存在です。いなくなっても、今後の生徒会の業務には支障はありません)

 

 白銀が聞いたら100年の恋も冷めそうな事をスラスラと思うかぐや。かぐやは敵と定めたら、とことんやるタイプなのだ。

 

(立花さん、今日が貴方が安眠できる最後の日よ。せいぜい束の間の幸せを楽しんでなさい)

 

 かぐやはそう想いながら、すっかり冷めてしまった紅茶を飲み干すのだった。

 

 

 

(なんか急に寒気を感じた…なんだこれ?)

 

 そして京佳は寒気を感じていた。

 

 

 

 

 

 夜 四宮家別邸 かぐやの部屋

 

「と、言う訳なのよ早坂。だから立花さんの悪事を見つけてきて頂戴」

 

 かぐやは従者である早坂に命令する。内容は勿論、京佳の事だ。さっさとあの邪魔者を生徒会から追い出してしまいたい。そして白銀からの告白に備えたい。その一心での命令だった。

 それを聞いた早坂は、

 

「アホですか」

 

 バッサリとかぐやを切り捨てた。

 

「アホとは何よ!?」

 

「いやアホでしょ。立花さんの事を調べろっていうのはまだわかりますけど、白銀会長からの告白を邪魔されたくないから生徒会から追い出したいって。動機がアホすぎて私びっくりしてますもん」

 

 早坂はかぐやみたいに浅はかでは無かった。一応こんなんでも自分の主人なので、命令通り京佳の事を調べはするが、その動機がそんなんだとは思わなかった。

 

(ほんの数か月前までこんなんじゃなかったのに…)

 

 少し前のかぐやは『氷のかぐや姫』と呼ばれるくらいには冷たいといえる人物だった。しかし今は、その面影すらない。いつの間にか、こんなに愉快な子になってしまわれている。恋は人を狂わせるというのは、どうやら本当のようだ。

 

「というかそんなに立花さんを邪魔だと思っているのなら、自分からさっさと白銀会長に告白すればいいじゃないですか」

 

 早坂の言っている事は正しい。だってさっさと白銀とかぐやが恋仲になってしまえば、京佳だって邪魔してこないのだから。ならばこそ、かぐやが告白をすればいいだけの話。

 

「馬鹿な事言わないでちょうだい早坂。そもそも私は会長の事を好きなんかじゃないもの」

 

「は?」

 

 しかしかぐやは、それを断固として断っている。

 

「ただ会長が人生も家族も、そして国すら私に捧げるというのなら、付き合ってあげるのもやぶさかでは無いと思っているだけよ。私自信は、会長の事をなんとも思ってないんだから」

 

「えー…」

 

 早坂、絶句。自分の主人が、まさかこれほど素直じゃなかったとは思いもしなかった。

 

(これさっさと矯正しないと、取り返しのつかない事になりそうな気がする…)

 

 これほど素直じゃない。このままでは白銀から告白された際も素直にならず、白銀と恋仲になれない可能性がある。早いとこなんとかしなければ。

 

「わかりました。明日からにでも立花さんの事は調べます。でも追い出すとかはやめてきましょう?」

 

「何でよ?」

 

「いやだって、そもそもあの立花さんですよ?あんな物騒な見た目の人からのアプローチを白銀会長が受け取るとでも?第一、白銀会長はかぐや様みたいな人の方が好きですって。だったら最初から勝負にすらなっていないじゃないですか。それに白銀会長からの好意を感じているのなら、どしっと構えていればいいんですよ。それこそ勝利者としての高みから」

 

「……それもそうね。少し過激になってたわ。確かにそうよ。そもそも私は勝っているんだから、そんな事考える必要なんてないわよね。なら普通に立花さんの事を調べて頂戴」

 

(チョロ)

 

 早坂もかぐやに負けず劣らずな事を言っているが、これはあくまで京佳の身を案じた故の発言だ。だってかぐやなら、本当に京佳をどうにかするかもしれない。それだけの力があるのだから。

 あと純粋に、こんなわがままで生徒会をやめさせられるかもしれない京佳を哀れだのもある。それにしても、この令嬢チョロすぎる。

 

「ところで、本当に立花さんは白銀会長の事を?」

 

「それは間違いないわ。昨日見たテレビで見た脈ありサインが全部当てはまっていたんだし」

 

「はい?」

 

「早坂も昨日見た一緒に見たでしょ?バラエティー番組で言っていたサインの事」

 

 かぐやは昨日のテレビの事を早坂に話す。

 

(嘘でしょ?かぐや様あれ間に受けてるの?)

 

 そして早坂は再び絶句する。だって所詮バラエティー番組での話だ。勿論テレビで言っている事が全てデタラメではないだろうが、だとしてもあれは無いだろう。そもそも脈ありサインという名前がダサイ。

 

(これは、かぐや様の勘違いかなぁ?)

 

 以上の事から早坂は、かぐやが勘違いをしていると判断。恐らく白銀と京佳は仲は良いのだろうが、そこに恋愛感情なないのだろう。俗に言う、男女の友情というやつだ。

 

(ま、念には念を入れて調べるか)

 

 だが一応調べるべきだろう。

 

 そして早坂は、翌日京佳について調べようと思うのだった。

 

 

 

 

 




 次回でようやく過去編終わりの予定です。書きたいように書いてたら、こんなに長くなっちゃった。長い間、付き合わせてごめんなさい。

 それと本作の通算UAが30万を超えました。お気に入り登録も沢山増えて、本当に嬉しいです。皆さん、本当にありがとうございます。

 あと今週は全国的に寒いらしいので、防寒対策をしっかりしましょう。

 次回も書ききりたい。

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