もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・ 作:ゾキラファス
今日も今日とて学校へ登校する京佳。数か月前までなら、多くの生徒がその見た目に恐れおののき、近づく事も話しかける事も無かった。なんなら廊下でモーゼみたいに人が左右に散る事もあった。
だが、今はもう違う。
「立花さん。おはよー」
「おはよー立花さん」
「ああ。おはよう」
こうして、何人かの生徒からあいさつをされるようになっているのだから。
今京佳にあいさつをしたのは、京佳と同じC組の女生徒達だ。最初こそ、京佳の見た目が怖くて誰も話しかけることなどしなかったのだが、京佳が生徒会で頑張って仕事をしているのを見たり、困っている生徒を助けたりとしているうちに、少なくともC組の生徒の殆どは京佳を恐れなくなっていったのだ。
「おーっす立花」
「おはよう龍珠」
「あ!龍珠さんもおはようー」
「おはよー龍珠さん!」
「……おう」
そして同時に、クラスメイト達は龍珠にもあいさつをする程になっている。龍珠は極道の娘だったので、京佳と同じくらい恐れられていた。
しかし話してみると案外普通の子であり、何なら2学期の文化祭のクラスの出し物もちゃんと手伝ってくれた。その結果、龍珠もクラスに打ち解けるようになったのだ。
最も未だに口が悪いので、京佳程他のクラスメイトとは打ち解けてはいないのだが。
「そうだ龍珠。昨日借りた漫画を返すよ」
「ああ。で、どうだった?」
「面白かったよ。こういったファンタジー漫画ってあんまり読まないけど、思わず嵌まりそうになるくらいには。というかスマホで電子版買っちゃたし」
「あ、その漫画私も知ってるよ。確か歴史上の人物が異世界で大暴れするんだよね」
「ああそうだ。主人公の侍とかかっこいいんだよ」
「へぇ~。龍珠さんってああいうまっすぐな人が好みなんだ」
「そういうんじゃねよ。そもそも漫画のキャラだぞ。つかあれは真っすぐすぎるだろ」
だがこうやって、普通の学生らしく会話をしたりはする。尚、この事を知った龍珠の両親は泣いた。そして組総出で赤飯を炊いた。
「っと、そろそろ時間だ」
「あ、そうだね。じゃまた」
「またねー2人共ー」
そろそろ朝のHRの時間の為、それぞれ自分の席に戻る。こうしてまた、秀知院での1日が始まるのだった。
「……」
そしてその様子を、スマホを弄るふりをしながら時間ギリギリまで眺めていた女生徒も、自分のクラスへ戻るのだった。
昼休み
「龍珠。また菓子パンなのか」
「いいだろ別に。これ美味いし楽なんだよ」
「コンビニのでもいいからもう少し野菜も食べろ。歳取ってからじゃ遅いんだぞ」
「家ではそれなりに食べてるから問題ねぇって」
何時もは屋上や天文部の部室でお昼を食べている京佳と龍珠だが、この日は何となく教室で食べていた。理由は特にない。偶に2人だけでは無く4人や6人とかに増える事もあるが、今日は2人。少し前まで腫れ物扱いを受けていた2人にも、そうやって一緒に昼食を食べてくれる存在ができた。数か月前までなら考えられない事だ。これも京佳の行動のおかげだろう。
因みに今日の龍珠の昼食はホットドッグみたいな菓子パンである。
「にしても、お前未だに生徒会の仕事ちゃんとやるんだな」
「当然だろう。生徒会に入っているからにはしっかりと仕事をこなさないと迷惑かけるじゃないか」
「真面目だなぁ。偶にはサボってもいいんじゃねーのか?過労で倒れるぞ?」
「そこは大丈夫。毎日しっかり睡眠取ってるし」
「ならいいけど」
龍珠もかつて生徒会に所属していた。だからこの学校の生徒会がどれだけ忙しいかを知っている。自分が所属していた時期でさえ、大きなイベントが無かったのにあれだけ忙しかったのだ。今の時期はどれだけ忙しいかなんて考えたくもない。
「そうだ立花。お前今度一緒に映画いかねーか?」
なので京佳のリフレッシュもかねて、龍珠は京佳を映画に誘う事にした。
「別にいいけど、何時だ?」
「今週の土曜日」
「あー。すまない。その日は生徒会の仕事で学校に行かないといけないから無理だ」
「そうか。なら日曜日は?」
「日曜日ならいいよ。バイトも無いしね」
「なら決定な」
京佳はそれを了承。こうして2人は、日曜日に映画に行く事になった。
「因みにどんな映画に行く予定なんだ?」
「サメ映画」
「……大丈夫かそれ?」
「大丈夫だろ。少なくともネットのレビューではクソ映画扱いされてなかったし」
補足すると、別にサメ映画はクソ映画ばかりではない。傑作も沢山ある。ただサメ映画というジャンルの母数が多すぎて、クソ映画も結構な数が世の出てきてしまうだけなのだ。
「……」
そしてその様子を、廊下を通り過ぎながら見ている女生徒がいたが、2人がそれに気が付く事は無かった。
「ん?」
放課後、京佳は生徒会室へ向かう途中であるものを発見した。
「これは、生徒手帳?」
それは秀知院学園の生徒手帳。この学園の生徒なら皆が持っている物だ。恐らく誰かの落とし物だろうと思った京佳は、その生徒手帳を拾いあげる。
そして出来れば落とし主に返そうと思った。その為にも名前を確認しないといけないので、生徒手帳を開く。
「えっと名前は、早坂愛?」
どうやらこの生徒手帳の主は早坂という女生徒のようだ。名前の横に張られてある顔写真には、金髪の今時のギャルっぽい子が写っている。
「持っていくか…」
初対面の人には基本怖がられる京佳だが、見つけたのにこのままにしておくのも申し訳ない。生徒会室に行く前にさっさと渡してしまおうと思い、京佳は来た道を戻るのであった。
1年A組
「すまない。ちょっといいだろうか?」
「ん?ひっ!?」
A組にやってきた京佳は、教室の扉近くにいた女生徒に声をかける。すると声をかけられた女生徒は一瞬びっくりし、京佳から少し後ずさりながら距離を取る。
(やっぱり、他のクラスだとこうなるよな…)
入学当初より怖がられる事の無くなった京佳だが、それでもやはりこうして怖がる生徒は一定数いるのが現状。
これ以上相手を怖がらせる訳にもいかないので、京佳はさっさと用事をすませる事にした。
「早坂さんという子はいるかな?生徒手帳を拾ったから渡したいんだが」
「あ、早坂さんですか?えっと、さっきまでいたんですけど…」
「そうか。ならこれを本人に渡して置いてくれないか?」
「わ、わかりました」
「それじゃ」
そして生徒手帳を渡すと、京佳は足早に去っていく。
(ま、しょうがないよな…)
こんなデカイ身長で顔に物騒な眼帯をしていれば、怖がられるのも仕方が無い。ただでさえ、他のクラスとは殆ど交流が無いのだ。
だから、あの反応は仕方が無い。京佳はそう思う事にした。
そして生徒会室へ向かい、今日も生徒会の仕事をするのだった。
翌日。京佳は何時も通りに学校へ登校していた。
「あ!いた!」
「ん?」
だが今日は何時もと少し違った。初対面の生徒にいきなり話しかけられたからだ。
「ねぇねぇ!あなた立花さんだよね?」
「そうだが…」
「あーよかったー!人違いだったらどうしようかと」
話しかけてきたのは、金髪のサイドテールに、短めのスカート。鞄には変なぬいぐるみのキーホルダーに、爪にはネイルをしている、如何にもなギャルっぽい生徒だった。
(誰だ?)
京佳は目の前の子に覚えがない。少なくともC組の子ではない。だがよく見ると、どこかで見た覚えがある。でも思い出せない。
「急にごめんね。私、早坂愛って言うんだ。昨日私の手帳拾ってくれたでしょ?」
「ああ。昨日の」
その言葉で京佳は思い出した。この子は、昨日拾った生徒手帳の持ち主だと。
「それで、何か用かな?」
「いやさ、お礼言いたくて」
「お礼?」
「そう。昨日手帳拾って、しかも届けてくれたでしょ?本当にありがとうね。あ!お礼に何か奢った方がいいかな?」
早坂が京佳に話しかけてきたのは、昨日のお礼が言いたい為だったようだ。
「別にいいよ。お礼が欲しくてやった訳じゃないし」
「いやさ、それだと私の気が収まらないんだよ。せめて缶ジュースでいいから奢らせて!お願い!!この通り!!」
「生徒手帳ひとつでそこまでするか?」
確かに落とし物を拾ったが、所詮生徒手帳だ。いくつかの個人情報は入っているだろうが、別に住所までは書いていない。
「まぁ、わかったよ。なら放課後でいいから自販機で奢ってくれ」
「本当!ありがとー!!」
少し訝しんだ京佳だったが、人の善意を無碍にする訳にも行かず、大人しく奢られる事にした。
「それじゃ!放課後、自販機コーナーでねー!」
そう言うと早坂は、その場から立ち去っていった。
(凄いグイイグイくる子だったな。恵美みたいだ)
京佳はそんな早坂に、他校に通っている親友の恵美に似た既視感を覚えた。もしかすると、最近のギャルはああいうのがスタンダードかもしれない。所謂、距離感が少しバグっているのが。
(それにしてもあの子、私の事を怖がらなかったな…)
それはそれとして、気になった事もある。それは先ほどの早坂の反応。
普通、初対面の人間は京佳を怖がるのに、彼女は京佳を全く怖がっていなかった。少なくとも、そういった空気は全く出していなかった。
(ひょっとしたら、仲良くなれるかも?)
未だに京佳を怖がっている人は多くいるが、彼女は違った。もしかすると、良くなれるかもしれない。
(とりあえず、放課後に話してみよう)
京佳は他のクラスにも友達を作れるかもしれない折角のチャンスだと思い、放課後に早坂と話してみる事にした。
放課後
「あ!立花さーーん!こっちこっちーー!」
校舎内に設置されている自販機コーナーに行くと、そこには既に早坂がいた。そしてまるで子供みたいに手を振って京佳を呼んでいる。
「すまない。遅れたかな?」
「全然!私も今来たとこだし。むしろ時間ピッタリって感じ?」
まるで初デートの時のような台詞を言う早坂。その手の人が見たら尊死するかもしれない。
「で、何飲むー?」
「そうだな。じゃあこのレモンティーで頼む」
「わかったー。ついでに私も同じの飲もーっと」
早坂は自販機にお金を入れると、レモンティーのボタンを押す。すると自販機から2つのレモンティーが入ったペットボトルが出てきて、早坂はその内の1つを京佳に渡す。
「ありがとう」
「いいって」
レモンティーを受け取り、ボトルを開けて2人揃って飲む。
「もう1度言うけど、本当にありがとね」
「別にいいさ。そもそも拾ったのは本当に偶然だしね」
「それでもだって。ありがとう」
どうやら早坂はかなり義理堅い子のようだ。生徒手帳ひとつでこれだけお礼をいうなんて、今時珍しい。
「ところで、少しいいかな?」
「んー?何ー?」
「素朴な疑問なんだが、君は私が怖くないのか?」
「え?怖い?何が?」
「いや何がって、こんな物騒な眼帯してるんだぞ?それに身長だって高いし」
そんな早坂に京佳はストレートに聞いてみる。回りくどい言い方は好きじゃないし、京佳にとってはジュースを奢られるより、こっちの方が重要だからだ。
そして京佳にそう聞かれた早坂は、
「全然怖くないけど?むしろかっこよくない?」
「え…」
京佳の顔を真っすぐに見てそう答えた。
「ていうか眼帯しているだけで怖がるとか無い無い。どんだけ怖がりなのよそれ」
「そ、そうなのか?」
「そうだって。それに身長だってさ、確かに女子としては高いけど、それを怖がるなんてしないって」
「あ…」
それはかつて、白銀が京佳に言った事と似ていた。そしてそれを聞いた京佳は、嬉しくなる。
「ふふ、ありがとう」
「よくわかんないけど、どうしたしまして?」
何でお礼を言われたのかわからない早坂は首をかしげる。
「それじゃ、私は行くよ。生徒会の仕事あるし。レモンティー、ご馳走様」
「わかった。お仕事頑張ってね」
「ああ。ありがとう」
レモンティーを飲み終えた京佳は、空になったペットボトルをゴミ箱に捨ててその場から立ち去る。
(あの子とは、仲良くなれるかもな…)
そう思いながら、京佳はスキップしたい気持ちに駆られながら生徒会室に向かうのだった。
(とりあえず、これで顔も知らない他人とは言えなくなりましたね)
自販機コーナーに、1人の残った早坂愛。彼女は今、先程とは違う顔つきでそこにいる。
実は彼女、早坂愛は訳あって京佳に近づいた。その理由は、主人であるかぐやの命令だからである。
数日前、早坂はかぐやから京佳の情報収取を命じられた。最初は、自分が白銀に告白されるのを邪魔されたくないから弱みを握ってこいという命令だったが、早坂の説得によりただの情報収集になった。そしてその中で、京佳が白銀に恋心を抱いているかを知ろうとしていたのだ。
しかし、いきなり『白銀の事が好きですか?』なんて聞いても、素直に答える訳が無い。そこで先ずは、友人関係を構築する事から始めた。
態と生徒手帳を廊下に落とし、それを京佳に拾わせ、届けさせる。事前に京佳の人柄を調べた結果、京佳ならそうするだろうという推測から考えた作戦だ。
そして作戦は成功。後はそれに乗じて京佳に恩返しをし、ゆっくりと友人関係を作ればいい。そこで京佳に直接問いただそうというのが、早坂の考えた作戦である。
(まぁ、徒労に終わると思いますけどね…)
しかし早坂、この作戦が大した成果を出さずに終わると思っていた。だってかぐやが言い出した『京佳が白銀に好意を向けている』という根拠は、テレビから得た知識が元だからだ。
別にテレビが嘘しか言っていないとは思っていない。でもそんな鵜呑みにした知識で京佳を判断したかぐやの事を、早坂は信じていなかった。
(はぁ…転職しようかな…?)
最近本気で転職を悩みだす早坂。そして残ったレモンティーを飲み干して、早坂は帰路に着くのだった。
その後、早坂は更に京佳との距離を縮めるべく動いた。
「おっはよー立花さん!今日も良い天気だね!」
「おはよう早坂さん」
「さんはいらないって!呼びしてでいいよ!」
「え?いいの?」
「モチ!もう他人じゃないし。その代わり、私も呼び捨てしてもいい?」
「それはいいけど」
「じゃもう1回。おっはよー京佳ー!」
「お、おはよう。早坂」
朝、京佳を見つけたら挨拶したり、
「あれ京佳。これから生徒会?」
「そうだよ。今日は使われていない教室の掃除をするんだ」
「そっか。頑張ってねー」
「ありがとう」
放課後に京佳が生徒会の仕事をしていたら、ねぎらいの事言葉をかけたり、
「京佳ってさ、胸どれくらいあるの?」
「どうした急に」
「や、私もそこそこ大きいけど、京佳はもっと大きいじゃん。だから気になって」
「言わないからな。そもそもこれ結構気にしてるんだよ…大きいと可愛いブラとか無いし、肩こり酷いしで」
「あー確かに。私も肩こりはあるなー」
校内で偶々会った時に、他愛の無い会話をしたりと、兎に角早坂は京佳に話かけた。
「なぁ立花。最近よく話しているあいつ誰だ?」
「早坂って子だよ。何でか最近よく話すんだ」
「へー。お前を怖がらないなんてすげー珍しいな」
「本当だよ」
龍珠にも早坂の事を聞かれるくらいには、早坂は京佳に近づいた。結果、早坂は僅か1週間で京佳とかなり仲良くなったのだ。
(そろそろいいですかね?)
これだけ仲良くなれた。これならば、多少突っ込んだ話をしても大丈夫だろう。
「ねぇ京佳。ちょっといい?」
「何だ?」
生徒会の仕事が休みだったある日の放課後。京佳と早坂は自販機コーナーで駄弁っていた。
そして早坂は、ここで仕掛ける事にした。
「京佳ってさ、好きな人とかいるの?」
「……え?」
突然の早坂の質問に固まる京佳。思わず、手にしていたパックジュースを落としそうにもなる。
「あれ?なんか動揺してる?ひょっとしているの?」
「いや、別に動揺なんて…」
「え~?本当に~?」
からかうように京佳に話しかける早坂。そして畳み掛けるように、早坂は言葉を続ける。
「もしかしてさ、生徒会長の白銀くんとか好きだったりしない?何時も放課後一緒にいるしさー?」
ド直球の言葉を京佳に投げつけた。この言葉で京佳の反応をみれば、京佳が白銀をどう思っているかわかるからだ。余程訓練でもされていない限り、絶対に何かしらのボロが出る。
(まぁ、特に何もないでしょうけどね)
しかし早坂、これが意味の無い質問だと思っていた。そもそもかぐやの命令でこんな事を聞いているが、そのきっかけがテレビの情報を鵜呑みにしているのだ。なので恐らく、かぐやの勝手な勘違いだと早坂は踏んでいた。
しかし、
「えーーーっと、それは…」
(……あれ?)
京佳の反応は早坂の予想とは違った。明らかに動揺している。そして顔がほんのりと赤い。
(え?嘘でしょ?もしかして本当に…?)
この京佳の反応は、明らかに恋をしている反応だ。しかも早坂は先ほど、白銀が好きなのではと聞いた。つまりこれは、もうそういう事だろう。
「えっと京佳。マジで?」
「ちょ、ちょっと待ってくれ早坂!お願いだから今はそれ以上何も聞かないでくれ!」
「あ、うん…」
流石にいきなり好きな人を言い当てられたら、誰だってこんな風に慌てるだろう。恐らく、かぐやだってこうなる。
「でもそっかー。京佳って白銀会長の事が」
「う、うん…あの、誰かに言うとかは…」
「いやしないからそんな事。言わないから安心して」
暫くして落ち着いた京佳と、再び会話をする早坂。その目は興味津々といった感じだ。
「でもさ、白銀会長って結構人気あるから、大変じゃない?ライバルとか多くて」
でもそれはそれとして、京佳にこの恋を諦めさせようともする。なんせ早坂はかぐやの従者。従者であれば、主人の願いを叶えるのが普通
ならばここで邪魔者をさっさと潰してしまおうと思い、こうして動いたのだ。
「確かに大変だろうけど、諦めるなんてする訳ないよ」
「え?」
だが、それは上手くいかなかった。
「もうバレちゃったから言うけど、私は白銀が好きだ。白銀の隣にどうしても立ちたい。他の誰でもない。私が白銀の隣に立ちたいって本気で思っている」
「……」
「こんな無駄に身長がデカくて、人相も悪い私だけど、この恋だけは絶対に成就させたいんだ」
「……」
「だから、絶対に諦めない。例えどんな恋敵が現れようとも、私はそういった存在を倒して、必ず白銀の恋人になってみせるんだ」
(え、何この子強い…)
主人のかぐやからは、絶対に出ないであろう宣言の数々。それを目の当たりにした早坂は、京佳がかぐやにとって、とんでもなく強力な恋敵であると認識した。
今はかぐやと白銀は相思相愛かもしれないが、こんな強敵が現れたら、その有利な状況も覆るかもしれない。
(これまっずいなぁ。さっさとかぐや様を説得して、白銀会長に告白させないと…)
今の京佳に『白銀を諦めろ』と言っても意味ないだろうし、これまで築いた友人関係も終わるかもしれない。
だから先ずは、帰ったらかぐやの説得から始める。そしてさっさと告白させようと早坂は考えた。最も、それが1番難しいのだが。高すぎるプライドというのは、本当に邪魔である。
そしてこの日より、早坂がひたすら苦労する日々が続くのであった。主に主人であるかぐやの説得と、よくわからない作戦に付き合わされたりで。
幾日か後 生徒会室
「なんだか、噂されてるみたいですね。私たちが交際してるとか……」
「そういう年ごろなのだろう。適当に聞き流せばいい」
「ふふ、そういう物ですか。私は、そういった事柄に疎くて」
白銀達が2年生に進級し、新しい生徒会メンバーを入れた生徒会室では、かぐやと白銀が談笑していた。内容は、ここに来る途中で聞いた噂について。その噂とは『白銀御行と四宮かぐやは付き合っている』というもの。
尚この噂は、本当に勝手に出てきた噂だ。別にかぐやや白銀が態と周りに吹聴した訳ではない。
そうやって2人で話していると、
「失礼する。白銀、頼まれていた資料を持ってきた」
白銀に頼まれた資料を取りに行っていた京佳が戻ってきた。
「おぉ、ありがとう立花。しかし、すまないな。女性であるお前にこれだけの資料を持ってくるように言ってしまって」
「気にするな白銀、私は庶務だ。こういう雑用こそ庶務の出番だろう」
白銀の言う通り、確かに資料の量が多い。でもこういう雑務を率先してやるのが庶務だと京佳は思っているので、特に気にていない。むしろ京佳は今、別の事が気になっている。
(今まで2人きりだったのか…)
それはかぐやと白銀が2人で生徒会室にいた事だ。両想いであろう2人が、密室で2人きりというのは面白くない。このまま何もしなければ、またかぐやに置いて行かれるかもしれない。
だから京佳は、ここに来るまでに思いついた事を早速やってみる事にした。
「ところで白銀、ここに来る途中で噂を聞いたのだが…」
「ん?噂?」
「ああ、なんでも私と白銀が付き合っているという噂らしい」
「はぁ!?」
(はいぃぃぃぃぃぃ!?)
それを聞いたかぐやは内心絶叫する。思わず手にしていたティーポットを落としそうにもなった。でも何とか踏ん張った。
「ま、待て待て立花!俺とお前が付き合っているという噂なのか!?」
「あぁ、そういう噂があると私は聞いたぞ」
「そ、そうなのか……そんな噂が……」
寝耳に水だった白銀も驚く。だがここで変に慌てたら、かぐやになんて言われるかわからない。
「ま、まぁ所詮噂だ。別に気にする必要もなかろう。それより早く資料作成を行おうじゃないか」
なので『そんな噂全然気にしてませんけど?』とでも言いたげな雰囲気を出しながら、白銀は話題をすり替える事にした。
「ふむ、それもそうだな。ではさっさと終わらせよう」
京佳も、白銀に同意しながら資料整理を行う事にした。だが勿論、ただ行う事なんてしない。当然ここでも京佳は仕掛ける。
具体的に言うと、他に座る場所があるにも関わらず、態々白銀の隣に座って資料整理をしたのだ。それもかなり近い距離で。
(ちょっと立花さん!?なんでナチュラルに会長の隣に座っているのよ!!しかもなんか距離近くない!?)
それを見ていたかぐやは再び叫びそうになる。何故なら今日かぐやは、少しだけ勇気を出して白銀の隣に座り、そこで生徒会の仕事をしようと考えていたからだ。
これは昨夜、早坂が『それくらいしないといずれ手遅れになりますよ』と言われたからである。しかしそれはもう出来ない。
(おのれぇ、立花京佳ぁ……!!)
可能であればこの邪魔者を消し去りたい。でもそう簡単にそんな事はできない。なのでかぐやは、心の中で京佳を呪う事しか出来ずに、この日を過ごすのであった。
(四宮、君にも何か考えがあったようだが、先手は私が取らせてもらったぞ)
一方京佳。彼女は心の中でガッツポーズをしていた。ここに来るまでの間に、白銀とかぐやが付き合っているのではという噂を聞いた京佳。
もしかすると、かぐやもそれを聞いたかもしれないと思い、かぐやが何かする前に先手を取る事にしたのだ。
結果、今京佳は白銀の直ぐ隣に座れている。おかげで胸が温かい。
(四宮、君は私にとって最大のライバルだ……)
それは勉強の事では無く、部活などの運動の事でもない。当然、喧嘩でもない。
恋敵としての意味である。
自分は今、圧倒的に出遅れている。ならば攻め続けて、追いつくしなない。
(だからこそ、私は全力で君と戦おう。君の恋敵としてな……!)
そして最大の敵だからこそ、全力でかぐやに挑むのだ。それがライバルに対する、最大の敬意なのだから。
こうして、四宮かぐやと立花京佳の恋愛戦争は始まったのだ。その行方がどうなるかは、今は誰も分からない。
これにて過去編終了! お疲れ様でした!!
次回からようやく決戦である文化祭編に行く予定ですが、筆が遅くなるかもしれません。理由は今後の展開をもっとしっかり考えないといけないから。
その時は、どうかご了承下さい。
今後、投稿頻度は落ちるかもですが、必ず完結はさせるので、どうぞよろしくお願いいたします。