もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・ 作:ゾキラファス
(緊張した…)
この日、京佳は緊張していた。別に試験がある訳でも、生徒会で大事な仕事がある訳でもないのに、緊張していた。
その理由は、今着ている下着にある。
(やっぱり着てくるんじゃなかった…こんな猫の下着なんて…)
本日の京佳は、所謂猫下着を着ているのだ。なんでこんな下着を着ているのかというと、恵美からの誕生日プレゼントだからだ。
少し前の誕生日、京佳は恵美からこの猫下着を貰った。ブラの方は胸元に猫の形をした穴が開いており、谷間がよく見える。下の方も猫の形をしたショーツになっており、随分かわいらしい。おまけに紐である。親友からの折角の誕生日プレゼントだったのだが、流石にこれを着る勇気は無かった。
しかし、貰ったからには着ないと恵美に失礼と思い、体育の無い本日、京佳は意を決して猫下着を着てみる事にしたのだ。
だが、これが中々落ち着かない。ていうか恥ずかしい。
おかげで京佳は、この日1日中そわそわしていた。もし誰かに見られたらと思うと、恥ずかしすぎる。仮にそれが白銀だったら、もう死んでしまうかもしれない。過去に白銀には何度か下着を見られているので、その緊張も頷ける。
(もう絶対これ着て学校には行かない…)
恵美には悪いが、これ以降この下着は絶対に着ないと京佳は決めた。
(生徒会室に行く前に、なんか飲み物買おう…)
京佳は生徒会室に向かう前に、自販機コーナーで飲み物を飲んで落ち着こうと思った。そして自販機コーナーにたどり着くと、
「にゃー」
「ん?」
どこからか、可愛い声が聞こえた。京佳が自販機から少し離れた場所にある花壇を見てみると、
「にゃー」
そこには両耳の無い、黒と白のツートンカラーの猫が1匹いた。
「猫か」
猫自体は、別に珍しくも無い。日本には猫なんて何万匹もいる。しかしここは秀知院。つまり学校。そんな場所で猫を見るというのは、結構珍しい。
「なんだあの耳。もしかして怪我でもしているのか?」
更にそれだけじゃなく、猫に本来ある筈の猫耳が両耳が無い。何か怪我でもしているかと思った京佳だったが、猫は元気そうだ。特に痛がるそぶりも見せないし、血も出ていない。どうやら怪我ではないようである。もしかすると、生まれつきなのかもしれない。
「可愛いな…」
どっちかと言えば猫派な京佳は、ついその場にしゃがんで猫を観察する。そして何となくスマホを取り出して、写真を取る。
「にゃー」
その間、猫は全く動じなかった。むしろ京佳のスマホに目線を向けて、まるでポーズを取るかの如くじっとしていた。
(随分人慣れしているな…)
大抵の野良猫は、人が近づくと逃げてしまう。なのにこの黒猫は全く逃げない。もしかするとこの子は飼い猫で、どこからか逃げ出したのかもしれない。
(ちょっとだけ撫でてみるか…)
ここまで動じないのなら撫でても大丈夫だろうと思い、京佳は手を伸ばして黒猫の頭を撫でてみる。
そして京佳の手が黒猫に触れたその瞬間、
京佳は意識を失った。
(ん…?)
京佳が気が付くと、何故か目線が地面に近かった。
(あれ?私はどうしたんだっけ?確か猫に触ってみようとして…)
何でこんな風景を見ているのか思い出してみるが、全然思い出せない。最後の記憶は、自販機コーナーの近くに現れた猫に触ろうとした記憶だ。
(もしかして、バランスを崩して倒れたのかな?)
京佳が出した結論は、猫に触ろうとしてバランスを崩し、そのまま地面に倒れてしまったのではという
事だ。その時に頭を打ってしまい、記憶が曖昧になっているのかもしれない。
(全く、何してるんだ私は。気が緩みすぎだ…な?)
自分に呆れていると、妙な物を見つけた。
黒い布と鞄。あと靴だ。そしてそれをよく見てると、それは京佳が普段着ている、秀知院の女生徒の制服だった。近くには鞄もある。
(え?なにこれ?)
なんでこんなものがここにあるのかわからない。京佳がそれを触ってみようとした時、違和感を感じた。
(あれ?何か私、変じゃないか?)
立とうとしたのに立てない。それどころか、何故か四つん這いになる。あと、なんか体がすーすーする。まるで風呂に入っている時みたいに。もっと言うと全裸になったみたいな感覚を覚えた。
(え?いや本当なにこれ?)
別に京佳は突然自然と調和を目指すような考えに目覚めた訳では無い。至って普通の感性のままだ。でも明らかに今の自分は全裸。それは感覚でわかる。だが脱いだ記憶が無い。
(まずいまずい!兎に角服を着ないと…!)
不特定多数の人間にこんな姿を見られたくない。そういう姿をさらすのは、現状1人だけだと決めている。なので兎に角服を着ようと目の前にあった布に手を伸ばすと、
(……は?)
そこには、慣れ親しんだ肌色の手ではなく。黒い毛に覆われた手が現れた。
「にゃ、にゃー!にゃー!?」
何だこれはと声が出そうになった京佳だったが、それすら出来なかった。
(声が出ない!?)
何故か声が出ないのだ。その代わり、どこかで聞いた事のある鳴き声が聞こえる。というか自分の口から出ている。
(ま、まさか…)
そんな訳無いと思い、京佳はゆっくりと後ろを見てみる。するとそこに映ったのは、黒くて長いしっぽ。更に全身毛でおおわれた体。そこにまるで4つ足の生き物になったかのような感覚。これで嫌な予感は的中した。
(私、猫になってるーーー!?)
立花京佳は何故か今、猫になっているのだと。
(何でだよ…何でこんな目に私が会わないといけないんだ…何か悪い事したか?教えて神様…)
その場で項垂れる猫京佳。でもこんなの、誰だってそうなる。だっていきなり人間から猫になっているのだ。悲観的になるのもしょうがない。
(原因は多分、あの黒猫だよな?)
恐らくだが、こうなって原因は、今はその姿を消している黒猫だろう。あの猫に触った瞬間、京佳は意識を失っている。
そして気が付けば、猫になっていた。意味がわからないが、状況から考えるにそれしかない。
(どうしよう…)
でもだからと言って、どうすればいいか何てわからない。今までの人生で、そして人類史で猫になった人間なんて存在しないのだから。いや、ひょっとするとなった人もいるかもしれないが。
(兎に角だ!ここでじっとしてしていてもしょうがないから助けを呼ぼう!喋れないし、誰が助けてくれるかわからないけど!)
この場にいても埒が明かない。なので京佳は助けを求める事にした。自分が先ほどまで身に纏っていた制服や下着に、一時的な別れを告げて、京佳は人気のある場所へ歩いていく。
(とりあえず知っている人に会おう。まぁ、こうやって動くのは危険かもしれないけど)
猫京佳が思った通り、これは危険を伴う。。経験があるかもしれないが、例えば小学生の頃、学校に犬が紛れ込んだら、それを見た小学生は何故かテンションをあげる。そして昼休みになったら、その犬を追いかけまわすのが普通だ。
これだけならまだいいが、中には犬に向かって石を投げる人もいたりするのだ。流石に高校である秀知院にはそういった人がいないだろうが、万が一がある。
なので出会う人間には、細心の注意を払っておかないといけない。下手すると、怪我をしてしまうからだ。最近は猫を虐待するニュースだって、よく聞くし。
(最初は歩きにくかったけど、なんか慣れたな…)
猫になったせいなのか、この4つ足歩行には直ぐに慣れた。おかげで人が歩く速さと同じくくらいの速度で歩けている猫京佳。
「あ、猫だ」
(この人は!)
そうやって歩いていると、猫京佳に話しかけてくる人物が現れる。それは3年生の子安つばめ。石上の意中の先輩だった。
「へぇー。こんなところに猫なんているんだ。珍しい」
つばめはその場にしゃがみ、猫を軽く撫でる。
「にゃーー!」
(つばめ先輩!私です!立花です!あんまり面識ないかもだけど助けて下さい!)
そんなつばめに、京佳は必死で助けを求めた。しかし悲しいことに、どんなに助けを求めても猫の鳴き声でしか喋れない。これでは何も伝わらない。
「ふふ、撫でられて嬉しいのかな?元気があっていいね」
「にゃああーー!」
(違います!そんなんじゃないです!)
人と猫では生物として色々違いすぎる。例えば喋っている言葉とかだ。これでは意思疎通なんて不可能だろう。
「じゃ、私もうすぐ部活だからいくね」
つばめは最後に猫京佳をひと撫でした後、その場から立ち去っていった。
「にゃぁ…」
残された猫京佳は寂しそうな声を出す。
(わかっていたが、全然話が通じない…これじゃ何を言っても伝わらない…)
言葉の壁が、想像以上に高い。こうなったら、もう身振り手振りでどうにかするしかないだろう。
(それにしても、やはり先輩ってかなりセクシーなの履いてるんだな…)
猫の目線の高さなので、つばめがしゃがんだ時にスカートの中が丸見えだった。その時猫京佳は、つばめの下着を見てしまった。
本人が纏っている雰囲気から何となくわかっていたが、やはり凄い下着を履いていた。どんなのかは是非想像してくれ。因みに色は白だったぞ。
(よし。生徒会室に行こう。そこで白銀に助けを求めるんだ。前に猫が好きと言っていた白銀なら、何とかなるかもしれない)
猫京佳は、意中の人物である白銀に助けを求める事にした。白銀は優しい。よく校内で困っている人を助けているのがその証拠だ。更に少し前に偶然知った事だが、白銀は猫派らしい。そんな彼ならば、助けてくれるかもしれない。
(よし、行こう。可能な限り誰にも見つからないように…!)
こうして京佳のステルスミッションが始まったのだ。
「渚は今日も凄くかわいいよ」
「もうやだー翼くんったらー」
「……」
階段前の廊下でイチャイチャしているカップルと、それを涙目で見つめている女生徒の足元を気配を消して歩き、
「もう1回言ってみろてめぇ…」
「あ?そっちこそさっきの事もう1度言ってみろよ」
階段の踊り場でメンチを切りあっている男女の傍を通ったり、
「フフフ。これで天井分ノ石は溜まりマシタネ。あとは全ブッパするだけデス」
階段を登り切ったところで、スマホを見て微笑んでいる学園長の足元を通ったり、
「今日もかぐや様は美しかった…」
「わかります。まるでこの世に降臨された女神のように…」
廊下でかぐやに対して、最早信仰に近い何かを捧げている女生徒2人の後ろを通り、猫京佳は生徒会室前までたどり着いた。
(なんとか、ここまでこれた…)
時間にして僅か数分ではあるが、猫になったせいなのか随分疲れた。でもようやく生徒会室までこれたのだ。あとはここの扉を開けて、白銀に助けを求めるだけである。
しかし、ここで問題が生じた。
(扉を開けれない…)
猫になっている今の自分では、この大きな扉を開ける事ができないという事だ。これでは白銀に助けを求める事が出来ない。
「にゃーーー!」
(白銀ーーー!開けてくれーーー!てか気が付いてくれーーー!)
猫京佳は前足で扉をカリカリしながら鳴く。だが一向に扉が開く気配が無い。
「にゃぁ…」
(何で私がこんな目に…)
もう本気で泣きそうだ。何か悪い事をした訳でも無いのに、何で自分は猫になんてなってしまったのか。
京佳は今だけは、神様を呪った。
だがその時だ。
「ね、猫…?」
「にゃ?」
後ろから声が聞こえたのは。
「何でこんなところに?」
猫京佳が振り返ると、そこにいたのは生徒会会計監査の伊井野だった。
「にゃあ!にゃあ!」
(伊井野ーー!私だーー!気が付いてくれーー!)
猫京佳、必死のアピール。伊井野に向かって鳴いてみるが、効果は無い。
(は!そうだ!!!)
猫京佳はここで、再び生徒会室の扉をカリカリしだした。
「もしかして、入りたいのかな?」
それを見ていた伊井野は、何かを察して扉を開けた。
「にゃあー」
(ありがとう伊井野)
伊井野に1度お礼を言ってから、猫京佳は生徒会室へ入っていく。
「……え?もしかして私今、お礼言われた?」
生徒会室に入ると、白銀が机で事務仕事をしていた。
「にゃあーー!」
(白銀!私だ!立花京佳だ!助けてくれ!)
そんな白銀めがけて、猫京佳は鳴きながら走る。そして驚くべき猫の運動神経で、生徒会長の机に乗っかるのだった。
「おわ!?何だ?猫?」
白銀もこれには驚く。
「にゃあ!にゃあ!」
(助けてくれ白銀!何故かいきなり猫になってしまったんだ!)
必死になって助けを求める猫京佳。器用に手を使って自分を指さすような動きをしたりもしているが、どうやっても人間のようにはいかない。結果、よくわからない妙な動きになってしまう。
「随分元気な猫だな」
「あの白銀会長、ひょっとしてその猫、会長の飼い猫ですか?」
「いや全然。うちにペットを飼う余裕なんてないし」
やはり通じていない。どうしても言葉の、もとい種族の壁が立ちふさがる。
「にゃあ…」
(やはりだめか…)
その事実に落ち込む猫京佳。白銀なら助けてくれるかもと思ったが、やはりだめ。もう万策尽きた。
「どこから入ってきたんだろうな」
「さぁ?何故か生徒会室の前にいましたけど」
「それにこの子、左目を怪我しているのか?なんか十字傷みたいなのがあるし」
「あ、本当だ。動物病院に連れて行った方がいいですかね?」
「いや、どうもかなり年月が経っている傷みたいだ。今更動物病院に行っても治らないだろう」
(ああ、だから視界に違和感が無かったのか…)
ここまで歩いてきたが、猫京佳は相変わらず左目が見えていなかった。どうやら猫になっても、左目は人間と変わっていないようである。
「あ、ふわふわしてていいなこれ」
そして白銀は、そんな猫京佳の頭を撫でる。
「にゃ」
(あっ…そこいい…)
猫になったせいなのか、頭を撫でられるのは気持ちがいい。おかげで、変な声が出てしまう。
「よっと」
そう思っていると、白銀は猫京佳を抱き上げてた。
「にゃ!?」
(ちょ!?そこは…!?)
そして足を少し広げ、股間部分を見る。
「メスだな」
「メスでしたか」
白銀はこの猫がメスかオスかを確かめる為に、抱き上げたのだ。股間にはオスにあるべきものが無かったので、白銀はこの猫をメスだと判断する。
(もう、お嫁にいけない…)
そして猫京佳は羞恥心で死にたくなっていた。なんせ股間部分を見られたのだ。今は猫になっている京佳だが、中身は人間のまま。こんな事されたら、恥ずかしいに決まっている。元に戻れた暁には、もう白銀に責任を取って貰うしかないと思うのだった。
「にしても、やっぱり猫っていいな」
「わかります。見ているだけで癒されますよね」
猫京佳のそんな内情なんて知らない白銀は、猫京佳をそのまま自分の膝の上に乗せる。そして再び頭を撫でる。
「最高だなこれ…」
白銀は猫派である。そんな彼にとって、こうして猫を自分の膝の上に置いて仕事をするというのは、ちょっとして憧れがあったのだ。
「あの、白銀会長。あとで私もいいですか?」
「ああ、勿論」
それを見ていた伊井野もうずうずする。別に猫派という訳ではないのだが、こんな光景を見たら羨ましがるのも仕方が無い。人間はやはり、可愛い生き物が好きなのだ。
「にゃぁぁ…」
(あぁぁ…ダメになるぅ…)
そして猫になっている京佳は至福の時間を味わっていた。撫でられると気持ちがいい。しかもここは白銀の膝の上。好きな男の膝の上だ。これが人間の姿のままだったら、まるでお家デートの真っ最中みたいな感じになる。
「失礼します。お2人共何しているんですか?」
そうやって猫京佳が若干トリップしていると、かぐやが生徒会室にやってきた。
「ああ、四宮。いやちょっと猫がな」
「はい、猫がいるもので」
「はい?猫?」
かぐやが机に近づくと、確かに黒猫が白銀の膝の上にいた。
「何ですかこの猫は?」
「わからん。さっきいきなりここにきたんだ」
「入り込んだって事ですか」
そう言いながらかぐやは、猫京佳を見る。
「会長。野良猫だった場合、ノミやダニが体に付着しているかもしれません。あまり膝の上に乗せておくのはオススメしませんよ?」
「ん?俺は別に気にしてないからいいぞ。むしろこっちの方が落ち着くから、暫くこのままでいいし」
「そ、そうですか…」
そして猫を見るや否や、白銀から引きはがそうとする。その時、猫京佳は見た。
もの凄く自分を睨みつけてくるかぐやを。
(こわ!?どうしたんだ四宮は!?そこまで猫が嫌いなのか!?)
かぐやは犬派である。そんなかぐやだから、今こうして猫になった自分を睨んでいると京佳は思った。だが実は違う。
(この猫畜生め。よくもまぁ会長の膝を独占なんて真似をしてくれてますね。今日、生徒会の仕事が終わったら必ず保健所に連れていくから覚悟していなさい)
かぐやは猫に嫉妬しているのだ。いくらなんでも猫に嫉妬はしないだろうと思うかもしれないが、かぐやは無自覚なだけで、相当に嫉妬深い。
そんなかぐやであれば、自分の意中の男の膝を独占している猫にだって嫉妬する。四宮かぐやとは、そういう超面倒くさい女なのだから。
そうやってかぐやが猫京佳に嫉妬していると、
「会長ーーー!!一大事ですーーー!!」
藤原が勢いよく生徒会室の扉を開けて入ってきた。
「どうした藤原。そんな大声出して」
「藤原さん。はしたないですよ」
「それどころじゃなんです!!本当に大変なんですよ!!これ見て下さい!!」
そう言うと藤原は、手にしていた何かを生徒会室にいた皆に見せる。
「何だそれ?黒い、布?」
「これはうちの女子生徒の制服です!!」
「?それがどうした?」
要領を得ない藤原の言葉に首をかしげる白銀。だが次の言葉を聞いて、白銀は驚愕する。
「これ、京佳さんの制服なんです!鞄に生徒手帳が入っていいたから間違いありません!そしてこれが、何でか自販機コーナーの地面に散らばっていたんですよ!!それも下着ごと!!」
『はぁ!?』
それを聞いて、かぐやと伊井野も驚く。
「会長!これってもしかして、京佳さんが学校内で誘拐されたんじゃないんですか!?逃げられないよう、誘拐班は誘拐した女の人を裸にしておくって前にテレビで見ました!」
「そんな!で、でも藤原先輩!何かの勘違いとかじゃないんですか!?」
「ミコちゃん!京佳さんが学校内で突然裸になったとでも言うんですか!?それに万が一そうでも、こんな風に全部その場に脱ぎ棄てるなんてする訳ないでしょう!これはもう誘拐、もしくは何か別の犯罪に巻き込まれていると考えた方が自然です!」
「た、確かに!もしかすると、立花先輩は学校のどこかに監禁されているとか…?」
藤原はパニック寸前だった。確かに状況から考えるに、誘拐と思うだろう。それが自分の友達であれば猶更だ。
(何故か脱ぎ散らかしている制服。その場に無造作に落ちていた鞄。更に俺は今日、放課後になってから立花を見ていない…これは本当に?)
冷静に考えているが、白銀もかなり慌てている。なんせ自分が好きになってしまった女が何かの犯罪に巻き込まれているかもしれないのだ。もしかすると今頃京佳は、見ず知らずの男たちに酷い目に合わされているかもしれない。
(ざっけんな。もし本当にそうなら絶対にブチのめしてやる…)
白銀にしては珍しく殺気を出す。しかしこんなの、誰だってこうなるだろう。
「藤原、落ち着くんだ。ここで騒いでもしょうがない。四宮、直ぐに学校の警備員に連絡を取ってくれ。俺は学園長のところへ行ってくる」
「わかりました。ついでに四宮家の者にも連絡をしておきます」
普段、京佳の事を目の敵にしているかぐやも動き出す。いくら白銀を巡って京佳とぶつかる事があっても、京佳は友達なのだ。
なので本当に京佳が何かしらの犯罪に巻き込まれているのなら、絶対にその犯人を許しはしない。
そして全員が京佳を探すべく動こうとしたその時、
『!?』
突然、生徒会室が光に包まれた。
「な、何だ?」
「う、眩しい…」
「め、目がぁ…」
「な、何なんですかぁ?」
「いたた…」
全員が目を押さえて、ようやく視界がクリアになっていくと、
『……え?』
そこには、白銀の膝の上に座っている京佳がいた。
全裸で。
『……』
その場にいた全員が、言葉を失う。何で裸のか。今までどこにいたのか。どうやってこの場に現れたのか。だがどれもこれも、口から出てこない。
京佳も、どうしてこのタイミングで猫から人に戻れたか分からずに硬直している。唯一わかるのは、今自分は全裸で白銀の膝の上に座っているという事だけ。
(え?なにこれ?本当になにこれ?何で立花が俺の膝に座っているの?てかめっちゃいい匂いするし超柔らけぇ…あとやっぱり大きいな。制服越しでもわかっていた事だけど、直に見るとまたよくわかるなこの大きさ。マジで1回揉みしだいてみたいてか超エロイ)
白銀も思考が迷走する。突然目の前に好きな女が裸で現れたのだから、そうもなるだろう。借りにこれが石上とつばめでも、全く同じ反応になるのは間違いない。
そしてこの状況に頭がいっぱいいっぱいになった京佳は、
「ふえぇぇ…」
普段からは想像できないような声を出して泣き出した。
「「「見ちゃダメです会長ーーー!!」」」
「ぐっはぁ!?」
それを見たかぐや、藤原、伊井野の3人は、同時に白銀に顔めがけて拳を出した。
「立花さん!色々言いたい事はありますが、先ずは服を着てください!!」
「はい京佳さんこれ!これ京佳さんの制服と下着ですから!!」
「私達たちが白銀会長を抑えている間に早く!!」
「ぐす……うん…」
その後、女子3人が白銀を抑え込んでいる間に、京佳は服を着るのだった。
着替えた後で、京佳は自分の身に起こった出来事を話したが中々信じて貰えなかった。そりゃ『突然猫になっていきなり人に戻りました』なんて言っても誰も信じないだろう。
最終的には何とか信じて貰えたが、何でそうなったかは結局分からずじまいで、白銀の『何も無かった事にしよう』という言葉により、この件を無かった事にした。考えても仕方ないし。
でも白銀は、真近で見た京佳の素肌の事が全然忘れる事ができず、暫くの間悶々とした夜を過ごす羽目になるのであった。
そして京佳は『もう白銀に責任を取ってもらうしかないのでは?』と考えるようになっていた。
没ネタではかぐや様と京佳さんが猫になって、両耳の無い猫に色々教わりながら東京を散策するというのを考えていましたが、絶対に4~5話くらい使うので却下にしました。
でも京佳さんって猫より犬っぽいよね。
感想は明日返信しまします。
次回はちゃんと本筋進めたい。