もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・ 作:ゾキラファス
そしてもう4月。新社会人、新学生の人方々。新しい生活、頑張って下さい。
追記。ごめんなさい、ちょっと編集してます。
時間は少しだけ遡る。電話があると言っていたかぐやは、京佳に断りを入れて電話に出るべくその場を離れる。少し離れたところで電話に出ると、早坂の声が聞こえた。
『ようやく合流できそうなので、今から言う場所まで来て下さい』
早坂は端的にそう伝えると、電話を切る。そしてかぐやは、早坂に言われた通りに、移動。
「遅いわよ早坂。一体何をしていたのよ」
「すみません。妙な人達に捕まってて…」
こうしてかぐやは、ようやく早坂と合流できたのだ。
因みに早坂が遅れた理由は、男装しているせいで北高の女生徒たちから声をかけらたからである。おかげで当初の予定時間を大幅に過ぎている。
何時もは主人のかぐやの素直にならない行動に悪態をつく早坂も、流石に今回は反省した。
「それで、私はどうすればいいのかしら?」
本来なら説教のひとつくらいしておきたいかぐやだが、今は本当に時間が惜しい。
午前は過ぎ去り、既に昼食すらもう済ませてしまっている。北高の文化祭は夜8時までなので、もうあまり時間が無い。なのでさっさと早坂の作戦を聞き、それを実践したい。
何時ものかぐやであれば、こうも積極的に動く事は無いだろう。なんせプライドが高いかぐやのスタンスは、待ちなのだ。白銀が行動を起こさない限り、自分から動くことは先ずしない。仮に動いたとしても、頓珍漢な事ばかり。
しかし、北高の文化祭前に早坂に散々言われたり、何より先ほどの昼食で、京佳は白銀にあーんをした。
しかも白銀は、それを受け入れていた。それも、まんざらでもない顔をして。
そのせいで、流石にかぐやは焦り出したのだ。
このままでは本当に、白銀が京佳に取られると。そうなってしまったら、自分はもう生きていける気がしない。もしかすると、廃人になってどこかの病棟に入院してしまうかもしれない。
だからかぐやは動く。この際プライドを多少捨ててでも、かぐやは自ら動く。
だって四宮かぐやは、白銀御行が好きなのだから。
「一応、合流する前に学校内を見てきましたので、それを元に作戦を考えました」
「聞かせてちょうだい」
「この学校の出し物には、お化け屋敷があります」
「へぇ。定番ね」
「南校舎の3階、そこに2年生が作ったお化け屋敷がありますので、そこに白銀会長と入って下さい。立花さんは私が足止めしますから。まぁ立花さんは幽霊が苦手なので、そもそも入る事が無いと思いますが念のため。そして中に入ったら、お化けが怖い振りをしながら白銀会長の腕に抱き着くなりなんなりしてください。そうすれば、白銀会長は絶対にかぐや様を意識します」
最早テンプレとも言える早坂の作戦。しかし、単純故に効果はある。これならば、先程の京佳の『あーん』を上書き出来るだろう。
「だ、抱き着く…」
「今更恥ずかしがらないでくださいよ」
早坂の作戦を聞いたかぐやは、頬を少し赤らめる。確かにこの作戦ならば、白銀がかぐやを意識する可能性はグンッと上がるだろう。白銀だって思春期の男子なのだ。絶対にドギマギする。
でも、やはり恥ずかしい。いくらそれが手っ取り早い方法だとしても、恥ずかしい。
「はい、想像してみましょう。立花さんと白銀会長が2人きりで遊んでいる姿を。そして、それを影から眺めている自分の姿を」
だがこんな事は織り込み済み。早坂は、最早伝家の宝刀になっている脅し文句でかぐやを動かそうとする。
「やるわ」
「よろしい」
おかげでかぐやは動いた。まるで躾けられた犬だ。
「でも早坂。立花さんをどうにかできるの?立花さんだったら、例え会長と離れてもどうにかして探し出してきそうだけど」
かぐやの言う通り、京佳の行動力は凄まじい。どれほどかと言うと、かぐやしか見ていなかった白銀に自分を意識させる事に成功していると考えれば、よくわかるだろう。
そんな京佳であれば、白銀が居なくなったとしたら、全力で探して来ると思うのも当然だ。
「そこは大丈夫です。策がありますので」
「大丈夫なのね?」
「はい。信じて下さい」
「わかったわ。信じるわよ」
「お任せを」
だが早坂に秘策があるらしい。かぐやはそんな早坂の言葉を信じる事にする。
「では、白銀会長が戻ってくる前に動きましょうか」
「ええ。行きましょう」
こうしてかぐやと早坂は動き出す。京佳にこれ以上、出し抜かれないように。
「あれ?」
かぐやが元いた場所に戻ってくると、そこには白銀どころか京佳も居なかった。もしかすると人込みで見失っているだけなのかもしれないと思い、かぐやは周りを探す。
すると、白銀と京佳の代わりに別に人物を発見した。
「あ、四宮さん。おかえりー」
その人物とは、京佳の友達で北高の生徒の恵美だった。そしてどういう訳か、その顔は笑顔である。
(何故かとても嫌な予感がする…)
何故かわからないがそう思うかぐや。額から汗を一筋流れる。胸騒ぎが止まらない。そして体も震えている。
「えっと、由布さん。少しお尋ねしますが、会長や立花さんはどちらに?」
かぐやは聞いたら後悔すると思いつつも、聞かずにはいられなかった。他に2人の行方を知ってそうな人もいないし。
「あ、あの2人なら少しだけ離れているよ。何でもちょっとだけ寄りたいところがあるんだって」
嫌な予感は的中。かぐやが早坂と話している間に、京佳はかぐやを出し抜き、白銀と行方をくらませてしまった。
(出遅れたーーーー!?)
これは非常にマズイ。ただでさえ白銀は京佳を意識し、更に昼食をとっている時にはあーんを受け入れていたのだ。それだけでも危ういというのに、自分がいない間に京佳はかぐやを出し抜いた。
つまり今、どこにいるかはわからないが京佳と白銀は2人きりだ。これでは本当に、京佳は白銀とゴールインしてしまうかもしれない。
「そ、そうでしたか。それで、2人はどちらに?」
このままではいけない。今すぐ2人の後を追って邪魔をしなければ。
「ごめーーん!それはわからないんだーー!でもその内戻ってくるだろうし、ここで待っていればいいと思うよー?」
だが恵美は2人の行先を知らないらしい。更に、ここで待っていればと提案する。
(この女!さては私の足止めをしているわね!?)
しかしかぐやは、恵美が嘘をついているのを見抜いていた。日本トップの財閥の令嬢であるかぐやは、相手が嘘をついているかどうかが絶対では無いがわかるのだ。そういう教育を受けている。
そして今の恵美は嘘をついている。これは間違いない。
「あ、フランクフルト食べる?焼きたてだよ?」
持っているフランクフルトを差し出しながら、露骨に自分の事をこのに留めようとしている。こんなのどう考えても足止めだろう。
(何としてでもこの場から動いて2人を探さなければ!!)
このまま座して待つなんてしない。ここで動かなければ、絶対に後悔するとかぐやは直感で感じたからだ。
「申し訳ありません。とても美味しそうではありますが、もう少し別の屋台を見てからにします。それでは」
かぐやは恵美にそう言うと、その場を足早に離れる。絶対に、京佳と白銀を2人きりにさせてなるものかと思いながら。
(どこ!?会長は何処なのーーー!?)
こうしてかぐやは、行方をくらませた2人を探しに行くのだった。
(ごめんね四宮さん。でもさ、私は京佳には絶対に幸せになって欲しいんだ)
かぐやが立ち去った後、恵美はフランクフルトを食べながら謝罪する。恵美は京佳が、中学の頃の事件のせいで恋愛にトラウマを負った事を誰よりも知っている。下手をすれば、京佳は2度と誰かを好きになる事が出来なかったかもしれない。
(あなたも白銀くんが好きなんだろうけど、京佳だって白銀くんが大好きなんだよね)
でも京佳は、再び人を好きになれた。その相手が白銀だ。これを逃せば、本当にもう2度と京佳は恋愛が出来なくなるかもしれない。
そんなの、あんまりにも京佳が報われない。だから恵美は、親友の恋を全力で応援するし手助けする。
(京佳。頑張ってね)
フランクフルトを頬張りながら、恵美は親友を応援した。
尚その際、その姿を見た何人かの男子が前かがみになっていた。
(どこ!?一体どこにいるのよ!?)
かぐやは必死だった。だってこのまま2人が見つからなければ、本当にもう2度と追いつけなくなるかもしれない。そうならない為には、手遅れになる前に2人を見つけないと。
(電話もつながらないし!手がかりが全く無い!本当にどうしよう!?)
京佳と白銀にそれぞれ電話をしてみたが、案の定繋がらない。コール音はするので、電源を切っている訳ではないのだろうが。
(落ち着きなさい私!立花さんの視点になって考えればいいのよ!!)
かぐやは自分を落ち着かせながら、京佳の視点で考える。
(立花さんだったら会長と2人きりになった時、会長と距離を一気に縮めようとする筈。その為にする事といえば、ボディタッチとかかしら?例えば、人気の無い場所で肩を寄せ合っていたり、腕を組んだりとか…)
自分では出来ない事を出来てしまうのが京佳だ。もしかすると、今頃2人で隠れてしっぽりと楽しんでいるかもしれない。
(人気の無い場所…空き教室?体育倉庫?校舎裏?……校舎裏?)
空き教室がどこにあるかなんてわからない。2人が他校の体育倉庫に無断で入るとは考えにくい。だとすれば、誰でも行けて人気の無い校舎裏が1番怪しい。
(他にあても無いし、行きましょう)
情報が全く無いので勘に近いが、とりあえずは校舎裏に行く事にした。
(そうだ!早坂にも連絡を…!)
早坂にも手伝って貰おうとした時、かぐやの目に校舎横に立っている見覚えのある金髪が見えた。見間違えようが無い。あの金髪、あの背丈に黒い学生服。間違いなく白銀だ。
(いた!会ちょ……)
白銀を見つけて近づいた時、かぐやに視界に飛び込んできたのは、京佳と絡ませるように手を握った白銀だった。おまけに、身体の距離もやたら近い。まるで、これからキスをするかの如く。
「ナニヲシテイルノ?」
怒りで視界が真っ赤になるというは、こういうものなのかとかぐやは思う。今、かぐやの心はまるでマグマにように煮えたぎっている。だというのに、頭は信じられないくらいクリアだ。
もしこれが、かぐやが1人で街に出かけて、そこで偶々2人があんな事をしているという状況なら、落ち込むだけで済むだろう。だってその場合だと、白銀を誘っていない自分が悪いのだから。
しかし京佳は、かぐやがいない間に白銀と2人で抜け出し、あんな事をしている。元々3人で来ているのにこの仕打ち。当然許せる訳が無い。
「コロシテヤル」
かぐやはゆっくりと2人に近づく。そして京佳を始末しようとする。そうでもしないと、この気持ちは収まらない。
しかし2人の距離がかなり近いのを見たかぐやは、ふと思った。
もしかして自分がいない間に、あの2人は付き合う事になったのでは、と。だからこそ、まるでキスするくらいに距離が近いのではないのか、と。というか、あれはこれからキスをするのではないとか、と。
「……」
ありえる話だ。京佳はかぐやに出来ない事をどんどんやっていく子。更に今の白銀は、ほぼ間違いなく京佳を意識している。
そんな状況なら、京佳が白銀に告白をして、それを白銀が承諾する可能性は十分にある。でないとあの距離感はありえない。
(せめて確かめてからにしましょう…)
未だに怒りが収まらないかぐやだが、せめて確認だけはしようと思った。裁判官だって、罪人の弁明を聞く。そしてその後に刑を執行する。
かぐやは怒りを抑えながら、ゆっくり2人に近づくのだった。
結論からいうと、かぐやの勘違いだった。2人は別に告白からのキスをしようとしている訳では無く、占いの結果、触れ合うと良い事が起きると言われたので手を握っていたとの事。
それを聞いたかぐやは、ホッと胸を撫で降ろすと同時に、これはチャンスだと感じる。
白銀は優しい。そんな彼の良心に訴えかけるような事を言えば、京佳の時と同じように、かぐやは白銀と2人きりになる事が可能だ。
そしてそうなった後は、先程京佳がやった事以上の事をすればいい。幸い、早坂という援護も期待できる。彼女に京佳をしっかり足止めさせておいて、その間に例の作戦を実行すれば問題ない。
そう思ったかぐやは、早速行動に移す。白銀の良心が痛むような言葉を言い、割って入ってきそうだった京佳にも釘を差す。
そして白銀と2人っきりになれた際には、早坂にスマホでメッセージを送るのも忘れない。こうしてかぐやは、邪魔者がいない時間を手に入れた。
(絶対に会長の気持ちを、私で上書きしてやるんだから…!)
これ以上の遅れは許されない。ここで何としてでも京佳を突き放さないと、もう本当に勝ち目が無くなる。
故に、多少プライドを捨てでも、かぐやは白銀と距離を詰める。だって四宮かぐやは、白銀御幸行が大好きなのだから。
「ここがそうか」
「そうみたいですね」
南校舎の3階までやってくると、早坂の情報通りにお化け屋敷が存在した。
「ところで、どうして四宮はお化け屋敷に?」
「実は、私こういう雰囲気のお化け屋敷に行った事がなくて、それで興味をひかれたんですよ。他とはどう違うのかとか」
「成程」
2人が入ろうとしているのは、学校をモチーフにしているお化け屋敷だ。
以前、夏休みに行ったおばけは宇宙船をモチーフにしていたので、確かに雰囲気が違う。
「いらっしゃいませ」
入口には、やたら髪の長い女生徒がいた。それにしても、黒くて綺麗な髪である。
「えっと、高校生2人で」
「はい。1人500円です」
2人は自分の財布から、それぞれ500円を出す。
「それと、こちらをどうぞ」
「「え?」」
そしてお金を渡すと、受付の女生徒が黒い何かを2人に差し出す。
「あの、これは?」
「合羽です」
「かっぱ?」
それはレインポンチョと呼ばれるタイプの合羽だった。
「えっと、どうして合羽なんて?」
「はい。こちらのお化け屋敷、色んなものが飛び散る演出がされているんです。なので、その際着ている服が汚れたりするので、それの防止にこうして合羽を配っているんです」
どうやらこのお化け屋敷、色んなものが飛び散るらしい。
((いや飛び散るって、何が…?))
それを聞いた2人は不安になる。一体、何が飛び散るというのだろうか。流石に臓物は無いだろうが。
「貴重品がありましたら、入って直ぐの所に設置してあるロッカーに入れて下さい。その時に中にいる係りの者がカギをお渡しします。出口から出たら、またここに戻ってきてくれたらいいので」
「わ、わかりました…」
スマホや財布、腕時計が汚れたら困るので、白銀はロッカーを使う事にする。かぐやも、バックを汚したくないので使う事にした。
「それでは、どうかお気をつけて。あ、稀に本物がいますけど、害はないのでご安心下さい」
入口に入った時、受付の女生徒が不吉な事を言っていたが、気にしたら大変な事になると思ったので、2人はあえて無視した。なんか怖かったし。
「随分暗いな…」
「ですね…」
中はかなり暗かった。天井に裸電球が点いてはいるが、それでも暗い。足元がよく見えないので、正直歩くの危なっかしい。
「きゃああああ!?」
「うわああああ!?」
あと、どこからか悲鳴も聞こえる。恐らく、自分たちより前に入った人のものだろう。
「よし、兎に角行くか」
「はい」
白銀とかぐやは合羽を着た状態で歩き出す。
(ロマンチックではないわね…)
合羽を着ている男女が歩くその姿。まるで雨の日の小学生の登校風景。ロマンのかけらもありゃしない。
(しかし、会長と2人きりなのは事実です。これを生かさなければ…!)
だが邪魔者がいないこの状況。逃す訳にはいかない。なんとしてでも、白銀に自分だけを意識させるようにしなければ。
「か、会長…少しいいでしょうか?」
「どうした?」
「その、流石に暗くて足元もよく見えませんし、正直少し怖いので、手を握って貰ってもいいでしょうか?」
目を少しウルウルさせながら、早速行動を起こすかぐや。早坂には腕に抱き着くよう言われているが、流石にいきなり抱き着く真似は出来ない。それは、幽霊役の人が出てくるまで待つべきだ。
「えっと、いいのか?」
「は、はい…」
「わかった。じゃあ、ほら」
少し躊躇しながらも、白銀はかぐやに手を指す出す。そしてかぐやは、白銀の手を握る。
(か、会長と!手!手を握ってる!!)
尚、顔は平然を装っているが、内面はこんなんである。
(四宮の手って、小さいな…)
そして白銀、彼も少しドキドキしていた。暗い屋内、人気も無く、好きな子と一緒というこの状況。男だったら、誰だってドキドキする。
「あぁぁぁぁぁ……」
そう思いながら歩いていると、前の角からお化け役であろう生徒が現れた。全身ボロボロのスーツ姿に、頭部は包帯でグルグル巻きにされている。
「お、おう。結構本格的な感じだな」
白銀、あまりの完成度に少しビビる。
(よし!ここにね!)
そしてかぐやはタイミングを決めた。目の前にいるお化け役の生徒が、あと少し近づいてきたら、白銀の腕に抱き着こう。
その際に、悲鳴もあげよう。そうすれば、白銀だって意識せざるを得ないだろう。
と、その時だった。
パァァァン!!
「「……え?」」
目の前にいた、お化け役の生徒の頭が弾けとんだのは。そして頭部を失ったお化け役の生徒は、そのまま倒れる。首からは、血液らしきものがドクドクと流れてた。周りには、包帯の中にあったでろう臓物と思わしき物が散らばっている。それは、白銀とかぐやの合羽にも付着していた。
(いやグロイ!?)
白銀、マジビビりする。入る前に色々飛び散るとは聞いていたが、まさか頭の中身が飛び散るなんて思わなかった。完全に想定外の事態だ。
「だ、大丈夫か?四宮?」
「え、ええ…驚きましたけど、大丈夫です…」
かぐやも最初の予定である、白銀に腕に抱き着くという作戦が頭の中から消える程の衝撃。
(いえまだよ!お化け屋敷はまだ始まったばかり!まだチャンスはあるわ!)
しかし直ぐに頭を切り替える。確かに凄まじい衝撃だったが、これからこういう仕掛けがあるとわかっていれば、備える事ができる。次の仕掛けの時に、白銀に抱き着けばいい。そう思い、かぐやと白銀は進んでいく。
(ん?何だ?)
すると白銀、無いかに気づく。何故か、合羽が少し濡れているのだ。よくみると、上から無いか水のようなものが降っている。
そして上を向いて見ると、
「うあぁぁ……あああぁ…」
そこにはエビぞりになって、全身から血を垂れ流している人がいた。
「…………」
白銀、絶句。いくらなんでも、これはやるすぎな気がする。普通に怖い。後、どうやってあの状態をキープできているのか聞いてみたい。だってあんなの、絶対に背中が辛いだろう。
(見なかった事にしよう…)
幸い、かぐやは気が付いていないみたいだ。ここで自分だけがビビったとかぐやに知られたくも無いので、白銀は無視する事にした。
それからも、2人はお化け屋敷の中を進んでいく。鏡を見たら顔が無い女性が写っていたり、壁から突然腕が生えてきたり、全身から色んなものが出てしまっている人恐ろしい人をみたりと、兎に角クオリティが凄いお化け屋敷の中を進んでいった。
そうして進んで行くと、やや開けた場所に出る。その両端には、人が入れそうなくらい大きなロッカーがあった。
(あれ絶対に中から出てくるやつだろ…)
あからさまな設置。ホラゲーで言えば、重要アイテムが置かれている場所のすぐ近くに、大きなカプセルの中に入っている化け物が、アイテムを取った瞬間に出てくるやつだ。
(いや!ここでビビるな!男だろ!俺!!)
絶対に出てくると思いながらも、白銀はかぐやの手をひきながら進む。
(よし!ここ!絶対にここね!!)
そしてかぐや。彼女も人の気配を感じたので、両端に設置されているロッカーから、人が出てくるのを何となくで理解した。
(ここで抱き着く!そうすれば、会長は私だけを見てくれる筈!!)
正直恥ずかしい。それ故に、ここに来るまで白銀に抱き着く真似をしなかった。だが京佳に負けたくないという気持ちを思いだし、かぐやは覚悟を決める。
そして歩いていくと、
「「あ゛ぁぁぁぁぁ……」」
両端のロッカーがゆっくりと開き、中からグロテスクなメイクをした男女が出てきた。それを合図に、かぐやも遂に動く。
「きゃあっ…!?」
かぐや、ようやく白銀の腕に抱き着く。それもがっつりと。
(うおおおおおお!?)
突然かぐやに抱き着かれたの白銀、動揺。腕から伝わる柔らかい感触、そして良い匂い。もしこれが半年前だったら、白銀は完堕ちしていただろう。
「「あ゛あ゛あ゛あ゛!!??」」
そしてそれを見ていたお化け役の男女はイラっとした。ただでさえこんな暑苦しい場所で待っているのに、目の前で行われるイチャコラ。自分たちだってあんな事をしたい。なのでその怒りを、目の前の2人にぶつけた。勿論、ただ驚かすだけで手は出さないが。
「うっお!?」
そして白銀は、そんなお化けからかぐやを守るように動く。具体的にいうと、腕に抱き着いているかぐやを後ろに回し、自分をお化けから身を護る盾になった。
「「っそがぁぁぁぁぁぁ!!!!」」
それを見ていたお化け男女2人。今度はつい演技を忘れて叫ぶ。怖い。
「四宮!こっちだ!」
「は、はい…!」
そんなお化けに驚いたのか、白銀はかぐやの手をひいて奥に進む。
「畜生が…」
「マジないわー…」
残されたお化け男女は悪態をつきながら、再びロッカーへ戻るのだった。
「大丈夫か四宮?急に手をひいちゃったけど」
「大丈夫ですよ。どこも怪我してませんし」
奥に進んだ2人は、廊下のような場所で一息ついていた。
「それにしても、会長はやはり頼りになりますね」
「え?」
「だってさっき、お化けから私を守ってくれたじゃないですか。世の中には、自分だけでも助かろうとする人もいるというのに、会長は私を守ってくれた。中々出来る事じゃありませんよ」
かぐやは白銀を褒める。勿論、手は未だに繋いでいるままだ。
「そ、そうか?」
「はい。そんな頼りになる会長は、とても素敵ですよ。かっこよかったです」
「っ!?」
そして笑顔で白銀にそう言った。それを聞いた白銀は、顔を赤らめる。
(ここよ!ここで一気に攻めてやるんだから!!)
無論、かぐやがただ普通に白銀を褒めている訳が無い。かぐやはここで、白銀に自分だけを見るように仕向けているのだ。手を握っていて、周りに人気は無く、いつも邪魔してくる邪魔者が存在しない。
これだけの条件が揃い、ここで一気に畳みかけるように動けば、もう京佳の事を白銀が考える事はないだろう。
「かっこ、いいのか?」
「はい。会長以上に素敵でかっこいい男性なんて先ずいませんよ。もし私が誰かと付き合うのなら、会長のような人がいいです」
「!?!?」
かぐやの衝撃の発言。それを聞いた白銀は驚きを隠せない。
(四宮が、俺みたいな人と付き合いたい!?それはもう…!!)
遠回しだが、まるで告白だ。普通、好きでも無い相手にそんな事言わない。そう考えた時、白銀は自分の体温と心拍数が上がるのを感じる。
(恥ずかしい……でも!ここで恥ずかしがって手を止めたらダメ!!)
一方かぐや。何時もならこんな事、恥ずかしくて言えずに終わる彼女だが、今は一味も二味も違う。
最近の京佳の追い上げは凄まじい。その結果、白銀は京佳を意識している。このままでは、白銀と恋人になる事は出来なくなるかもしれない。
そんなのは絶対に嫌だ。だから羞恥心とプライドを捨ててでも、かぐやはここ決める勢いで白銀にアプローチをする。
「会長…私は『みぎゃあああああ!?』…」
言葉を続けようとした時、悲鳴が聞こえた。
「会長…私は『にゃあああああ!?』……えっとですね、私は『いきゃあああああ!?』あーもううるさいですね!!何なんですか!?」
かぐやが喋ろうとするたびに、悲鳴が聞こえる。そしてかぐやが振り返えると、
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛! ?」
そこには全身ずぶ濡れの黒いてるてる坊主みたいな何かがいた。そしてそれは、凄い勢いで2人に向かってきていた。
「「ぎゃああああああ!?」」
白銀とかぐやは絶叫し、脱兎の如く走り出す。尚この時も、白銀はかぐやの手を離さなかった。
「何ですかあれは!?」
「知らん!でももしかすると本物かもしれん!!逃げよう!!」
受付の女生徒に言われた事を思い出しながら、2人は逃げる。しかし、
「あ」
「会長!?」
その途中で白銀はこけた。
「四宮!!先に行け!!」
「そ、そんな事できません!!」
かぐやだけでも逃がそうとしたが、かぐやはそれを拒否。
「うお!?」
そうこうしているうちに、黒いお化けは白銀に覆いかぶさった。
「こ、この!会長から離れなさい!!」
黒いお化けを引きはがそうとするかぐや。とその時、
「うう…ひっぐ…」
「「ん?」
黒いお化けが泣いているのに気が付く。
「ひっく…えっぐ…しろがねぇぇ…」
そして聞き覚えのある涙声で、白銀の名前を口にする。
「……立花?」
「立花さん?」
こうして2人は、黒いお化けの正体を知ったのだ。
「で、どうしてたんだ立花?」
お化け屋敷から出た3人は、ロッカーに預けた荷物を取った後、直ぐ近くにある階段の踊り場で話していた。
「いや…そのな…」
口ごもる京佳。流石に『2人が気になって尾行していました』なんて言える筈も無い。
というかそんな事言ってしまえば、白銀に『約束を守らない女』として軽蔑されるかもしれない。そして当然、かぐやがそれを見逃すはずもない。
(早くボロを出しなさい立花さん。サクっと終わらせてあげますから。というか早坂は何をしているのよ。足止めする筈だったでしょう)
案の定、かぐやは京佳がボロを出すのを待っていた。
「ごめーーん!私のせいなんだーー!」
「「え?」」
そんな時、恵美が現れて説明を始める。
「実はさ、京佳って本当にお化けが苦手なんだけどね、流石に高校生にもなってそれはどうかと思ったから、うちでやっているお化け屋敷で耐性を作ろうとしたんだー。まぁ、結果は大失敗だったけど」
そして恵美は、自分のせいだと説明する。
「そうなのか立花?」
「う、うん…流石にいつまでもお化けがダメっていうのはどうかと思ってたし、渡りに船だと思ったんだ…2人が何時戻って来るかもわからなかったし。まぁ、やっぱダメだったけど…」
京佳も恵美の言い訳に合わせた。
「そうか。確かに苦手を克服しようとする事は大事だな。でも無茶はしちゃダメだ。無茶すると余計に苦手になったりするし」
「そう、なのかな?」
「ああ。苦手を克服するんなら、先ずは簡単な事から始めろ。お化けが苦手なのに、いきなり1に人でお化け屋敷は無茶が過ぎる」
「そうか。ありがとう白銀。次からはもう少し簡単な事から始めるよ。誰かとホラー映画を観るとか」
白銀は京佳を信じてそう言う。
(くっ!会長がああ言っているんじゃしょうがない!今回は手をひいてあげます!)
ここで白銀に対して意見をしてしまったら、折角自分へ意識を向けたのが台無しになるかもしれない。
(それはそれとして、早坂には文句言わないと)
どういう訳か、早坂は京佳の足止めに失敗している。そのせいで、かぐやは京佳の邪魔を受けた。あれが無ければ、自分がもっと白銀を意識させれていたというのに。
というか京佳が邪魔してきたせいで、お化け屋敷の記憶がほぼ泣きじゃくっている京佳になっている。あれでは折角頑張ったのに、白銀には京佳の事の方が記憶に残ってしまう。
(まぁ、あれで会長が立花さんに意識を向けるかは疑問ですが…)
なんせただ泣きじゃくっていただけだ。あれで白銀が京佳を意識するとは思えない。
でもやっぱり、早坂には絶対に文句を言う。
こうしてかぐやの作戦は、一応の成功を得たのだった。
おまけ 荷物を取りに来た白銀と荷物番の女生徒の会話
「すみません。預けた荷物を取りにきたんですが」
「はい。それではカギを下さい」
「わかりました。ところで、あの天井の人大丈夫ですか?随分辛そうな姿勢してましたけど」
「え?天井の人?」
「はい。あの血まみれメイクをしていて、エビぞりになって天井からぶら下がっている人です」
「……そんな人、いませんけど」
「…………え?」
「というか、無理でしょ。天井からエビぞりになってぶら下がるなんて。何かと見間違えたんじゃないんですか?」
「……………」
その日、白銀は家に帰った際、念のために圭に塩を撒いて貰った。
Q、早坂は何していたの?
A、次回書きます。ごめんなさい。
前半の部分、前回書いておけばよかったかもしれない。前回投稿してからそう思いました。
一応次回で文化祭偵察デート編は終わりの予定。相変わらず長々と書いていますが、流石のそろそろ文化祭決戦編に入る予定。じゃないと、何時まで経ってもエンディング書けそうにないし。
次回も頑張りたいと思う私。
先に見てみたいエンディング
-
京佳さんエンディング
-
かぐや様エンディング
-
ハーレムエンディング