もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・   作:ゾキラファス

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 やぁ久しぶり。そしてごめんなさい。

 今回は状況確認の繋ぎ回みたいになっているので、お話ほぼ進みません。本当にごめんなさい。

 朝日が昇るまでは日曜日。


白銀御行と脳内会議

 

 

 

 

 

 日曜日。

 昨日、かぐやと京佳と共に北高の文化祭へ行っていた白銀は、

 

「……」

 

 誰もいないうす暗い自室の隅で体育座りをしていた。その姿、まるで社会に怯える引きこもり。

 

「はぁ……」

 

 自然とため息が出る。現在、同時に2人の女性に好意を向けている白銀。このままではいけないのはわかっているが、どうしても決めきれない。そこで、何かのきっかけがあると信じて行った北高への文化祭。

 

 だが結果は、余計に悩む事となってしまった。

 

 どっちも同じくらい好きになっている。それを再確認しただけだった。

 

(俺、何でこんな感じになっちゃったんだろう?)

 

 歴史ある秀知院学園生徒会長は、様々な決断をしなければならない。それだけ立場に重みがあるのだ。優柔不断な生徒会長なんて、誰からも認められない。

 だが白銀は、秀知院学園生徒会長として、これまで本当に数多くの断をしてきた。その結果、白銀は誰もが認める生徒会長として君臨しているのだ。

 

 しかし、今の自分はどうだろうか。

 

 かぐや以外に京佳を好きになってしまい、その両者に対する好きという想いで板挟み。どっちかをしっかりと選ばないといけないのに、選べないままズルズルと生きている。これじゃまるで、秀知院へ入学したばかりの、何も無い頃の自分だ。

 

(選ばないと…ちゃんと選ばないと…)

 

 文化祭はもう目の前。白銀はその文化祭で告白するつもりだったのだが、これではそれすら出来ない。だからこそ、かぐやか京佳、どっちか選ばないといけない。

 

 だと言うのに、選べない。どうしても選べない。

 

(最初に好きになった四宮?それとも何時も傍で支えてくれた立花?いややっぱり生徒会長を目指すきっかけになった四宮?もしくは割と色んな事をしてきちゃった立花?四宮?立花?四宮?立花?)

 

 相反する想いが、白銀の脳内で迷走する。まるで出口の無い迷路に迷い込んだ気分。

 

 この時白銀の脳内は、例えるならば野次飛び交う国会のようになっていた。

 

 

 

 

 

 白銀脳内会議場

 

 楕円上に設置されている長机。そこには、数多くの白銀が座っている。そして真ん中の議長席に座るのは、白銀御行(本体)。

 

「えー、それでは。四宮かぐやと立花京佳。俺は一体どっちを選ぶかの会議を始めさせていただきます」

 

 議長白銀が開始の号令を出し、脳内会議が始まった。

 

「こんなの、考えるまでもない」

 

 そう言いながら立ち上がるのは、四宮派白銀御行。姿形は完全に何時もの白銀だが、着ている服はスーツ姿で、胸元には『四宮』と彫られているバッチを付けている。

 

「そもそもだ。俺たちが最初に好きになったのは四宮かぐやだ。だからこそ、彼女に相応しい男になる為に頑張ってきたんじゃないか。それなのに、後から好きになった女ができた?ふざけんな!俺たちが四宮に抱いた恋心はそんなもので揺らぐ程度なのか!?違うだろう!?ならば、俺たちが選ぶべき女性は四宮かぐやに他ならない!」

 

「そうだそうだ!」

 

「俺の言う通りだ!!」

 

 周りにいる四宮派白銀もそうヤジを飛ばす。

 

「確かにそうかもしれんな…」

 

 議長白銀は考える。彼の言う通り、自分が好きになったのは四宮かぐやだ。

 ならば、後から好きなった女の事なんて考えるまでも無い。前生徒会長にも似たような事を言われたし。

 

「ちょっと待って欲しい」

 

 しかしここで手を上げて立ち上がるのは、立花派白銀。その胸にあるバッチには『立花』と彫られている。

 

「確かに、俺たちが最初に好きになったのは四宮だ。これは覆らない事実だろう。だが、四宮の事を本気で好きならば、立花に気持ちが揺らぐ事なんてないんじゃないか?でも実際、俺たちは立花の事が好きになっている。これはつまり、俺たちは立花の方が好きという想いの表れなんじゃないのか?」

 

「その通り!」

 

「そうだそうだ!!」

 

 今度は立花派の白銀たちがヤジを飛ばす。

 

「それは一種の気の迷いだろう」

 

 だがそれを、四宮派白銀がばっさりと切り捨てる。

 

「俺たちだって男だ。綺麗な女性に優しくされたり、一緒にどこかに遊びにいったりしたら、そういう勘違いだってしてしまう。立花に向けている感情はそれと一緒だよ。つまり、気の迷いだ」

 

 冷静に京佳に対する気持ちを勘違いだという四宮派白銀。

 

「そんな勘違いの気持ちより、やはりここは初心を思い返して…」

 

「んな訳ねーだろう!!」

 

 だがこれに立花派白銀がキレた。

 

 「気の迷いでこんなに胸が苦しくなる訳ないだろう!!本当に好きだから苦しいんだよ!!もしこれが勘違いだったら、俺らがここまで悩む訳ねーだろうが!!好きなんだよ!四宮と同じかそれ以上に立花の事が!だからこそこんなに悩むんだ!!」

 

 立花派白銀が叫ぶ。彼の言う通り、もしも本当にこの気持ちが勘違いだったら、絶対に自分たちはここまで悩まない。早々に勘違いだと理解し、さっさとかぐやに告白をするべく行動を起こしている筈だ。

 

「それにだ。気持ちだけじゃない。俺たちは今まで、立花に何をしてきた?」

 

「ん?」

 

 議長白銀が頭に疑問符を浮かべる。その間に立花派白銀は、フリップを出す。そしてフリップには、これまで京佳にしてきた行いが書かれていた。

 

「見ろ!下着を見る!胸に触れる!夏休みには事故とは言え押し倒したし水着を脱がしもした!誕生日には頬にキスをされる!まぁ下着を見たのはちょっとしたラッキーな事故程度ですませれるかもしれんが、この前!雨宿りをしたラブホテルで裸を見たんだぞ!?しかも見ただけじゃなくて、あわや一線を超えようとしたんだ!!これはもう責任を取るという意味でも立花を選ぶべきだろう!!」

 

「ぐはぁっ!?」

 

 議長白銀、血を吐いて机に倒れる。確かにこれまで、白銀は京佳に色んな事をしてきてしまった。

 特にラブホテルの出来事は、本当に危うかった。あの時、妹の圭からの電話がなかったら、絶対に一線を越えていただろう。

 

「た、確かにその通りかもしれん…」

 

 回復した議長白銀は思う。何度も言っている事だが、白銀が責任感が強い。そして今、立花派白銀が言った事。パンチラはラッキースケベで済まされるだろうが、ラブホテルでの一件はまずい。下手したら訴えられてもおかしくない出来事だ。

 

 というかあの時、自分は間違いなく一線を超えかけた。

 

 これは、京佳の事が本気で好きじゃないとそうは思わないだろう。場に流されたという言い訳をするのは簡単だ。

 だがあれだけの事をしておいて、責任を取ろうともしないのは最低でしかない。そんな事をして、果たして自分は許されるのだろうか。答えは否である。もしそうなったら、何時か必ず罰が下るだろう。

 

「ならば、俺が選ぶべきは立花…」

 

「いやそれはおかしいだろう」

 

 ここで今度は、四宮派白銀が反論。

 

「責任感だけで相手を選ぶのは、むしろ無責任だろう。そもそも一線を超えたならばまだしも、俺は一線を超えてはいないじゃないか。他に至っては事故だ事故。『彼女にこういう事をしたから』という理由だけで相手を選ぶのは違うだろう。大事なのは本心だ。俺たちがどっちをより好きなのかという心が大事だろう」

 

 四宮派白銀の言葉を聞いて冷静になる議長白銀。彼の言う通り、自分の本心を誤魔化して、責任感だけで本当に好きであろう女子以外を選ぶのはダメだ。

 だってそんなのは、とても真実の愛とは言えないのだから。

 

「それにだ。ラブホテルでの事を言うのであればだが、確かに立花はエロかった。本当に超エロかった。一線を超えかけたのも頷ける。しかしだ。それは本当に立花の事が好きだからなのか?俺には、目の前にエロい人がいたから、男としてつい一線を超えかけたとしか思えん」

 

「おいこら」

 

 議長白銀、すかさず突っ込む。でも一理あるとも思った。

 

「石上から借りた漫画の言葉を借りるのではあれば『股間で恋をするんじゃない』だ。自分好みのエッチな女性がいたから好きになって付き合いましたなんて、そんなのはサルと変わらない。俺たちは人間だ。だからこそ、そういう事以外のところを見るんだろう。例えば、笑顔が可愛いとか、動ける時に動けるとか」

 

「……」

 

「だからこそ、そういうハプニングを抜きにして考えた時、俺たちが選ぶべきは四宮かぐやなんだ。思い出せ。俺たちがどうして彼女を好きになったのかを」

 

 その言葉を聞いた議長白銀は思い出す。それは、入学して暫く経った時の血溜沼でのこと。

 

(あの時の四宮は、本当に綺麗だった…だからこそ、俺は頑張ったんだ)

 

 あの時のかぐやに一目惚れをしたからこそ、白銀は生徒会長になれた。ひとえに、彼女に相応しい男になる為に。

 

(そうだよな。会長からも『原点を思い出せ』って言われたし。立花には申し訳ないが、やはり俺は、最初に好きになった四宮を…)

 

「じゃあ俺たちが生徒会長になるまでの間、何時も傍で支えてくれたのは誰だ?」

 

 ここで立花派白銀が反論を開始。

 

「秀知院に入学して、何時も俺たちの傍にいてくれたのは誰だ?立花だろう?それに成績を上げる為に勉強を教えてくれたり、生徒会選挙で応援演説をしてくれたり、更には圭ちゃんと仲も良くしてくれた。そんな立花の助けがあったからこそ、俺たちは生徒会長になれたんじゃないか。彼女がいなければ、絶対に生徒会長になんてなれていないぞ」

 

「それは…」

 

 立花派白銀の言う通りだ。生徒会長を目指したばかりの白銀は、かなり成績が悪かった。しかし京佳から勉強を教わり成績をあげ、更には生徒会長選挙の時は応援演説をやってもらい、そして白銀が演説をする前には、喝を入れてくれた。

 それだけでは無く、クリスマスにはケーキを焼いてもくれた。貧乏な白銀家にとって、あれはまさしく天よりの宝札といってもいい。何より妹の圭が喜んでいたのがよかった。

 

「何時も傍で俺たちを支えてくれた立花なら、例え結婚しても良妻賢母になってくれるだろう。だからこそ、俺たちが選ぶのは立花に」

 

「ふざけんな!四宮だって絶対に良妻賢母になってくれるぞ!」

 

「そうだ!まるで四宮が良妻賢母になれないみたいな言い方はよせ!!」

 

 異議を唱える四宮派白銀たち。でも実際、かぐやが良妻賢母になれるかといえばやや疑問が残る気がしないでもない。

 

「そうは言っていない!ただ、立花の方が似合うと言っているだけだ!あんまりこういう言い方はしなくないが、包容力は絶対に立花の方が上だろう!!」

 

「いーや!四宮の方が似合うね!お前俺のくせにそんな事もわからないのか!?節穴め!!」

 

「何だと俺!?」

 

「お、おい待て!静粛に!静粛に!!」

 

 どんどん議論が白熱していく各派閥の白銀たち。議長白銀がギャベルを持って机を叩くが、皆それを無視して議論をする。いや、これはもう議論ではなく、ただの口喧嘩だ。

 

「少し、いいかな?」

 

『え?』

 

 そんな中、1人の白銀が手を上げる。

 

「……誰?」

 

「こっちじゃないな?」

 

「こっちでもないぞ?」

 

 議長白銀を始め、各派閥の白銀たちも、胸にバッチも着けていない自分自信に困惑。

 

「いや何。俺は第3の選択肢を持った唯一の俺だよ」

 

「第3の選択肢?」

 

 他の比べると、覇気のない白銀はそう言う。

 

「第3の選択肢とは、何だ?」

 

 議長白銀は、第3の選択肢を持っている白銀に質問をした。

 

「それはだな、いっそ2人共選ばずに、勉学だけに集中したらいいんじゃないかというものだ」

 

「……え?」

 

 そしてその返答に、言葉を詰まらせる。

 

「俺たちは来年、スタンフォード大学へ行く。それは色んな事を勉強したいからだ。そして、とある夢を兼ねる為にだ。正直な所、そういう理由があって態々海外の大学へ行くというのに、恋愛に現を抜かしてもいいのだろうか?こんなにどっちを選ぶべきか悩んでいるくらいなら、いっそ2人とも選ばずに今後は夢に向かって勉強だけをした方がいいんじゃないのか?」

 

 第3の選択肢白銀こと、勉強白銀。彼の言う選択肢は、逃げだった。どっちかを選べず、どっちかを傷つけるくらいなら、どっちも選ばずに勉強にだけ集中すればいいという名の逃げだった。

 

「そもそも、スタンフォードという世界屈指の大学に行くんだぞ?当然、勉強や授業も今までの比じゃないだろう。それに、仮にどっちかと付き合う事になれたとしても、遠距離恋愛になってしまう。遠距離恋愛は破局しやすいという話もあるし、ならば誰も選ばずに勉強だけをするようにすれば『出来る訳ねぇだろう!!』…」

 

 だがそんな選択肢、白銀が選ぶわけなかった。

 

「そんなダセェ事出来る訳ねぇだろうが!!」

 

「そうだ!逃げるなんて真似、例え死んでも絶対に選ばん!!」

 

「俺の言う通りだ!それを選ぶなんて事だけは絶対に無い!!」

 

 全ての白銀が声を揃えてそう言う。確かに、かぐやと京佳のどっちかと恋人になれても、結局は遠距離恋愛にはなってしまうだろう。確かに、中々会えない遠距離恋愛は破局しやすい。

 だがそれがどうした。白銀は、自分ならそうなる前に色々するし、そもそも遠距離恋愛になっても破局しないという自信がある。

 

「……まぁ、そうだよな。なら俺はこれ以上何も言わん」

 

 そう言うと、勉強白銀はそれ以降口を開く事は無かった。

 

「今度は俺もいいかな?」

 

 今度はまた別の白銀が手を上げる。議長白銀が声がした方を見るとそこには、

 

「……何だその恰好?」

 

 顔にはサングラス。上半身に白いラッシュガードを羽織り、下には水色のサーフパンツを履いている白銀がいた。まるでどこかのナイトプールにいそうなウェイ系な恰好だ。

 

「俺は欲望だからこういう恰好らしい」

 

「そ、そうか…」

 

 彼の名は欲望白銀。その名の通り、欲望だらけの考えを持っている。にしたってこの恰好は安直すぎる。見た目の発想が下北のツチノコレベルだ。

 

「俺の考えは、どうせなら2人纏めて付き合ってしまえというものだ

 

「ぶふぅ!?」

 

 そしてその名の通り、とんでもない考えを言い出す。

 

「どっちかとしか付き合えない?そんなの誰が決めた?2人とも大事と思っているのなら、2人同時に付き合ってしまえばいいんだ。そうすれば、誰も不幸にならずにすむだろう?」

 

 どう聞いても最低な考えである。

 

「いや、まぁ…」

 

「できれば、そうした方がいいんだろうけど…」

 

「おいお前ら冷静になれ」

 

 だというのに、周りは何か感化されだしてた。議長白銀は周りを落ち着かせる。

 

「いいじゃないか!!例え世間の目が冷たくなっても、当人たちがよければ問題ないだろう!!それにな、もし2人同時に付き合えたとしたら、それぞれ異なる大きさの胸をじっくりねっとりと楽しめ「お前今すぐ黙れやぁぁぁ!?」

 

 ゲスい発言までし始めた欲望白銀を、議長白銀は黙らせた。そして直ぐに欲望白銀を、仮面をした警備員を使って会議場から摘まみ出す。

 

「何故だぁぁぁ!?いいじゃないか!?いっそハーレムでいいじゃないかぁぁぁ!?」

 

「正直少し考えたけど倫理的にダメに決まってんだろ!?それが許せるのはゲームや漫画の中だけだ!!」

 

「縁結びの神様なら許可出してくれるだろうから大丈夫だって!!100股までなら許可だしてくれるって!!」

 

「いねーよそんな縁結びの神様!!」

 

 仮面を付けた警備員に引きずらながら、欲望白銀は最後まで欲望全開の発言をするのだった。

 

「くっそ!これでは埒が明かん!一体俺はどうすればいいんだ!?」

 

 議長白銀が頭を抱える。先程からずっとあーだこーだ言っているが、一向に解決策が出てこない。

 折角脳内にこんな会議場まで用意し、自分の分身のような存在まで出しているというのに。だというのに、誰も決定打となる事を言わない。

 

「だから!最初に好きになった四宮に決まっているだろう!!」

 

「違う!いつも傍で支えてくれた立花だ!!他にいないだろ!!」

 

 相変わらず議論がなされるだけで、一向に答えが出ない。

 

(もう本当に、四宮と立花、両方を纏めて…)

 

 先程欲望白銀が言っていた事が頭に残り、もう本当にハーレムでも目指そうかとさえ思ってしまう。勿論それはダメなのだが、もうそれしか解決策が無いんじゃないかとさと思い始める。

 

 と、そんな時だった。

 

「あたぁ!?」

 

 誰かに頭を叩かれたのは。

 

「おにぃ。さっきから何度も呼んでいるのに何で気が付かない訳?ていうか部屋の隅で体育座りして何してんの?キモイんですけど」

 

「け、圭ちゃん…」

 

 白銀が意識を頭の中から部屋に向けると、そこには買い物から帰ってきた妹の圭がいた。

 

 

 

 

 

「でさぁ、1人で何してた訳?」

 

 自室からリビングへ移動し、圭は兄を問いただす。

 

「……別に」

 

「いや嘘じゃん」

 

 妹には悩んでいる事を知られたくない白銀。なので誤魔化す事にした。だがそれは無意味となる。

 

「まぁ大体想像できるけどね。大方、前に言ってた事で悩んでいるんでしょ?」

 

「え?前に言っていた?」

 

「少し前に言ってじゃん。今良い感じの子がいるけど、もう1人別に気になっている子がいるって。多分そのことで悩んでるんでしょ?」

 

「あ」

 

 圭に言われて思い出す白銀。そういえば前に、そんな事を父親にも言っていたなと。

 

(うかつだった。いや、あの時は立花への想いを自覚していなかったからしょうがないけどさ)

 

 口は禍の元とはこの事だろう。今後は、あまりうかつな事は言わない方がいいと白銀は学んだ。そう簡単に出来るとは思えないが。

 

「おにぃ。前も言ったけどさ、同時に2人の人を好きになっているなんて最低だよ?」

 

「それはわかってる…いやマジで…」

 

「でもさ、どっちかを選ばない方がもっと最低だよ?」

 

「……」

 

 言われなくてもわかっていると言いそうになる白銀。しかしここで感情に任せて口を開けば、圭に酷い事を言いそうな気がしたので口を閉じた。

 

「もうさ、この際2人同時に好きになっているっていうのはいいよ。でもさ、だったらちゃんと選んであげないと、その2人に失礼だよ?」

 

「……」

 

 その通りだろう。先程の脳内会議でも、勉強に集中して2人共選ばないという選択肢を言っている自分がいたが、白銀はそれだけは選びたくない。だって圭の言う通り、それは最低な選択肢なのだから。

 

「でもさ、俺本当に悩んでいるんだ…」

 

「……」

 

「圭ちゃんの言う通り、どっちかを選ばないといけないのはわかってるんだよ。でも、本当にどっちを選べばいいかが、わからなくなってるんだ…」

 

 白銀はまるで罪を懺悔する囚人のようにポツポツと話す。

 

「最初は、この人しかいないって思ってたのに、いつの間にか別の子が俺の中でどんどん大きくなってきて、気がついたら2人共同じくらい好きになってるしで…マジで最低なのはわかってるんだけど、もう自分でもよくわかんねぇんだよ…」

 

 白銀は今、好きという感情がごっちゃになり、脳が迷子に近い状態になっていた。それ故、目的地がわからなくなり、どうすればいいかがわからない。

 

「重い」

 

「え?」

 

「重い。なんかこう重い。キモイ」

 

「酷い…」

 

「いやおにぃが真剣に考えているのはわかるよ?でもさ、なんかおにぃの場合はまるで選んだ相手の人生すら全部自分でなんとかしてあげないとってニュアンスに聞こえてくるんだよねぇ。それこそまるでプロポーズみたいな」

 

「……」

 

 割と図星である。

 

「別にさ、その人と付き合ったら必ず結婚する訳じゃないんだから、もう少し気楽に考えてもいいんじゃない?」

 

「それで、いいのか?」

 

「いいよ。というか、おにぃは色々考え過ぎな気がする。もっと簡単に考えればいいじゃん」

 

 それが出来たら苦労しない。思わず反論しそうになったが、白銀は耐えた。

 

「兎に角さ、もっと肩の力を抜いて考えなって。力が入りっぱなしだと、出来る事も出来なくなるし」

 

 これはその通りだ。人間、普段から力が入りっぱなしだと絶対にどこかで躓く。そして今の白銀は、圭の言う通り考えすぎだろう。これでは、正常な判断を下せるかわからない。

 

「わかったよ。少しだけ楽になった。ありがとう圭ちゃん」

 

「別にいいし」

 

 問題の先送りになってしまうが、ここでこれ以上考えても仕方が無い。堂々巡りにしかならないだろうし。なので白銀は、今日はこれ以上考える事をやめる事にした。

 

(文化祭まであまり時間がないけど、まだ時間そのものはある。なら、もっと悩んで悩んで答えを出そう。肩に力が入りすぎないように。そして、しっかりと自分の本当の気持ちを見つけるようにしよう)

 

 白銀はそう考えると夕飯の支度を始めるのだった。

 

 

 

(にしても、まさかここまで悩んでいるなんて…)

 

 そんな兄を、圭は後ろからテレビを見る振りをしながら見ていた。前に悩んでいるといってはいたが、まさかこれ程悩んでいたとは想像できなかった。

 

(にしても、一体誰なんだろ?京佳さん以外におにぃが好きになっているのって?)

 

 更に圭は、未だに兄御行が最初に好きになっているのが京佳だと勘違いをしていた。実際は、かぐやが先で京佳が2番目なのだが。

 

(そういえば、もうすぐ中等部の方で文化祭がある…)

 

 ここでふと圭は思い出す。秀知院学園高等部の文化祭の前に、中等部で文化祭がある事を。

 

(本当は、私が何かをするのは違う気がするけど、少しだけならいいかな?)

 

 そして圭は、とある事を思いつくのだった。

 

 

 

 

 




 多分この作品で、どっちのエンディングに行けるかのカギを握っているのは圭ちゃんと早坂。

 次回はお話、進めれたらいいなって思う。

GWの予定は?

  • 家でゆっくり過ごす
  • 旅行に行く
  • 映画に行く
  • 寝る
  • 仕事です…
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