もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・ 作:ゾキラファス
ところで今日は、プロポーズの日らしいですね。
1日前 放課後
「あ、京佳さん!」
「ん?圭か」
放課後、京佳がクラスの文化祭での演劇の稽古を終えた後、帰ろうとしたら、突然圭が現れた。既に結構暗いというのに高等部の校門前にいる事に、京佳は少し疑問に思う。
「どうしたんだ一体?白銀に用事でも?」
「いえ、兄は全く関係ありません」
てっきり兄である白銀に用事かと思ったが、どうも違うらしい。すると圭は、やや興奮した様子で話し出す。
「実はですね、中等部って明日、文化祭なんですよ」
「あー、そういえばそうだったな」
中等部の文化祭は、高等部の数日前に行われる事を思い出す京佳。規模はそこまで大きくないが、結構人が来ると記憶している。
「それでなんですけど、よろしければ明日、中等部の文化祭に来てくれませんか?」
そして圭は、京佳を中等部の文化祭へ誘った。それを聞いた京佳は、
「かまわないよ。是非行かせてもらおう」
「!はい!」
秒でそのお誘いを受けた。明日はバイトも無いし、何より中等部の文化祭には興味がある。断る理由が無い。そしてそれを聞いた圭は凄く嬉しそうな声で返事をする。
(予行演習じゃないけど、全体の雰囲気を体験しておきたいしな)
それに京佳は、ある考えもある。数日後の高等部の文化祭で、京佳は白銀を誘うつもりだ。前回行った北高の文化祭は秀知院とは全く違う雰囲気の文化祭だったが、圭がいる中等部の文化祭は秀知院の文化祭だ。大体の雰囲気は一緒だろう。
なので予行演習。もしくは練習。勿論それだけじゃなくて、圭に誘われて嬉しいという想いもあったりするが。
「因みに圭は何をするんだ?」
「私のクラスはたこ焼きをします。鮮魚店の子がクラスにいるから、蛸だけは良いのが手に入るので」
「そうなのか。しかし流石秀知院だな。中等部にもそういう子がいるとは」
「今の高等部に比べたら見劣りしますけどね」
和気あいあいと話ながら歩く2人。もしこの光景をかぐやが見たら、絶対に嫉妬していただろう。何なら2人の間に入って邪魔をするかもしれない。もしそんな事したら、圭に嫌われそうではあるが。
「ところで京佳さん」
「何だ?」
「その、兄とは最近どうでしょうか?」
「え?」
バス停まで歩いていると、圭が突然そんな事を聞いてきた。
「その、兄はここ最近何かに悩んでいるので、もしかしたら京佳さんと喧嘩でもしたのかと思いまして」
これは圭のブラフである。最近、兄御行は恋愛関係で悩んでいるのは既に知っている。そしてその相手が、京佳だという事も。自分に相談をしてくるくらいだ。相当悩んでいるのだろう。
だが、ここで京佳にそれとなく話を聞いておけば、最近の2人がどういう感じなのかがわかるかもしれない。だから圭はカマをかけてみたのだ。
「喧嘩なんてしてないよ。悩んでいるのは多分、今度の文化祭についてじゃないかな?白銀は責任感が強いからね」
「本当ですか?何か兄がご迷惑をかけてませんか?」
「全然。むしろ白銀には頼りっぱなしだよ」
「そうですか。喧嘩じゃなくてよかったです」
結果として、特にこれと言った情報はなかったけど、2人の関係は良好のようだった。もしこれで邪険な関係にでもなっていたら、目も当てられない。
そうやって歩いていると、圭が乗るバスが来るバス停までやってきた。それと同時に、圭が乗るバスもやってきた。
「それじゃここで。京佳さん。明日は是非来てくださいね」
「ああ。必ず行くよ。さよなら、圭」
圭はバスに乗り込む前に、京佳に確認するようにそう言うと、バスに乗って行ってしまった。そして京佳も、それを見送ってから、帰路に着くのであった。
(昨日、圭が誘ってくれたおかげで、こうして白銀と一緒にいられる。本当にありがとう圭)
京佳は中等部の文化祭を白銀と歩きながら、昨日圭が誘ってくれた事を思い出す。あの時、圭が誘ってくれなければ、白銀と2人きりで並んで歩くことなんて無かっただろう。この期を逃す訳にはいかない。
折角かぐやもいないのだ。最大限利用しなければ。
「白銀。ちょっと向こうでも見にいかないか?」
「あっちか?何かあるのか?」
「何でも射的をやっているらしい。面白そうだからいこう」
早速白銀を誘う京佳。できれば北高でやっていたお化け屋敷とかがいいのだろうが、折角のチャンスをふいにするような真似はしたくない。もう怖いのは散々だし。
「射的かぁ。よし、行こう」
射的と聞いて、少しウキウキする白銀。男の子はそういうのが好きなのだ。こうもなる。
こうして2人は、射的をやっている方へ並んで歩くのだった。
「いらっしゃいませ~」
歩くこと数分。2人は射的屋へたどり着く。
「おお。思ってたより沢山景品が並んでいるな」
「そうだな。特にぬいぐるみが多いな」
このクラスがやっているのは、射的屋。ルールは簡単で、コルク銃で棚に置いている景品を落とせば、それが貰えるのいうものだ。こういうのは縁日でもよくみるのだが、そういうのは景品に駄菓子が置いてあるのが多い。
だがこのクラスは違う。棚に置いてある景品の半分以上がぬいぐるみだ。
「コスト的にどうなんだこれ?」
そこが気になる白銀。一応、これは学生手動の文化祭なので、そういうのはあまり気にしていないのかもしれないが、白銀はそういうのがどうしても気になる性格なのだ。ケチとも言うが。
「大丈夫ですよ~。ぬいぐるみは手芸部の人たちが作ったものですから~」
どこかおっとりしている女生徒が説明する。それを聞いて、納得する白銀。確かにそれならば、わざわざ景品を購入する手間もコストも無い。手芸部は大変な思いをするかもだが。
「ところで~。ひょっとして白銀会長ですか~?」
「え?」
いざ射的をやろうとした時、おっとりとした女生徒が話しかけてきた。
「ああ。そうだけど」
「やっぱり~。噂は色々聞いてますよ~。秀知院始まって以来の何でも出来る天才だって~」
「い、いやぁ…ははは…」
それはどちからと言うとかぐやの事ではないのかと思ったが、ちょっと照れ臭くなる白銀。やはり人にこうやって言われると言うのは、心地が良い。
「ところで~、お隣の人は恋人さんですか~?」
「ぶふっ!?」
しかし突然凄い質問をされ、その気持ちが彼方へ吹っ飛ぶ。
「綺麗な人ですね~。とってもお似合いですよ~」
「ちょ、ちょっと…!」
そんな白銀の事を無視するかのように、射的屋の女生徒が話を続ける。
「そうですか?本当にお似合いですか?」
「はい~」
「ありがとうございます」
「何でお辞儀してんの立花!?」
そんな中、京佳は女生徒にお辞儀をする。多分お似合いと言われて、少し混乱しているのだろう。
「それでは、1回100円です~」
「あ、はい…」
今までの事など無かったかのように、女生徒は射的代を要求。白銀はそれをなんか釈然としないが払った。これ以上何か言われると、なんかボロが出そうだったし。
「どれを狙おう…」
コルク銃を手に取り、白銀は景品を見渡す。やるからには何か景品を取りたいと思う白銀だが、ぬいぐるみのような重いものは簡単には落ちないだろう。
ならば軽い駄菓子でも狙いたいが、特に好きな駄菓子なんて無い。そうやって悩んでいると、
「ほい」
「え?」
隣にいた京佳が、コルク銃で手のひらサイズの鮭を咥えていクマのぬいぐるみを落とした。
「わぁ~。おめでとうございます~。どうぞ~」
「ありがとうございます」
あっという間の出来事に固まる白銀。
「?どうした白銀?やらないのか?」
「い、いや!やるぞ!」
まずいと思う白銀。京佳は1発でぬいぐるみを落として手に入れた。ここでもし、自分が駄菓子を狙って落としてたりしたら、小さい男と思われるかもしれない。安全策しか取らない、矮小な男。そんな風に思われるのは、絶対に嫌だ。
(こうなったら、1番大きな獲物を狙うしかない!!)
白銀は棚の1番上にある像のぬいぐるみに狙いを定める。1発で落とせるとは思えないが、その時は何度でも挑戦してみせる。
(よし!いけぇぇ!!)
そして白銀は、コルク銃の引き金を引く。その瞬間、コルクが像のぬいぐるみに一直線に発射される。
かに思われた。
「え?」
コルクはそのまま、放物線を描いて下の棚へと行く。そもそもコルクは軽い。つまり、まっすぐに飛ぶなんてそうそうありえないのだ。狙うならぬいぐるみ本体ではなく、もう少し上を狙うべきだった。
そして白銀の発射したコルクは、像のぬいぐるみの下にあるぬいぐるみに当たり、そのまま落とした。
「わぁ~おめでとうございます~。はいこちら、あんこうのぬいぐるみです~」
「あ、あんこう…」
こうして白銀は、あんこうのぬいぐるみを手に入れた。これもかなり大きいが、可愛いとは言えないだろう。
(どーしよこれ…)
当たって嬉しい半分、正直いらない半分という気持ちになる白銀。ていうか普通に持ち歩くのに邪魔でいらない。無駄にでかくて目立つし。
「ふふ、よかったな白銀」
「お、おう…」
そんな白銀を見て、京佳は笑う。あんこうのぬいぐるみを持っている姿がシュールだからだ。
(まぁ、いっか…)
正直いらないぬいぐるみだったが、こうして京佳の笑顔が見れただけでよしとした。どんなものにも、使い道があるものである。
「ちょっとぐるりと回ってみないか?」
「いいぞ。俺も全体の雰囲気を見ておきたいし」
射的を終えた2人は、中等部の校舎を回ってみる事にする。
「それにしても、綺麗な校舎だな」
「だな。高等部と違って近代的で羨ましいよ」
「でも中等部の子たちは、高等部の洋風建築の校舎に憧れているらしいぞ?」
「そうなのか?どこでそんな話を?」
「圭から聞いた」
「……俺、そんな話聞いた事ない…」
妹が自分より京佳にそういう話をしている事を知って、白銀は少し落ち込む。自分だって兄なんだから、もう少しそういう話をしてくれてもいいのに。
そうやって歩いていると、話し声が聞こえた。
「ねぇ…あれって、白銀会長だよね?」
「うん、絶対そうだよ。私、前に遠目でだけど見た事あるし…」
「隣にいるのって、もしかしてあの立花先輩?」
「だよね…なんで一緒に歩いてるんだろう?あんな怖そうな人と…」
「てか初めて見たけど、怖い…立花先輩ってやっぱ怖い…」
「本当だよ…身長も高いし、あんな物騒な眼帯もしてるし…」
「近づかないようにしておこう?」
「うんそうしよう…」
「……」
それは、中等部の生徒であろう子たちの話声。そして内容は、京佳を怖がってよう内容だ。
(やっぱり、面識の無い中等部の子はこうなるか…)
高等部でも最初は怖がられていた京佳だったが、それは生徒会での活動などにより、怖がっていく生徒はどんどん減っていった。
しかし中等部ではそもそも関りが無いので、京佳の事なんて見た目くらいしか知らないのが殆どだ。好意的に接してくれるのなんて、圭と萌葉くらいしかいない。
「すまない白銀。もう少し考えておくべきだった…」
自分は言われ慣れているから別にいいのだが、白銀に何かの風評被害が出るのはまずい。下手すると、生徒会長としての白銀の名前に傷がつくかもしれない。
こんなことなら、もう少しそういう事を言われるかもというのを考えて動くべきだったと京佳は反省する。
「俺は全然気にしてないからいいよ」
「……本当か?」
「ああ。そもそも俺だって、入学した最初の頃は混院だと何だと言われてたしな」
白銀も京佳ほどでは無いが、言われていた事がある。だがそんな輩全てを、白銀は勉強で黙らせてきた。それに、そういう噂は気にするだけ無駄なのだ。
(まぁ、最初は結構落ち込んだけどな…)
しかしメンタルが元々弱い白銀は、そういうのに慣れるのに時間がかかった。具体的に言うと1年くらい。
(それより、いくら面識が無いとは言え、立花の事をあんなふうに言うのはどうなんだ?中等部はもう少し道徳の授業を増やした方がいいんじゃないか?)
それはそれとして、今の話は正直気分が悪い。聞くだけで腹が立つ。確かに何も知らないのでしょうがないのかもしれないが、態々本人がいるこんな場所で言うことでも無いだろう。
「白銀。あれはなんだろう?」
「ん?」
今度学園長に道徳の授業を増やすよう言うべきかと考えていると、何やら変は看板が見えた。白銀の目線の先には『トキメキゲーム』という看板が見える。おまけになんか電飾でピカピカ光ってた。眩しい。てか怪しい。
「何だあれ?」
やたら気になる看板だ。というか風紀的に如何わしい感じがする。伊井野がいたらキレそうだ。
「行ってみないか?」
「そうだな」
どうせならと思い、2人はそのトキメキゲームに行ってみる事にした。
「いっらしゃいませーーー!!」
「おおぅ…」
教室に入ると、やたらテンションの高い男子生徒が出迎えてくれる。頭には黒のシルクハットを被り、顔にはサングランス。どうみても不審者だ。もし夜に出会ったら全力で逃げる事間違いなしだろう。
「えっと、すみません。前にあった看板に書いてあるトキメキゲームってなんですか?」
京佳がその男子生徒に質問をする。その顔は少しひいているが。
「おお!この俺の姿を見ても動じないなんて!嬉しい!大抵の人はこの姿とテンションで恐怖して逃げると言うのに!」
「ならそれやめたらいいんじゃないのか?」
「それがそうもいきません!こうでもしないと接客なんてできないんです!俺アガリ症ですので!!」
「あー、うん…」
どうやらこれは彼なりのアガリ症対策らしい。白銀は少しだけわかる気がして、彼に親近感を覚える。
「それでは説明しましょう!トキメキゲームとは、我々文芸部の審査員がトキメクような事をしたらよいというゲームです!条件として台詞なら一言だけで!行動なら10秒以内で!!」
「文芸部の審査員?」
白銀が教室の後ろを見てみると、そこには5人の中等部の生徒がいた。その手には〇と✕が書かれている札を持っている。
「参加料は無し!無料でできます!やるかやらないかは自由!!どうですか!?やりませんか!?」
「え?無料なの?そっちに何の得があるんだ?」
「簡単です!!トキメクようなものが見れたら、我々文芸部のインスピレーションがあがります!!そうすれば、よりよい作品が書ける筈!!」
「あー、成程?」
わからなくはないと白銀は思う。前にテレビで見た作家も、日ごろの出来事から作品のネタを仕入れてると言っていたし。恐らく彼らも、そういうのをしているのだろう。
「無料だし、やってみないか?」
「あー…やるか…」
正直あまり気が進まない白銀。しかし教室に入ってしまった以上、今更出ていくのも申し訳ない。なんか出にくいし。
「ありがとうございます!!それでは、男性の方からいざどうぞ!!」
「……え!?もう始まってるのこれ!?」
助走無しで突然始まったトキメキゲームに、白銀は慌てる。
(いやいや!?トキメクような事って何!?直ぐ思い浮かねーけど!?どうすればいいんだ!?)
「どうしました!?何でもいいんですよ!?」
中々何も言わない白銀に詰め寄るシルクハットを被った男子生徒。それが更に焦りを加速させる。このままでは、とっさに何も決めれないダメな生徒会長とか言われるかもしれない。
そしてそんな中、白銀が言った事は、
「か、髪に芋けんぴついているよ…」
前にネットで見た何かの少女漫画の台詞だった。
「ぶふっ!?」
京佳、吹きだす。そして肩を震わせて声を殺して笑う。
「はい。採点」
「待って!お願いだからもう1回やらせて!?」
「ダメでーす。1人1回まででーす」
もう少し時間が欲しかった。そうすれば、少しはマトモな事が言えた筈なのに。しかし現実は無常。シルクハットを被った文芸部の男子生徒は、流れるように採点をさせた。
その結果は、
✕ ✕ ✕ ✕ 〇
✕が4人。〇が1人というものだった。
「はい、ほぼトキメキませんでした。因みに〇の理由は?」
「頑張って考えて出した感じがよかったです」
「成程」
「もうやめてくれぇ…」
〇を出した生徒も、なんか温情で〇にしか感じがする。そのやさしさが、白銀に突き刺さる。
「それでは気を取り直して、女性の方!どうぞ!!」
今度は京佳の番だ。すると京佳は、白銀の目の前に立つ。そして真っすぐに白銀の目を見て、
「白銀――――君を、愛している…」
愛の告白をした。その際、優しく微笑んでいるのも忘れない。
「――――――」
そしてそれを見た白銀は機能を停止した。何だこれは。今のは一体何だ。体中の血液が熱い。心臓がうるさい。あと何も考えられない。
「さ、採点を…」
その間、文芸部の男子生徒が鼻を押さえながら採点を始める。結果は、
〇 〇 〇 〇 〇
全員〇である。当然だろう。これが満点じゃなくて何だというのだ。そして全員が、顔を真っ赤にしていた。
「えっと…はい。満点、です。こちら、景品として、我々文芸部が書いた、詩集です。どうぞ…」
「ありがとう」
景品として、詩集を受け取る京佳。
「それじゃ行くか白銀……白銀?」
白銀に声をかけるが、白銀は動かない。未だに機能を停止させている。
「仕方ない。引っ張るか」
そう言うと京佳は、白銀の手をひいて歩き出す。そしてそのまま、教室から出ていくのだった。
「や、やべぇ…今のやべぇ…」
「私、今なら恋愛作品10本くらい書けそう…」
「僕もです。もうこの後部室に行って皆で書きませんか?」
「私賛成。部室行こう」
「ウチも賛成。部長は?」
「行こう。今なら、何だって出来る気がするし」
一方、教室に残っていた文芸部員たちは、そのままトキメキゲームを終わらせて、部室へ直行した。
そしてその年、文芸部が出した作品は中等部で暫くの間人気となるのだった。
「はっ!?俺はどうしてここに!?」
白銀が再起動し気が付くと、自販機コーナーのベンチにいた。その間の記憶がさっぱり無い。
「気が付いたか白銀」
振り返ると、そこには缶ジュースを2本持った京佳がいた。
「立花。俺は、どうしたんだ?」
「いやよくわからん。何か急に動きを止めたんだ。私が手をひいたら歩いたが」
「え?手をひいた?」
「ああ」
それを聞いて、恥ずかしいと思う白銀。まるで子供みたいだ。高校生にもなって、そんなのは恥ずかしい。
「でもよかったよ。白銀が元に戻って。はいこれ」
「あ、ありがとう…」
京佳からジュースを受け取り、白銀はそれを一気に飲み干す。今は少しでも水分を取って熱を下げたい。
そして京佳も、白銀の隣に座りジュースを飲む。
「そろそろ時間だな。お開きにしないか?」
「そう、だな。もう太陽もかなり傾いてるし」
京佳からプレゼントされた腕時計を見ると、夕方の4時だ。高等部の方はまだまだこれからという時間なのだが、中等部はもうお開き。
実際、周りを見てみると、いくつかの店舗を生徒たちが片付けを始めている。
「白銀。今日は楽しかったか?」
「え?ああ。勿論。結構楽しかったぞ。全体的な雰囲気も掴めたし」
京佳の質問に答える白銀。人の出入りや、どんな店舗があるかなど、確かに色々勉強にもなった。それに単純に楽しくもあった。とても有意義な1日だと言えるだろう。
「私も楽しかったよ」
「ん?そうか。それは圭ちゃんも喜ぶだろうな」
「それもあるけど…」
「ん?」
「白銀と2人きりだったから、とっても楽しかったよ」
「っ!?」
それを聞いた白銀は、つい手に持っていた缶ジュースを握り潰しそうになる。そしてそのまま暫く、お互い見つめ合ってしまう。同時に、白銀は思い出した。
先程、京佳に愛していると言われた事を。
確かに、あれはゲームだ。文芸部の子が行ったゲームではある。だがそれでも、面と向かって好きな子に愛していると言われた。その事を思い出すと、胸の鼓動が大きくなる。
(今なら、いっそ…)
いっその事、自分も京佳に想いを伝えるべきでは無いかとさえ思い始める白銀。未だにかぐやと京佳で悩んでいるとはいえ、もうあんな事を言われもした。それに時間が無い。ならいっそ、もうここで選んでもいいのではないか。
白銀がそう悩んでいると、
「あ、そろそろ時間だ。バスがあるから、行こうか」
「え?あ、ああ。そうだな」
京佳が立ち上がり、帰ろうとした。白銀も、それに続くように立ち上がる。
「そうだ白銀。どうせなら、また例のスーパーに寄って行かないか?」
京佳が提案する。それは2人で何度か言っている激安スーパーだ。
「あーすまん。ちょっと今日は用事あるからいいわ」
「そうか。わかったよ」
いつもならこのまま行くのだが、今日はやめる事にした。もしこのまま一緒に買い物に行ってしまえば、もうどうなるかわからないと思ったからだ。今は少しでもいいから、冷静になれる時間が欲しい。
「それじゃ、また学校で」
「ああ。また学校で」
2人はその場で、それぞれの帰路に着く。
こうして、圭の働きによって実現した2人のデートは終わりを迎えた。
これがどうなるかは、まだかわらない。
因みに例にあんこうのぬいぐるみだが、口の中にティッシュ箱を入れられる事を発見し、以降白銀家のティッシュボックスなるのだった。
多分かぐや様には真似できない。あの子ヘタレだし。いや、いざという時は決めるけどね。
因みに京佳さん。平然を装っていますが、実際は心臓バクバクです。そりゃいくら滅茶苦茶強力な恋敵でも、好きな人に愛しているなんて言えば、ねぇ?
次回も可能な限り投稿したいな。
秀知院 怒涛の3日間は
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書いて
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本編終わってからならいい
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別にいらない
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はよ本筋進めろ