もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・   作:ゾキラファス

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 京佳さんのターンだけど、あまり出番がない。次回以降はちゃんと出番増やします。

 後今回は、ちょっとだけグロ注意です。気を付けてね。


秀知院と文化祭(シン・デレラ)

 

 

 

 

 

 文化祭1日目の午後。京佳は、自分のクラスがやる演劇の午後の公演準備をしていた。午前中にやった時は、かなり好評であった。ミスらしいミスも無かったし、予想外のハプニングも無かった。この調子なら、午後からの公演も問題無いだろう。

 

「うっわー…午前より人多いよー…」

 

「ほんとだねー。プレッシャーだよこれー」

 

「だよな。俺もマジで緊張してきたわ…」

 

 しかし午前にやった演劇の噂を聞きつけたのか、想定以上に人が来ている。これは確かに、プレッシャーを感じてしまうだろう。

 

(白銀、来てくれるかなぁ…)

 

 そんな中京佳は、全く別の事を考えていた。それは、白銀が演劇を観に来てくれるかどうかというものである。前日、京佳は白銀に『観に来て欲しい』と言ってはいるが、白銀が絶対に来てくれる保証はどこにもない。もしかすると自分の演劇では無く、かぐやと一緒に校内を回るかもしれない。

 

(もしもそうなったら、午後の演劇終了したら私も直ぐに白銀を誘おう。行く場所はそうだな、確か石上と伊井野のクラスはお化け屋敷……いややめよう。死にたくないし)

 

 こういう時の定番であるお化け屋敷を考えたが、あそこは京佳がこの世で1番嫌いな場所なので却下する。だって怖いもん。

 

「おい立花」

 

 京佳が不安がっていると、ジャージ姿の龍珠が話しかけてきた。既に開演まで時間が無いのに、どうして未だに彼女がジャージかというと、単純に演劇で着る衣装を着たくないからである。

 なんせ龍珠の役はお姫様。こんなの、本当なら絶対にやりたくない。しかしどうしようも無い理由により、この役をやっている。でも可能な限りドレスなんて着たくないので、ギリギリまでジャージを着ているのだ。

 

「何だ?トラブルか?」

 

「いやそんなんじゃない」

 

 龍珠が観客が待っている幕の外を指さす。

 

「白銀来てるぞ」

 

「え!?本当か!?」

 

 そして京佳が今一番聞きたかった事を言う。京佳は幕の外をチラ見する。

 

(いた!白銀!)

 

 多くの観客が座っている椅子の1番後ろ。そこに白銀はいた。

 

 

 

 かぐやと一緒に。

 

 

 

「……」

 

 先程までパァァァといった感じの笑顔だったのに、急に表情がスンッとなる京佳。そりゃ自分の好きな人が、自分の恋敵と一緒にいたら面白くない。

 おまけにかぐやは、自分のクラスの出し物でやっていたコスプレ喫茶の時の和装メイド姿のままである。おかげで1部の客たちは、かぐやに釘付けだ。

 

(いや落ち着け私。別に白銀が四宮と一緒でも大した問題じゃない。より一層演劇に力を入れればいいだけだ)

 

 だが直ぐに気持ちを切り替える。確かに予想外の客ではあるが、目的である白銀本人は来てくれた。ならば、この演劇で自分だけを見るように演技に力を入れればいい。

 そうすれば、隣にいるかぐやの事も気にならなくなるだろう。要するに、私を見ろという事だ。

 

(そうと決まれば早速衣装の確認だ!)

 

 そしてやる気を出して、京佳は自分の衣装を再度チェックするのだった。

 

 

 

「もう直ぐですね」

 

「そうだな」

 

 演劇の会場となっている体育館。既に大勢の生徒や学校外の来客が、演劇を今か今かと待っている。その数、およそ80人。

 午前中にやった演劇が好評で、その話が人から人へと伝わり、これほどまでの人を集める事が出来たのだ。その中に、白銀とかぐやは隣同士の席に座っていた。

 

(さっきは会長に接客が出来ませんでしたが、ならば新しい方法にすればいいだけ。立花さんの演劇にはあまり興味はありませんが、可能な限り会長の隣にいて、そして体を密着すれば多少は私有利に動くでしょう)

 

 かぐやは、京佳の演劇そのものにはこれっぽちも興味が無い。しかし少しでも白銀と一緒にいたいので、こうしてかぐやは足を運んできたのだ。

 流石に京佳たちの演劇を台無しにする事こそしないが、この期に可能な限り、白銀の意識を自分に向かせる。それがかぐやの作戦だ。

 

(会長が立花さんに釘付けになったとしても、その都度私が何か行動を起せば問題ありま「あー!かぐやさんと会長ーー!」!?)

 

 だがここで、最大の不安要素である藤原が突然現れた。

 

「ふ、藤原さん?どうしてここに?」

 

「え?京佳さんの王子様姿を見たいからですけど」

 

「そ、そうですか…」

 

 どうやら彼女は、京佳の王子姿目当てで来たらしい。悪意なんてこれっぽちも無いのだが、今のかぐやにとっては邪魔者でしかない。

 

(藤原さんは何をしでかすかわからない。今までも、私が考えた作戦を悉く自由奔放に破壊してきた。ならば、今回も何かしでかすかも…)

 

 かぐやは一抹の不安を覚える。藤原は例えるなら、暴走列車。こちらが正しい速度で進んでいても、急に速度をあげて脱線する。そんな子なのだ。だからこそ不安なのである。

 

「おい藤原。一応言っておくが、大声で応援とかしなくていいからな?」

 

「いや会長?私そんな事しませんけど?普通に京佳さんの演劇を静かに見る予定ですけど?」

 

「……本当に頼むぞ?」

 

「だから大丈夫だって言ってるじゃないですか!!そんなに私の事信用できません!?」

 

「え?うん」

 

「うんって言った!?」

 

 白銀もそれとなく注意する。やはりかぐや同様、不安なのだろう。

 

「お前は結構オーバーリアクション取るからな。あまり大きな声出して、他の人の迷惑にかけることだけはマジでやめろよ?」

 

「だからしませんって!なんだったら今から自分の口にガムテープでも張りましょうか!?」

 

 そう反論する藤原だが、もう既にうるさい。まだ開演前なので良いが、これでは本番が不安だ。

 

(いざとなったら、早坂に教わった手刀で黙らせましょう…)

 

 かぐやは最悪、藤原を物理的に無理矢理黙らせる方法を考える。因みに手刀で人の意識を奪う事は普通出来ない。でも四宮家のメイドである早坂なら可能だ。訓練してきたし。

 

「それにしても…」

 

 かぐやが物騒な事を考えている時、白銀は周りを見渡していた。大勢の人が京佳のクラスの演劇を観に来ているのは、素直に凄いと思う。

 しかし、ひとつ気になる事があった。

 

「何か、女子ばかりじゃないか?」

 

 女子の数が多いのである。割合で言えば男子が2に、女子が8だ。明らかに多い。

 

「恐らくですが、立花さん目的では無いでしょうか?」

 

「ですねー。京佳さん、女子にかなりモテますし、王子様やるってなると人も来ちゃいますよー」

 

「あー、成程」

 

 藤原の言う通り、京佳はモテる。男子にではなく、女子に凄くモテる。今年のバレンタインデーで、生徒会メンバーで1番チョコレートを貰ったのが良い証拠だ。

 尚、京佳本人はこの事に少し複雑な思いを抱いている。

 

(やっぱり、立花はモテるのか…)

 

 そして白銀は、その事実に少しだけ嫉妬した。

 

「ところで会長」

 

 ここでかぐやが行動する。先程からかぐやは、コスプレ喫茶で着ていた和装メイドの恰好をしている。しかし、その感想をまだ白銀に聞いていない。ここで先ずは感想を聞いて、白銀の意識を自分へ向ける。そうすれば、白銀は京佳の演劇に集中できないだろう。

 

「このかっ『お待たせしました。これより、2年C組の演劇『シン・デレラ』を初めさせて頂きます』…」

 

 だが無情にも、開演時間が着てしまった。かぐやは育ちが良いので、演劇中に話すという行為をあまりしたくはない。マナー違反だし。

 

(いいです…後でたっぷり聞きますし…)

 

 かぐやは若干拗ねがらも。京佳のクラスの出し物である演劇が始まったのだった。

 

 

 

『昔、ある王国の村に、カーラという1人の娘がいました。彼女は幼い頃に母親を亡くしており、とても悲しい思いをしてしまいました。しかし直ぐに父親が再婚。これで新しい家族と楽しい日々が送れると思っていましたが、それはただの幻想でした』

 

「カーラ!カーラはどこだい!?」

 

「はい、お義母さま」

 

 ナレーションが始まり、舞台袖からシンデレラ役の龍珠が出てくる。

 

「ぶっふぅ!?」

 

 そして白銀、それを見て思わず吹く。だってあの龍珠が、まさかのシンデレラ役なのだ。こんなの、彼女がどういう子かを知っている人ほど吹くに決まってる。

 

「……」

 

 そして龍珠は、そんな白銀を睨む。絶対に尻を蹴ってやるとも決めた。

 

「カーラ?早く掃除をしてちょうだい」

 

「あ、ごめんなさい。直ぐにやります」

 

 でも今は演劇の真っ最中。直ぐに意識を演劇に集中させる。白銀を蹴るのは、後にしよう。

 

「ちょっとカーラ。この洗濯物を早く洗ってちょうだい」

 

「それが終わったら庭の掃除もしてよね」

 

「はい…わかりました」

 

「全く。顔が良いだけで本当につかえないんだから」

 

 その後は、誰もが知っているお馴染みの展開が続く。義理の母親と義理の姉2人に虐められ、父親は遠方に仕事に行った際、病気になってしまい死亡。家族にはそれなりの遺産が残されたが、シンデレラであるカーラは質素な生活を強いられる。

 

「うう…どうして…私ばかりこんな生活を…」

 

 龍珠が泣く演技をしながら、その後ろでは背景幕が変わる。更に音楽もかかり、ライトも暗転したりして悲壮感を漂わせる。その高いクオリティに、観客はすっかり夢中になってしまった。

 

(随分凝ってますね)

 

 かぐやはそれを高く評価する。これまで様々な舞台を、四宮家の教育の一環で見てきたのでかなり目が肥えているかぐやだが、そんなかぐやから見てもこの演劇はレベルが高い。隣にいる白銀も夢中になって見ているし。

 

(おかげで会長はずっと舞台だけを見ているし!私が結構頑張って肩を近づけているのに無反応ですし!!)

 

 予定なら白銀はかぐやにドギマギしていた筈なのに、京佳たちのクラスの演劇が想像以上にクオリティが高いせいで、白銀は全くかぐやを気にしている様子が無い。あの藤原でさ無言で見ているし。

 

(いっそ演劇を台無しにする…?いえ、いくらなんでもそれはダメ。それだけはやったらダメ)

 

 もしもここで演劇を邪魔なんてしてしまえば、それこそ白銀に嫌われる。そもそも、人としてどうかと思うし。こうなっては仕方が無い。今は大人しく演劇を見る事にしよう。

 

『ある日、義理の母と姉が王が主催の舞踏会へ参加する事となりました。しかし、シンデレラであるカーラはそこに行く事はできません。彼女は心底悲しい気持ちになりながら、亡き母親の墓前で泣いてしまいました』

 

「お母さま…どうして私ばかりこんな目に?せめて1度でいいから、お城に行ってみたかった…」

 

 その時、周りにいた動物(着ぐるみを着ているC組の生徒)が墓石を動かす。すると中からは、かつて母が着ていた美しいドレスが出てきた。

 更に鳥(ワイヤーで宙に吊られているC組の生徒)がどこからともなく、美しい装飾のされた靴を投げ落とす。カーラはそれを受け取り、あっという間に着替えた。

 

「え?魔法使いじゃないのか?」

 

 白銀、自分が知っている展開と違う事に首を傾げる。

 

「あれ?知りませんか会長。原作では魔法使いは出ないんですよ~」

 

「そうなのか?」

 

 藤原の発言に、白銀は驚く。諸説あるのだが、原作グリム童話のシンデレラである『灰かぶり』には魔法使いは一切出てこない。

 というか魔法の類が全く出てこない。あれが出るようになったのは、ペロー童話版のシンデレラである。

 

 因みに灰かぶりというタイトルだが、その後に『我らあり!』とは続かない。続いたら解放戦線になっちゃうし。

 

「これで私も、舞踏会へ行ける。ありがとう、鳥さん」

 

「…っ!!」

 

 シンデレラである龍珠が感謝の言葉を送るが、普段とのギャップが凄すぎて白銀は再び拭きだしそうになる。でも何とか堪えた。

 しかし龍珠には普通にバレていたので、彼女は絶対に何があっても白銀を蹴ると誓う。

 

 

 

(さて、そろそろだな)

 

 舞台袖では京佳が、衣装に着替えて出番を待っていた。シンデレラが舞踏会に行くという事は、王子様が出てくるという事。

 つまりは、京佳の出番である。

 

(台詞もしっかり暗記した。動きも何度も練習した。それに、午前中は好評だった。これならいける!)

 

 午前中の成功体験のおかげで、今の京佳は自信が漲っている。後は、力まないようにリラックスするだけだ。

 

「立花さん。出番来るよ!」

 

「ああ。行ってくる」

 

 そして遂に、京佳は舞台へと上がるのであった。

 

 

 

「まぁ!王子様だわ!!」

 

 舞踏会に来ている義理の姉がそう言うと、舞台袖から王子様である京佳が出てきた。

 

「お待たせ。準備に少し時間が掛かってね」

 

 出てきた京佳は、まさに王子様といった風貌。青いサーコートに、白のチェニック。そして背中には青いマント。腰には模造剣。まるでおとぎ話の中から出てきたような恰好だ。

 更に普段左顔に付けている眼帯も、舞台仕様に刺繍が施されている特別仕様。それに京佳の整った顔と恵まれた身長が合わさった結果、とんでもない化学反応を起こしているのだ。

 俗に言う、マリアージュである。

 

『きゃーーー!!』

 

 そんな京佳を見た瞬間、体育館に黄色い悲鳴が響く。

 

「かっこいい…!立花さんの王子様姿かっこいい…!」

 

「噂では聞いてたけど凄い!ほんとにかっこいい!」

 

「許可させあれば写真撮ったのに…!」

 

「新聞部!あとで絶対に写真コピーさせなさいよーー!」

 

 声の主は、所謂京佳のファンの子である。やはり演劇を見に来ている多くの女子は、京佳目当てだったようだ。

 

「王子様!是非私と踊ってください!」

 

「いいえ!どうか私と…!」

 

「いや!私と踊ってーーー!」

 

「あ、ズルイ!立花さん!お願いだから私の手を取ってーーー!」

 

 演者に交じって、京佳とダンスをしようとする女子達。

 

『えー。他のお客様のご迷惑になるのでお静かにお願いします。じゃないと演技が続けられませんよー』

 

『……』

 

 ナレーションに言われ、急に静かになる。そりゃ誰だって推しの演技が聞こえないのは嫌だろうし。

 

「京佳さん、かっこいいですねー」

 

「そうですね。よく似合ってます」

 

 藤原とかぐやも素直に賛美する。それほど、京佳の王子姿は似合っているのだ。

 

(かっこいい…)

 

 そして白銀。彼もまた京佳の姿に釘付けになっていた。下手したらメス堕ちしそうな程かっこいい。今の京佳だったら、是非エスコートされたい。

 

「そこの美しいお嬢さん。どうか、踊ってはくれませんか?」

 

「えっと、よろこんで」

 

 龍珠の手を取り、京佳は舞台上でダンスを踊る。多くの女子が、龍珠を羨ましがっていた。白銀もその内の1人だったりする。

 

「あ、すみません。私もう帰らないと」

 

 ここで時間が来てしまう。シンデレラは母親たちが家に帰ってくる前に、家に帰らないといけない。そうでないと、あとで何を言われるかわからないからだ。

 

「そ、そんな!せめてもう少し!」

 

「もう時間が無いので。それでは」

 

 そう言うと、シンデレラは舞台袖に行ってしまった。しかし、王子は諦めない。

 

「いいやだめだ!あの子を諦めきれない!大臣!罠を用意してあの子を捉えろ!!」

 

「かしこまりました」

 

(いや何で!?)

 

 突然の王子の言動に驚く白銀。実は原作の王子は、かなりシンデレラに執着があり、帰ろうとしたところを無理矢理捕まえようとしていたのだ。

 そしてその結果、片方の靴だけ落としてしまい、それがシンデレラ捜索に使われる事になるのだ。

 

 その後、役人が靴を持ってシンデレラを捜索。そして遂に、シンデレラの家へとやってきた。

 

(ここで姉2人が履こうとしたけど、無理で最後にシンデレラが履くんだよな。あのシーンは、男でもちょっと憧れるものがあるよ)

 

 白銀も流石にここのくだりは覚えている。ガラスの靴じゃないが、物語の流れは一緒だ。

 

 いや、正確にはここまでは一緒だった。

 

「くっ!入らない!!」

 

「お義母様。これを使えばいいのでは?」

 

(ん?)

 

 義姉が靴を履こうと悪戦苦闘していると、シンデレラである龍珠が手にのこぎりを持って現れる。

 

「これでお姉さまの足の指を切り落としましょう。そうすれば靴が入り、晴れてお義姉さまは王子様と結ばれます」

 

「おお、カーラ。お前はとても良い事を言ったね。じゃあ早速やろう!」

 

「え゛」

 

 そしてとんでもない事を言い出す。母親が義姉を抑え込み、龍珠がのこぎりで義姉の足の指を切りおとす。

 

「ぎゃああああああ!?痛い痛い痛いぃぃぃぃぃ!!!?」

 

 瞬間、義姉の足から血が噴き出した。当然だが、本物ではない。

 

(いやグロイ!!??」

 

 衝撃の光景に、白銀びびりまくる。自分が知らない展開で、しかもあの龍珠がこんなグロテスクな事をしている。正直、似合いすぎててかなり怖い。

 

「あ、もしかして会長知りませんでしたか?シンデレラの原作はあんなお話ですよ?」

 

「そうなの!?」

 

 マジである。諸説あるが、シンデレラの原作はかなりグロテスクなお話なのだ。

 

「あ、ダメだったみたいですね。じゃあ下のお義姉様。かかとを切り落としますので、こっちに来てください」

 

「い、いやよ!かかとを切りおとすなんて!」

 

「カーラの言う通りにしな!王子と結ばれたらもう一生歩かなくて良い生活が出来るんだから!」

 

「お義母さまもこう言ってますし、さぁ?」

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!痛い!!痛いよぉぉぉぉぉ!!」

 

 このように、流血表現が普通にあるくらいには。

 

「うっわー…よくできてますねー…ゾっとしちゃいましたよー…」

 

「そうですね。多分血糊なのでしょうけど、あそこまでリアルに作るのはかなり大変だった筈。これは小道具の人も評価しないといけませんね」

 

 その光景を、冷静に評価する藤原とかぐや。

 

 その後、シンデレラは靴がピッタリ入り、王子様と結婚。あっと言う間の早着替えで、ウェディングドレスを着て結婚式へ望む。その先には、白い衣装を着ている京佳がいる。

 

「京佳さん、かっこいいですねぇ…」

 

「……そうですね。かなりお似合いかと」

 

 悔しいが、とても似合っているのをかぐやは認める。これでは、和装メイドの自分より、男装の麗人ともいえる恰好をした京佳の方が印象に残ってしまう。

 

(いいえまだです!確かに似合ってるし、何なら素直にかっこいいと思えましたが、それだけ!それだけです!!)

 

 でも別に、ここの演劇で全てが決まる訳では無い。まだ文化祭は1日ある。最後に自分が白銀の横にたっていれば勝利なのだ。

 

 ところで先程、シンデレラはかなりグロテスクなお話と言ったのを覚えているだろうか。実はその締めくくりが、最後の最後にある。

 

 それは義理の姉2人が、シンデレラの結婚式に来た時に起こった。2人は猛省し、シンデレラをしっかりと祝福しようとしていた。

 しかし突然、どこからともなく鳥がやってきて、義姉2人の傍に鎮座したかと思えば、顔ののぞき込んでくる。

 

 そして、

 

「「ぎゃああああ!!??」」

 

 義姉2人の目玉をくりぬいたのだ。

 

『ぎゃああああ!?』

 

 その光景に、観客の殆どは悲鳴を上げる。だって義姉2人の目からは、血がまるで噴水のように拭きだしているからだ。勿論これは本物では無いのだが、やはり直に見るとクルものがある。

 

『本日の教訓。悪い事はしちゃいけない』

 

 そんなナレーションが入った血みどろなエンディングで、劇は幕を閉じるのだった。

 

 

 

「やぁ、どうだった?」

 

 演劇が終わり観客が帰った後、京佳は体育館外にいた白銀たちの元へ来ていた。

 

「凄かったですよー!演出も凝ってましたし、血なんてあんなにブシャーってでるとことかもう本当に凄かったです!是非妹の萌葉にも見せたかったですよー!」

 

「ええ、正直驚きました。とても学生で出来るレベルでは無かったと思いますよ?」

 

「ありがとう。まぁ血に関しては将来映画関係の仕事に就きたい子が気合いれたからだよ」

 

 藤原とかぐやからも好評だ。後は、1番感想を聞きたい人から感想を聞くだけ。

 

「それで白銀。どうだったかな?」

 

 ここで良い返事を聞く事が出来れば、京佳は更に前進できて、より自分に自信を付けられる。そして自信は、告白する勇気へと変える事が出来る。

 だからここの白銀の返答は重要なのだが、

 

「……」

 

 白銀からの返答は無い。

 

(え?な、何でだ?もしかして、面白くなかったか?それとも、私の演技がへたくそだったか?)

 

 白銀が何も言わないので、途端に不安になる京佳。

 

「会長ー?どうしましたー?ちゃんと返事しなとダメですよー?」

 

 藤原が助け舟を出し、白銀の顔を覗き込む。

 

「……あれ?」

 

 そしてある事実に気が付いた。

 

「白銀?」

 

「会長?」

 

 藤原に続いて、京佳とかぐやも白銀の顔を覗き込む。するとそこには、

 

「    」

 

 瞬きをしておらず、目が真っ白になり、血の気が引いた顔をしている白銀の顔があった。

 

 というか白銀は、立ったまま気絶していた。

 

「え?気絶してる…?」

 

「会長ーーーー!?」

 

 

 

 「本当にすまない!なんでか途中から記憶が無いんだ!立花が登場したくらいは覚えているんだが、それ以降がさっぱりで…!」

 

 何とか復活した白銀。実は彼、あの血の演出を見たせいで気絶してしまったのだ。おかげで、演劇の内容をあまり覚えていない。龍珠が似合わない事をしていたのは覚えているのだが。

 

「そ、そうか。まぁ仕方ないさ。気になったらクラスの子が撮影していたから、今度それを見せるよ」

 

「ああ。本当にすまない」

 

 頭を下げる白銀。京佳もこれは仕方ないと割り切る事にした。

 

(せっかく頑張ったのに…)

 

 でもやっぱり少なからずショックは受けていた。

 

(あのまま会長が演劇の事を覚えていたらまずかったですが安心しました…これで私と立花さんの優劣はイーブンになりましたね…)

 

 そしてかぐやはほっとしていた。先程の演劇はかなりクオリティが高い。特に京佳の王子様姿はヤバイ。

 かぐやも今の和装メイド姿に自信はあるが、それでも京佳の方がインパクトが強いだろう。それが白銀の記憶喪失でチャラになった。これなら一安心である。

 

((明日はもっと頑張ろう))

 

 そしてかぐやと京佳は、明日は今日以上に頑張ろうと決める。

 

 必ず、白銀と恋人になるために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだ、立花」

 

「ん?何だ?」

 

 白銀たちと別れた後、京佳は1度体育館に戻っていた。演劇で使った道具の片付けをする為である。しかしその途中、龍珠に声をかけられる。

 

 龍珠は周りに人がいない事を確認すると、京佳に耳打ちする。

 

「あいつと連絡取れた。協力してくれるってさ。あと、私の父親からも許可取った。どうぞ派手にやれってさ」

 

「…本当に、ありがとう」

 

「いいって。ただし、絶対にやり遂げろよ?」

 

「ああ。勿論」

 

 そして何かのやり取りをして、再び片付けに戻るのだった。

 

 

 

 

 

 おまけ

 

「まさかあの龍珠がお姫様なんてなー。どう思うよ小島?」

 

「……」

 

「まぁ、似合ってはなかったよな?あいつ普段の態度があんなんだし。まるで水と油くらいミスマッチな役だったよな?」

 

「……」

 

「小島?」

 

「可愛い…」

 

「え゛?」

 

 

 

 

 




 会長は気絶したまま体育館の外まで歩きました。そしてシンデレラについては、所々間違っているかもしれませんが、独自設定ということでお願いします。

 今年中に告白まで行けるよう頑張ります。いや、今年あと1か月しかないけどね…?

 次回も頑張って書かせていただきます。
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