もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・   作:ゾキラファス

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 今日はひな祭り。何とか間に合った。

 追記・衣装の部分をちょっと編集しました。


秀知院と文化祭(バルーンアートとコスプレ撮影)

 

 

 

 

 

「つー訳で、あたしの方は準備がもう直ぐ完了だ。あいつも、かなりノリノリだった。今のところ問題は無いぞ」

 

「本当にありがとう龍珠。お父さんにも、なんて礼を言ったらいいのか」

 

「気にすんなって。そもそもうちの親父だってノリ気なんだ。ああ見えて、かなりのロマンチストだからな」

 

 文化祭最終日の朝。京佳は同じクラスの友達で、今回の告白の協力者である龍珠と空き教室で話していた。内容は勿論、白銀に告白する事についてである。

 

「にしてもお前、私が用意しなかったらどうするつもりだったんだよ」

 

「いや、調べたらそういう業者もあるらしいから、貯金からお金を出してやろうかと思ってたぞ」

 

「浅はかだろ。一体いくらすると思ってんだ」

 

「前に計算したら20万くらいだったな」

 

「計算したのか。つか思ったより安いな」

 

 どうやら京佳は、告白の為に必要な何かを龍珠に用意してもらったようだ。そして龍珠は、それを夜中から密かに学園に運んでおり、もう直ぐ全て運び終えるらしい。

 当然、他の誰にも見られないようにかなり気を使っている。まるで運び屋みたいである。

 

「で、今日はどうするつもりなんだ?」

 

 龍珠は京佳に尋ねる。自分は既に準備が完了するが、あれを使うのは日が暮れてからの予定。それまでは使わない。ならば京佳は、それまで何をするつもりなんもか気になる。

 

「午前中の演劇が終わったら、1度白銀を誘って文化祭を回ってみるよ。場所はまだ決まってないけど」

 

「それ早い内に決めておかないとダメじゃね?」

 

 そして京佳は、どうやら午前中に白銀を誘い、文化祭デートをするらしい。ついに告白までこぎつけた。正直、あとは告白準備に専念した方が良いのだろうが、やはり白銀と一緒に文化祭を回ってみたい。

 なんせ白銀は、来年の今頃にはアメリカなのだ。故に一緒に秀知院の文化祭に参加できるのは、今日が最後。だから僅かな時間でも、白銀と一緒に過ごしたい。

 

「つーかその言い方だとさ、もしかして」

 

「ああ。午後は準備に専念するつまりだ」

 

 午前中の演劇が終わり、その後白銀を文化祭に誘ったとなると、時間は1時間も無いだろう。普通にデートをするよりずっと短い時間だ。

 しかし例えそれだけしか一緒に過ごせなくても、告白が成功する事の方が大事。なので、本当なら1日一緒に過ごしたいが我慢する。

 

「ま、そういう事なら頑張れよ」

 

「ありがとう」

 

 そんな京佳に、龍珠は激励を送る。彼女は白銀と恋人になるなんて絶対に嫌だと思っているが、京佳がなりたいと言うのならば応援する。だって京佳は、高等部に来て初めて出来た友達だから。

 

 

 

「ところで龍珠。今朝のあれは誰の仕業か知っていたりするか?」

 

「……さぁな、私もあれがなんのかさっぱりだ。文化祭の熱に当てられた馬鹿がやらかしたんだろう」

 

「そうか」

 

 

 

『秀知院学園に怪盗現る!!』

 

 そんな見出しと共に、学園中に掲載されている学校新聞。昨日まであったはずの大量の風船の消失。そして『ハートを頂きに上った』と書かれた手紙。

 

「これは挑戦です!私が配って回ったハートが全部奪われている!これは私に対する挑戦以外の何物でもありません!!」

 

 どこからともなく取り出した鹿追帽を被り、オモチャのパイプを口に咥えながら、

藤原は興奮した犬のような状態でテンションを上げながら叫ぶ。

 

「えっと、犯行推定時刻は昨日の未明から朝方。文化祭の飾りつけで使われたハートの風船が全部失われた」

 

「第1発見者は学園が雇っている守衛さん。朝の見回りをしている時に、風船が無くなっていたのに気がついた。彼曰く、昨日は飾りつけの関係もあって各教室の出入りは自由。何度か見回りはあったけど、それさえやり過ごせば誰でも犯行は可能だった、と」

 

 柏木と田沼の2人が、学園新聞の内容を確認。2人が言ったように今秀知院からは、ハートの風船がひとつ残らずなくなっている。

 念の為、各クラスが売り上げ金の入っていた金庫を確認してみたが、全くの手つかず。他に私物が無くなっている事も無く、クラスの出し物で使う道具もあった。無くなったのは、ハートの風船だけである。

 

「それしてこれです!」

 

 藤原が、ハートの風船が飾られていた場所にあったという手紙のコピーを手にして上に掲げる。

 

「アルセーヌ…」

 

「確かモーリス・ルブランの小説に出てくる怪盗の名前だよね。中学の頃に読んだ事あるよ」

 

 アルセーヌ・ルパン。

 フランスの小説家、モーリス・ブラウンが書いていた『アルセーヌシリーズ』に登場する怪盗だ。怪盗と言っても非常に紳士であり、とてもユーモアセンスに優れていたため、多くの国から支持をされている。

 変装の達人で、愛国者でありフェミニスト。時には犯罪の解明する探偵の役目を持つ事もあった。

 

 そして例の有名なアニメでは、彼のおじいちゃんである。

 

「だったら、このハート泥棒さんはそれに倣って?」

 

「多分ね。怪盗って言ったら彼ってイメージあるし」

 

 2人の言う通り、このハートの風船を盗んだ犯人は、怪盗アルセーヌに倣って名前を書いているのだろう。

 

「そしてこれは、絶対に私に対する挑戦状に他なりません!!」

 

「「えー…?」」

 

 そして藤原は、なぜかそんなトンチキな事を言い出す。柏木と田沼はどこかあきれ顔だ。

 

「だって各クラスに忍びこんだのに、盗んだのは私が配った風船だけ。誰かに害を咥えようとした訳でもなく、ただハートの風船を盗んだだけ。しかも盗んだ場所には、ご丁寧に新しい風船が置かれていました。つまり犯人にとってこれはゲーム。是非謎を解いて見せろというゲームなんです!」

 

 確かに藤原は風船を各クラスに配っているが、あれは元々白銀と藤原のクラスで使っていた風船の余りである。それをどうせならと配っただけだ。恐らく犯人に、そういった意図は無いだろう。そもそも藤原が探偵とか誰も知らないし、本人も今までラブ探偵というよくわからない名前しか名乗った事無いし。

 

(新聞部の人はむしろ藤原さんが犯人じゃないかと疑っていたって聞いたけど、言わないでおこう…)

 

 柏木はその事実を胸にしまった。多分泣くだろうから。

 

「という訳で捜査に行ってきます!私は今から銭形警部ですよーー!!待ってなさいねルパーン!!」

 

「あの藤原さん?銭形警部はアルセーヌシリーズには出てこないよ?どっちかって言うとガニマール警部じゃないかな?」

 

「いや、というか仕事は?」

 

 田沼と柏木の言葉も聞かず、藤原はクラスの出し物をほっぽり出して教室から出ていった。

昨日、生徒会室で全力で仕事をするとか言っていたのにこれである。まぁそもそも人出は足りているし、藤原1人いなくても対した問題にはならないだろうから大丈夫だろう。

 

 あと今の藤原は、見た目の恰好だけでといえば警部よりホームズな気がする。

 

「会長。いいんですか?」

 

 しかし柏木は念のため、後ろで風船を弄っている白銀に尋ねる。

 

「いいんじゃないか?実害がある訳じゃないし。それに、お祭りにはお祭り騒ぎが必要だろ?」

 

「はぁ…」

 

 だが白銀は、藤原を注意するどころかノリ気だ。おまけに何か含みのある顔をしている。

 

(もしかして…いやまさかね…)

 

 柏木はまさかの可能性を考えてみたが、流石にそれは無いだろうと思いその考えを消す。同時に文化祭2日目開始の時間となったので、自分の仕事に戻るのであった。

 

 

 

 そして始まった文化祭2日目。かぐやは午前中に入っているシフトを早々に終わらせて、白銀のクラスへと赴いていた。

 

「お、来たのか四宮」

 

「ええ。今日は早めのシフトでしたので」

 

 最初こそ教室に入るのを少しだけ躊躇っていたが、既に京佳に色々遅れを取っているし、何より白銀は来年の文化祭にはいない。それに早坂に言われたのだ。

 

『ここで勇気を出さずに何時出すんですか?』

 

 他にも色々言われたが彼女の言う通り、今日がまさに天王山。今日勇気を出さずにいたら、本当に京佳に勝てなくなってしまう。だから今日のかぐやは、何時ものプライドを多少捨ててでも攻めに入る事にした。

 

「それで、何が欲しい?言ってはなんだが、かなり練習したからな。メニューに書いているものなら問題なく作れるぞ」

 

 尚、その裏には藤原の犠牲があったのは言うまでも無い。

 

「そうですね…」

 

 かぐやは手元のメニュー表を見る。すると、

 

(は、ハートの風船!?こんな素敵な物が!?)

 

 そこには秀知院の奉心伝説に肖ったであろうハートの風船があった。

 

(これはまさに、会長からハートを貰える最大のチャンスなのでは!?)

 

 白銀からハートのプレゼントを受け取る。そうなれば、それはもう伝説に則った告白に近い。白銀に想いを伝えるつもりならば、ここは恥ずかしくてもこれを作って貰うべきだろう。

 

(でも、流石にここでそれを貰うのは…!!)

 

 しかしここには自分以外にも大勢の生徒がいる。おまけのこのハートの風船を貰う条件は、自分も相手にハートの何かを差し出す事だ。

 もしそんな事をしてしまえば、完全に告白になってしまう。いくらかぐやが勇気を出しているとしても、流石にこれは恥ずかしいなんてものじゃない。

 

(確かにこれを貰うのはやぶさかではありません!ていうか貰いたい!幸い、ハート型のキーホルダーは持ってますし、交換も出来る!でも、でもここでなんて無理!)

 

 もしこれが生徒会室であれば、かぐやは白銀とハートを交換しただろう。だが不特定多数の人間がいるこの教室では無理。

 そう思っていたかぐやだが、ここで考えを改める。

 

(―――でも、そうやって何時も逃げていたから、私はいつの間にか立花さんに追いつかれてしまっているのよね…)

 

 正しくは追い抜かれているのだが、かぐやは踏みとどまった。ここで勇気を出さずに何時出すというのか。もしここで恥ずかしいからとまた逃げてしまえば、恐らくもうかぐやに勝ち目はない。あとはそのまま、京佳が白銀の結ばれるのを見るだけとんるだろう。

 

(そうよ。勇気を出しなさい四宮かぐや。確かに、確かに凄く恥ずかしいけど、ここは勇気を出すところ!)

 

 かぐやは勇気を振り絞って、白銀からハートの風船を貰う事を決意する。そして交換用のハートを取り出そうとした。

 

「では会長、私はこ…の…」

 

 だがおかしい。スカートのポケットに入れていた筈のハートのキーホルダーの感触が無い。反対側のポケットも探ってみるが、無い。

 

(……あれ?)

 

 自分でもわかるくらい、血の気が引くのを感じるかぐや。体中探ってみるが、どこにもないハートのキーホルダー。

 

(無いーー!?どっかに落としてるーーー!?)

 

 ここで痛恨のミス。なんとかぐや、ハート型のキーホルダーをどこかに落としてしまっているのだ。間違いなく、コスプレ喫茶の制服に着替えている時はあった。だとすれば、着替えてからここに来るまでの数分間に落としている可能性が高い。

 

(どうしよう!?本当にどうしよう!?)

 

 これでは、白銀からハートの風船を貰えないし交換できない。

 

「どうかしたか?」

 

 そして白銀は、そんなかぐやをやや心配した顔で見てくる。でももしここで、キーホルダーを落としたのでハートの風船が貰えないなんて事を言ってしまえば、そんなの自分がどうしても白銀からハートの風船が欲しいと公言しているようなものだ。

 こんな大勢の前でそれは、恥ずかしいなんてものじゃない。なんか癇癪を起した子供みたいだし。

 

「で、では、この白鳥を貰えますか?私、鳥が好きなので…」

 

「ああ、わかった」

 

 結果として、かぐやは妥協した。これ以上白銀を待たせて、変に思もわれるの嫌だ。なので白鳥を選ぶことにした。

 

(会長はこの意図に気が付いてくれるかしら…)

 

 当然、ただ鳥が好きという理由で白鳥を選んだ訳では無い。実は白鳥は、愛の象徴とも言える動物なのである。2匹の番いが寒さを凌ぐために体を寄せ合う姿は、まるでハート。

 更に白鳥は、死ぬまでパートナーを変える事は無い。そんな一雌一雄な動物なのだ。

 

(これは間接的なハートの受け渡し!幸い、会長はそういった事も知っている事が結構ありますし、これで多少はこちらを意識してくれるでしょう!ここは会長を信じます!!)

 

 白銀であれば、そういった事も知っているだろうと信じて、かぐやは白銀が白鳥のバルーンアートを作っているのを眺める。

 そしてほんの1分程で、白銀は白鳥を作り終えた。藤原が真剣に教えたおかげである。

 

「ほい。出来たぞ」

 

「ありがとうございます。ふふ、可愛いですね」

 

 かなり遠回しな気がするが、これで一応は白銀からハートを貰えた事になる。正確には購入したが正しいが、それでも白銀からハートを貰った事に変わりはない。一先ずは、目的を達成しただろう。

 

「会長、これ大事にしますね」

 

「それは嬉しいが、数日もすれば空気が抜けちゃうぞ?」

 

「大丈夫です。四宮家の技術を使えば20年は空気が抜ける事はありませんから」

 

「いやただのバルーンアートにそこまでせんでも…」

 

 ただのバルーンアートでは無い。白銀から貰ったバルーンアートだ。かなり予定と違ったが、それでもかぐやは嬉しかった。なんせ白銀から貰った物である。超遠回しだけど、ハートだし。

 

(家に帰ったら部屋に飾りましょう)

 

 かぐやは優しく白鳥のバルーンアートを抱きしめながら、そんな事を思うのであった。

 

「じゃあ、お代は100円な」

 

「あ、わかりました」

 

 最後にちょっと現実に戻されたが。

 

 

 

 

 

 かぐやが白鳥のバルーンアートを貰って嬉しがっている頃、京佳は演劇を終えて学園内を歩いていた。

 

「本当に凄かったです京佳さん!私、感動しちゃいました!凄くかっこよかったですよ!!」

 

「あの血みどろ演劇にそこまで…?」

 

 白銀の妹である、圭と一緒に。

 

 圭は本日、京佳の演劇を見に来ていた。そしてそのクオリティに感動。思わず演劇終了時にはスタンティングオベーションしたくらいだ。兄と違ってそこそこグロ耐性があるおかげである。

 そして演劇が終わった後、京佳と話しながら行動を共にする事にしたのだ。

 

(ん?)

 

 圭と一緒に歩いていると、京佳のスマホにメッセージが届く。送り主は眞妃。そして内容は『御行が今休憩に入ったから、頑張りなさい』というもの。

 

(きたか)

 

 今回京佳は、午後からは白銀を誘えない。告白をする為の準備があるからだ。仮に白銀が誘ってきたとしても、断るつもりでいる。その行動が吉と出るか凶と出るかはわからないが、それでも午後からは行動しない。なので午前のほんの少しの時間しか共にいられないのでだが、その合図がこれ。眞妃からのメッセージである。

 

(ただなぁ、今圭がいるんだよなぁ…どうしよう?)

 

 本当なら直ぐにでも白銀を誘いたいのだが、今自分の隣には圭がいる。別に圭がいるのが嫌だとかではなく、白銀と一緒に回る予定なのに、その妹がいるのはちょっとどうかと言う話だ。だって気まずいだろうし。

 いくら白銀と一緒に回りたいと思っていても、流石に圭に『お兄さんと一緒に回るからここまでだね』なんて言う訳にはいかない。そんなの最低だ。

 

(うーむ…どうするべきか…)

 

 京佳が内心悩んでいると、

 

「お、圭ちゃん」

 

 目の前に白銀が表れた。

 

「……何?」

 

「いやそんな睨まなくても…」

 

 突然現れた兄に、圭は少し嫌そうな顔をする。白銀は少しヘコんだ。

 

「立花と一緒だったのか」

 

「うん。京佳さんの演劇見てきたから」

 

「……大丈夫だったか?」

 

「何が?」

 

 あの血みどろ演出に白銀は耐えきれなかったので聞いてみたが、どうやら圭は問題無しらしい。

 

「白銀は、今は自由時間か?」

 

「ああ。今日はもう特に用事は無いぞ。これから見回りをしながら色々見て回るつもりだ」

 

「そうか」

 

 本来なら、ここで誘うべきなのだろう。だが圭をどうするか決めていない。

 

(少し罪悪感があるが、圭に何か嘘でもついて…いや、流石にそれは…)

 

 京佳は未だに悩んでいるその時だ。

 

「京佳さん。ここってコスプレが出来る出し物があるんですか?」

 

「え?ああ、あれか。確か3年D組がそういうのやってたよ」

 

「だな。所謂コスプレ撮影会って奴だな」

 

「ねぇお…兄さん。私、京佳さんと兄さん2人のコスプレ姿見てみたい」

 

「は!?圭ちゃん!?」

 

 急に圭がそんな提案をしてきた。突然の提案に、白銀はやや困惑。

 

「何?いいじゃん別に。お金なら私が出すから」

 

「いやそれなら圭ちゃんが立花と2人でやればいいんじゃない!?何で俺!?」

 

「いや、私そういうの恥ずかしいし」

 

「なら他人にやらせるなよ…」

 

「でも興味はあるの。だから2人でちょっとしてみてくれない?参考にするから」

 

「いや、でもなぁ…」

 

 白銀は少し悩む。別にコスプレが嫌な訳じゃない。だが彼にも色々都合があるのだ。

 

「京佳さんはどうですか?」

 

「そうだな。白銀が良ければいいが」

 

「じゃあ決まりですね」

 

「あれ?俺は?俺の意見は?圭ちゃん?」

 

 圭は京佳に尋ねると、京佳は大丈夫らしい。正直、圭に嘘をついてまで白銀と2人きりになろうとするのはどうかと思う。ならば、もう圭も一緒に行くべきだろう。あまり欲をかきすぎると碌な事にならないし。

 

「ほらお…兄さん。行くよ」

 

「いこ、白銀」

 

「ああ、了解だ」

 

 こうして京佳は、白銀とその妹の圭と3人で文化祭を回るのであった。

 

 

 

「いらっしゃませー」

 

「2名でお願いします」

 

「わかりました。ではこらから衣装を選んでください」

 

 3年D組は、自分達の教室を撮影スタジオにしていた。その少し離れた空き教室2つを、衣装部屋として借りている状態だ。

 

「ほう。色々あるんだな」

 

 白銀がメニューを見てみると、そこには様々な衣装の写真があった。

 

 全身包帯だらけの和服で、腰に刀を差している紅蓮腕とか使いそうな剣客の衣装。

 

 緑色の袖の長い軍服で、下半身がほぼ下着姿みたいな悪の女幹部の衣装。

 

 真っ黒なローブに、気味が悪い目玉が付いた杖と三つ編みのカツラが付属した魔法使いの衣装。

 

 黒くピッチリなタイツみたいなものに、銀や赤の鎧のようなものが付いている勇者ロボもどきのロボットパイロットの衣装。

 

 ピンク色のジャージの下に緑色の制服のようなものがあり、頭に巨大な丸いピンク色のウィッグが付属しいる地球寮女生徒の衣装。

 

 黒いブレザーの様な服装の背中に、船の艦橋や砲塔が付いている世界水準を軽く超えている軽巡洋艦の衣装。

 

 それ以外にも、様々な業種やマンガのキャラの衣装があった。これだけ自由に選べるので、かなり盛況のようだ。

 

「はい。私の家が衣装レンタルの会社をしていますので」

 

「成程」

 

 流石お金持ちばかりの秀知院。3年生にもこのような生徒がいる。おかげで3年D組は、このような出し物が出来ているのだろう。

 

「どれにする白銀?」

 

「うーむ…ここまで多いと悩むなぁ」

 

 選択肢が多いと悩むのは誰だって経験がある事。このままでは、衣装を選ぶだけで時間が過ぎてしまいかねない。

 

「ねぇねぇお…兄さん。これとかどう?」

 

「ん?」

 

 圭がとある衣装を指さす。それは、白銀もテレビや教科書で見た事がある衣装だった。

 

「そして京佳さんは、こっちなんてどうですか?」

 

「これは…」

 

 次に圭は、京佳用の衣装を指さす。そしてそれは、白銀と同じ様な衣装だった。

 

「いや、これ着るの時間が掛かるだろう」

 

「ご心配なく。これは誰でも簡単に着れるように今風に改造されておりますので、着るのは2分くらいでできますよ」

 

「え?今そんなのあんの?」

 

「はい。当然、女性の方も同じです」

 

「成程」

 

 本当なら着るだけで1時間は掛かるであろう衣装だが、そこは現代技術でどうにかしているらしい。

 

「なら、俺はこれ着てみよう」

 

「私も圭が選んでくれたやつにするよ」

 

「わかりました。それでは隣の教室へどうぞ」

 

 これ以上悩んでいても選べそうにないので、2人は圭が選んだ衣装にした。

 

「あ、じゃあ私は撮影場所で待ってます」

 

「わかったよ。じゃあちょっと着替えてくる」

 

 こうして2人は、衣装に着替える為、隣の教室へ移動するのだった。

 

 

 

(これで2人共、少しは進展してくれるかな…)

 

 2人が着替えている時、圭は撮影場所で待ちながらそんな風に思っていた。

実は今回の圭の行動は、全部兄御行と京佳の仲を進展させるべくやった事なのだ。

 圭は兄が、京佳以外にも誰かを好きになっていると思っている。その相手が誰か知らないが、できれば京佳を選んで欲しい。だって京佳は、あんなに兄の事が好きなんだ。それが報われないなんて、悲し過ぎる。

 当然、最後に決めるのは兄御行であり、兄が誰を選んだかの選択を圭がケチ付ける訳にはいかない。でもこうやって、少しは援護射撃をしてもいいだろう。

 

「お待たせ。ど、どうだ?」

 

 そうやって待っていると、兄の声が聞こえた。どうやら着替え終えたらしい。

 

 圭が声のした方を見ると、そこには束帯衣装を来た兄がいた。この衣装が何か知らないと言う人に説明すると、お雛様でお内裏様が来ているあの衣装である。

 

「馬子にも衣装って感じかな」

 

「ひどい。折角着替えたのに」

 

 結構自分でもイケてると思っていたのにこの辛口評価。白銀はヘコんだ。

 

「お待たせ」

 

 すると、今度は京佳の声が聞こえる。どうやら彼女も着替え終わったようだ。

 

 白銀と圭が声がした方に顔を向ける。

 

「こういうのは初めて着たんだが、似合ってるだろうか?」

 

 そこには、十二単を身に纏った京佳がいた。

 

「きゃーーー!!京佳さん凄く似合ってます!素敵です!!」

 

 それを見た圭は歓喜の声を上げる。髪型も大垂髪のカツラを被り、口には薄い口紅をしている。

まるで本物のお雛様が出てきたみたいだ。

 

「ありがとう圭」

 

 初めてこんな服を着てみたが、圭の喜びようを見て京佳は安堵する。着てみたかいがあったと。

 

「どうかな、白銀」

 

「うん。凄い似合ってるぞ。梅に鶯だな」

 

「ふふ、そうか。ありがとう。白銀もかっこいいぞ」

 

「お、おう…真正面から言われるとこそばゆいな…」

 

 白銀の反応も上々。これは本当に選んでくれた圭に感謝だ。

 

「それでは、撮影を開始しますねー」

 

「わかりました」

 

 3年生の撮影係りの生徒に言われ、2人は並んでカメラの前に立つ。

 

「まるで本当のお雛様とお内裏様みたい」

 

 2人に聞こえない様に、圭はつぶやいた。もしこれで背景が金屏風だったら、本当にそうにしか見えなくなる。

 

「じゃあ撮りますねー」

 

 そして撮影が始まった。

 

「ふふ。2人共良い顔してますねー」

 

「そうですか?」

 

「ええ。まるで結婚式で使う写真撮ってるみたですしー」

 

「「!?」」

 

「あ、その表情良いですねー。撮りまーす」

 

 その間、撮影係の3年生の色んな茶々を受けたが、それがまた良い表情をする為誰も止めなかった。圭も黙って見ているし。

 

 こうして京佳は、一応は白銀と共に文化祭を回れたのであった。

 

 

 

「今は写真なんてデータでしか持たないから、紙の写真が何だか新鮮だな」

 

「そうだな。私もスマホでしか写真を撮らないから、ちょっと新鮮な気分だよ」

 

 撮影が終わった後、3人は並んで歩いていた。その手には、先程撮影した写真が握られている。

 

「まるで本当の結婚写真みたい」

 

「圭ちゃん。からかうのやめなさいって」

 

「別にそんなんじゃ無いし」

 

 兄の発言に、少しムっとする圭。

 

「っとしまった。白銀、私はちょっとこの後用事があるから行くよ」

 

「え?もうか?」

 

「ああ。すまない。写真、大事にするよ。圭も、衣装選んでくれてありがとう」

 

「いいえ。それじゃあ京佳さん。また」

 

「うん、またね」

 

 京佳はそう言うと、そそくさとその場を後にする。

 

「……仕方ないか。じゃあ圭ちゃん。偶には兄妹水入らずとか」

 

「そういうの本当に恥ずかしいからやめて」

 

「圭ちゃん。俺も泣く事あるんだよ?」

 

 そんな反抗期真っ盛りな発言をした圭だが、その後何だかんだで兄と共にたこ焼きを食べるのであった。

 

 

 

 

 

 おまけ 文化祭での白銀父と立花母

 

「ぷっはー!昼から飲むお酒ってどうしてこんなに美味しいのかしら」

 

「本当ですね。滅多に出来ない事だけど、それ故に美味しい」

 

「にしても、私達良く会いますね白銀さん」

 

「ですね。あ、京佳ちゃんの演劇、よかったですよ」

 

「ありがとうございます」

 

「あのレベルなら、本当に役者になれるのでは?」

 

「そうですかね?いっそ芸能事務所に売り込み行こうかしら?」

 

「私の知り合いに『苺プロダクション』という小さいながらもしっかりとした芸能事務所を経営している人がいますので、よければ紹介しましょうか?」

 

「うーん。先ずは娘に聞いてからですね。私が勝手に決める訳にはいきませんし」

 

「それもそうですね。つい先走っちゃいましてすみません」

 

「いえいえ。あ、ビールのおかわり飲みます?」

 

「いただきます」

 

 

 

 

 




 文化祭最終日は、長くてもあと10話以内に終わらせる予定です。

 と、ここでちょっとだけアンケートにご協力ください。予定している展開にどうも迷ってて。

 追記。ごめんなさい。アンケートを1度消しました。できればもう1度お答えください。
 あと活動報告もあるので、お時間があればそちらもお願いします。

京佳さんが白銀に告白する時は、

  • かぐやがいない間に告白する
  • かぐやと共に白銀に告白する
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