もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・ 作:ゾキラファス
全部、作者の無計画な行いと浅知恵のせいです。本当にごめんなさい。これご都合展開ってタグとか付けた方がいいのかな?
あと、前回のお話を少し編集していますので、よろしければそちらもどうぞです。
白銀は焦っていた。本来なら自分が怪盗の恰好をして、とある作戦を決行するはずだったのに、突然現れた別の怪盗。そいつに全部持って行かれたからだ。
しかもその怪盗は、自分が作った龍の玉を盗み出し、姿を消している。一体誰があんな真似をしたのか、まるで見当もつかない。なので捕まえる。
そして、どうしてこんな事をしたのか絶対に吐かてせやるんだと、白銀意気込むのであった。
「誰もいない…」
「本当に龍の玉が消えてる…」
屋上へとやってきた白銀、かぐや、京佳、藤原、早坂、かれん、エリカの7人。そこにはあった筈の龍の玉が無くなっており、例の怪盗も姿が見えない。まさにもの家の殻といった感じだ。
「残念ながら、逃げられたみたいです…!ですが絶対に逃がしませんよーー!!」
「あの、藤原さんはどうしてそんなに元気なんですか?」
「だって怪盗を捕まえるのは何時だって探偵じゃないですか!ならば、秀知院1のラブ探偵である私が捕まえてあげないと失礼です!!」
(それあなたの自称でしょうに…)
無論、自称である。でも口にすると藤原がギャイギャイ言いそうなので、かぐやは何も言わなかった。
「白銀、これは生徒が悪ふざけを起したと考えるべきかな?」
「今はまだわからん。だが、文化際の熱にあてられた生徒がいても不思議は無いな」
「あるあるだよねー。去年もそんな事あったし」
「「ああ、あれか…」」
早坂の言葉で、白銀と京佳は去年の文化祭を思い出す。詳細は省くが、1部の生徒がはしゃぎ過ぎた結果、生徒会が後始末に追われまくった事がある。正直、もうあまり思い出したくもない。本当に大変だったし。
「あ、この紙、無機質紙ですわ」
「無機質紙?エリカ、何それ?」
「マグネシウムを原材料に使った丈夫な紙です。建築用途に使用されたりします」
「ふむふむ。怪しいですねぇ…」
(いや、そこ怪しいでしょうか?)
藤原の言葉に、かぐやは心の中でツッコミを入れる。
「にしても、何だろうなこれ?」
京佳は、先程怪盗が校庭にばらまいた紙を手に取って、まじまじと見る。そこには『文化祭はいただく』とだけ書かれている。
「意味がわからん…」
「だねー。実は意味なんて無いとかじゃない?」
「いいえ!そんな訳ありません!怪盗が何の意味も無しにこんなメッセージカードをばら撒くなんてありえませんから!!」
「そ、そう?」
藤原は早坂の言葉を否定する。確かに、態々こんな物をばら撒いておいて、なんのメッセージも無いというのは変だ。
「意味…意味…」
そしてかぐやは1人、藤原の言葉を連呼していた。
「他には何かありませんかー?」
「そうは言っても、こんなに暗くては何も…」
藤原を初めとして、その場にいた皆が他に何か無いか探す。だが既に日は落ちており、空には星が見えている。これでは何かを探すのも一苦労だ。
「ん?」
その時、龍のオブジェ付近を捜索していた京佳が、何かを発見する。
「どうかしましたか?京佳さん?」
「なんか、暗号みたいなものが書かれている紙がある」
「ええ!?ちょっと見せてください!!」
藤原、瞬時に京佳の元へ掛けよる。同時に、周りにた白銀たちも京佳の元へ集まる。
「これは…」
京佳がスマホのライトを照らすと、文字が見える。
その紙には、上の部分に5枚の写真と文字があった。
秀知院学園の校舎裏と思しき写真と、4という数字。
生徒会室の写真と、5という数字。
アイマスクの写真と、9という数字。
ケーキの写真と、12という数字。
最後に豚のしゃぶしゃぶ鍋の写真と、1という数字。
これだけでも意味がわからないが、更に意味がわからない物が下に続く。
なんせ紙の下には、
4-1
44-3
35-3
24-4
27-2
9-2
17-2
8-1
4-4
3-1
1-2
5-1
32-4
66-1
17-2
21-3
2-3
と、意味不明な数字が並んでいたからだ。そして1番下には『ヒント 王様と序列』という文字。
「間違いない!これは絶対に怪盗からの挑戦状です!!」
藤原は興奮した様子でその挑戦状を見る。確かに彼女の言う通り、これは暗号なのだろう。問題は、この暗号がどういう意味を持っているかだ。
「なぁ四宮、これ意味わかるか?」
「いえ、全然。王様って何でしょう?」
京佳がかぐやに尋ねる。しかし、頭脳明晰なかぐやも、これが何を表しているかわからないようだ。
「王様…序列…数字…そして写真…むむむ…?」
謎解きが得意な藤原も、頭を悩ませている。
「かれんはどう?」
「見当もつかない…」
「私も意味わかんないなー」
エリカとかれん、そして早坂も知恵を絞ってみるが、これが何を表しているかわからない。
(あれ?これ…)
しかし、白銀は違った。下の数字が何を表しているかは未だにわかっていないが、上の写真は見覚えがある。秀知院の生徒なので、学園の校舎裏や、生徒会長だから、普段生徒会の仕事をしている生徒会室に見覚えがあるのは当然だが、どういう訳か、他3枚も見覚えがある。
(まさか…)
そして白銀は1人だけ、この挑戦状について、とある答えにたどり着く。残るは、下の数字の解読だけだ。
「よし!こうなったらこの写真の場所に行ってみましょう!そこに新しいヒントがあるかもしれません!!待ってなさいよ怪盗ーー!!」
藤原はそう言うと、スマホで暗号書の写真を撮り、そのまま走って行ってしまう。
「私たちも行きましょ」
「そうだね。もしかしたら凄い特ダネはあるかもだし」
かれんとエリカも、藤原の後を追う。もしかすると、本当に怪盗がいるかもしれないと思ったからだ。
「じゃあ、私は下に戻るよ。実は眞妃とキャンプファイアーを見ようって
約束していてね。これ以上待たせるのは悪いし、暗号は藤原にでも任せておこう」
「あ、じゃあ私も一緒に行くよ。キャンプファイアーの写真撮りたいし」
京佳と早坂は、暗号の解読をせずに校庭へ戻っていった。残されたのは、かぐやと白銀だけ。
「会長はどうしますか?」
「……1度校内を見回ってみるよ。もしかすると、さっきの怪盗が潜んでいるかもしれないから、見回りを兼ねてな」
「わかりました。それでは私は着替えてきますね」
そしてかぐやは制服へ着替える為に更衣室へ。白銀は1度校内を見て回る為、校舎へと戻っていった。
(全くわからんが、解くしかないか。この数字の暗号を)
だがその途中白銀は、とある理由から、この暗号を必ず解くと思うのだった。
更衣室でかぐやが着替えている時、かぐやは今後について考える。
(着替えが終わったら、スマホで会長を屋上に呼び出す。そこで缶コーヒーを飲みながら、今回の文化祭を振り返る。そして私は、会長に想いを全部伝える…)
早坂が考えた『ドキドキ マル秘ばっちりプラン』通りに行動をするかぐや。途中、予定外の怪盗騒ぎもあったが、概ね順調に進めている。
(問題は立花さんね。あの子がこのまま何もしないなんてありえない)
このばっりちプランの最大の障害が、京佳だ。彼女が、このまま何もせずに帰るなんて絶対に無い。京佳は間違いなく、白銀に告白をする為に何かをする。
(いえ、もしかすると、もう何かをしているのかも…)
これまでも、かぐやとは全然違うやり方で、白銀にアプローチをしてきた京佳だ。ひょっとするとかぐやが気がついていないだけで、既に何かをしている可能性もある。
(あるとすれば、これかしら…)
かぐやはスマホに映った、例の暗号を見る。もし既に京佳が何か行動を起こしているとすれば、これだろうと思ったからだ。
そもそも、屋上でこの暗号を見つけたのは京佳である。あの暗い中、あんな簡単にこの暗号の書かれた手紙を見つけられるか疑問だ。
だがもし、最初から暗号の手紙がどこにあるか知っているのなら話は別。そんなの、誰だって簡単に見つけられるだろうし。
(ありえるわね…現に予測不能な動きをする藤原さんはどこかに行ってしまったし…)
もしこれが京佳の仕込みだと考えると、京佳にとって都合が良いとかぐやは考える。藤原はいないし、白銀も今は別行動中。校庭には多くの生徒たち。あれだけの生徒がいたら、人込みに紛れて早坂を切り離す事も可能だ。
そしてこその間に京佳が白銀を見つけて告白をすれば、万事解決である。
(だったら、この暗号にはやはり何かのヒントが?)
そう考えたかぐやは、再び暗号解読に挑んでみる。
(全然法則がわからない…この写真と数字は何?そして、その下にある4-1とかの数字は?多分、何かの文章になる筈だけど、法則がわからない…)
藤原程では無いが、謎解きが得意なかぐやも、これが何かがわからない。正確に言えば、これが何を意味するかがわからない。
(アルファベットでもない…50音とも違う…2進数でもないわよねこれ…そもそも王様と序列って何?もしかして、世界の王族の序列がヒント?だとすれば日本が1で、2がバチカンかイギリスになると思うけど…いえ、それは違うかしら。だって世界の王族って66もいない筈だし……ダメね、ヒントが少なすぎるわ…)
あれこれ考えるかぐや。だが一向に答えが出ない。頭脳明晰なかぐやでも、これが何をいしているか、わからない。
(いけないわ…つい考えこんじゃうわねこれ…)
この後白銀を屋上に呼び出し、そこで告白をするつもりなのに、この暗号に気を取られてしまう。これはいけない。1度落ち着かないと。
(まさか…これが狙い?)
ここでかぐやは、仮定だがある答えを導き出す。それは、この暗号が京佳が仕組んだかぐやに対する罠であり、自分の冷静さを失わせる作戦ではないのかというものだ。人間、冷静さを失うと大変な事になる。
例えば朝寝過ごした時焦ってしまい、普段ならしないようなミスをするのと同じだ。普段冷静であれば出来る事も、それが無くなるととたんに出来なくなったりするもの。
(ありえない話じゃない。だって立花さんは、私に宣戦布告しているもの。なら、文字通り全てを出し切って行動する筈。こんな風に、相手を多少妨害したりとかもする可能性は十分あるわ)
人によっては卑怯と言われるかもしれない行動だが、少なくともかぐやはそうは思わない。だって自分も告白を邪魔されない様に、早坂を使って京佳を足止めしていたりしているのだから。お互い様である。
(となれば、この暗号は実は解けない仕様になっているのかもしれない…)
もし妨害が目的ならば、態々解けるような暗号は用意しないだろう。意味があるようで、実は全く意味なんて無い暗号を出して、かぐやがそれを考えている間に告白をする。作戦としては、理にかなっている。
更に、謎解きが好きな藤原も離す事が出来る。これで誰にも邪魔されない。
(本当にそうかもしれないわね)
だったらマズイ。もしそうなら、かぐやは白銀に告白できずに終わる。それは嫌だ。
(ま、対処法は簡単だけどね)
しかしもしそうだと仮定しても、対処はそう難しくない。だって早い話、さっさと白銀を呼び出せばいいだけなのだから。京佳が行動に移る前に、自分が白銀に告白をしてしまえばいいだけ。
(正直に言うと、今でも自分から会長に告白をするのは怖い…とっても怖い…もし断られたらって思うと、体が震える…)
更衣室で1人、かぐやは両手で体を抱きしめる。早坂は何時も『さっさと素直になれ』なんて言っているが、それが出来たら苦労しない。確かに、かぐやはプライドが高い。そんなかぐやが素直になって、白銀に告白をするなんていうのは無理かもしれない。
でも本質はそこじゃない。
怖いのだ。白銀に告白をする事が、単純に怖いだけなのだ。
(だってもし振られたら、もう今までの関係に戻れなくなる…そんなの嫌…絶対に嫌…会長から告白をしてくれれば、私は間違いなくそれを受けるのに…)
白銀がアメリカに留学をするなんて言わなければ、京佳が文化祭で白銀に告白をするなんて知らなければ、こんな風に怖がる必要も無かった。もっと現状の関係を維持したまま、今まで通り生活する事が出来た。そして今より勇気を培って、行動を起せただろう。
だが悲しいが、もう時間が無い。今まで通りに生活できる時間は、もう無い。
(今日は絶対に勇気を出せ…わかってはいるけれど、そんな簡単に言わないでよ早坂…)
ここで自分から行かないともうダメだという事は、かぐやだってわかってはいる。わかってはいるのだ。でも、やっぱり怖い。もし振られたと考えると、とても怖い。なので、どうしても自分から行くという勇気が出せない。
(でも、ここで勇気を出さないと…もう何もできなくなる…)
かぐやは想像する。勇気を出して行動に移さなかった結果、何もできずに敗北する自分を。そう考えた瞬間、かぐやはとてつもない不快感に襲われる。
「おえ…」
つい吐きそうになるかぐや。しかし四宮家の令嬢として、学校で嘔吐なんて許される筈が無い。根性でなんとかした。
(そうよ。もう何度も自分に言い聞かせているけど、何もしないなんて絶対にダメ。それだけはダメ)
未だに凄く怖いが、それを乗り越えないといけない。かぐやは今日、何があろうと絶対に、勇気を出して行動しないといけないのだ。だってそうしないと、この恋は終わってしまうのだから。
(勇気を出しなさい四宮かぐや。前に偶々早坂と一緒に見た再放送のよくわからないアニメでも言っていたじゃない。勇気爆発って)
少し前に偶然見た、主人公が石上の声に似ているアニメの事を思い出しながら、かぐやは握り拳を作って決意を固める。
そしてスマホを手に取り、白銀に連絡を入れる事にした。
(普通に誘えばいいのよ。会長も、先程のキャンプファイアーの火付け役の私の姿を見て、多少は胸キュンしている筈。ならば、この誘いを直ぐに断るなんて真似はしないわ)
少し勇気を出して、かぐやはスマホから白銀に連絡を入れようとする。
だがその時、
「え?早坂?」
スマホに着信画面が出た。相手は早坂である。
「もしもし?どうかしたの早坂?」
『申し訳ありません、かぐや様。立花さんを、見失いました…』
「―――は?」
そしてその事を聞いた瞬間、かぐやは一瞬だけ殺気を出す。
「早坂、詳しく説明してちょうだい。私は今、冷静さを欠こうとしているわ」
『はい…』
早坂も自分がやらかしてしまった事を認識しているので、一切反論せずに、かぐやに説明をする。
屋上から校庭に戻った後、京佳は言っていた通り眞妃と写真を撮っていた。ついでに早坂も一緒に写真を撮った。
その途中、京佳はトレイに行くと言い出す。なので京佳の行動を阻止している早坂も、それについていく。連れショ〇である。
ここまでは良かった。問題はこの後だ。
その後、2人でそれぞれ女子トイレ個室に入った後、早坂も用を足していたのだが、突然京佳が入っていた個室のドアが勢いよく開き、誰かがそこから走り去るのを聞いた。まず間違いなく、出ていったのは京佳だろう。
油断したと思った早坂は直ぐに追いかけようとしたが、このまま出ていったら痴女間違いなしの姿だったので、先ずは身だしなみを整えた。
そしてその後直ぐにトイレから出たのだが、そこには既に京佳の姿がなかったのである。
『と、言う訳でして…本当に申し訳ありません…』
まさかトイレで仕掛けてくるなんて思っていなかった。あの後回りを探してみたのだが、京佳の姿は何処に無い。
なので早坂は、自分が任務を失敗した事を報告するべく、こうしてかぐやに電話をしてきたのである。どんな罰でも受ける所存である。
「今必要なのは謝罪じゃない。立花さんがどこにいるかよ。早坂、貴方はこのまま立花さんを探しなさい。私はその間に会長に電話をして、屋上で例のプランを進めるわ」
『かしこまりました』
だがかぐやは、早坂を叱りはしなかった。今は早坂を叱っている場合じゃない。これは間違いなく、京佳が動いた証拠。京佳が一体何をするかわからないが、それは是非阻止しておきたい。早坂には、このまま頑張ってもらおう。先ずは行方知れずの京佳を探してもらわなければ。
その時だ。
『全校生徒の皆さんこんばんわ。生徒会庶務の立花京佳です』
突然、校内に京佳の放送が聞こえたのは。
「え?何これ?」
『これは、放送…?』
突然の放送に、かぐやと電話越しの早坂は戸惑う。
『本日は、秀知院学園文化祭、通称『奉心祭』に参加いただき、誠にありがとうございます』
その間も、京佳の放送は続く。
『多くの生徒は、今回の文化祭を成功させるべく、日々努力してきたでしょう。クラスメイト、友達、又は教師といった、大勢の人のおかげで、今日の文化祭は無事成功を納めました。皆さん、お疲れ様でした。生徒会の一員として、心より感謝します』
まるで文化祭終了時のあいさつのような台詞。そしてそれを聞いた校庭にいた生徒たちは、全員拍手をする。
『どうか、現在校庭でやっているキャンプファイアーを見ながら、大切な友人と共に今回の文化祭を振り返ってください。ただし食べ物や飲み物などのゴミは出さないようにしてください。後で片付けが大変になりますので』
『かぐや様、これ予定表にありませんでしたよね?』
「ええ。文化祭終了のあいさつはあるけど、まだよ。話すのも文実の生徒の筈だし」
予定に無い放送。しかも話しているのは京佳。既に文化祭は佳境に入っており、多くの生徒が
余韻に浸っている。
そしてこういった時にこそ、人は告白をするもの。実際、かぐやもそのつもりだ。
『個人的な話になりますが、私も今回の文化祭はとても楽しめました。王子様役で出た自分のクラスの演劇。数多くの美味しい屋台。それ以外にも、多くの出し物がありました。それらを大切な人と共に過ごせたこの文化祭は、恐らく生涯忘れない思い出となるでしょう』
京佳は話を続ける。その間、かぐやは考える。
(一体何をするつもり?こんな放送までして、あなたは何をするつもりなの立花さん?)
今、京佳は何かの作戦を実行している最中だろう。しかし、目的が分からない。相手の目的がわからなければ、行動のしようが無い。
『皆さんも是非、大切な誰かと、この思い出を共有してください。例えば、恋人や親友とかと』
『…ん?』
京佳の放送を聞きながら、早坂は首を傾げる。先程から京佳は、『大切な人』というワードを頻繁に使っている。普段の京佳は、そんな事あまり言わない。なのにこの放送では、何度も使っている。そこがどうも引っかかる。
『……まさか』
この時、早坂はある可能性を考えた。京佳であれば、やりそうな事を。先程から何度も使っている、大切な人というワード。そして今しがた言った、恋人という言葉。それらはまるで、これから何かを言う前振りみたいにも聞こえる。
『かぐや様、これマズイかもしれません』
「どういう事早坂?」
電話越しの早坂は、少し焦ったようにかぐやに話す。
『これはもしかすると、立花さんの公開告白かもしれません』
「公開告白!?」
それを聞いたかぐやは、とても驚く。
公開告白とは、大勢の人がいる前で、意中の人に告白をするというものだ。最近では、ネットにそういった動画が上がっていたりもする。そしてこれらは、大体文化祭でやっているものだ。
『そしてこれ、大勢の人の前で告白をするといったおかげで、相手が断りにくいという特製があります』
「そうなの!?」
早坂の言葉に、再び驚くかぐや。公開告白の特性のひとつが、今早坂が言ったように、相手が断り辛いというのがある。大勢の人の前。そこで行われた告白。こんなの、誰だって断り辛いに決まっている。
それにもしその告白を断ったら、断った生徒は間違いなくその後の学園生活が過ごしにくくなる。だから大抵、この公開告白は断らないのだ。
(成程!それが貴方の狙いですか!?)
白銀に告白を断らせない作戦。それこそが、京佳の作戦だとかぐやは思う。京佳であれば、こういった大胆な事もするだろうと思ったからだ。
なんせ、常にかぐやには出来ない事をしてきた京佳だ。
自分から白銀をデートに誘う。
生徒会室で白銀に膝枕をする。
食事中の白銀にあーんをする。
全部、かぐやには出来なかった事ばかり。ならば、こうして大胆にも公開告白をする事も
十分に考えられる。相手に断らせない空気を作っておいての告白なんて卑怯な作戦かもしれないが、京佳だって必死な証拠だろう。
(考えましたね。私には大勢の前で告白なんて無理ですが、確かにこれなら会長と付き合う事も可能かもしれない…)
流石の白銀も、こうなったら断れない。そこに付け入れば、晴れて京佳は恋人だ。仮にそう考えていなくても、これまでの京佳のアプローチをみれば、白銀だって必ず京佳の告白を断るとは言えない。むしろ普通に受け入れるかもしれない。
それに結構なロマンチストな白銀であれば、こういった大胆な告白を気に入るかもしれない。
(ですが、そんな告白絶対にさせません!そもそもそんなの告白なんていえません!告白というのは、お互いの気持ちを確認し合う為の作法の筈でしょう!断じて、相手の逃げ道を塞ぎ、心に付け入れようなものではありません!!)
ならば、それが成功させないようにしなければ。そもそもこんなの、告白じゃない。告白というのは、最低でも相手に直接言うべき事だ。こんな風に、大勢の前で晒し上げるような事では無い。
「早坂、貴方は今すぐ学校の電源室へ行って、放送室のブレーカーを落として。そして、その後直ぐに放送室に行ってちょうだい」
『了解しました。それで、かぐや様はどうするつもりですか?』
「私はこれから会長を呼び出すわ。そして立花さんより早く告白をする」
かぐやは早坂に命令を下す。これ以上、未だに続いている京佳の放送を聞かせない為に。そして京佳の公開告白より先に、自分が白銀に告白をする。そうすれば、もう京佳の入る隙など無くなる。
『わかりました。ご武運を』
「ありがとう」
早坂の激励の言葉を受け取り、かぐやは早坂との電話を切る。そして直ぐに白銀に電話をする。
しかし、
「あれ…?何で出ないの…?」
白銀との電話は、一考に繋がらない。ずっとコール音が鳴るだけだ。
(まさか会長、スマホをどこかに置いてきた?それとも落とした?)
これはまずい。これでは白銀を屋上に呼び出す事が出来ない。早くしないといけないのに、白銀を呼び出せない。このままでは、京佳の作戦が上手くいってしまう。
(こうなったら仕方ありません。私自ら会長を探して、そして屋上へ行きましょう)
だがこの場で止まる訳にはいかない。直ぐにかぐやは、その場から動き出して白銀を探す。
(でも一体どこに?校舎の見回りをするって言っていけど、その後は?生徒会室?それとも校庭?それとも…)
完全なノーヒントで白銀を探すかぐや。その間も、京佳の放送は続いている。そして、ある場所を思いつく。
(会長は優しい人。そんな貴方なら、生徒の安全を見守れる場所にいる筈。つまり文化祭の成否を問うキャンプファイアーを見待たせる場所にいるのでは?)
この学園で、校庭にいる多くの生徒を見渡せる場所は多くない。そして白銀はロマンチストで星が好き。更に何時だって上を目指している。
(ならば会長は、今頃この学園の1番高い場所、時計塔の上にいる筈!)
時計塔の上であれば校庭を全部見渡せるし、例の怪盗もどこにいるか見つけられるかもしれない。そこから風紀委員に連絡を入れれば、怪盗も無事捕まるだろう。魏の軍師も高いところに陣をしけって言っていたし。
(行きましょう…どうせこのまま当てずっぽうに探しても見つからないだろうし)
時計塔へ向かう前に、かぐや1度は自販機へ向かう。そこで早坂のプラン通りに、缶コーヒーを買うつもりだったのだが、
「ん?」
何故か、何度札を入れても戻ってくる。そりゃ、千円札しか使えない自販機に1万円札を入れたらそうなるだろう。だがかぐやは、その事実を知らない。
(あーもう!しっかり整備しなさいよ飲料会社!!)
とんだクレームである。
(もういいわ。このまま時計塔へ向かいましょう…)
当初の予定と少し違うが、かぐやは時計塔へ向かう。そしてふと耳をすませると、京佳の放送は止まっていた。
(成功したみたいね。ありがとう、早坂…)
心の中で早坂にお礼を言い、かぐやはポケットに入れていた新しいハートのキーホルダーをしっかりと手にして、屋上へ向かう。そこに白銀が必ずいる証拠はない。もしかすると、全く見当違いの場所にいるかもしれない。
しかし、何故か白銀は今そこにいるとかぐやは感じる。愛の力かもしれない。
(やるのよ、四宮かぐや。ここで必ず、勇気を出し切るの)
決意を胸に、かぐやは時計塔へと足を進める。
だがその時、かぐやのスマホが鳴った。
「早坂?」
電話の相手は早坂。
その名前を見た瞬間、かぐやの背中に冷たい汗が流れる。何故かわからないが、早坂の話を聞いてはいけない。もし聞いてしまえば、自分は後悔する。どういう訳か、そう感じるのだ。だが出ない訳にもいかない。それにもしかすると、全部自分の杞憂かもしれない。そして恐る恐る、かぐやは早坂からの電話に出る。
「早坂、どうかしたの…?」
『やられました…』
「え…?」
『放送室に、立花さんはいませんでした…』
「っ!?」
やられたと、かぐやは思う。今までの放送は、全部ブラフ。こっちの目を、放送室へ向ける為の作戦。つまりその間、京佳は全く別の場所にいたという事。そしておそらくだが、早坂の言っていた公開告白もブラフ。
(じゃあ、まさか立花さんは…!?)
かぐやはスマホを一方的に切り、時計塔へ向かって走り出す。
「来てくれたか、白銀」
「ああ」
そして秀知院学園で1番高い時計塔の上では、立花京佳の、本当の作戦が始まろうとしていた。
数字の暗号、あえてヒント少なくしてわかりづらくしているので、解読できた人いたら本当に凄いと思います。
次回、恋愛戦争、遂に決着。
の予定。
京佳さんが白銀に告白する時は、
-
かぐやがいない間に告白する
-
かぐやと共に白銀に告白する