もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・   作:ゾキラファス

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 遂に今回、闇かぐや様が動きます。

 割とやばい事しますので、読み際はお気をつけて。

追記・感想にて言われましたが、作者にかぐや様を貶すような意図はありません。でも今回は、どうしてもそういう風に見えちゃっています。ごめんなさい。


恋人たちのクリスマス(ноль ノーリ)

 

 

 

 

 

 立花家 京佳の部屋

 

「よし!準備完了だ!」

 

 自室に設置している姿見鏡の前で、京佳は自分の恰好を確認していた。ネイビーカラーの冬用ブラウスに、制服よりやや短いトーンオントーンのチェック柄のスカート。その下には黒タイツ。そして上には、ステンカラーの冬用のコートを羽織り、首にはタータンチェックのマフラー。

 全体的に見ても、バランスの取れたコーデになっており、我ながら完璧なコーデだと思える。

 

 京佳はこれから、白銀とクリスマスデートをする予定だ。

 

 デート場所は映画館。そこで白銀と2人きりで映画を観る予定である。その後の事は今のところ未定だが、流石にそのまま帰るなんて真似はしない。せめて食事くらいは一緒にとりたいと、京佳は思う。

 だって今日はクリスマスなのだ。どうせなら少しでも、白銀と一緒にいたい。別に夜景が見えるホテルでの高級ディナーなんて求めない。白銀と一緒であれば、その辺のファミレスだって問題無い。

 

(それに、もしもの時の為に下着も新しいのにしているし…)

 

 そしてもし、デート後に白銀からホテルなり自宅なりに誘われたら、京佳は着いていくつもりだ。

 なんせ今日はクリスマス。そしてクリスマスには『性の6時間』と呼ばれている時間が存在している。これは12月24日の午後9時から、翌25日の午前3時までの6時間が、恋人たちがもっとも性行為をする時間であると言われているから出来た造語である。

 無論全ての恋人がそうではないだろうが、国内の8割以上の恋人はこれに当てはまるだろう。実際都内のホテルには、恋人同士の行列が出来たという話もあるくらいだ。そして京佳も、もし白銀にそういう事を求められ時に備えて、上下の下着を新品に変えている。もし白銀に見られても恥ずかしくなく、白銀が見ても興奮してくれるような下着だ。これならば、もしもの時も大丈夫だろう。

 

(って、何を言っているんだ私は!そういうのはまだ早いだろう!?だって私たち付き合ってまだ半月も経っていないんだぞ!?)

 

 無論、京佳とて流石にまだそういうのは早いと思っている。だって2人が付き合い出してまだ1週間も経過していない。いくらなんでも早すぎる。こういうのはもっと、段階を踏んでからするべき事なのだ。

 

(で、でも…もし白銀がしたいって言うなら、別に…)

 

 しかし白銀が求めてきたら、京佳はそれに応えるつもりでいる。京佳も、好きな人とそういう事はしたいと思う年ごろなのだ。

 それに万が一の時に備えて、恵美からお守りも持たされている。

 

 ―――

 

『はいこれ』

 

『……えっと恵美…これって…』

 

『万が一の時に備えてさ、持っといて。流石に高校在学中に母親になる訳にはいかないでしょ?』

 

『す、すまない…』

 

『あ、それとも1個じゃ足りない?だったらネットでも買えるから今からでも』

 

『いや1個で十分だ!ていうかそんなにいっぱい持っていたら変だろう!?』

 

 ―――

 

 そんなやり取りが、昨日あったばかりである。

 

(気持ちは嬉しいが、受け取るのすっごい恥ずかしかったなぁ…)

 

 そのお守りは、ポーチの中の内部ポケットに収納している。もしもの時は、ちゃんとそこから出して使うつもりだ。

 

「っと、もう時間だ」

 

 そんな事を考えていると、バスの時間が迫ってきていた。このままでは遅刻してしまいかねないので、京佳はもう1度自分の姿を確認して家を出る事にする。

 

(うん、問題無い)

 

 確認も終わり、京佳は玄関に向かい、そこで黒いショーツブーツを履く。

 

「あれ?京ちゃん、もう行くの?」

 

 その時、母親である佳世が話しかけてきた。

 

「うん。少し早く行っていた方が安心だし」

 

「そっか。人が多いだろうから、気を付けるのよ~」

 

「わかってるって。あ、晩御飯の煮込みハンバーグは温めて食べてて」

 

「ありがとね~」

 

 既に朝から晩御飯の仕込みをしていたので、後は温めるだけで大丈夫だ。これなら仕事ばかりしていたせいで、料理があまりできなくなってしまった母親でも問題無いだろう。

 

「あ、そうそう京ちゃん」

 

「ん?」

 

 ドアノブに手を掛けた時、佳世が再び声をかけてきた。

 

「遅くなる時は1度連絡してね?あと、避妊はしっかりしなさい?」

 

「!?」

 

 そしてとんでも無い事を言ってきた。

 

「な、な、何を言い出すんだ母さん!?」

 

「え?だって今日クリスマスじゃない。そして白銀くんとデートするんでしょ?だったらそういう事もするんじゃないの?」

 

「馬鹿じゃないのか!?まだ付き合って1週間も経っていないんだぞ!?いくら何でも早すぎるだろう!?」

 

 まさか実の母親からそんな話題を切り出されるとは思っておらず、京佳は顔を赤くして反論。そりゃ万が一の備えて準備はしているが、あくまでそれは万が一だ。京佳自身に、今日白銀とキス以上の事をするつもりは無い。尤も、向こうが求めてきた場合は別だが。

 

「因みにだけど、私とパパの初めてのクリスマスにはね…」

 

「行ってきます!!」

 

 これ以上話ていると、聞きたくも無い親の猥談を耳にしそうになったので、京佳はその場を後にする。というか聞きたくない。自分の親のその辺りの話は本気で聞きたくない。だからやや早足で、その場を後にする。こうして京佳は、バスに乗って待ち合わせ場所に向かうのだった。

 

 

 

 駅前広場

 

「わぁ…」

 

 待ち合わせ場所である都内の駅ビルの正面にある駅前広場。そこにはクリスマスらしく、綺麗なイルミネーションと、巨大なクリスマスツリーがあった。よく見ると、サンタの恰好をした人も見える。恐らくクリスマスにちなんだ何かのバイトだろう。

 そしてその周りには、多くのカップルがいる。丁後今合流したであろうカップルや、楽しそうにずっと話しているカップル。そして手を繋いで、街中に消えていくカップル。どこもかしこも恋人ばかりだ。とても1人身の人間がいていい場所じゃない。

 

(まぁ、私もその仲間なんだけどな…)

 

 京佳は、その事実に少しだけ優越感を感じる。これが現在、双子の弟と共にインドに行っている眞妃だったら泣いていただろうが、今の京佳は違う。ここにいる他の皆と同じように、れっきとした恋人がいる高校生なのだ。

 

 

 

「……」

 

「どうかしたの、姉さん?」

 

「いや、何だか突然イラってして」

 

「は?」

 

 同じ頃、インドにいる眞妃は突然イラっとしていた。

 

 

 

(それにしても、去年はバイトして圭と一緒にケーキを作っていたけど、今年は恋人とデートか…人生何があるかわからないものだな)

 

 京佳は、しみじみとこの1年を振り返る。白銀に恋心を抱いていると知り、友人に背中を押される形で白銀を振り向かせようと奮闘。恋敵であったかぐやとの長い戦いの末、京佳は白銀と恋人になれた。そして本日ようやく、白銀とのデートに挑む。

 

(待ち合わせの時間は18時。まだ20分はあるな)

 

 白銀と約束をした時間まで、まだ猶予がある。こういう時、男の方が早く来るべきだと言う意見があったりするが、京佳は別にそういうのは気にしない。

 

(白銀だったら、約束通りにくるだろう。暫くここで待っていよう)

 

 真冬なので寒いが、映画館のある駅ビルの中に入っていると人込みで疲れる。なので京佳は今いる駅前広場でこのまま白銀を待つ事にした。

 

(こうやって相手を待つのも、一種の醍醐味なのかな)

 

 待ち人である白銀を待ちながら、京佳はこの後の事に思いをはせるのであった。

 

「ねぇ、あの人…」

 

「うっそ!かっこいい!!」

 

「なんだあの子。綺麗だなぁ」

 

「うっわマジだ。モデルか?」

 

 待っている最中、通りすがりの人に色々言われたが、京佳は特に気にしない。

 

(楽しみだなぁ…)

 

 そして京佳は、白銀を待つのだった。

 

 

 

(18時…時間だが、白銀来ないなぁ…)

 

 20分後、待ち合わせ時間になったが、白銀は未だに現れない。時間に厳しい白銀が来ないのは、かなり珍しい。

 

(もしかして、電車やバスが遅れたのかな?)

 

 白銀が時間になってもこないのは、何か別の理由があるからだと京佳は考える。だって白銀は、今まで遅刻もした事が無いのだ。だとすれば、交通機関の遅れなどが考えられる。

 

(もう少し待ってみよう)

 

 京佳はもう少し待ってみる事にした。ここでスマホに『まだ?』みたいな事を送ったら、何だか急かしているように思われる。なのでもう少しだけ待ってみる。

 

 

 

(18時30分…こない…)

 

 もう少し待ってみてから30分。未だに白銀は現れない。

 

(もしかして、事故にあったとか?)

 

 京佳は流石に心配になり、1度白銀のスマホに電話してみる事にした。

 

「出ない…」

 

 しかしコール音は鳴れど、白銀は電話に出ない。もしかすると、本当に事故にあったのかもしれない。

 

 京佳が心配しているその瞬間だ。

 

 ピッ

 

 スマホに電話に出た音がした。

 

「白銀!?何かあったか!?」

 

 京佳はとっさに白銀の安否を確認。

 

『あ、ああ…大丈夫だ…』

 

 電話越しの白銀は、大丈夫だと言う。どうやら事故にあった訳では無さそうだ。

 

「本当か?何か声とか変だぞ?」

 

 しかし、どうも声が変だ。白銀の声なのだが、どこか違和感を感じる。

 

『実はな、少し喉をやられていて。それでちょっと声が変になっているんだよ…』

 

「そうだったのか。もしかして風邪か?」

 

『いや、風邪ではない。ちょっと喉が変なだけだ。別に熱とか無いし』

 

「そうか。よかった…」

 

 どうやら白銀は、別に事故にあったり、風邪をひいて体調を崩した訳ではないようだ。一安心である。

 

「それで、今どこにいる?私は駅前広場のクリスマスツリーの直ぐ下にいるけど」

 

 だがそれなら直ぐに合流できるだろう。なので京佳は白銀の居場所を聞く。

 

『その前に、話があるんだ』

 

「話?」

 

 しかしどうも、白銀は京佳に話があるらしい。なので京佳は白銀の話を聞く事にした。

 

 

 

 

 

『別れよう』

 

「……え」

 

 

 

 

 

 そしてそれを聞いた瞬間、京佳は頭が真っ白になった。

 

『色々考えたんだが、やっぱり立花なんかじゃ俺と釣り合わない。身長高いし、眼帯してるし、それにあまり可愛いって思えないし』

 

 そんな京佳に、白銀は容赦の無い言葉を続ける。

 

『まぁ、あれだ。この経験を元に、もっと良い男でも見つけてくれ。俺の事なんて、綺麗さっぱり忘れてな』

 

「な、何を…?」

 

 まるで死刑宣告とも思える白銀の言葉。それを聞いている京佳は、だんだん血の気が引いていくのを感じる。

 

「ま、待ってくれ白銀!一体どうして!?」

 

 いくら何でも突然すぎる。まだ付き合って1週間しか経っていないのだ。それに今日は、初めてのデート日。だというのに、いきなりの別れ話。こんなのあんまりである。

 

「私、何か気に障る事をしたか!?それとも他に悪いところでもあったか!?せめて理由を聞かないと納得できない!!」

 

 京佳は必死になって、白銀に聞き続ける。先程まであんなに最高気分だったのに、今はもう最悪の気分だ。

 確かに自分はかぐやや藤原にように可愛くは無い。伊井野のように華奢でも無い。そして左目には、気持ちの悪い火傷跡が残っている。そう考えれば、京佳は可愛い女の子では無いだろう。しかし、やはりこんな一方的に、それも電話で別れ話を言われるのは納得できない。

 

「白銀!1度話をしよう!会って話をしよう!頼む!!」

 

 今の自分は、好きな男に捨てられそうになっている女だ。傍から見れば、さぞ見苦しいだろう。でもやはり納得できない。せめて直接会って話したい。

 

 しかし、

 

『悪いが、この話はこれで終わりだ。態々会って話すまでも無い』

 

 白銀は、全く会うつもりなど無い様子。これは完全な拒絶だ。恐らくあっても、今の白銀は自分と会う事は無いだろう。

 

 そして電話越しの白銀は、京佳にとってトドメの一言を口にする。

 

 

 

『そもそもだ。立花は左顔が気持ち悪いじゃないか。そんなゾンビみたいな子と、俺は一緒になりたくない』

 

「あ……」

 

 

 

 それはかつて、左顔を火傷した時にクラスメイトたちに言われたトラウマ。あの時、自分を庇ってくれたのは恵美だけ。

 そしてあの時の1件で、京佳は自分の見た目に、それまで以上にコンプレックスを抱くようになったのだ。そんな最悪のトラウマを、まさか白銀の口から言われるとは思わなかった。

 

「ま、待って白銀…お願い待って…」

 

『じゃあな』

 

 京佳はまだ何とかしようとしたが、白銀は一方的に電話を切ってしまった。

 

「何で…?なん、で…」

 

 スマホを片手に、京佳はその場で固まる。周りにいる多くの恋人たちは幸せそうな空気を出したりしているが、京佳は真逆だった。まるで自分だけ、地獄にいるような感覚。

 何も考えれない。何も動けない。人生最高の日になるかもしれなかったのに、今は人生最悪の日になった。

 

「どう…して…?」

 

 その後も京佳はその場から動かずに、立ち尽くすのだった。

 

 

 

 

 

 そしてその頃、白銀本人は、

 

「白銀さん?本気で悪いと思っているのなら、ちゃんと責任を果たせますよね?」

 

 四宮家のかぐやの部屋のベッドの上で、下着姿のかぐやにまるで押し倒されるような状態で、迫られている真っ最中だった。

 

 自分の目の前に、白い下着姿で髪を下ろしているかぐやがいる。1年前までならば、この状況に白銀は歓喜していただろう。

 しかし、今の白銀は京佳の恋人なのだ。ここでかぐやに手を出そうものなら、それは京佳に対する最悪の裏切りだ。そんな事、出来る訳が無い。

 

(どうして、こんな事になってるんだ…!?)

 

 そんな事を思いながら、白銀は2時間前の事を思い返す。

 

 

 

 2時間前

 

(よし、時間もある!バスや電車も遅延していない!映画のネット予約もしっかりしている!これなら問題ない!!)

 

 家から出た白銀は、スマホや財布、そして私服の身だしなみをチェックしていた。家にいると妹の圭に色々聞かれかねないからだ。

 というのも、白銀はまだ圭に京佳と恋仲になったのを言っていない。なんか、いざ言うとなると恥ずかしいからだ。そしてもしここでその事を言ってしまうと、それだけで1晩くらい圭に色々聞かれかねない。今日は折角京佳とのデートなのに、そんな事で遅刻する訳にはいかない。

 因みに観る予定の映画は、仕事なかりしている父親が、愛する息子の為に人気アニメの人形を手にする為に奮闘するハチャメチャなコメディー映画である。

 

(さて、んじゃ行くか)

 

 身だしなみなどをチェックした白銀は、待ち合わせ場所の駅前広場へと向かう。デートの時は、男性の方が先に待っているのが暗黙のルールだからだ。 

 尚、白銀が今着ている私服は、ネットで見たのを、近所のスーパーで似た服を探して、限りなく似せた服装である。ネットでみたのはブランド品だが、これなら全部で3000円で済んでいる。

 

「いたたた…」

 

「ん?」

 

 しかしその時、誰かが痛がっている声がした。白銀が声がした方を見てみると、学生服を着ている男子が、自転車と共に道に倒れていた。

 

「えっと君、大丈夫か?」

 

 まだ時間に余裕がある。それに白銀は、こういうを見過ごせない。なのでその男子生徒に声をかけた。

 

 しかしその瞬間だ。

 

シュー

 

「っ!?」

 

 倒れていた男子生徒は、突然白銀の顔に何かを振りかけてきた。

 

「な、何を…!?」

 

 その瞬間、白銀は視界がグニャグニャと揺れているのを感じた。おまけに意識も遠のきそうになっている。

 

「なんだ…こ、れ……」

 

 そして白銀は、そのまま意識を失って倒れるのだった。

 

 

 

「はぁ…これ完全に犯罪だよなぁ…今更か」

 

 

 

 意識が消える寸前、そんな声が聞こえた気がした。

 

 

 

 

 

「ん…」

 

 白銀はゆっくりと意識を取り戻す。白銀が目を開けると、そこは見慣れない部屋だった。天蓋の付いたベッド。何か高価そうな絵画。女子の物と思える小物がいくつか。そして部屋の広さは、白銀家の今住んでいるアパートの一室より広い。

 

「何だ、ここ?」

 

 そんな広い部屋のベッドの上に、白銀は寝ていたようだ。

 

「あら、目が覚めましたか」

 

「え?」

 

 白銀が部屋を見渡していると、部屋の扉が開き、見知った顔が入ってきた。

 

「四宮?」

 

 それは、なんと四宮かぐや。かつて自分が、本気で惚れていた子だ。

 

「えっと、ここは?」

 

「私の家です。正確には四宮家の別邸ですが」

 

 どうやらここは、普段かぐやが住んでいる家らしい。そしておそらく、この部屋はかぐやの部屋だろう。

 

「すまん…どうも状況がわからん…どうして俺は四宮の家にいるんだ?」

 

 しかし、そこに自分がいる理由がわからない。というかどうも記憶が曖昧だ。自分の家を出たところまでは覚えているのだが、それ以降の記憶が無い。

 

「白銀さん、あなたは家の前で倒れていたんですよ。まるで行き倒れみたいに」

 

「は?」

 

 かぐやは、白銀がこの家の前で倒れていたと説明。何で自分がかぐやの家の前に来ていたかわからないが、そんな事はどうでもいい。

 

「すまん四宮。倒れた俺を介抱してくれたのはありがたいが、今日は大切な用事があるんだ。後日しっかりお礼をするから、今日はこのまま帰らせて貰っていいか?」

 

 なんせ白銀は、京佳とのデートの約束がある。腕時計で時間を確認してみると、待ち合わせの時間まで、もうあまり猶予が無い。今から全力で走ればなんとか間に合うくらいだろう。なので早くここから出ないといけない。

 

「そうですか。では、せめて水を飲んでください。何で倒れていたのかわかりませんが、流石に水分補給はしないといけませんよ?」

 

「あ、ああ…すまん。ありがとう」

 

 かぐやから水の入ったコップを受け取り、白銀はそれを一気に飲む。

 

「ふぅ…すまん。それじゃ」

 

ガチャ

 

「…え?」

 

 そして部屋を出ようとしたのだが、突然かぐやが部屋のドアに鍵を掛ける。

 

「し、四宮?何をしてるんだ?」

 

 何故かぐやがいきなり鍵を掛けたかわからないが、このままではマズイと白銀の本能が告げている。このまま力任せに部屋を出ようとかと考えていた時、

 

 

 

「白銀さん。貴方、私に気がありましたよね?」

 

「!?」

 

 

 

 突然かぐやがそんな事をぶっこんできた。

 

「今まではあえて口にはしませんでしたが、この際だから言います。貴方、私の事が好きでしたよね?あ、好きというのは恋愛感情という事で理解してくださいね?」

 

 振り返ったかぐやは、全く笑っていなかった。目は冷たく、まるで白銀を追い詰めた犯人でもみるかのように見ている。

 

「そうでなければ、色々と説明がつきませんもの。それまで雑草のような生徒だったのに、突然私に試験で勝負を挑んだり、生徒会長選挙に立候補したり、何度も私に声をかけたり、一緒のどこかに出かけようと誘ってきたりと。あれ、全部私の事が好きになったからですよね?だから私の気を引こうとして、あのような事をしたんですよね?」

 

「そ、それは…」

 

「あ、いえ。その事は嬉しく思いますよ?人間、よほど相手の事が嫌いでは無い限り、他者から好意を向けられるのは嬉しいものですし。その事をとやかく言うつもりは全くありません。そもそも迷惑だと思った事なんてありませんし」

 

 かぐやはゆっくりと、ベッドに座っている白銀に近づく。

 

「だって、私もそんな貴方に恋をしてしまったんですから」

 

「!?」

 

 そして、いきなり白銀に告白をしたのだ。

 

「貴方の無償の優しさが好き。ひたむきに努力をする姿が好き。誰よりも必死になれるところが好き。少しおっちょこちょいなところが好き。ふふ、私たちって、相思相愛ですね」

 

 かぐやは白銀の好きなところを言いまくる。それを聞いていた白銀は、少しだけ頬を赤くする。

 

「ですが、白銀さんは立花さんを選びました」

 

「!!」

 

 しかしその言葉を聞いた瞬案、血の気が引いていった。

 

「あれだけ私に思わせぶりな態度を取り、あげくこの私を本気にさせていたというのに、貴方は最後の最後で別の女を選んだ。そうですね?」

 

「……」

 

 白銀は、何も言い返せない。だって全部、かぐやの言う通りなのだから。今までかぐやを振り向かせるべく、そしてかぐやに相応しい男になるべく白銀は動いてきた。

 だが、白銀は最後に京佳を選んだ。そしてかぐやは、その事を知っている。こんなの、恨まれるに決まっている。

 

「そうだ…四宮の言う通りだ…」

 

 白銀はうつむいたまま、かぐやに肯定する言い方をする。ここで言い訳をしても仕方が無い。

 

「俺はあんだけ思わせぶりな態度をしておきながら、最後に立花を選んだ。四宮から見れば、最低の男に違い無い…」

 

 そして白銀はベッドから立ち上がり、かぐやに頭を下げる。

 

「四宮が俺を許せないって言うなら、いくらでも謝罪する。何でも…とはちょっと言えないが、可能な限りの償いもする。本当に、すまなかった」

 

 これまでの事を、白銀は謝罪する。流石に死ねと言われて死ぬ事は出来ないが、可能な限り償いをするつもりだ。なんせ1人の女の子を、自分のせいで深く傷つけた。こんなの、しっかりと償わないとダメだろう。

 

「そうですか。なら早速償ってもらいましょう」

 

「え?」

 

 まさかいきなりそんな事を言われるとは思っておらず、白銀は驚く。しかし、この後もっと驚く事になる。

 

「な!?」

 

 なんと、かぐやが突然着ていた服を脱ぎ出したのだ。そしてあっという間にかぐやは下着姿になり、白銀に近づく。

 

「な、何して!?」

 

「償うって言いましたよね?」

 

 かぐやはそう言うと、白銀を両手でベッドに倒し、そのまま白銀に覆いかぶさる。

 

「本当に償う気があるのなら、今から私を抱いてください」

 

「んな!?」

 

 そして凄い事を言いだしたのだ。

 

「この私を本気にさせたのに、最後にそれまでの行いを全て無に返すような事をしたんです。こんなの、四宮家に恥をかかせたと言ってもいい。本来なら、生かす事もないでしょう」

 

 確かに四宮家に恥をかかせたとなれば、その相手は碌な目に合わないだろう。

 

「ですが、今ここで私を抱いてくださるのであれば、その全てを許します」

 

 だがそれも、今ここでかぐやに対して償えば許される。もっと言えばかぐやの言うように、かぐやを抱けば許される。

 

「白銀さん?本気で悪いと思っているのなら、ちゃんと責任を果たせますよね?」

 

 かぐやは本気だ。本気で自分を白銀に抱かせる事で、白銀の罪を許そうとしている。ここで白銀がかぐやを抱けば、それが償いになる。

 

「白銀さん…」

 

 そしてかぐやは、白銀にゆっくりと顔を近づける。

 

 目の前に迫る、かつて本気で恋をした女性のかぐやの顔。このまま何も抵抗しなければ、白銀はかぐやとキスをしてしまうし、かぐやを抱いてしまうだろう。おまけにどういう訳か、今とても体が熱い。まるで体中の血液が、マグマにでもなった気分だ。

 

「四…宮…」

 

 迫って来るかぐやの顔を、白銀は見つめる。体温が熱くなるのを、感じながら。

 

 

 

 




 や、やりすぎちゃったかな?でもかぐや様って、タガが外れたらこんな事しそうだなって思ったもので。いや、いくら何でもこれはライン越えかな…
 闇かぐや様の作戦は、要は既成事実の作成です。ついでに京佳さんの心を折る気です。果たして白銀の選択は?

 次回まで待っててね。
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