もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・ 作:ゾキラファス
元ネタが分かった人は作者と同年代と思う。
あと通算UA5万突破しました。本当にありがとうございます!
修羅場という言葉がある。
元はインド神話で、阿修羅と帝釈天が争った場所を示すのだが、現代では主に2つの意味で使われる。ひとつは仕事における締め切りや納期がギリギリの状況。
そしてもうひとつは、
「あら、すみません。もう1度言ってくれますか?無駄に大きいところから声を出しているのでよく聞こえませんでした」
「そうかすまなかった。次からは色々と小さい四宮の目線に合わせて喋るとしよう。悪かった、気づいてやれなくて」
「は?」
「あ?」
人間関係のトラブルの現場である。
現在、生徒会室は史上最悪の空気になっていた。原因はただひとつ。生徒会室の中心で対峙し、殺気をぶつけ合ってるかぐやと京佳のせいである。
「か、会長…!あの2人止めてください…!僕めっちゃ怖くて足が動かないんです…!」
「無理だ石上!ゴ〇ラとキ〇グギ〇ラに突っ込めというのか!?生徒会長といえど出来ない事はある!藤原!お前ならいけるだろ!?」
「いける訳ないでしょ!!私に死んでこいっていうんですか!?」
そして生徒会室にある生徒会長の机には、石上、白銀、藤原が肩を震えながら隠れていた。
どうしてこうなったのか?話は少し前に遡る。
「あら?立花さんだけですか?」
「さっきまで白銀がいたぞ。今は資料を取りに行っているが、直ぐに戻るだろう」
かぐやが生徒会室の扉を開けると、京佳が1人で長椅子に座っていた。どうやら白銀とは入れ違いになってしまい、他のメンバーはまだ来ていないようである。
「ん?何ですかそれは…?」
「白銀と入れ違いで学園長が来てな。差し入れらしい」
かぐやが長椅子に座ろうとした時、長机の上に置いてある黒い箱に気が付いた。京佳曰く、学園長からの差し入れらしい。かぐやは中身を確認するため、ゆっくりと箱を開けた。
「これは、チョコレートですか」
箱の中に入っていたのは一口サイズのチョコレートだった。それも沢山。目測で50個はあるだろう。
「これだけの数が入っているんだ。先に少し食べてしまおう」
「それもそうですね。では少しだけ…」
目の前に甘い物があったら食べたくなるのが女の子。かぐやと京佳も例に漏れず、他のメンバーが揃う一足先に少しだけ頂くことにした。
「ん?何か妙な味のするチョコだな?」
「ですね。何でしょうこれは?」
口の中で溶けるチョコ。しかし、日ごろ食べているチョコとは味が違う。しかし2人はその後、特に気にすることもなく食べていった。
「こんにちわですー」
「失礼しまーす」
「今戻った」
2人がチョコを食べていると、藤原と石上と白銀の3人が生徒会室に入ってきた。
「あら皆さん、こんにちわ」
「こんにちわ皆。そしておかえり白銀」
かぐやがあいさつを、京佳があいさつと白銀に対しておかえりと言う。そして白銀におかえりと言った京佳に、かぐやがほんの少しだけムッとした。
「あ!それはチョコレートですか!?」
長机に近づいた藤原が、机の上に置いてあるチョコに気づいた。そして物欲しそうな眼をし始めた。
「学園長からの差し入れだ」
「食べていいですか!?」
「勿論だとも」
「わーい!」
京佳はそう言うと、机に置いてあった箱を手に取り、3人に差し出す。箱を差し出された3人はひとつずつチョコを手に取り、口に運ぶ。すると突然、藤原が顔を歪めた。
「むぐっ!?このチョコは…!!」
「ん?どうした藤原書記?」
チョコを食した白銀が藤原に質問をする。何時もの藤原なら、ニパーっという感じで『美味しい!』と言うのに、どうも様子が変だからだ。
「んっぐ…わ、私これダメです!これアルコール入りじゃないですか!!」
無理やりチョコを飲み込んだ藤原は、顔を歪めながらそう言い放つ。その言葉を聞いた京佳が箱の底を見てみると、確かに『アルコール入り』と書かれていた。
「成程、妙な味だったのはこれが原因か」
京佳はチョコの味が妙だった事に納得する。
「藤原先輩、こういうのダメなんですか?」
「普通は無理ですよ!!チョコレートって甘くておいしいものじゃないですか!!」
石上からの質問にギャイギャイと騒ぐ藤原。確かに、アルコール入りチョコというのは普通のチョコとは違う味をしており、それが苦手という人も大勢いる。
「藤原書記は子供舌だな」
「子供舌で結構ですー!!」
そして白銀も鼻で笑うように言うと、またしても藤原はギャイギャイと騒ぎ始めた。
(全く立花さんったら。会長に対しておかえりだなんて…)
一方かぐやは、先ほど京佳が言った台詞が気になっていた。
(あんなのまるで、仕事が終わって家に帰ってきた夫に妻が喋りかけたみたいじゃない…!)
というか嫉妬していた。
そんなかぐやの思いなど知らない他のメンバーは、それぞれ仕事をする為椅子に座った。
「四宮、こっちの書類の整理を頼む。少し数が多いんだが…」
「わかりました会長。直ぐに済ませます」
白銀が結構な量の書類をかぐやに手渡しながらそう言うと、かぐやは嫉妬心を隠し、笑顔で書類の束を受け取り仕事に取り掛かたった。
(いいなぁ四宮は…白銀にあんなに頼りにされて…)
それを見ていた京佳は羨ましがっていた。
(私だってあの程度の仕事ならこなせるというのに…!白銀はもう少し私を頼ってくれ!)
そしてかぐやと同じように少しだけ嫉妬していた。自分だって、かぐやの様に白銀に頼られたい。そんな風に思っていると、白銀が話かけてくる。
「立花はこっちの書類を頼む。急いで欲しいんだができるか?」
「勿論だ。すぐに仕上げるさ」
白銀は今度は京佳に書類の束を渡した。かぐやと比べると少ないが、結構な量がある。京佳はそれを受け取り、直ぐに仕事に取り掛かった。
(しかし、四宮も立花もなんか顔が少し紅かったが、体調でも悪いのだろうか?)
白銀はみんなに仕事を振り分けた後、生徒会長の机に戻りながらそんな事を思った。何故かは知らないが、かぐやと京佳は顔をほんの少しだけ赤らめていたからである。しかし、気にはしたが直ぐにそれを忘れ、自分の仕事に取り掛かった。
それぞれが仕事を始めて暫くした時、かぐやと京佳が書類を手にほぼ同時に立ち上がり、白銀の所へと歩いて行った。
「会長、こちらの書類にサインを」
「白銀、こっちの書類にサインを」
そしてほぼ同時に白銀に喋りかけた。
「「……」」
かぐやと京佳は、ゆっくりとお互いを見つめだした。
「立花さん?私の方が先に会長に話しかけているので、会長が書類にサインをするまで暫く待ってて貰えますか?」
「いや四宮、こっちの書類のほうが重要だし優先的だ。先に私が白銀からサインを貰うからそっちこそ暫く待っててくれ」
それはお互い決して譲らないという姿勢。
これが開戦の合図となった。
そしてかぐやと京佳は、それぞれ相手に対して口撃を始める。
「秀知院学園の生徒会役員たる者が、順番に割り込むなんてみっともない真似をするなんて恥ずかしくないんですか?立花さん?」
「なら私からも言わせてもらうが、生徒会副会長ともあろう者が、仕事の優先順位を把握していないほうが恥ずかしいと思うぞ?」
何時しか2人は間には火花が散っている。
「お、おい?四宮?立花?」
自分の目の前で何やら不穏な空気を出す2人に白銀は少したじろいだ。というかちょっと怖いと思っていた。
「こらー!2人共ー!喧嘩はダメですよー!」
長椅子に座って作業をしていた藤原がかぐやと京佳に近づく。
「いいですか?喧嘩っていうのは相手を傷つける行為なんです。いつの間にか、ある事ない事口にしちゃうことだってあるんですよ?そうなったら、もう喧嘩する前の関係には戻れませんよ?」
そして2人に説得を始めた。
それを見ていた白銀と石上はほっとする。あわやかぐやと京佳で大喧嘩となるところだったが、藤原であればそれも治めることができる。彼女はそういう事に長けているのだ。
「だからそうなる前に、喧嘩をやめてここはお互い仲直りを…」
「藤原さん、ちょっと黙っててください」
「藤原、少しの間でいいから口閉じてろ」
「……ひゃい」
しかし今のかぐやと京佳には通じなかった。2人から睨まれながら殺気を向けられた藤原は大人しく引き下がるしかなかった。
「か、会長…!どうしちゃったんですかあの2人!?」
「俺にもわからん!!何であんなに殺気ぶつけ合ってるんだ!?」
いつの間にか白銀の傍に避難した石上が質問をするが、白銀は答えられない。理由が全く思いつかないからだ。かぐやと京佳は別に仲が特別悪いということはない。一緒に仕事はするし、昼食を共に食べる事もある。
そんな2人が今、殺気をぶつけ合いながら喧嘩をしている。まだ口喧嘩で収まっているが、このままではどうなるかわからない。どうしてこうなったのか、白銀は原因を探し始めた。
「……まさか」
そして白銀は、原因と思しきものを見つける。それは長机の上にある、学園長が差し入れで持ってきたアルコール入りのチョコレートだ。
「会長…!?原因がわかったんですか!?」
「ああ、恐らくだが、2人は今酔っている!!」
白銀、正解。
正直信じられないが、かぐやと京佳はアルコール入りチョコを食べたせいで酔っぱらっているのだ。その結果がこれである。平常ならばこんなことにはならないだろう。
しかしアルコールの力に敗北している2人は、理性のブレーキが壊れてしまい、日ごろのうっぷんを吐き出していた。
「そもそも前から思っていたのですが、立花さんは少し強引なところがあります。もう少し謙虚になってもいいのでは?」
「その言葉、そっくりそのまま返そう。ついでに『自分を棚に上げる』という言葉の意味を調べるといい」
「あら、すみません。もう一度言ってくれますか?無駄に大きいところから声を出しているのでよく聞こえませんでした」
「そうかすまなかった。次からは色々と小さい四宮の目線に合わせて喋るとしよう。悪かった、気づいてやれなくて」
「は?」
「あ?」
こうして冒頭へと至る。
白銀、石上、藤原の3人が生徒会長の机に隠れている間も、かぐやと京佳の口喧嘩は続く。
「剱岳」
「日和山」
「だいだらぼっち」
「雪女」
「Me 323 ギガント」
「XF5U フライングパンケーキ」
「時計塔の狩人」
「帝国の女皇帝」
今度はお互い、相手を何かに例えた悪口を連発し始めた。そしてその間も、生徒会室の空気は悪化の一途を辿っている。
「会長!マジでヤバイですって!このままだと殴り合いに発展するかもしれません!」
「それはマズイですよ!かぐやさんって柔道と合気道やってるんですよ!?京佳さんが大怪我するかもしれません!!」
「いや!前に立花に聞いたが、立花は昔空手をやってたらしい!!一方的に怪我をすることは無いと思うが…!」
「「いやそれ逆にマズイでしょ!?」」
「だよな!マズイよな!?」
机に隠れている3人は焦った。もしも、このまま2人が暴力に訴えるようになり、相手に怪我をさせたら、生徒会の名誉は地に落ちる。それどころか、下手をすれば退学だってあり得る。何とかこの2人の喧嘩を止めなければならない。
(どうする…!どうする!!一体どうすれば…!)
白銀は考えも巡らせた。そして視線を動かすと、長机の上に置いてあるチョコを見つけ、閃いた。
(これだ…!賭けに近いがこれしかない…!!)
一度深呼吸をして、机から身を乗り出した白銀は、長机の上にあるチョコの入った箱を指さして、かぐやと京佳に言い放った。
「2人共!食べ物を粗末にするのは良くないぞ!まだお互い言いたいことがあるのならば、残っているチョコを全部食べてからにするんだ!!」
「……そうですね。食べ物を粗末にするのはいけませんものね」
「……そうだな。わかった。キチンと全部食べてからにしよう」
(よし!)
かぐやと京佳はそれぞれ長椅子に移動し、長机の上に置いてあるチョコの入った黒い箱に手を伸ばし、残っているチョコを食べだした。その間も、かぐやと京佳はお互い顔を反らさないで相手の顔を正面から見ていた。
というか睨みつけていた。
そして15分後―――
「「う、うーん……」」
生徒会室には顔を真っ赤にして、長椅子に横になって唸っているかぐやと京佳の姿があった。
「成程…限界までチョコを食べさせて酔いつぶしたんですね…」
「流石です会長…僕じゃ思いつきませんでした…」
「ああ。もうこれしか方法が無いと思ってな…」
白銀の作戦が成功し、生徒会室は平穏を取り戻した。少なくとも、これで暴力事件が起こることは無いだろう。
「藤原書記、四宮の家に連絡を入れてくれ。立花の家には俺が連絡をする」
「わかりました。直ぐに電話します」
酔いつぶれた2人をこのままにしておく訳にはいかないので、家の者に連絡をいれ迎えに来てもらう事にした。
その日の夜 四宮家 かぐやの部屋
「うぅ、頭痛い…何で…?風邪がぶり返したのかしら…?」
「今日何かしましたか?かぐや様?」
「覚えてないわよぉ…生徒会室でチョコを食べたところまでは覚えているけど、その後の記憶が無いのよぉ…」
かぐやはベットの上で頭を抑えながら唸っていた。そしてアルコール入りチョコのせいで記憶を一部失っていた。
「早坂ぁ…頭痛い…なんとかしてぇ…」
「とりあえず氷枕もってきましたので、これで我慢してください」
早坂は、氷枕をかぐやの後頭部において看病を始め、こうなった理由を考え始めた。
(まぁ、生徒会室で何かがあったんだろうけど、ほんと何があったらこんな風になるんだろう?)
しかし結局理由はわからなかった。最も『アルコール入りチョコを食べて二日酔いになりました』なんてわかるはずもないだろうが。
同時刻 立花家 京佳の部屋
「き、きもちわるい…吐きそう…うぷっ…」
「京ちゃん?それ二日酔いの症状よ?学校でお酒でも飲んだの?」
「お、覚えていない…覚えてないんだよ母さん…記憶が無いんだ…うっ!」
京佳は猛烈な吐き気に襲われていた。京佳の母親である佳世は、自分の娘の症状が完全に二日酔いだとわかり、理由を聞いていた。電話で聞いた話は『娘の気分が悪くなり体調を崩した』としか聞いていないからである。
(まぁ、何かの間違いでお酒飲んじゃったってところかしらね。自分から進んで飲酒する訳無いだろうし)
しかし、どうせ何かの間違いで飲んでしまったと結論づけた。自分の娘が、自分から飲酒をするとは思えないからである。そして、脱水症状を起こさない為にも水を飲ませた。
因みに翌日、白銀は差し入れを持ってきた元凶である学園長にクレームをいれた。また生徒会では、今後差し入れがあった場合、徹底的に持ってきた差し入れを調べるというルールが出来上がった。
そして昨日、あれほどの喧嘩をしたかぐやと京佳が何も覚えていないのを知った白銀と藤原と石上は安堵し、この件は生涯口にしないと固く誓った。再び火に油を注ぐ羽目になりかねないからである。
例え悪口の部分、意味が全部分かった人っているのだろうか?
そしていつも誤字報告、感想、お気に入り登録してくれている皆様、ありがとうございます。本当に励みになります。相変わらずノリと勢いで書いていますが、これからもよろしくお願いします!
次回は、未定です。いやね?仕事をね?急に増やされたのよ。 畜生…