もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・   作:ゾキラファス

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 皆さん。新年、明けましておめでとうございます。去年は色々ありましたけど、どうか今年もよろしくお願いします。

 今年の目標は京佳さんルートを完結させて、かぐや様ルートを書く事。なんとかそこまで書けるよう、頑張ります。

 それでは、新年1つ目の作品です。どうぞ。


立花京佳と正月デート

 

 

 

 

 

 お正月。新しい年の始まりの日であり、1年の中でめでたい最初の日でもある。そしてこの日白銀は、出かける用事があった。何時もなら時給の良い正月にしか出来ないバイトをしたり、安物のお餅を買って家族で雑煮でも食べながら適当に正月のテレビ番組を見るのだが、今日は違う。

 

 本日彼は、恋人である京佳と正月デートをする。

 

 文化祭以降、恋人になったというのに、本当に色々あってまともにデートをしていない2人。

 しかし、それも今日まで。今日は何が何でも、しっかりとデートをするつもりだ。例えお世話になっているバイト先から助っ人に入って欲しいと言われても、今日ばかりは絶対に断る。

 

 だが、白銀は未だに家から出れずにいた。

 

「なぁ、圭ちゃん。俺そろそろ行かないと…」

 

「ダメ。もう1回見せて」

 

 その原因が、妹の圭である。圭は今朝からずっと、兄御行の服装を頭のてっぺんから足元まで何度も何度も見なおしていた。やれ寝ぐせは無いか。服にシワが無いか。靴はちゃんと綺麗か。着替えてからずっとこれである。

 

「いやもう5回目じゃん。そろそろ家出ないと待ち合わせ時間に遅れるんだけど」

 

 白銀の言う通り、何時までもこんな事をしていると遅刻してしまう。せっかくの正月デートに遅刻するなんて、あってはいけない。

 

「そんな風に急いで、もし何か忘れていたらどうするの?急いては事を仕損ずるって言うじゃん」

 

 だと言うのに圭は、それでも入念に兄の服装をチェックする。

 

 圭が何故これだけ入念に服装をチェックするかというと、京佳の為である。

 

 先日、かぐやからの謝罪があった日の夜、白銀は家族である父と妹の圭に京佳と恋人になった事を伝えた。それを聞いた圭は、本気で嬉しがったのである。あれだけ兄にアプローチをして、その想いがようやく報われたのだ。元から京佳の事が好きだった圭にとって、これほど嬉しい事は無い。

 そんな2人が、今日デートをする。恋人になって初めてのデート。それも新年が始まってすぐの正月デートだ。出来れば京佳には、今日この日がとても素敵な日になって欲しい。そう思った圭は、私服センスがゴミな兄に代わり、徹底的に兄をコーディネート。こうして出来た兄は、どこに出かけさせても恥ずかしくない姿に変身したのだ。

 濃ゆい赤茶色のセーターに、その上から黒い冬用のジャケット。下には黒いブラックスリムパンツを履き、靴は黒いスニーカー。全身黒な服装だが清潔感があり、白銀にとても似合っている。これなら例え銀座に行っても大丈夫だだろう。

 尚、これらの服は靴以外全て下北沢の古着屋で圭が見繕った服である。本当なら全て新品を揃えたかったが、白銀家の経済事情ではそれは不可能なので、苦肉の策でこうなっている。おのれ貧乏と圭が密かに思ったのは内緒だ。

 

「よし、今度こそ大丈夫。もう行ってきていいよ」

 

「やっとか。じゃあ行ってくる」

 

 朝起きてから5回も確認されて、ようやく圭から正式な許可が出た。これでやっと、京佳とのデートに行ける。

 

「おにぃ」

 

「ん?」

 

 しかし玄関のドアノブに手を掛けた時、圭が声をかけてきた。まだ何かあるのかと思った白銀は足を止め、圭の方に振り返る。

 そんな兄に圭は、

 

「デート、楽しんできてね。あと、京佳さんをしっかりエスコートしてきて。もし京佳さん泣かせたら、私絶対に許さないから」

 

 今日のデートについて、そんなアドバイスをするのだった。

 

「あぁ。勿論だ。あと、そんな事は絶対にしない」

 

 白銀は圭に同意するように言うと、ドアノブを回して外に出る。冬の寒さが一気に白銀に襲い掛かるが、そんな事気にしない。

 

 だってこれから、白銀はとても暖かくなるのだから。

 

 

 

 

 

 神社周辺

 

(やっぱり、人多いなぁ…)

 

 バスと電車を乗り継ぎ、白銀は京佳と決めた待ち合わせ場所である神社近くの駐車場にたどり着いた。しかし、まわりは人人人。間違いなく全員、神社で初詣をする人達だろう。流石元旦。恐らく、全国どこの神社もこんな感じだろうと白銀は思う。

 

(これ、境内はもっと多いな)

 

 これだけ人が多いと、少し気が滅入ってしまいそうになるが、今は先ず京佳を探す事にする。白銀はキョロキョロを回りを探していると、

 

「…………え?」

 

 視線の先に、とんでもない和服美人がいた。

 その人は身長が高く、頭には梅の髪飾り、牡丹の刺繍が入った朱色の着物を着こみ、左目には見慣れた眼帯。両手で桃色の桜があしらっている巾着を持って、足には草履。まるでどこかのファッション雑誌から出てきたと思えるくらい、とっても綺麗な女性。そんな人が、神社の近くにある駐車場に立っている。

 

「……」

 

 暫し白銀は、そんな彼女に見惚れてしまう。ドキドキと心臓がうるさい。顔がなんだか熱い。足が上手く動かない。頭が働いてくれない。何か声をかけないといけない筈なのに、全く声が出ない。白銀がそんな風に動きを止めていると、

 

「あ、白銀」

 

 その女性が、白銀の方へと歩いてきた。

 

「明けましておめでとう」

 

 そして白銀へ、笑顔で新年のあいさつをする。ここでようやく、白銀はそれが誰か理解した。

 

「あ、ああ。明けましておめでとう、立花」

 

 着物を着ている、自分の恋人の京佳であると。

 

(え?なにこれ天使…?めっちゃ綺麗…)

 

 白銀は、着物を着ている京佳に完全に見惚れていた。夏休みにも着物を着ている京佳を見ているが、これはあの時の比じゃない。あの時も見惚れていたが、今目の前にいる京佳はあの時の数十倍の破壊力を持っている。

 

 自分の恋人が、綺麗な着物を身に着けている。この事実のおかげで白銀は、今の京佳が何時もよりずっと魅力的に見えてしまっているのだ。男という生き物は、彼女が可愛い服装を身に纏っている姿を見てしまうと、誰でもこうなる悲しい生き物である。間違いなく、石上も子安先輩がこんな姿をしていれば今の白銀みたいになっているだろう。

 

「ところで、どうしたんだ?急に立ち止まっていたみたいだけど」

 

 そんな完全に京佳に見惚れている白銀に、京佳が話しかける。今までならここで白銀は、恥ずかしさを隠しながら何とか誤魔化していただろう。同級生に見惚れていたなんて、言うのが恥ずかしいし。

 しかし、もうそんな必要は無い。だって自分達は、恋人なんだから。ならば、誤魔化す必要なんて全く無い。

 

「すまん。あまりに立花が綺麗で見惚れていた」

 

 だから、正直に言う。クリスマスには言う事が出来なかった台詞を、はっきりと京佳に伝える。

 

「ふふ、そうか。見惚れてくれたのか。ありがと」

 

 白銀にそう言われた京佳は、小さく微笑みながら頬を少し赤らめる。絶対に寒いからじゃ無いだろう。だって耳も赤くなってるし。

 

「というか、その着物どうしたんだ?」

 

 今度は白銀から京佳に話しかける。だって着物なんて、かなりの高級品だ。少なくとも、白銀家の財力では買う事が出来ない。そんな物を京佳は着ている。そこがちょっと気になってしまったのだ。

 

「これか?例のモデルのバイト先の紹介で、格安でレンタル出来たんだよ。着付けは母さんに手伝って貰ったけど」

 

 そう言うと京佳は、その場でゆっくり1回転をする。可愛い。

 

「折角の正月なんだし、どうせならおめかしたてくてね。彼氏に、綺麗な姿を見せたかったんだ。移動が少し大変だけど、白銀が喜んでくれたみたいで良かったよ」

 

 それも、態々自分の為に。

 

「……」

 

「え?どうした白銀。何で急に右手で目を覆いながら空を見上げてるんだ?」

 

「いや、今ちょっと感情が高ぶっているから落ち着いているだけだ。数秒で済むから待っててくれ」

 

 恋人のそう言われて、嬉しくない男なぞ存在しない。白銀は下手すると、このまま京佳を抱きしめそうになってしまったので、1度自分を落ちつかせる。

 

「よし、もう大丈夫だ。じゃあ、行くか」

 

 自分を落ち着かせた白銀は、当初の予定通りに初詣に行く事にした。目的地の神社までは、歩いて5分ほどの場所。本当に直ぐそこである。

 

「なぁ、白銀」

 

「ん?」

 

 だが神社に向かおうとした時、京佳が声をかけた。そして、

 

「その、な。この人込みだと、迷っちゃうかもしれないから、手を握って貰っても、いいかな?」

 

 白銀にそう提案しながら、左手を差し出してきた。正直に言うと、今日のデートで白銀は京佳と手を握るかどうか悩んでいた。一応これが初デートになっている2人だが、その初デートでいきなり手を握るのはどうなのかと考えていたからである。こういったものは、理由とストーリー性が必要不可欠。

 なので白銀は、手を繋ぐのは2回目くらいのデートでやろうとか考えていたのだが、まさか京佳の方から手を繋いで欲しいと言われる展開。そう言われた瞬間、白銀の頭の中に2回目とかいう考えは消滅した。まさに願ったり叶ったり、渡りに船とはこの事だろう。

 

「勿論だ」

 

 そして白銀は京佳の手を握り、ゆっくりとした足取りで初詣に行く。

 

 

 

 

 

 神社 境内

 

「本っっ当に人多いな…」

 

「だな。こうやって手を繋いで無いと、あっと言う間に逸れていたよこれ」

 

 境内に入った2人は、その人込みに圧倒されていた。見渡す限り人である。家族と思われる4人組。どこかで見た事のある金髪の茶髪の2人の若い男達。多分1人で来ているであろう老人。

 そして今の2人のように、恋人同士で来ている2人組。恐らく自分達も、他と同じようにカップルと認識されているだろう。

 

(今日は絶対に、立花をしっかりエスコートしてみせる!そして、ちゃんとデートをしてみせる!!)

 

 白銀は密かにやる気を出していた。クリスマスにはあまりに予想外の出来事があったせいで、京佳とデートが出来なかったが、今日は違う。

 既に後顧の憂いは絶ったし、かぐやもしっかりケジメをつけた。今日のデートに、邪魔者は絶対に来ない。だからこそ、今日は絶対に最高のデートにする。

 

「「「あ」」」

 

 そう思っていた矢先、2人の目の前に赤ん坊を抱いている女性が現れる。恐らく、参拝を終えて帰る途中に人なのだろう。しかしこのままでは、白銀と京佳の繋いでいる手に遮られてしまい、進めない。

 

「「どうぞ」」

 

「すみません」

 

 だが2人は、直ぐに手を離して女性へ道を譲る。いくらデート中とはいえ、他人に迷惑をかけるような真似はしない。こうして手を離す事くらいする。そして女性は2人に頭を下げながら、その場から去って行った。

 

(立花と手を離してしまったが、これもう1回手を握ってもいいのか?)

 

 だがここで白銀は考える。不可抗力で手を離してしまったが、また繋ぎ直してもいいのかと。もしここで自分から手を繋ぎ直してしまったら、京佳に引かれないかと考えてしまう。

 

(男からあまりがっつくような真似すると女の子はドン引きするってネットに書いてたし…名残惜しいが、ここはせめて立花の隣をキープするようにするか)

 

 あまり男から積極的に行くと、女の子は良い思いをしない。こういうのは、線引きと順序というのがあるからだ。デートをする前に何度も読み込んだネットの情報を思い出しながら、白銀は今後の動きを決める。出来ればまたしっかり手を握りたいが、あまりがっつくような真似は良く無い。ここは京佳の隣をしっかりキープして、彼女をエスコートしよう。

 

 白銀が内心そう決めた時、

 

「えい」

 

 なんと京佳が、白銀の腕に抱き着いてきたのだ。

 

「え?た、立花?」

 

「こうすれば、絶対に迷子にならないだろ?それに、さっきみたいに離れる事だってない。白銀が迷惑じゃなければ、このままにしてくれ」

 

 白銀はあまりがっつく真似は良く無いと思っていたが、京佳は全然そんな風に思っていなかった。むしろもっと手を握っていたいと思ってたし、こうして腕に抱き着いて一緒に歩きたいとも思っていた。

 

 数日前のクリスマス事件。そしてその後の、かぐやの謝罪。一応京佳はあれでかぐやの事を許したが、そでもやはり内心ストレスが溜まっているのが現状。しかしかぐやの事を許すと決めたので、これ以上かぐやに何かをする事は無い。

 だがストレスはどうしても溜まってしまう。そこで京佳は、白銀と目一杯イチャつく事で

ストレスを緩和させようと考えたのだ。長い間かぐやとの恋愛戦争をして、それに勝利した京佳。

 ならばもう、恋人としてイチャついても罰など当たらない。今日からは、これまでの遅れを一気に取り戻す。これは、その為の一歩なのだ。

 

「……ああ。問題無いぞ」

 

「じゃ、このままで行こう」

 

 白銀からも許可を得た。ならば問題無い。京佳は白銀の体温を感じながら、境内にある本殿へゆっくり2人並んで歩き出す。

 

(ああ、私、幸せだなぁ…)

 

 好きになった人と結ばれて、こうして一緒にデートに行き、腕を組んでいる。こんな見た目の自分が、これ程の幸せを手にする事が出来た。その事実に、京佳は胸が幸せでいっぱいになりそうになる。今だって、顔がにやけてしまうのを抑えるので必死だ。

 

(や、やばい…!?)

 

 でも京佳が幸せを感じている一方で、白銀は少しピンチに陥っていた。

 

(腕に、立花の胸が…!!)

 

 その理由が、京佳の豊満な胸が、白銀の腕に密着している事である。知っての通り、京佳はかなり胸が大きい。なんせ生徒会で1番大きいだけでなく、同級生でもこのサイズはほぼいない。唯一の対抗馬が、あの藤原くらいである。

 そんな京佳の胸が、思いっきり当たっている。腕に伝わる着物越しの柔らかい感触。同時に隣にいる京佳からする良い匂い。その結果、白銀は体の1部が変形しそうになっていた。

 

 具体的に言うと、白銀の白銀が白銀しそうになっているのだ。

 

(いやダメだろ!?それはダメだろ!?初めてのデートでそれはダメだって!そもそもここ神社だし!絶対に罰当たりな事になる!!)

 

 もしそんな事になり、更にその事が京佳にバレてしまったら、絶対に引かれる。間違いなくドン引きされる。何なら周囲に人達にもドン引きされるだろう。

 更にもしかすると、この神社の神様から天罰が下るかもしれない。何が何でも、今すぐに平常心を手にしなければ。

 

(そうだ!中学の時に合唱の練習でクラスの皆から『白銀くんは口パクでいいよ』って言われた時の事を思い出そう!)

 

 そこで白銀が取った行動は、過去の割と辛い思いで思い返すことであった。こうして嫌な思い出を思い出す事で、気分を沈めて行くという考えである。

 因みに母親が自分を捨てて出て行った時の事は、鮮明に思い出すとデートどころでは無くなるので却下した。

 

(ぐふっ…!?ウン、オチツイタ…

 

 作戦は成功。白銀は当時の事を思い出す事で、体の1部が変形するのを抑える事が出来たでも思っていたよりダメージが大きくて、かなり傷ついた。誰でも、昔の嫌な記憶を思い出したく何てない。

 

「白銀?どうかしたか?」

 

「いや、何でもない」

 

 しかし直ぐに気持ちを切り替える。このまま気分が落ち込んだままでいるなんて、京佳に失礼でしかない。白銀は京佳の胸の感触の感想を脳内で蓋をして、初詣に挑むのであった。

 

 

 

 

「「……」」

 

 お賽銭を入れ、2人並んで二礼二拍一礼して祈る。

 

(おかげ様で去年は、色々と成長する事が出来ました。ありがとうございます)

 

 京佳は去年、恵美と一緒にお参りをしている。その時、今年は自分が成長できるよう願った。そのおかげもあってか、京佳は中学生の頃とは見間違える程成長する事が出来ている。生徒会の仕事はしっかりこなせるし、秀知院の授業にもついていけている。

 

 更に京佳には、白銀という恋人も出来た。

 

 もし昔のままの自分であれば、四宮かぐやという最強の恋敵に、勝負をすることさえなかった筈だ。今自分が白銀と恋仲になれたのは、自分が成長し、自分の気持ちに素直になったおかげだろう。去年のおみくじの通りにして正解だった。

 

(今年は、幸せに過ごせるよう、お願いします)

 

 そして京佳は、今年の願いに幸せを願う。京佳は今とっても幸せだが、この幸せが突然壊れてしまうんじゃないかと、不安になる時がある。もしそんな事になったら、今度こそ京佳は立ち直る事が出来ないだろう。だから願ってしまう。どうか今感じているこの幸せが、壊れてしまわないよう。

 

(立花と幸せになれますように)

 

 一方白銀も、京佳と幸せになる事を願っていた。白銀は今年の夏にはアメリカに旅立つので、

新しい土地でしっかりやっていけるか不安がある。言葉も文化も違う国。そこに1人で行くのはどうあっても不安だ。

 しかし、その事を願いはしない。今はそれより、恋人になった京佳との事を願う。この幸せを、白銀も手放したくないからだ。

 

(あ、それと風邪とかひかないようお願いします)

 

 ついでに体調の事も願っていたが、そこはおまけという事で許して欲しい。

 

 その後も、2人の初詣デートは続く。

 

「お、大吉だ」

 

「私もだ。お揃いだね」

 

 一緒におみくじを引いてみたり、

 

「えっと俺は、健康のお守りで」

 

「じゃあ私もそれにするよ」

 

 2人で同じお守りを購入したり、

 

「流石に寒いな…」

 

「だな。でもストーブが設置されていてよかったよ」

 

 境内に設置されている休憩所のストーブで暖を取ったりした。誰が見ても、ちゃんとしたデートをしている2人。クリスマスには出来なかった事を全て巻き返す勢いで、2人は初詣を楽しんでいる。それを邪魔する人は、どこにもいない。

 

「おっと、また人が沢山来たみたいだな。立花、もう出ないか?」

 

「いいよ。しっかり参拝も終わったしね」

 

 未だに大勢に人が押し寄せている境内。既に参拝も終えたので、2人は境内から出る事にした。

 

「ふう、やっと人込みから出れた…」

 

「大変だったな」

 

 そして2人は境内から脱出し、ようやく人通りの少ない場所へと出て一息つく。

 

「今日は来れて良かったよ。付き合ってくれてありがとう、白銀」

 

「どういたしまして」

 

 京佳は白銀にお礼を言い、白銀はそれを素直に受け取る。どうやら、京佳はちゃんと楽しんでくれたようだ。だがまだ今日は始まったばかり。ここからもしっかり京佳をエスコートして、もっと幸せなデートにしなくてはならない。

 

「さてと、次は…」

 

 だがその時、白銀は思い出す。

 

 この後の予定を、何も考えていなかった事を。

 

(やっべぇ…浮かれ過ぎてて、初詣後の事を考えてなかった…)

 

 京佳との初デート。それに浮かれてしまっていた白銀は、初詣後の事をすっかり忘れていたのだ。

勿論、相手のエスコートに仕方や、デートでのマナーはしっかりと覚えている。

 だがそればかりに目が行ってしまい、肝心のデートプランが頭からすっぽ抜けていたのだ。圭がこの事を知ったら、絶対に激怒するだろう。

 

(この後は、どうするべきだ?)

 

 白銀は直ぐに今後の予定を考える。流石にここで帰宅するのはありえない。折角のデートなのに、初詣だけして帰るなんて勿体ないにも程がある。今日日中学生のカップルでも、そんな事しない。まだまだ時間はたっぷりあるのだ。出来れば、時間一杯京佳と過ごしたい。

 

(買い物?映画?それとも食事?)

 

 腕時計で時間を確認すると、もうちょっとで11時。少し早いかもしれないが、昼食に行くのもいいかもしれない。

 

「なぁ立花。前に行ったあの喫茶店に行かないか?もう直ぐお昼だし」

 

 そう思った白銀は、京佳にクリスマスにも行った純喫茶りぼんへ行く事を提案。そこで食事を楽しんで、このデートをより楽しいものにしよう。

 しかし、

 

「すまん白銀。あの店、正月の3が日は全部休みなんだ」

 

「え?」

 

「新年は4日からだよ」

 

 りぼんは正月休みなので開いてないらしい。

 

「そ、そうだったのか。ならえっと…ちょ、ちょっと待っててくれ!」

 

 白銀は直ぐに次の行先を考える。残念ながら、白銀に行きつけの店なんて無い。飲食店のバイト先くらいはあるが、流石にデートでそこには行きたくない。他に行けそうな場所と言えばファストフード店くらいだが、正月のデートで行く場所とは言えない。

 かといって今から映画に行くのも違う。そもそも面白そうな映画をやって無いし、京佳は着物だからだ。着物のまま映画館に行くなんて、悪目立ちしてしまう。それでは京佳に、嫌な思いをさせてしまいかねない。

 ならば買い物とも思ったが、特段白銀は欲しい物なんて無い。買いたい物が無いのに買い物に行く何て、白銀はしない。だってお金が無いし。それにこの時期の店はどこも人が多い。そこに京佳を連れて行くのは、気が引ける。

 

(どうする!ここでちゃんと予定を決めておかないと、立花に行き当たりばったりな男と思われるかもしれない!なんとか楽しめる場所を考えないと!!)

 

 白銀は悩む。折角のデートで、京佳をがっかりさせたくない。ここは彼氏として、しっかり彼女をエスコートしてあげたい。だが中々良い案が思い着かない。

 

「白銀」

 

「どうした?」

 

 そうして悩んでいると、京佳の方から驚くべき提案をしてきた。

 

 

 

 

 

「今から、私の家にこないか?」

 

「……へ?」

 

 

 

 

 

 京佳の家

 

「どうぞ」

 

「お、おじゃまします」

 

 30分後。白銀は京佳の家に来ていた。あの後、白銀は京佳の提案を受ける事にした。そもそもずっと、どこに行けばいいか決まらない。流石にあのまま悩み続ける訳にもいかない。ならばいっそ京佳の提案を受けて、京佳の家に行ってみるのもありかもしれない。そう思ったからだ。

 

「ちょっと着替えてくるから、ソファに座って待っててくれ」

 

「わかった」

 

 京佳に言われ、白銀はソファに座る。

 

(な、何だか緊張するな…)

 

 以前、1度来た事がある京佳の家。だがあの時と違い、今の2人の関係は恋人だ。恋人になってから、初めて訪れる京佳の家。そう思うと、何か緊張してしまう。

 

「そういえば立花、お母さんは?あいさつをしておきたいんだが」

 

 だがいつまでも緊張していられない。この家には京佳だけじゃなく、京佳の母親も住んでいる。ならこの際に、恋人としてしっかりあいさつをするべきだろう。

 

 そう思っていたのだが、

 

「ああ。母さんなら会社の新年会に行ってるから留守だよ。今日は正月だから何件も梯子するって言ってたし、多分夜まで帰ってこないと思う」

 

 「………え」

 

 どうやら、京佳の母親は留守らしい。

 

「お、お兄さんは?」

 

「兄さんは自衛隊の寮だよ」

 

 おまけに、京佳の兄もいないとの事。

 

 つまり今、この家には白銀と京佳の2人だけ。

 

(マジかよ…)

 

 その事実に、白銀はより緊張する。恋人同士の男女が、家に2人きり。こんな状況に、緊張しない男なぞいない。

 

「じゃ、着替えてくるから」

 

「わ、わかった」

 

 そう言うと京佳は、自分の部屋へ入って行く。

 

 シュルシュル

 

 僅かだが扉越しに、布が擦れる音が聞こえる。

 

(ヤバイ…めっちゃ緊張してる俺…)

 

 その音や今いるこの状況に、白銀は更に緊張してきた。手汗も凄いし、息もちょっと荒い。何度か深呼吸をするが、あまり効果が無い。

 

(それにだ。一体立花は何をする気なんだ?)

 

 おまけにここに来る前、京佳は白銀を家に誘った理由を明かしていない。京佳に聞いてみても『着いてからのお楽しみだよ』としか言わない。

 

(ま、まさか…)

 

 その京佳の物言いに、白銀は脳内がピンクになる。白銀は、思春期の男子高校生である。自分達以外誰もいない家。そこにあんな言い方をされてしまえば、そういう事を期待してしまうのも無理は無い。そもそも男なんて、所詮性欲の塊だもん。

 

(待て待て!まだ付き合って1週間ちょっとしか経ってないんだぞ!?いくら何でも早すぎるだろ!?そういうのはもっとこう、段階を踏んでからであって!!)

 

 白銀だって、勿論京佳とそういう事はしたい。でもまだ早すぎる。そういうのはもっと、しっかりとした順序があるのだ。それをすっとばしていきなりやるなんて、ダメである。白銀の中では、5回目のデートでそういう事をしたいという線引きがある。まだ1回目のデートでそれはダメなのだ。

 

(いやでも、立花が求めるって言うのなら別に…1回薬局行くべきか?)

 

 おまけに今、白銀は防弾チョッキを持っていない。もし京佳から求められたら、アレが無いと一大事だ。念のため今すぐ薬局まで走って、防弾チョッキを買ってきた方がいいかもしれない。

 

「ふぅ、やっぱり普通の服が1番落ち着くな。着物は可愛いけど、着るとか歩くの結構大変だし」

 

 そうこう思っていると、着物姿から普段着姿に変身している京佳が出てきた。今の京佳は上にグレーのパーカーを着て、下には黒いスェットのパンツを着ている。そのゆったりとした姿に、白銀はドキっとする。

 

「それじゃあ白銀」

 

「あ、はい」

 

 遂に来たかと思い、緊張のあまり敬語になる白銀。でも大丈夫だ。いざという時の為に、ネットで知識だけは入れている。上手くできるかわからいけど、精いっぱい頑張るつもりだ。

 そうやって白銀が身構えていると、

 

 

 

「一緒に、雑煮を作ろうか」

 

「……はい?」

 

 

 

 京佳は雑煮を作ろうと言い出した。

 

「雑煮?」

 

「ああ。正月なんだし、お餅は食べるべきだろ?でも普通に焼いて食べるんじゃ、ちょっと味け無い。だから雑煮を作ろう。ああいうの、お店で食べると高いし」

 

 京佳が白銀を家に呼んだ理由がこれである。元々初詣だけで終わらせるつもりなんて、京佳にも無かった。もっと一緒にいたい。もっと白銀と過ごしたい。

 しかし正月は、どこに行っても人が多くて大変。ならば、家で過ごせばいいと考えたのだ。今日は正月だし、雑煮を作ろうと言えば特に不自然な事も無い。

 

「……」

 

「あれ?どうした白銀?も、もしかて、雑煮とか好きじゃなかったか?」

 

 だが突然白銀が無言になり、、流石にいきなり家に呼ぶのは早かったかと後悔し出す。もしかすると、簡単に家に男を呼び込むふしだらな女と思われたかもしれない。

 

 そう思っていると、

 

「ふんっ!!」

 

 突然、白銀が自分で自分を思いっきりグーで殴った。

 

「突然どうした白銀!?」

 

「気にしないでくれ。自分のとても浅はかで愚かな考えに落とし前をつけただけだ」

 

 自分で自分を殴った白銀はそう言い、少し自己嫌悪になる。

 

(俺は、何て最低な考えを…!)

 

 自分だけそういう事を考え、京佳の純粋な思いに泥を付けるところだった。というか、いくら何でもそんな事を考えるのが早すぎる。最低だ。本当に最低だ。もう数回自分を殴っておかないと気が済みそうにない。

 

「よし。もう大丈夫だ。早速作ろう」

 

「う、うん」

 

 でもこれ以上自分で自分を殴ると変な誤解をされそうなので、1回で白銀はやめる事にした。そして京佳と共にキッチンへ向かい、雑煮を作るのであった。

 

 

 

「お、美味いな」

 

「やっぱり、正月と言えばこれだね」

 

 30分後。そこには京佳と肩を並べてソファに座り、雑煮を食べながら正月番組を見ている白銀と京佳がいた。2人とも料理の経験がそれなりにあるので、対して苦戦する事も無く、あっと言う間に完成させたのである。残念ながら、どっちかが料理の仕方を教えるなんてベントは発生していない。

 

「この芸人、去年大ブレイクしたんだっけか?」

 

「そうだよ。40手前でブレイクしたんだから、当の本人はかなり安心したんじゃないか?奥さんと子供もいるって言うし」

 

「だろうな。崖っぷちだもんそれ。でもそこで胡坐をかいてたら直ぐにまた転落しちゃうから、頑張って欲しいもんだ」

 

「確かに。成功しても、その後が本当に大事だしね」

 

 テレビで去年ブレイクした芸人のネタを見ながら、2人で雑煮を食べる。完全にお家デートだ。正月らしさは、雑煮くらいしか無い。これはこれで新鮮だが、白銀はちょっとだけ思う事があった。

 

「立花。気を使わせてしまったみたいで、すまない」

 

「何がだ?」

 

「その、俺は立花の彼氏なんだから、もっと俺がしっかりエスコートしないとなのに。でも俺、初詣後の予定禄に建ててなくて、その結果立花が気を使って家に呼んでくれただろ?本当ならもっと正月らしいところに行けた筈なのに。だから、不甲斐なくてすまん」

 

 あの時、京佳が家に自分を誘ったのを白銀は、京佳の気づかいだと考えたのである。本当ならしっかり京佳をエスコートして、今日のデートを楽しむつもりでいた。

 しかし、白銀が肝心のデートプランを組み忘れるという失態のせいで、今こうして京佳の家にいる。もし京佳が何も言わなかったら今頃どこで何をしていたかわからないが、折角の正月だというのにお家デートというのは少し味気ない。その事実に、白銀は軽い自己嫌悪になっているのだ。

 

「白銀」

 

「何だ?」

 

「ちょっとじっとしていてくれ」

 

「え?お、おう」

 

 京佳に言われ、じっとする白銀。そして京佳はそんな白銀に手を伸ばし、

 

 ゆっくりと白銀を自分の膝の上に寝かし、膝枕をするのだった。

 

「は?」

 

 突然の事に、白銀は呆気に取られる。とっさに京佳の顔を見ようとしたが、胸のせいで半分くらいしか見えない。

 

「白銀。私は全然、白銀が不甲斐ないなんて思っていないよ。そもそもうちに誘ったのは、最初からそうしようって私自身が決めていた事だし」

 

「え?そうだったのか?」

 

「うん」

 

 そして京佳は、膝枕をしている白銀に話しかける。

 

「私は今、本当に幸せなんだ」

 

 優しく白銀の頭を撫でながら、京佳は話す。

 

「こんな見た目の私が、また恋をする事が出来ただけじゃなく、その恋が成就できた。そして今、こうして好きな人と一緒にいる事が出来る。それだけで、本当に幸せなんだ」

 

 中学の時の事件で、京佳は自分の見た目に酷いコンプレックスを抱くようになった。結果こんな自分は、もう好きな人と一緒になれる事なんて無いだろうとも悟っていた。

 

 しかし京佳は、また恋をする事が出来た。そして更に、その恋が実ったのだ。こんなに嬉しい事は無い。

 

「だから、そんな事言わなくていいよ。変に色々考えちゃうと、疲れちゃうだろ?折角の正月なんだ。もっと嬉しい気分でいよう?それに私は、白銀とだったらどこに行っても嬉しいよ」

 

 好きな人と一緒にいられる。当たり前かもしれないが、その当たり前がとっても幸せだ。

 

「今日はこのまま、ゆっくり過ごそう?デートは、これから何度でも行けるんだから」

 

 白銀は失敗したと思っているが、京佳は全くそんな事思っていない。だって今日1日、本当に楽しかったのだから。もし仮にそう思っていても、また今度白銀が考えたデートに連れて行ってくれればいいとさえ思っている。その時に、もっと良いデートをすればいいだけなのだから。

 

「わかった。ならまた今度、どこかに行こう」

 

「うん」

 

 そして2人は、そのまま正月番組を見て過ごした。その間、京佳はずっと白銀を膝枕しており、白銀もずっと京佳の膝枕を堪能していた。

 途中白銀は少し眠ってしまったが、それでも京佳は膝枕を止めずに、白銀が起きるまでずっとし続けた。

 

 

 

 

 

 尚この時、実はお互いすっごくキスしたいと思っていたのだが、もしここでキスをしてしまうと絶対にキスだけじゃ止まりそうに無かったので、我慢していたりする。

 

 

 

 

 




 そんな訳で、ただずっとイチャイチャしてた2人のお正月でした。これから暫くこんな感じです。やっと恋人になれたんだもん。だからいいよね?
 そしてそれを見たかぐや様は、マキちゃんよろしく地面に突っ伏す。

 次回はかぐや様の傷心旅行の予定ですが、旅行先についてアンケートを設置しているので、よろしければお答えください。
 
 それでは、また次回。どうか今年も、よろしくお願いします。

かぐや様の傷心旅行先は?

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