もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・   作:ゾキラファス

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 今更どうでもよい話。
 実は本作に登場するオリジナルキャラクターの苗字は、全員九州の戦国武将から取っています。理由は作者が九州在住だから。


立花京佳と修学旅行前

 

 

 

 

 

「それでは、これより各班で京都をどう観てまわるか決めてくださいねー」

 

 3学期のある日、京佳のクラスでは修学旅行先の京都でどう観光するかを、それぞれの班が話し合いで決めようとしていた。

 

(修学旅行の行先は京都か…行った事無いから楽しみだな)

 

 手元にある修学旅行のしおりを見ながら、京佳は内心ワクワクする。

 

 全ての学生にとって、1番楽しみなイベントともいえる修学旅行。秀知院の修学旅行は毎年海外に行っているのだが、こうも毎年毎年海外に行っているためかなりに出費になってしまっている。いくらお金持ちの学校と言われている秀知院とは言え、旅費が湯水の如く沸いてくる訳ではない。そもそも修学旅行の旅費は寄付金で賄っているし。

 なので今年は出来れば国内にして、出費を抑えたいと思っていたのだ。しかしいきなり国内にすると、生徒からの反発がある。それまでずっと海外だったのに、どうして自分達の時だけ国内になるのかと。実際京佳も、どうせなら海外に行ってみたいと思っていた。

 

 そうやって悩んでいると、藤原がある作戦を考えた。それは生徒全員にアンケートを取り、1番リクエストの多かった場所を旅行先にしようというものである。

 

 海外なら沢山の国があるので、どうしても票がばらけてしまう。そして国内だと、せいぜい候補は北海道、沖縄、京都の3つになる。この寒い時期に北海道に行くなんて真似は普通しないし、沖縄は中等部の頃の修学旅行先だった。

 となれば長時間移動を嫌う派閥が京都を選び、無事国内での修学旅行となったのだ。これで無事出費も抑えられ、生徒からの反発も無く修学旅行に行ける。

 

 そして今、京佳は自分の班の子達と京都をどう回るか話しあっていた。

 

 京佳の班のメンバーは、京佳を含めて4人。

 

「私はやっぱり、金閣寺に行ってみたいなぁ」

 

 1人目は眼鏡をかけた長髪の女生徒で、名前は鍋島奈央。バスケ部でレギュラーを獲得している活発な子だ。

 

「私は三十三間堂かなぁ。千手観音座像が凄いって言うし」

 

 2人目は少しおっとりしている黒髪の女生徒で、名前は甲斐由佳。特徴的な左目をしている、帰宅部の生徒である。

 

「龍珠さんは?どこか行ってみたいところとかある?」

 

「あー、清水寺かな。やっぱ有名だし」

 

 3人目は、このクラスで1番京佳と付き合いの長い龍珠。

 

 この3人が、京佳の班のメンバーである。

 

「立花は?どっか行きたいところあるのか?」

 

「そうだな。あると言えばあるな」

 

「どこだ?」

 

「観光地じゃないんだが、前にテレビで見た大福のお店だよ。美味しそうだったから、この期に行ってみたいんだよな。確か鴨川の近くにある筈だが」

 

「あー、あれか。確かにあれ有名らしいし、行ってみるか」

 

「いいねそこ。じゃあついでに鴨川行ってもいい?鴨川デルタっていうスポットがあるんだけど、私の好きな有名なアニメにも登場してたから1度この目で見てみたいんだよね」

 

 京佳の行ってみたい店の近くに鴨川があるので、甲斐はそこにある鴨川デルタに行ってみたらしい。

 

「なら大福を購入したら、皆でそこで食べるとしようか」

 

「賛成!」

 

「いいぞ」

 

「私もいいよー」

 

 特に断る理由も無いので、京佳はそこに行く事にした。当然、龍珠と鍋島も反対はしない。

 

「因みにそれ、どんなアニメなんだ?」

 

「えっと、夏祭りに落雷で死んじゃう恋人を未来から来た自分が過去の自分と強力して助けようとするアニメ映画だよ」

 

「へぇ、面白そうだなそれ」

 

「でも内容がSFだから、SFの知識無いと結構意味のわからないアニメだね」

 

「え?そうなの?」

 

「うん、仮想世界とかその辺の知識いるし」

 

 4人は和気あいあいとしながら、修学旅行のプランを考える。こうやって旅行の計画を立てている時は、誰だって楽しいものだ。しかし京佳は、少しだけ不満があった。

 

(どうせなら、白銀と一緒にまわりたいなぁ…)

 

 それは、折角の修学旅行だから白銀と一緒にまわりたいという欲。なんせ高校生の修学旅行は、一生に1度しか無い。

 そしていつか、大人になった時にまた京都に来て『あの頃が懐かしい』なんて感想を口にしたい。

 

 だが残念ながら、京佳と白銀は別のクラスである。

 

 これでは簡単に白銀と行動するなんて無理だ。一応、修学旅行は班ごとの行動になるのでかなり自由は効くので、それを利用すれば白銀と共に行動する事は可能だ。

 しかし、そう思っているのは京佳だけ。他の3人は、男子と一緒に行動するのを嫌がるかもしれない。

 

(まぁ仕方が無い。私だけ我儘言って他のクラスの班に混ざる訳にも、白銀と2人で班を抜け出す訳にもいかないし…)

 

 出来ればそうしたいのだが、自分勝手にそんな真似をする訳にはいかない。なので京佳は、自分の欲に蓋をする。

 

「おい立花。お前他に行きたい場所は無いか?」

 

「そうだな…京都駅の中で少し行きたい場所があるのと、京都タワーをこの目でしっかり見てみたいかな」

 

「何でその2つ?」

 

「どっちも子供の頃に、兄さんと一緒に見た怪獣映画に出たんだよ。そして怪獣に壊されたんだ」

 

「あー…もしかしなくても、私もその映画知ってるわ」

 

 そして再び、意識を修学旅行の行動に集中させるのだった。

 

 

 

 

 

 昼休み 天文部 部室

 

「京都、楽しみだな」

 

「まぁな。何だかんだで有名な観光地だし」

 

 天文部の部室では、京佳と龍珠が昼食を共にしていた。本当なら白銀と一緒に昼食を共にしたいのだが、白銀は修学旅行に行く前に可能な限り仕事を終わらせて、学校に残る石上と伊井野に負担をかけないようにするため今日の昼休みも仕事をしている。なので京佳は、こうして龍珠と昼食を共にしているのだ。

 

「出来れば、1人で好き勝手に観てまわりたいんだけどなぁ…」

 

「気持ちはわかるが、流石にそれはダメだろ。一応集団行動が義務付けられているんだぞ」

 

「わかってるよ。今更1人で勝手に行動なんてしねーよ。それに」

 

「それに?」

 

「修学旅行、皆でまわるの私も楽しみなんだよ。中等部の頃と違って、私らの班もクラスの連中も、もう誰も私も怖がらないしな。あれなら、変に気を使わせる事もねーだろ?」

 

 龍珠は、紙パックのコーヒー牛乳を飲みながら、僅かに微笑んでそう呟く。それは本当に楽しそうな、年相応の顔だった。

 

(しかし、龍珠もしっかりクラスに馴染んだな)

 

 そんな龍珠を見て、京佳はそんな風に思う。彼女はずっと、秀知院で孤独だった。それは彼女がヤクザの組長の娘だからである。最初は仲良くしていても、龍珠の親の仕事を知った途端

誰もが離れて行く。だったら最初から、1人でいい。

 なので龍珠は最初、修学旅行も1人で勝手に行動しようと思っていた。実際中等部の修学旅行の時は、龍珠は1人で行動していた。正直、凄く寂しかった。

 

 しかし、龍珠の班に入った子は全然龍珠を怖がらない。それどころか、C組の生徒はもう誰も龍珠を怖がるような真似をしない。これはC組の生徒が、龍珠は親がヤクザだからと言って誰彼構わず暴力を振るったり、恫喝したりする子では無いと知ったからだ。口調こそキツイが、決して理不尽な事はしないし、普段の授業だって偶にサボる事はあるがちゃんと受けている。

 更に文化祭の演劇も、サボらず最後まで真剣にやってくれた。おかげで龍珠は、少なくともC組の生徒からは怖がられたり邪険にされる事が無くなったのである。実際、班決めの時も誰も龍珠が同じ班になる事を拒まなかった。1年生の1学期からは考えられない事である。

 この出来事があったので、龍珠は今回の修学旅行を、ちゃんと班行動で楽しもうとしているのだ。

 

(会長が今の様子を見たら、泣くかもしれん)

 

 先輩である前々生徒会長は、龍珠が孤独な事を決行心配していたので、今の龍珠のクラスでの様子を見たら多分無く。あと龍珠は多分キレる。

 

「なぁ立花」

 

「何だ?」

 

 そんな事を思っていると、龍珠が話しかけてきた。

 

「お前さ、やっぱり白銀と一緒にまわりたいって思っていたりするか?」

 

 そして京佳にそんな質問をしてくる。

 

「まぁ、そうだな。折角の修学旅行なんだし、出来れば一緒にどこか行きたいって気持ちはあるよ」

 

 別に隠す必要も無いので、京佳は素直に答えた。

 

「そうか。なら協力してやる」

 

「え?」

 

 すると龍珠は、手にしていた紙パックのコーヒー牛乳を飲み干してそう言う。

 

「お前には何だかんだで世話になったしな。それに、一生に1度しか無い修学旅行で恋人とまわれないのは嫌だろう?だから修学旅行中のどこかで、お前と白銀が2人きりで2人でどっか一か所くらいはまわれるよう手貸してやるよ」

 

 それはまさに、渡りに船といった提案。確かに京佳は、どうせなら白銀と一緒に観てまわりたいと思っていた。でも、自分だけ班から抜けるのは気が引ける。

 

「いいのか?」

 

「大丈夫だ。最悪2人きりは無理でも、私らと白銀の班とで一緒に行動すればいいだろ。誰も嫌がったりしねーよ」

 

「そうか?」

 

「多分」

 

「多分かぁ」

 

 しかし龍珠は、最悪2つの班で行動すればいいと提案。確かにそれなら一応白銀とも一緒にまわれるが、問題は他の子らが嫌がったりしなかどうかだ。龍珠は大丈夫というが、やはりその心配は残る。

 

(まぁ、鍋島さんも甲斐さんも良い子だし、多分大丈夫だろう)

 

 でも、京佳の班の子はとても良い子なので、多分男子と一緒になっても嫌がったりはしない。そう思う事にした。もし嫌がりそうだったら、その時はまた何か作戦を考えよう。

 

「ふふ、ありがとう、龍珠」

 

「おう」

 

 龍珠も折角協力してくれると言うのだ。ならば、ありがたくこの提案に乗ろう。とりあえず、放課後にでも白銀と1度話して打ち合わせをしておくとしよう。

 

(しかし本当に、龍珠は丸くなったよな)

 

 にしても、龍珠は本当に最初に出会った頃と変わった。最初は誰も近寄らせようとすらしない雰囲気を出していたのに、今ではC組の生徒であれば軽い挨拶をする程度には丸くなっているし、生徒同士で漫画の貸し借りだってしている。

 そして、今京佳に提案したように手助けもしてくれる。最初の誰に対してもツンツンしていた頃と比べると、かなり丸く、デレた感じになった。

 

「あれだな。龍珠ってツンデレっぽいよな」

 

「突然なんだ!?ぶっ殺すぞてめぇ!!」

 

 その姿、まるで古のツンデレである。京佳がそう言うと、龍珠が大声を出しながら勢いよく立ち上がる。

 

「だってそうじゃないか。いつもそうやってツンケンしてるけど、最後にはこうして手伝ってくれるんだから。それに、1年生の頃と比べると変動も丸くなってるだろ?つまりデレてる。だからツンデレっぽいなって」

 

「それだけで人をツンデレとかいうんじゃねぇ!!そもそもツンデレっていうのは、好きな奴に対して最初ツンツンやがてデレデレ!!もしくは人前ではツンツンで隠れてデレデレってやつだろうが!!私はそんなんじゃねぇ!!」

 

「……当てはまってるじゃないか」

 

 その後も龍珠はガーッと怒りながら、昼休みは過ぎていくのであった。

 

 

 

 

 

「「あ」」

 

 放課後、生徒会室に向おうとしていた京佳は、廊下で早坂とバッタリ鉢合わせした。

 

「「……」」

 

 2人共、言葉を発せない。というかお互い、なんて話せばいいかわからない。あのクリスマスの事件以降、京佳はかぐや共々早坂の事も許したとは言え、どうしても未だにちょっと気まずく、顔を合わせづらい空気がある。やはりそう簡単に、以前にように話す事は出来ないのだ。

 

「失礼します…」

 

「あ、ああ…」

 

 この空気に耐え切れなくなったのか、早坂はそそくさとその場を後にする。

 

(これ、何とかしないといけないよなぁ…)

 

 去っていく早坂の背中を見ながら、京佳はどうするべきか悩む。早坂の事を絶対に許さないとかならまだしも、京佳は早坂の事も許す事にしたのだ。

 だから、何時までもこのままにしておく訳にはいかない。でもやはり、どうしても以前のように話す事が出来ない。どうにかして、また普通に話せるようになりたい。

 

(やっぱり、時間をかけていくしか無いのかな?)

 

 こういうのは、時間をかけていけば何とかなる事が多い。人間の怒りは、決して無限には続かないからだ。時間さえかければ、その怒りは消える事が殆ど。

 実際、昼にムカツク事があっても、夜にはその怒りが消えている事が普通だ。これは学生でも社会人でも変わらない。ならばやはりここは、時間をかけていくしかないだろう。今年の夏前には、また以前のようになれるかもしれない。

 

 それはそうと、京佳は少し気になる事があった。

 

(それにしても、さっきの早坂は随分暗い顔をしていたな…)

 

 先程の早坂が、やけに暗い表情をしていたのだ。何と言うか、全て諦めたような顔とでもいうのか、兎に角暗かった。

 

(何があったか話を聞くべきなんだろうが…うーん…)

 

 本来なら話を聞いた方がいいのだろうが、未だに顔を少し合わせづらいので、話を聞く事に躊躇がある。

 

(今は一端保留にしとこ)

 

 結果京佳は、この件を保留にする事にした。これは別に早坂を見捨てるとかではなく、あくまで今は気まずくどうすればいいか考えつかないので、一端保留にするだけである。

 でもちゃんと近いうちに、1度早坂と話してみよう。そうすれば、この気まずい微妙な関係を以前のように修復できるかもしれないし。

 

 

 

 

 

 生徒会室

 

「ふぅ、やっと終わった」

 

「お疲れ、白銀。はい、仕事終わりのコーヒーだよ」

 

「ありがとう、立花」

 

 生徒会室では、白銀と京佳の2人だけがいた。他のメンバーは、既に帰宅済みである。白銀は、自分が修学旅行に行っている間の仕事の割り振りや、溜まっている仕事を終わらせるべき働いていた。他のメンバーが手伝おうとしていたが、全て白銀にしか出来ない案件ばかりだったので、手伝える事が無かったのである。

 なので京佳以外のメンバーは、全員帰宅した。京佳だけは、手伝える事は無いけど少しでも白銀の傍にいたいと思ったのでこうして残っていた。そして生徒会室の備品のカップやポットを使って、コーヒーを淹れて白銀に渡す。

 

「うん、仕事終わりの1杯は美味いな」

 

 それを受け取り、白銀はコーヒーを飲む。コーヒー自体は藤原が1番美味しく淹れる事が出来るのだが、恋人である京佳から受け取る労いのコーヒーは、また格別なのだ。

 

「立花、少しいいか?」

 

「うん、いいよ。何?」

 

 コーヒーを飲んだ白銀は、そのまま京佳に話しかける。

 

「そのだな、修学旅行の事についてなんだが、どこかで少しだけ2人で過ごさないか?」

 

 白銀が話した内容は、まさに今京佳もしようとしていた話題だった。

 

「実はな、俺の班に田沼がいるんだが、2日目とかは班を抜け出して彼女の柏木と一緒に過ごすらしい。だからその、俺達もと思ったんだが…」

 

 どうも田沼は、普通に班から抜け出して彼女の柏木と過ごすらしい。多分、この事実を知ったら眞妃は泣くだろう。下手すると、眞妃と一緒に行動するかもしれないが。

 

「あ、勿論立花が嫌だったらいいんだが…」

 

「嫌な訳ないよ。こちらこそ、どうぞお願いします」

 

 当然、京佳がこの白銀の提案を断る訳ない。むしろ大歓迎だ。

 

「よかった。なら2日目に抜け出すとして、どうするべきか…田沼の奴は普通にしれっと班を抜けるつもりと言っていたが…」

 

「普通に一言言って抜け出すじゃダメなのか?」

 

「いや、実は今日の午前中に…」

 

 白銀の班は、風祭と豊崎と田沼。そして本日の午前中、風祭と豊崎に班でどう行動するか教室で話していた時にきつく言われたのだ。

 

『抜け駆けは絶対に許さん。もし1人で女子グループに入ったら、翌日村八分にしてやる』

 

『その通り。1人で勝手に動いたら、クラスの男子全員が敵になるって思ってくれ』

 

『あはは…』

 

 というか脅された。なのでもし京佳と2人きりになりたいなら、この2人を納得させるか騙さないといけない。そうしないと、後で大変な事になるからだ。

 

「ふむ、なら龍珠に協力を仰ごう」

 

「は?龍珠?何で?」

 

「実はな」

 

 ここで京佳、龍珠が自分達の事を思って協力してくれる事を話す。

 

「マジか。あの龍珠が」

 

「マジだよ。だからそうだな…私の班と白銀の班で一緒に行動し、その途中で2人で抜け出すというのはどうだ?それなら少なくとも、そっちの男子は文句言わないと思うが」

 

「成程。それならあいつらも納得してくれるかもな。しかし、龍珠が納得するか?」

 

「そこは大丈夫だと思う。龍珠が自分から協力するって言ったんだ。今更その言葉を無かった事にはしないだろう。他の2人も、凄い良い子だから問題無いと思うよ」

 

「そうか、ならその方向で行こう」

 

 こうして、2人の修学旅行での秘密デートが決まった。

 

「そう言えば、白銀は何処に行きたいんだ?」

 

「ああ、稲荷神社とか嵐山とかがいいなって思ってるんだが」

 

 そしてその後2人で、スマホを使ったりして京都の有名な観光地をどう見るかを考えるのであった。

 

 

 

 

 

 四宮家 別邸 かぐやの部屋

 

「最近やっと、メンタルが強くなった気がするわね」

 

「そうですか」

 

 別邸のかぐやの部屋では、かぐやがハーブティーを飲みながら一息ついていた。このハーブティーは、ここ最近のかぐやのお気に入りである。

 ハーブティーにはストレス軽減や、精神を安定させる効能があるのだ。なので最近のかぐやは、ずっとこればかり飲んでいる。

 更に寝る前にはヨガをして、寝る時の枕もより安眠できる物に変えて、朝はヨーグルトを必ず食べるようにし、登校中の車内の中ではリラックスできる音楽を聴くようにしている。

 

「それに、石上くんも子安先輩とデートをできるようになったし、何だか自分の事のように嬉しいわ」

 

 おまけに最近、石上は憧れの子安先輩とデートの約束を取り付けた。正真正銘、本物のデートである。そしてかぐやは、これにかなり関わっている。

 少し前まで、勉強も運動もあまりできなかった石上が、今では憧れの女性をデートに誘うまでに成長している。かぐやはこれがまるで、自分の事のように嬉しいのだ。そうした嬉しい気持ちがあったおかげで、かぐやのメンタルも少しだけ回復している。

 

「……そうですね」

 

「あなたまだあの事気にしてるの?」

 

「別にそうじゃありません」

 

 対して早坂は、不満そうな顔をしている。実は、石上が子安先輩とデートの約束を取り付けた時、石上はデートについてかぐやに相談したのだ。石上から相談を受けたかぐやは、自分1人では手に余ると判断し、家に帰った後に早坂にもデートについて話を聞いたのだが、この時早坂の考えたデートプランがかなり非現実的なプランだったのだ。

 行った事も無く、やった事も無い自分の妄想で作ったデートプラン。聞いていたかぐやも『何か悩みがあるの?だからこんな妄想してるの?』と本気で早坂を心配していた。

 

 これに早坂はブチ切れ。

 

『そっちが私好みのデートを言えって言ったんですよね!?なのにそれを妄想扱いって何ですか!?百歩譲ってこれが妄想でなんの問題があるんですか!?実際使えるデートプランを提供しているのですから、頭を垂れて感謝すべきでしょう!?』

 

『ご、ごめんなさい…』

 

 そのあまりの早坂の迫力に、かぐやは静かに謝った。そして翌日、そのデートプランを聞いた石上が、いつも藤原に言っているようにズバズバと口撃。やれキスに飢えているだの、歩く距離を考えていないだの、夢を詰め込みすぎて現実感がまるで無いだの。

 その石上の反応に昨日のようにキレた早坂は、生徒会室前の廊下からバレーボールを殺意を込めて思いっきり石上に当てて、石上を無理やり黙らせた。

 

『早坂。なんか石上くん、スカイ〇リーに行く事にしたみたいよ』

 

『は?』

 

 おまけに、最終的にこのデートプランは採用されず、石上はスカイ〇リーデートに行く事にしている。本当に無駄骨で腹の立つ話だ。

 

「それにしても、京都か。正直、新鮮な感じはしないわね」

 

「四宮家本家があるのが京都ですからね」

 

「でもまぁ、何だかんだで楽しみだわ。そもそも私、京都の有名な観光地なんて1度も行った事ないもの。メンタルの回復には旅行も有効な手段らしいし、この期に思いっきりリフレシュしましょう」

 

 そして話題は、修学旅行の話へ。かぐやは今回の修学旅行で、思いっきり羽を伸ばすつもりでいる。未だに白銀と京佳がイチャついているのを見ると吐血しそうになり、過呼吸気味にもある。最近は少しそういった症状が良くなったが、それでもまだ完全回復には遠い。なのでこの修学旅行を思いっきり楽しんで、メンタル回復に勤しむつもりでいる。

 

「早坂、貴方も今回は思いっきり羽を伸ばしなさい。行きたいところがれば、遠慮なく言ってね?私達、同じ班なんだし」

 

 かぐやは早坂にも、自分と同じようにリフレッシュさせようとしていた。自分の我儘で、早坂もあの事件に巻き込んでしまい、その結果早坂と京佳の関係に傷が入っている。

 京佳から許されたとはいえ、未だに顔を会わせるのは気まずいのが現状。だから早坂にも、この修学旅行で羽を伸ばさせてあげたいのだ。そうやってリフレッシュしないと、心が限界を迎えてしまうだろうから。

 

「ふふ、本当に楽しみ。とりあえず清水寺と稲荷神社は行きたいわね。後は渡月橋や嵐山。他はどこがいいかしら。あ、写真も沢山取らないと」

 

「……」

 

 だが、早坂にそのつもりは無い。

 

 何故なら彼女は、この修学旅行の終了と同時に、四宮本家からの命令でかぐやの従者としての仕事を解かれるからだ。

 

(石上くんや藤原さんもいるし、もう私がいなくても、かぐや様は大丈夫だよね…)

 

 出来ればもう少し、かぐやの傍にいてやりたかった。白銀にフラれた事で、かぐやの精神はかなりダメージを受けている。それこそ、吐血するくらいには。それがもう少し回復するまで、具体的に言うと今年の夏までは傍にいてあげたかった。

 でも、それはもう叶わない。なんせこの命令は、四宮本家からの命令。それに逆らう事なんて、早坂には出来ないからだ。

 

「かぐや様」

 

「何かしら?」

 

「大事な、本当に大事な話があります」

 

 この命令を遂行する為にも、先ずはかぐや本人にしっかりと言わないといけない。本当は言いたくなんて無いが、言わないといけない。

 

 

 

 

「今回の修学旅行を以て、私はこの別邸での仕事を解かれる事になりました。なので旅行終了と共に、かぐや様とはお別れとなります」

 

「………え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 修学旅行当日、多くの秀知院の生徒が駅に集合していた。しかしその中で、ひと際目立っている2人がいる。

 

「……何だあれ」

 

 京佳の視線の先には、もう絶対に離さないといわんばかりに早坂の腕に抱き着いているかぐやがいた。まるで恋人である。

 

「なぁ立花。あいつら、あんなに仲良かったか?」

 

「あー、どうだったかな…悪くは無い筈だけど…」

 

 龍珠の質問に、京佳は答えをはぐらかす。あの2人の関係は、秘密だからだ。口にする訳にはいかない。

 

(何か、あったのか?)

 

 京佳は2人を不思議そうに見ながら、新幹線に乗り込む。

 

 そして秀知院学生を乗せた新幹線は、一路京都へと向かうのだった。

 

 

 

 

 




 以下 京佳さんと同じ班になったオリキャラの軽い設定

 鍋島奈央
 バスケ部に入っている眼鏡っ子。丁寧で奥ゆかしい性格なので、男子人気も高い。あと数学がとても強く、それだけなら学年トップレベルの成績。でも古文とかがちょっと苦手。イメージは艦これの鳥海。

 甲斐由佳
 少しおっとりとした茶髪のショートカットの子。とても礼儀正しく、生徒はおろか教師からもすごく信頼されている。左目の色が少し濃く、オッドアイのようになっている。イメージは艦これの古鷹。




 いよいよかぐや様の山場のひとつである修学旅行編。以前言ったかもしれませんが、原作とはかなり違う展開にする予定です。読んだ時に矛盾などあれば、またその時によろしくお願いします。

 それでは、また次回。
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