もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・   作:ゾキラファス

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 朝日が昇るまでは日曜日。

 お久しぶりです。最近中々思うように書けず、やる気が出ない作者です。昔は毎週更新できていたんだけどね…。
 でもエタる事だけはしないので、これからも何卒よろしくお願いします。

 そんな訳で、修学旅行編の続きをどうぞ。連休中の楽しみになってくれたら幸いです。

 あ、今回はお風呂回です。


立花京佳と修学旅行(1-2)

 

 

 

 

 

 風呂。

 それは日本人とローマ人の遺伝子に刻まれた心と体を洗濯できる最高の娯楽。その歴史は古く、奈良時代には古代中国から日本に伝わり、江戸時代には現代のような形になった言われている。

 現代の日本人は、老いも若きも毎日風呂に入るのが当たり前。欧米では毎日シャワーを浴びない人も普通にいるが、日本は違う。例え仕事が忙しくても、旅行に出かけても風呂に入るものである。それだけ入浴というものが、日本人の遺伝子に刻み込まれている証拠だろう。

 

 そしてそれは、修学旅行に行っている秀知院の学生も例外ではない。

 

 現在秀知院の学生が宿泊しているホテルの浴場では、女子生徒が皆風呂に入っている。今女子風呂では、男子生徒なら1度は見てみたい桃源郷が広がっている。無論、本当に女子風呂を覗けばそれだけで犯罪になるので、誰も本気で覗こうと思っている男子はいない。

あくまで妄想するだけ。一部、髪が濡れた状態の女子を見てみたいので風呂場前の廊下に陣取っている男子が数人いるが、これならそこまで問題は無いだろう。

 

 そして京佳は、浴場でバスチェアに座って髪と体を洗っている最中であった。

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……なぁ龍珠」

 

「んだよ」

 

「そうじっと見られると恥ずかしいんだが…」

 

「別にいいだろ。女同士なんだし」

 

「ええ…」

 

 その隣で、隣で同じように体を洗っていた龍珠がずっと見てきているが。

 

「体綺麗…」

 

「胸大きい…腰細い…」

 

「やっぱ立花さん凄いよね。脱ぐと猶更」

 

「だよねぇ。一回でいいからヌードデッサンのモデルしてくれないかな?」

 

 いや、龍珠だけではない。周りにいる同級生も、同じような視線を向けてどこか熱っぽい視線をしていた。

 

 京佳は高身長で胸が大きいかなりのモデル体型だ。そんな京佳が風呂に入っている。当然、普段は見る事の無い部分が見えている。その結果、同じ女子が見ていても、どこかいけない気分になるかけてしまうのだ。

 

「あまりジロジロ見られたりしたく無いんだがなぁ…」

 

「あっちよりマシだろ」

 

「まぁ、それは」

 

 しかし、そういった視線は何も京佳だけじゃない。むしろ京佳よりずっと多くの視線を集めている子が1人いる。

 

「はぁ…はぁ…うっ!…う、美しすぎますわ…!」

 

「流石かぐや様。水も滴る天女とはまさにこのこと!!はぁはぁ…!!あ、鼻血が…」

 

「ああ!ここにカメラがあればあのお美しいお姿を収める事が出来るのに!!」

 

「ちょっと!それは不敬ですわ!!神罰が下りますわ!!」

 

「そうです!というかそもそもそんな真似、私が絶対に許しませんから!!」

 

「あのお姿は脳に記憶させるからこを価値があるんです!!写真に残すなんて真似してはダメです!!」

 

「か、かぐやしゃまの…ピッ!?

 

「エリカァ!!それ以上はダメですわ!!R指定を食らってしまいますわ!!」

 

 そう、かぐやだ。秀知院2年で最も尊くて高嶺の花を体現しているかぐや。当然、ファンもかなり多い。そんなかぐやの裸体が、合法的に拝めるのだ。こんなに嬉しい事無い。

 

「…何人か発言が危ない子いないか?」

 

「ほっとけ。言葉にするだけなら無害だろ」

 

 龍珠はそう言うが、あれは流石にかぐやが可哀そうである。いくら同性としても、あまり良い気分はしない。なんせ裸だ。普段他人に見せる事なんて先ず無い裸である。それを見られた上であのような事を言われるのは、誰だっていやだろう。かぐやだってその筈だ。そう思い京佳は、1度かぐやの顔を見てみる。

 

「「……」」

 

「ん?」

 

 しかし、当のかぐやはそんな事など全く気にしていない様子。それどころか、どこか心ここにあらずといった顔だ。とてもじゃないが、修学旅行を楽しんでいる顔には見えない。

 

(何だ…?)

 

 かぐやの直ぐ隣には早坂もいるのだが、その早坂も似た様な顔をしている。正直、心配だ。

 

(新幹線の中でもあんな感じだったが、やはり何かあったのか?)

 

 京都に向っている最中の新幹線でも、2人は暗い表情をしていた。早坂に至っては、修学旅行前からそんな顔をしている。まず間違いなく何かあったのだろうが、原因がわからない。

 出来れば1度話をしてみたいが、流石のこれだけ人目があるここでは話しかけられない。もしかすると、とってもデリケートな話になるかもしれないからだ。そんな話を、こんな場所でする訳にはいかない。話すのなら、最低でも風呂を終えてからだろう。

 

(…よし、後で話しかけてみるか)

 

 未だに少しギクシャクしているので少し話しかけずらいが、風呂から出たら京佳は1度2人に話しかけようと決める。新幹線で龍珠にも言われたが、このままズルズルと話しかけないでいると、本当にもう2度と以前のような関係には戻れないかもしれない。何より、心配なのだ。

 そうならない為にも、1度話しかけよう。本当だったら修学旅行が終わってから話そうと思っていたが、その予定を少し前倒しにする。もしかするとそもそも話をさせてくれないかもしれないが、そうなったらそうなったら何度も話しかけてみるだけだ。

 

(ま、今はしっかりとお風呂に入っておくか)

 

 けど先ずはちゃんと体を汚れを落として、湯船につかって温まり疲れを取るとしよう。

 

「今更だけどお前、風呂入っている時くらい眼帯外せよな」

 

「いや、普段はちゃんと外してるよ?」

 

 そんな事を思いながら体を洗っている時、再び龍珠が話しかけてくる。実は京佳、今も普段左目にしている眼帯を装着したままなのだ。無論京佳も、普段自宅で風呂に入る時は外している。

 

「ただ、皆にこの下を見られたくないんだ」

 

 しかし今は、自分以外に大勢の同級生がいる。こんな場所で、自分の左目の火傷跡を見せたくない。見ても良い気分になんてなれないし、何より京佳も他人に見せたいなんて思っていないから。

 

「そうかい」

 

 それを瞬時に察したのか、龍珠はそれ以上何も言わない。そして直ぐに話題を変える事にした。

 

「にしても、本当にでけぇな。今いくつあるんだ?」

 

「言わないよ。というか龍珠、なんかセクハラ親父みたいだぞ…」

 

「うるせ。女でも興味は持つだろうが」

 

「それはそうかもだけど…」

 

 でも内容がかなりアレな方向だったので、京佳は恥ずかしそうに両手で胸を隠す。別に猥談に態勢が無い訳じゃなくて、こんな大勢がいる場所で、それも裸を見られながらするのが嫌なのだ。そういった話は、部屋に戻ってからにして欲しい。

 

「でもちょっと羨ましい。少しでいいから分けてくれ」

 

「言っておくが、大きくても良い事の方が少ないぞ?重くて肩は凝るし、服はどうしても太っている様に見えるし、夏は汗で蒸れて痒くなるし…」

 

「でも男は悦ばせる事ができるだろう?」

 

「いや、それは、その…」

 

 そしてその後も、風呂場での龍珠によるセクハラ染みたトークが続くのであった。

 

 

 

 

 

「ふふふ、この時を待っていた!」

 

「ああ、正直修学旅行で1番の目玉と言ってもいいよな!」

 

「そこまでか?」

 

 女子風呂の直ぐ近くにある廊下。そこに設置されている椅子に、白銀班の風祭と豊崎が楽しそうな顔をしながら座っていた。そしてその隣には、白銀が腕を組んで壁に背を図けている。

 

「あれ?こんなところで何してるの3人共?」

 

 そこにやってきたのは、同じく白銀班である田沼。昼間はいつの間にか白銀班を抜け出して彼女と合流しており、班行動をしていなかった裏切り者だ。

 

「いや、ここで修学旅行1番の目玉イベントをしようと思っていてな」

 

「目玉イベント?」

 

 風祭の言葉を聞いた田沼は考える。ここは女湯に近い廊下。女湯に入った女子は、必ずこの廊下を通らないといけない。そんな場所で男3人が待機している。

 

「あ!もしかして女湯でも覗きに行くの?それとも既にカメラを仕込んだドローンとかで撮影している最中とか?」

 

 以上の状況から田沼は、そう結論を出した。彼らは全員思春期の男子高校生。そして今日は修学旅行で、今女子は風呂の時間。普通に考えたら、漫画やアニメでよくある女湯覗きをする事が考えられる。

 

「馬鹿言うな。流石にそんな事しねぇって」

 

「そうだぞ。俺達だってモラルはある」

 

 しかし流石に、そんな馬鹿な真似はしない。確かに欲を言うとこの目で覗いてみたいが、それは普通に犯罪だ。

 彼らは思春期の男子高校生ではあるが、同時に名門と言われている秀知院学園の学生でもある。いくらそんな事を思っても、実際に行うような犯罪はしない。むしろ逆にそんな馬鹿な真似をしようとしている奴がいたら、全力で止めるタイプなのだ。

 

「だが、ここでは裸体よりよっぽどエロいものを見る事が出来る」

 

「それも合法的にね」

 

「え?そんなものが?」

 

 裸体よりエロい。その言葉を聞いて、田沼も食いつく。いくら彼女持ちとはいえ、彼もそういうものに未だ興味は尽きないのだ。

 

「教えて!」

 

「よし。その純粋な目に免じて、昼間の事は許してやろう」

 

 本当は裏切り者である田沼に教える義理は無いのだが、ここは一旦許すことにした。そして風祭と豊崎は田沼に話す。

 

「このホテルには、俺達以外にも普通に一般客も宿泊している。そういう一般客に配慮して、学校側は俺達学生の入浴時間を17~19時の間に必ず終わらせるように言っていた」

 

「1班およそ30分くらいしか時間に余裕が無い。つまり家みたいに、ゆっくり入浴する時間は無いんだ。そしてその結果何が起こるかというか、ドライヤーが混む」

 

「ドライヤー?」

 

「そう。浴室に備え付けられているドライヤーは数が少ない。だからホテルの寝泊まりする個室にあるドライヤーを女子は使うようになる」

 

「浴室のドライヤーを仮に使えたとしても、周りに人がいるせいでどうしても急いでしまうから完全に乾かす事は先ず不可能。つまり、髪を乾かしきれていない子が大量発生する」

 

「えっと、それが?」

 

「わからん奴だな」

 

「察しが悪いね」

 

 2人が懇切丁寧に説明をしたが、田沼はピンとこない。そんな彼に痺れを切らして、2人は声を大にして言った。

 

「「濡れ髪はエロい!!見えるものなら是非見たい!!」」

 

 「え、え~~?」

 

 濡れ髪。

 それは読んで字のごとく、髪が濡れた状態の事。一見何時でも見れる状態だろうと思うかもしれないが、普通の生活で髪が濡れた状態を見る機会は、実は相当に少ない。お風呂やプールに行っても、普通はその後しっかりを髪を乾かすからだ。

 だから濡れ髪を見れる機会というのは、プライベートな空間でのみ。それこそ、家族や彼氏くらいしか見れないのだ。風呂上がりの上気した頬に濡れた髪。この非日常感がとてもたまらないのである。

 

「いやでも、濡れた髪ならプールでも見れるじゃん」

 

「そうなったら先ず水着がエロいってなるだろ」

 

「論点がズレてるよ」

 

(わかる。立花の黒いビキニ姿はマジでエロかった…)

 

 田沼はそう言うが、それを風祭と豊崎は否定する。そして白銀は、以前市民プールで見た京佳の水着姿を思い出す。

 

「だったら雨に濡れた時とか」

 

「もっとエロくしてどうすんだお前」

 

「正直それ大好物だぞ」

 

(わかる。あの日全身濡れた立花は超エロかった…)

 

 今度は雨の日の事を言うが、それはまた別のエロさになる。そして白銀は、以前京佳と共に全身ずぶ濡れになった時の事を思い出す。

 

 尚、その後のホテルでの出来事は今思い出すと大変な事になりそうだったので、必死で思い出さないようにしている。

 

「う、うーん、ちょっとよくわからないなぁ…会長は?」

 

「わかるっちゃわかる。でも、こいつら程熱意は別に無いって感じだ」

 

「けっ!彼女持ちとモテ男が!」

 

「どーせ僕らの気持ちなんてわからないだろ」

 

 余裕そうな2人に悪態をつく風祭と豊崎。方や可愛い彼女持ち、方や超モテる(実際はそこまでじゃない)生徒会長。それに対して自分達は彼女もいないしモテた事も無い普通の男子高校生。なんか不公平だ。悪態のひつとも言いたくなる。

 こうなったら絶対に、これから沢山来るであろう濡れ髪女子達を見て、素敵な気分に浸ってやろうと決める2人。

 

(まぁ、実際は立花の風呂上り姿を見たいからってだけで、他の女子にはそこまで興味が無いんだけどな…)

 

 一方白銀。彼は風祭と豊崎のように女子の濡れ髪に興味を持っているが、それは京佳に対してだけである。恋人になったが、白銀は未だに風呂上りの京佳の姿は見ていない。

 いや、正確には見た事があるのだが、あの時はもうそれ以上に色んなものを見たり体験したりしていたので、正直濡れ髪どころじゃなかった。

 なので今1度、この期に京佳の濡れ髪をちゃんと見ておきたい。故に白銀は、ここにいる。

 

(しかし、なんで髪が濡れた女子は良いって思うんだろうか?中学の時はそんな風に思った事1度も無かったのに。何か理由があるのか?)

 

 きっかけは例の血溜沼での1件なのだが、その事を白銀は思い出せないでいた。

 

「ま、百聞は一見に如かずだ。ほれ」

 

「え?」

 

 風祭はそう言いながら、丁度風呂から出ていたであろう女子を指さす。

 

「あ、眞妃ちゃん」

 

「翼くん」

 

 やってきたのは四条眞妃。昼間な制服姿だったが、今はジャージ姿で普段結っている髪を下ろしている。

 

 そしてやはり、髪がしっとりと濡れていた。

 

「成程成程。あれが本来彼氏にしかみせない姿か…」

 

「いいね。普段ツインテを解いているところもいい…」

 

「え?な、何…?」

 

 ニヤニヤと小声で話す風祭と豊崎に、眞妃は少しビビって後退り。

 

「眞妃ちゃん待ってよぉ」

 

「あ、渚」

 

 そこに現れる田沼の彼女の柏木渚。やはり彼女も眞妃と同じく、髪が濡れている。瞬間、彼女のいない男2人の視線が鋭くなった。

 

「そうか、田沼はあのエロい姿を何度も拝んでいる可能性がるのか…」

 

「ふふ、羨ましい…憎しみで人が殺せたらどれだけいいか…」

 

 同時に、田沼へのヘイトが凄く高くなった。田沼と渚は恋人同士。ならば既に渚の濡れ髪姿、もっと言えば風呂上りの姿を見た事はあるだろう。恋人同士が風呂上り。それはつまり、そういう事があったかこれからするかの

どっちかでしかない。

 未だに恋人のいない自分達と違い、何度もこの姿を拝んで、それ以上の姿も見ているかもしれない。そう思うと、殺意が沸いて仕方が無い。要はリア充死ねである。

 

「2人共、今すぐここから離れよう。ここは危険だ」

 

「え?危険って?」

 

「兎に角危険なんだ。だから行こう。ほら、眞妃ちゃんも」

 

「え、うん。いいけど」

 

 そんな2人に対して、田沼は冷静に行動。これ以上自分の彼女と、大事な友達の風呂上りの姿をあの2人に見せたくない。後なんか自分に対しても左内みたいなものが向っているし。よって田沼は2人を連れてその場から立ち去った。

 

「何してんだ皆?」

 

 すると田沼と入れ替わるように、柔道部の小島がやってきた。手にはタオル持っており、髪が濡れている。恐らく、女子と同じように風呂上りだろう。

 

「これも、一種の濡れ髪なのか?」

 

「まぁ、そうなるんじゃないか?」

 

「いや男子の濡れ髪って需要ないだろ。え?無いよな?」

 

 確かに小島も濡れ髪だ。しかし、男には需要の無い濡れ髪である。もしここにいる3人が全員女子であれば、また違った感想が出るかもしれないが。

 

「え?マジで何なの?」

 

「いや何でもない。ところで小島、男子風呂ってまだ人いるのか?」

 

「かなりいるぞ。素潜り大会とか筋肉の見せあいとかしてて結構盛り上がってるからな」

 

「何してんだ一体…」

 

 どうやら男湯は、かなり愉快な状態にあるらしい。因みに小島はあえて口にしなかったが、現在男湯では男の象徴の大きさ比べもしている。これが想像以上に盛り上がっており、結果男子は長風呂になっているのだ。

 

「後で注意しないとな…」

 

「そうしとけ。お前の言葉なら、皆大人しくなるだろうしな」

 

 このまま大騒動になって、ホテルに迷惑をかけたら大変だ。なのでここは、後で自分が風呂に入る時に、しっかりと秀知院学園生徒会長として厳重に注意をしなくては。

 

「でさ、3人共結局何してんの?」

 

「おお!実はだな!」

 

 風祭は、小島に説明をする。

 

「……」

 

 その説明を聞いた小島は、暫く何か考えるようなしぐさをした。

 

「どうした?」

 

「なぁ白銀。女子ってまだ風呂に入っているよな?」

 

「ああ。どれだけいるかはわからんが、まだ結構入ってる筈だぞ」

 

「これ別に違法な事はしてないよな?」

 

「まぁ、違法ではないな。あまり褒められた行動ではないけど」

 

「…そうか」

 

 小島、再び考える。

 

「これ、俺も一緒に見てもいいか?」

 

「え?」

 

「別にいいぞ!むしろ仲間が増えるのは歓迎だ!」

 

「ふふ、小島って結構堅物なイメージあったけど、やっぱり男だね」

 

 そして突然、白銀達と一緒に濡れ髪をみると言い出した。普段こういった話題に全く参加しない堅物の小島が参加することに、白銀は結構驚く。反対に、風祭と豊崎は盛り上がっていた。

 

「どういう風の吹き回しだ?」

 

「別にいいだろ白銀。俺だって、そういうのに興味くらい持つ。だって俺ら、男子高校生だぞ?」

 

「それは、まぁ…」

 

 気にはなるがそう言われてしまうと、もう何も言い返せない。そして4人は、そのまま新しい濡れ髪女子を待つことにした。

 

「お、マスメディアコンビ」

 

 新たにやってきたのは、マスメディア部の巨瀬エリカと紀かれん。しかし、様子がおかしい。何故かエリカがかれんに肩を貸されている。おまけに鼻にはティッシュが詰められていた。

 

「巨瀬さんどかしたの?大丈夫?」

 

「え、えっとその、ちょっと湯あたりしたみたいで…」

 

「か、かぐやしゃま…かぐやしゃまの…」

 

「エリカぁ!それ以上は絶対にいけませんわ!!そもそも今殿方の前ですわよ!!もし口にしたらマジで1回引っぱたきますわよ!!」

 

 エリカが何かを言う前に、かれんがエリカと共にその場を立ち去る。

 

「今、巨瀬は何を言おうとしたんだ?」

 

「さぁ?多分四宮さんの事とは思うけど」

 

 一体かぐやの何でああなったのか、一同は頭を悩ませる。でも考えても多分答えが出ないので、話題を変える事にした。

 

「にしても改めて思うが、うちの学校って女子のレベル高いよな」

 

「そうだね。それは本当に同意するよ」

 

 新しい話題は、秀知院学園の女子のレベルの高さだ。揃いも揃って、全員顔面偏差値がかなり高い。今濡れ髪を見た四条、柏木、巨瀬、紀。他にも四宮、藤原、立花、早坂、龍珠。2年生以外だと子安や不知火等々。全員、文句無しに美少女と言える子ばかりである。

 

「そういう意味でも、俺は秀知院に入ってよかったって思うよ。女子が可愛いと、それだけで日常が輝いている気がするしさ」

 

「わかるー。女の子が可愛いのは良い事だからね」

 

「まぁ、そこはわかるな」

 

「だな。目の保養になるし」

 

 実際、同級生が可愛いと本当に良いものだ。人間は、美しいものを見ると幸せになる。それは例えば絵画だったり、風景だったり、自然現象だったり、数式だったり、可愛い女の子だったりだ。そういったものを見ると幸せになって、心が満たされるのだ。

 そしてそれが異性の女の子だった場合、それはより一層幸せになれる。やはり彼らも男子高校生。女子がいなければ、こういった話のひとつやふたつするものだ。

 

「胸が大きい子も多いよな」

 

「だね。体育の時とか揺れたりする子いるし」

 

 すると話題は、自然とそういった方向へといってしまう。そしてその話題になった瞬間、白銀の目がスンと細くなる。だってこういった話題になると、必ずと言っていいほど話のネタにされる女子にとても心当たりがあるから。

 

「特にデカイって思えるのは、やっぱり立花とかだよな」

 

「わかるー。体育祭の仮装障害物レースの時のメイド服姿とか凄かったもん。特に胸とか」

 

「それなー。マジで1回くらい触りた」

 

「おい」

 

 2人がそのまま京佳の事で猥談を始めようとするが、その前に白銀の冷たい声が聞こえた。

 

「濡れ髪までは許容する。だが、それ以上は流石に許容しないぞ」

 

 そして怒りの籠った冷めた目で、2人を睨む。

 

「お、おう。すまん白銀。ちょっと調子に乗ってたわ…」

 

「えっと、ごめん…」

 

「……いや、こっちもすまん」

 

 その白銀のビビり、風祭と豊崎はそういった話題を直ぐにやめる。今の白銀を、本気で怖いと思ったからだ。

 

「俺、もう行くわ。お前らもほどほどにしとけよ」

 

「ああ。わかった」

 

 白銀はそう言うと、その場から離れる今のままここにいると、怒りで言ってはいけない事も言いそうだから。

 

「「あ」」

 

 そして角を曲がった瞬間、京佳とばったり鉢合わせした。

 

 やはり京佳も風呂上りなので、髪が濡れている。顔はほんのり赤く、全体から少し湯気が出ていた。

 

(これは、確かに凄く良いな…)

 

 改めて見るが、濡れ髪状態の京佳は凄く良い。普段見る事の出来ない超レアな姿。良い。とても良い。これは確かに良い。

 

「どうかしたのか、白銀」

 

「……髪が濡れたままだと風邪ひくぞ。まだ時間あるし、ドライヤーでしっかりと乾かしてから出てこい」

 

 それと同時に、この姿を自分以外には見せたくないという気持ちが沸いてきた。絶対に嫌だ。この姿を、他の男子になんて見せてやるものか。これを見て良いのは、自分だけだ。他の誰でもない。恋人である自分だけだ。

 

「えっと、部屋にもドライヤーはあるんだが」

 

「いいから!ちゃんと乾かしてくるんだ!!」

 

「あ、うん。わかったよ」

 

 その白銀の剣幕に負け、京佳は再び風呂に戻る。

 

(心配、してくれたのかな?)

 

 京佳は白銀が自分の体の事を心配してくれたと思い、嬉しくなった。

 

(俺、こんなに独占欲あったんだな…)

 

 そして白銀は、自分が思っている以上に独占欲が強い事を知り、ちょっとだけ自己嫌悪に陥った。独占欲が強すぎると、彼女から嫌がられてしまう。何をするにも、束縛しかねないからだ。でも仕方ないだろう。だって今の京佳は、本当にすっごく良かったのだから。あれには独占欲を発揮しても、仕方が無い。

 

「はぁ…風呂入るか…」

 

 白銀は1度風呂に入って、スッキリする事にした。風呂に入れば、多少はこの嫌な気持ちも晴れるだろうし。

 

 そして白銀は、着替えを取りに1度部屋に戻るのであった。

 

 

 

「白銀って、やっぱり真面目だな」

 

「だね。まぁ今のは明らかに僕達が悪かったけど」

 

「廊下でする話じゃねーわな」

 

 白銀が去った後、2人は先ほどの事を反省していた。同級生女子に対して、そういう事を思うまでなら良いが、

それをこんな往来の場で話すのは確かにダメだ。やるなら自宅とかでであろう。

 

「んじゃまぁ、俺達は濡れ髪観察を続けるか」

 

「だね。続けよう、濡れ髪観察を」

 

「おう」

 

 そして卑猥な話題はせず、濡れ髪だけを見て楽しむ事にした。

 

「ちょっと長風呂しちゃったわね」

 

「ですね」

 

 続いて現れたのは、かぐやと早坂の2人だ。2人共、例に漏れずしっかりと髪が濡れている。同級生でも頭ひとつ抜けている美少女である2人の濡れ髪姿に普通は釘付けになる筈なのだが、それ以上に気になる子がいた。

 

「ごきゅごきゅ…ぷっはー!やっぱりお風呂上りはキンキンに冷えたオロオロナミンZですねぇ」

 

「藤原さん、歩きながら飲むのはやめた方がいいですよ?」

 

「書記ちゃん、その言動はもう色々アウトだよ?」

 

 藤原である。彼女も濡れ髪姿の筈なのだが、頭にはタオルを巻いており、手には冷えた炭酸栄養ドリンクを持って飲んでいる。

 

(((うちのオカンみたいな子いる…)))

 

 その姿に、一切の色気は無い。だってどう見ても風呂上りの母親だ。あと少しだけ、父親も入っている。藤原も同級生の中では相当な美少女に入るし、スタイルも抜群。性格も明るいおかげで、ファンの子も相当に多い。

 だが今は、全くそんな面影が無い。本当に同一人物なのか怪しいくらいだ。そしてそのあまりの姿の衝撃のせいで、かぐやと早坂の濡れ髪姿が前々頭に入って来ない。

 

「今のは、見なかったことにしとこう」

 

「うん。その方がいいね」

 

「そうだな」

 

 3人は、藤原の残念な部分を忘れる事にした。その方が、藤原も幸せだろう。

 

 その後も3人は、様々な女子の濡れ髪を拝んだ。中には既に髪を乾かしている子も何人かいたが、それでも殆どが濡れ髪状態。正直、少し興奮する。

 

「すんげー眼福」

 

「修学旅行、来てよかった…」

 

「そこまでか?いやまぁ、確かになんか良いけどさ…」

 

 風祭と豊崎の2人は、とても幸せそうにしていた。というか少し泣いていた。ちょっとキモイ。

 

「でもお前ら、いつまでここにいるんだ?いい加減風呂に入らないといけないだろう?」

 

 しかしそろそろ、いい時間だ。これ以上この場にとどまって濡れ髪観察をしていると、

風呂に入る時間が無くなる。もう切り上げないと、学年主任に怒られかねない。

 

「そうだな。じゃ、あと1人見たら風呂行くか」

 

「うん、次の最後の1人にしとこう」

 

 そこで2人は、次の子を見たら風呂に入る事にした。最期には一体だれが来るのかと身構える3人。まるで宝くじの当選番号を聞いているみたいで、ちょっとワクワクする。

 

「あ?」

 

((げっ))

 

 しかし最後に現れたのは、普段被っている帽子を脱いでいる風呂上りの龍珠であった。彼女も濡れ髪なのでまぁまぁ色気があるのだが、それより恐怖が勝ってしまう。龍珠は不機嫌そうに3人を見て、ガンを飛ばす。

 

「んだよてめぇーら」

 

「あ、別に何でもないです」

 

「マジすんません」

 

「……」

 

 即座に謝る風祭と豊崎。しかし、小島だけは無言だ。

 

「たく意味わかんねぇ。おい小島。お前は何じっと見てんだ、ぶっ殺すぞ」

 

 そんな小島に、龍珠はいつものように喧嘩腰で暴言を吐く。

 

「エッロ…」

 

「「え?」」

 

「……は?」

 

 しかし小島、龍珠と違い反論せずにとんでもない事を言い出した。

 

「え、は?いや何お前…キモ…」

 

 龍珠、両手で自分の肩を抱いて後退り。更に顔を青くして、そのまま足早にそこから立ち去ってしまう。

 

「なぁ、風祭、豊崎」

 

「な、なんだ?」

 

「何?」

 

 龍珠が立ち去った後、小島は2人に話かける。

 

「お前らが言っていたこと、今本当の意味で理解できた」

 

「「はい?」」

 

「なんつーかさ、濡れ髪のあのエロさ。あれはヤバイ。普段も龍珠は可愛かったけど、今のは普段の数十倍は可愛い。もう無理。耐え切れない。俺恋に落ちそう。いやもうとっくに落ちてたわ、ははは。普段濡れた髪を晒すなんて真似家族以外にはしないからその価値がぐーんと上がって今凄い事になってる。濡れ髪ってやべーなおい。そもそも濡れた髪を人前にさらすなんて、物語に出てくる湖の女神くらいしかいねーし。待てよつまり、龍珠は女神だった?いやありえるな。だってあいつ可愛いし、今だってすっげー色気あったもん。うん、そうだ。そうに違いない。龍珠は女神だったんだ。そしてそんな龍珠に惹かれた俺は、例えるなら湖の騎士ってところか?いやあの騎士って育てられたってだけで惹かれた訳じゃないっけ?ま、いいや。だったら俺は龍珠を死ぬ気で守れる騎士になろう。いや、ここは日本だからどっちかって言うと武士とか侍か。よしそうだ、そうしよう。まぁつまり何が言いたいかっていうと龍珠はエロいし最高。さぁお前も龍珠最高と言いなさい」

 

 そしてすんごい早口でなんかやべぇ事を言い出した。

 

((いや気持ちわるっ…!?))

 

 小島の言葉を聞いた風祭と豊崎は、ドン引きしていた。自分達も女子の風呂上りの濡れ髪姿を見てエロいと思っているが、流石にここまでは思っていない。

 更に、普段こういった話題は口にしない小島から出た事によるギャップがより気持ち悪さに拍車をかける。真面目な人間ほど実はむっつりなんて言葉があるが、これはちょっと度が過ぎている。普通にキモイ。

 

(いや待てよ。ひょっとして、俺らもこんな風に見えているのか?)

 

(あれ?もしかしなくても、僕達も女子からはこんな感じに見えてる?)

 

 そして風祭と豊崎は、冷静になって自分達がしていた事を客観的に見てみる。廊下にある椅子に座って、風呂上りの髪が濡れた女子を何人も見てきた。見ている時は凄く眼福で幸せだったが、今思うと普通に気持ち悪い事をしている気がしてならない。

 

「なぁ、豊崎。風呂行かね?」

 

「うん、行こっか」

 

 結果、2人はもう濡れ髪観察はやめて風呂に入る事にした。そもそも次の1人で終わる予定にしていたし、こんな事をしていて女子に気持ち悪がられ絶対に彼女なんて出来ないからだ。

 

「あーダメだ。マジでエロい。あんなエロい物みたの初めてかもしれない」

 

 そして2人は、未だに廊下で気持ち悪い事を言っている小島を置いて、風呂に入る事にしたのだった。

 

 

 

 

 




 因みに風呂に入った会長は、例の大きさ比べに強制参加させられました。結果は、想像にお任せします。

 本当はもう少し書く予定だったんだけど、ちょっと疲れちゃって…その辺は次回に持ち越します。

 そして次回からは普通にシリアスになると思う。やだなぁ、書きたくないなぁ… でも書かないとお話進まないんだよなぁ。
 がんばろ。

 それでは、また次回。
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