もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・   作:ゾキラファス

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 朝日が昇るまでは日曜日。

 ところでなんかかぐや様、某カップ麺とのコラボムービー出してましたね。


立花京佳と修学旅行(1-3)

 

 

 

 

 

「あーーー…」

 

 現在白銀は、学校指定のジャージを着用した状態で、宿泊しているホテルに備えつけられていたマッサージチェアを使っていた。特に肩と背中を重点的に、マッサージをしている。日頃数多くのバイトしている白銀は、10代とは思えないくらい身体が疲れ切っているのである。風呂では皆を注意するばかりであまり疲れが取れなかった。

 故に、このようにマッサージチェアで疲れを癒している。その姿、まるで仕事に疲れたサラリーマンそのもの。しかし彼の頭の中は、全然そんな事は無い。

 

(明日はいよいよ、立花と2人きりで回れるのか…)

 

 明日の修学旅行2日目、白銀は班を抜け出して京佳と2人きりで京都を観て回る。これが楽しみで仕方が無い。今すぐ明日になって欲しいくらいだ。

 

(そうだな…やはり行くなら八坂神社だろうか?スマホで調べた感じ、恋人が行くならそこが定番らしいし。後は伏見稲荷大社もいいし、映画村で立花と仮装して写真撮影するのもいいかもしれないな)

 

 白銀の頭は、明日の事でいっぱいである。なんせ高校の修学旅行は、人生で1回しかない。それを恋人とすごせるのだ。それはそれは、楽しい思い出になるだろう。

 そしていつか歳を取った時、2人で再び京都に旅行に来て、当時の事を懐かしみながら過ごしたい。白銀は、そういうのが大好きなのだ。

 

(すまん風祭に豊崎。でも俺も、田沼みたいに彼女と修学旅行を楽しみたいんだ…)

 

 2人に悪いと思いつつも、白銀は明日は絶対に班を抜け出す気でいる。龍珠も協力してくれるみたいだし、抜け出すのは成功するだろう。このチャンスを逃す訳にはいかない。明日は絶対に、京佳と2人で修学旅行を楽しむ。

 

(よし、いくつか生徒会長としての仕事があるが、今日は早めに寝て明日に備えよう)

 

 部屋では皆がトランプとかで遊んでいるだろうが、今日は遊ばずに早く寝る。多少仕事があるが、あれくらいなら直ぐに終わる。それが終わったら、さっさと寝よう。仮に同室の子から、修学旅行の定番である『好きな子トーク』を振られても、絶対に答えずに寝てやる。

 

(早く明日にならないかな…)

 

 白銀はマッサージチェアを使用したまま、まるで遊園地や遠足が楽しみな子供の様な表情をして、素敵になるであろう明日に心を躍らせるのであった。

 

 

 

 

 

(いよいよ明日は、白銀と2人で京都観光か…)

 

 一方その頃、京佳も白銀同様に明日が楽しみで仕方が無い状態にいた。

 

「にしてもびっくりしたよね。あんな話聞いちゃって。あ、キノコでショートカットできるねこれ」

 

「そうだねぇ。まぁ、世の中には色んな人がいるって事だよ。よし、甲羅取れた」

 

「……まぁ、だとしてもあれは重すぎたけどな。うっし、バナナでガードと」

 

「だな。そうそう聞く事の無い話だったよ。やった、スターだ」

 

 部屋で班の皆と龍珠が隠し持ってきたスニッチ2のレースゲームで遊びながら今日の事を話しているが、その表情はちょっだけ上の空。なんせ遂に明日、恋人である白銀と2人きりで旅行が楽しめるのだ。これが楽しみじゃない子なんて、絶対にいない。

 今日は今日で勿論楽しかったのだが、やはり恋人と2人きりというのは別格だろう。同じ班の奈央と由香にはちょっと申し訳ないが、これは譲れない。ていうか譲らない。

 

(ふふ、楽しみだなぁ…)

 

 明日は白銀とどこを観て周るか考えるだけで、楽しくて仕方が無い。楽しみすぎて、今日寝れるか怪しいくらいだ。でも寝不足だと心から楽しめる事は出来ないので、何としてでもちゃんと寝よう。

 

 でもそれはそれとして、今は少し気になる事がある。

 

「ところで龍珠、何かあったか?」

 

 それは、部屋の戻ってから龍珠の顔色が少しだけ悪い事だ。別に気分が悪そうなくらい真っ青とかそんなんじゃないが、どこか顔色が悪い。例えるなら、ホラー映画を見終えた後みたいな感じだ。

 

「あー…ちょっとすげーキモイものを見てな…」

 

「キモイもの?虫でも出たか?」

 

「いや、ある意味虫よりずっとキモイものだな…あーくそ、まだ鳥肌立ってやがる…今夜は悪夢見そうだわ」

 

 どうやら風呂を終えた後に、何か気持ち悪い物をみたらしい。それは確かに、良い顔はしないだろう。虫が大丈夫な京佳だって、もし数百匹のゴキブリを見たら、普通に気持ち悪がるし。

 

「やった!私が1位!」

 

「あー、最後のサンダー間に合わなかったかー」

 

 画面では、奈央がレースで1位を取っていた。因みに由香が2位で、京佳は3位。そして龍珠が4位である。もし龍珠の体調が万全だったら、誰も寄せ着けない圧倒的1位を取っていただろうが、今の龍珠はかなり不調なので、本領発揮が出来ていない。その結果が、4位である。彼女が、おのれ小島と思ったのは内緒だ。

 

「すまない、ちょっと飲み物を買ってくる。何か欲しいのあるか?」

 

「いや、私はいい」

 

「私も大丈夫だよ」

 

「私もー」

 

 ここで1度休憩をする為にも、京佳は飲み物を買ってくる事にした。そして部屋を出て、階段を下りて自販機に向う。

 

(そろそろ良い時間だし、就寝時間前には寝るようにしとくか)

 

 ゲームは楽しいが、このままでは夜更かししてしまいかねない。なのであと数回レースをしたら、寝る事にしよう。そもそも先生が見回りに来る前にゲームを片付けておかないと、没収されてしまうだろうし。

 

 そして京佳が自販機でペットボトルのお茶を買い、部屋に戻ろうとした時、

 

「早坂…」

 

 廊下に、早坂が立っていた。それも、とても真剣な表情をして。

 

「京佳、大事な話がある。ちょっと付き合って」

 

 そして早坂は、京佳にそんな提案をしてきたのだった。

 

 

 

 

 

「ねぇかぐやさん。結局どうして髪をばっさり切ったりしたの?」

 

「やっぱり、いやな事とかあったり?話くらいなら聞くよ?」

 

 かぐやが寝泊まりする部屋では、かぐやと同じ班で早坂の友達である駿河すばると火ノ口三鈴から質問責めにあっていた。質問内容は、新学期にかぐやがばっさりと長くて美しい髪を切っていた事について。

 それまでは誰が見ても綺麗だったかぐやの黒くて長い髪。かつて氷のかぐや姫と呼ばれていた頃から、かぐやの髪は綺麗だと有名なくらい、かぐやの髪は本当に綺麗だったのである。

 それが3学期の登校日に、突然ばっさりと切られていたのだ。中にはその姿にショックを受けて、気絶した子もいるくらいである。これまで誰もが半ばタブー扱いしていたが、この期に2人は聞く事にしたのだ。

 

 尚、髪をばっさりと切った理由について現在噂されている事は、白銀にフラれたとか、美容院選びに失敗したとか、何かおぞましい呪いにかかってそれの解呪の為だとか色々ある。

 因みに白銀にフラれたというのは、1部の白かぐ派が徹底して反論していたりするが、その話は省略しておこう。

 

「何やら色々噂されているみたいですが、本当にそういった話じゃ無いのでお気になさらず。これはただ髪の手入れが面倒になってきたのもあって、この期に思い切ってイメチェンしただけですよ」

 

 無論かぐや、真実は話さない。なんせ真実は、白銀にフラれた結果犯罪に手を染め、そのケジメのひとつに髪をばっさり切ったというものだからだ。いくら何でも、流石にこれは話せない。一応眞妃は自分の恋が終わった事を知っているが、そんな眞妃もその後の事は知らない。

 

「そう?でも確かに髪長いとシャンプーとか大変だもんねぇ」

 

「ドライヤーも時間かかるしね。でも長い方が色々髪をお洒落に出来て得な部分も無くない?」

 

「けどさ、大抵皆同じ髪型にしない?私だって基本これだし」

 

「ですね。私もずっと髪留めで止めていましたし」

 

 深く詮索されないよう、念のためいくつかそれっぽい話を用意していたが、どうやら納得してくれたらしい。これならもう、修学旅行中に聞かれる事は無いだろう。

 

「あ、早坂と立花さんだ」

 

「え?何処にですか?」

 

「ほらあそこ」

 

 その時三鈴が、旅館の中庭に京佳と早坂が並んで歩いているのを目撃した。

 

「あの2人、結構仲良いよね?」

 

「だね。一緒にいるところ割と見るし」

 

 すばると三鈴はがそんな感想を口にする。確かに2人は、学校では結構一緒にいるが、それは元々かぐやが命令したからだ。断じてただの友人関係ではない。

 その事は既に、京佳も知っている。あの謝罪以来、自分含めて2人はまともに会話なんてしていない。そんな未だにどこか気まずい雰囲気2人が、並んで歩いている。このまま夜の散歩、なんて訳が無い。恐らくだが、何か話でもするのだろう。

 

(邪魔しちゃ悪いわよね…)

 

 出来れば自分も、1度京佳と話をしておきたいが、流石にここで割って入る訳にはいかない。自分はまた別の機会を見つけて、京佳と話す事にしよう。

 

(それはそうと、どうやって早坂を止め置こうかしら…)

 

 それより先ず、メイドを辞めようとしている早坂をどうするかが先だ。どういう訳か知らないが、早坂は修学旅行が終わると同時に、四宮家のメイドを辞める事になっている。

 恐らく本家が何か言ったのだろうが、細かいところまではわからない。早坂は辞める気でいるが、かぐやは早坂に辞めてほしくない。なのでどうしてもその事を撤回させていのだが、その手段がわからない。

 

(はぁ、どうしようかしら…)

 

 いっそ早坂を別邸の部屋に暫く監禁でもするかと考えたが、それは犯罪なのでしない。既に1度手を汚しているが、流石にもう2度とそんな真似はしない。次そんな事すれば、本当にもう後戻りが出来なくなりそうだから。

 

「あの2人ってさ、何だか距離近くない?」

 

「確かに。並んで歩いているとはいえ、何か近いね」

 

「もしかして、そういう関係だったりして?」

 

「まっさかー、偶然でしょ」

 

「そうですよ。あまりそういう事は、言うものじゃありませんよ」

 

 そしてかぐやは、良い案が思いつかないまま部屋で過ごすのだった。

 

 

 

「ごめんね京佳。こんな寒い中態々付き合って貰って」

 

「別にいいよ」

 

 中庭では、早坂と京佳が設置されていた椅子に並んで座っていた。空はすっかり暗くなり、冬の寒さが襲ってくる。本来ならこんな寒い中で話すべきじゃないが、泊っているホテルの中では誰かに話しを聞かれる可能性があるので、こうして誰もいない外に出ているのだ。

 

「それで、話ってなんだ?」

 

 京佳は早坂に尋ねる。これは京佳にとっても、渡りに船の展開。未だにちょっと気まずい関係の2人。一応仲直りしたとはいえ、した事がした事なので、どうしても中々以前みたいになれずにいる。

 しかし龍珠に、このままだともう2度と仲直りできないかもしれないと言われたのもあって、近いうちにもう1度早坂と話をしようと思っていたからだ。そんな時に、早坂から誘ってくれた。

 これは好都合だ。新幹線で見たあのくらい表情も気になるし、この期にもう1度しっかりと話をしておこう。でも先ずは、早坂の話をちゃんと聞くべきだ。なんせ誘ってきたのは、早坂なのだから。

 

「実はね、私修学旅行が終わったら、四宮家のメイドを辞めるんだ」

 

「……え?」

 

「同時に、秀知院も自主退学する。だから、皆と会えるのはあと数日なんだよね」

 

「……は?」

 

 そして肩を小さく震わせている早坂の話を聞いた京佳は、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてく。今日龍珠が言った通り、終わりが突然やって来たのだ。

 

「何で…急に?」

 

「その反応、かぐや様もしてたよ」

 

 驚く京佳は、まるで昨日のかぐやそっくりだなと早坂を思う。

 

「まぁ簡単に言っちゃうと、家の都合ってやつだね…」

 

 そして早坂は、静かに話し出した。

 

 早坂の家は、代々四宮家に仕えてきた従者の家。しかしただの従者の家と言う訳でな無く、四宮家でも

結構な発言力を持っている幹部なのだ。

 だが本家からすれば、所詮は従者であり飼い犬。いくら発言力を持っていても、本家には逆らえない。逆らえば、あっという間の食い物にされて終わってしまうから。

 そして本家の四宮家の者が命令を下せば、どんな命令でも遂行しないといけない。正確にはその命令を遂行してでも本家に取り入れ無いと、四宮家という伏魔殿では生き残れないのだ。

 命令内容が精神を削り、時に命の危険があっても、本家の命令には逆らえない。何があっても、命令を遂行しないといけない。

 

 それが例え、自分の主人であるかぐやのスパイをするという命令であっても、早坂は逆らう事なんて出来ない。

 

「スパイ…?」

 

「うん。私はずっと、かぐや様の兄である四宮黄光って人からそういう命令を受けてきた」

 

 四宮家は現在、かぐやの父親である四宮雁庵とその長男である四宮黄光が最大派閥として存在している。そして早坂は、黄光から命令を受けてかぐやに対するスパイ活動を長年してきた。かぐやの苦手な物、失敗した事、友人関係、興味があるもの、大事なもの、そして好きな人。そういった事全てを、早坂は毎日四宮家に報告してきた。

 

 小さかった時にかぐやと一緒のデッドで寝た時とも、中等部の修学旅行の時も、夏休みに皆で軽井沢に行った時も、文化祭の時も、そしてこの前インドに行った時も欠かさずかぐやの事を本家に報告してきた。

 

 10年間、1日も欠かさずにだ。

 

 はっきり言って、まだ成人もしてない子がする事じゃない。というかこんなの、普通じゃないだろう。まだ幼かった早坂にそんな命令を出す四宮家も、それをずっと守ってきた早坂も異常としか言えない。

 

「嘘だろ…?」

 

「まぁ、驚くよね。私もよく毎日欠かさずにしてきてなって、自分でも驚いているし」

 

 驚いて当然だと、早坂は言う。だって今思えば、自分でも普通じゃないなと驚いている。むしろよく10年も毎日していたなと、自分で自分を誉めてやりたい。

 

「でもさ、もういい加減罪悪感に耐え切れないの。だからもう思いきって、辞める事にしたんだ」

 

「辞めた後は、どうする気でいるんだ?」

 

「幸い貯金は沢山あるし、海外にでも自分探しの旅に行こうかなって思ってるよ。インドはもう行ったから、次に行くならヨーロッパかな。あ、いっそ南極でもいいかも」

 

 しかし早坂も、命令を遂行するだけのロボットでは無く、感情を持った1人の人間である。いくら命令だったとはいえ、それに罪悪感を感じない訳ではない。むしろ毎日罪悪感で押しつぶされそうになって、

静かに泣いていたくらいだ。

 もう耐え切れない。これ以上、かぐやを裏切るような真似は出来ない。だから辞めて、かぐやから離れようとしたのである。そうすれば、もうかぐやをスパイする事もないから。

 

「私だけじゃなく、四宮もか……」

 

「うん…最低でしょ、私…」

 

「そうだな…流石にこれは、擁護できない…」

 

「だよね…」

 

 かぐやの恋敵であった京佳だけじゃなく、自分の主人であるかぐやさえスパイしていた早坂。まるで蝙蝠だ。これは誰も庇えない。

 

 でも早坂は、もうそんな事したくないのでメイドを辞めて逃げるつもりでいる。早坂も、色々考えた結果の行動なのだろう。それについて、京佳が何か言うつもりは無い。

 しかし、聞きたい事はある。

 

「でも何で、そんな話を私にしたんだ?」

 

 どうしてそんな話を、京佳にしたのかだ。言ってしまえばこれは、四宮家と早坂の問題。京佳は部外者である。なのに早坂は、こんな話を京佳にした。その理由がわからない。

 

「学校辞める前に、最後にちゃんと話しておきたいって思っただけだよ。あとこれ」

 

「ん?」

 

 そう言うと早坂は、ポケットから何か小さい箱を取り出した。

 

「もう随分前だけど、誕生日おめでとう。これ私からのプレゼントだよ。辞める前に、せめてこれは渡しておきたかったんだ」

 

 早坂から箱を受け取った京佳は、ゆっくりと箱を開ける。

 

「これは、有名なホテルのディナーチケットじゃないか」

 

「そこ美味しいだよね。もし要らなかったら、質屋にでも売っていいよ。あくまで最後に渡したかっただけだし」

 

 入っていたのは、都内で有名な中々予約の取れないホテルのディナーチケットだった。早坂はこれをずっと渡せずにいたので、せめて最後に渡しておきたかったのだ。こんな自分のプレゼントなんて嬉しくないだろうが、その時は捨ててもらっても構わない。渡せずにいる方が、ずっと嫌だったから。

 

「とまぁ、そういう訳。プレゼントも渡せたし、最後に京佳とちゃんと話せてよかったよ。後はもう私の事なんて忘れて、白銀会長と幸せになってね。今までずっと嘘ばかりの私だけど、これは本心で言ってるから」

 

 これで早坂は、全ての用事を済ませた。後は明日、最後の仕事を終えたら海外へ逃げるだけである。

 

「スッキリしたよ。言いたい事、全部言えたしね」

 

「本当か?」

 

「え?」

 

「本当にそうか?」

 

 だが京佳、そうは思っていない。確かに早坂が、自分に渡しそびれたプレゼントを渡したかったのは事実だろう。そして、最後に自分と話たかったのも事実だろう。しかし、まだ彼女は言っていない事があると京佳は考えた。

 

「早坂。君は本当は、誰かに助けてほしいんじゃないのか?だからそんな話を、私にしたんじゃないのか?」

 

 それは、助けて欲しいというメッセージ。これ見よがしに京佳の前に現れて、突然こんな話をしてきた。最初こそ懺悔だと思っていたが、肩を小さく振るわせていたり、ずっと暗い表情をしていたりでどうも引っ掛かる。これを京佳は、早坂からのヘルプサインだと思ったのだ。

 既に罪悪感で押しつぶされそうになっており、あんなに暗い表情をしている。とっくに早坂は、限界を迎えている筈。無意識に助けを求めるなんて、して当然だ。

 

「ダメ、だよ…」

 

 しかし早坂は、それを否定する。

 

「今まで京佳だけじゃなく、かぐや様も騙していたんだよ?そんな私が、助けてなんて言っちゃ、ダメなんだよ…だって、これは私の罪なんだから…」

 

 今までずっと皆を騙してきた。だというのに、他人に助けてなんて言える訳無い。無意識に言っていたみたいだが、それは見なかった事にしてもらわないといけない。だって自分は、最低な人間なのだから。

 

「こんな話を聞いて、助けない方が無理だよ」

 

 ここで早坂を見捨てる事は簡単だ。でもそんな事をすれば、この先京佳はずっと後悔すると断言できる。自分が白銀とデートをしていても、家でゆっくり過ごしていても、数年後に家庭を持って幸せに過ごしていても、ずっと早坂の事が頭をよぎるだろう。あの時、早坂を助けておけばよかったと。

 そんな後悔、したくない。だから後悔しない為にも、早坂を助けると京佳は決めた。

 

「それに、以前言っていたじゃないか」

 

「え…?」

 

「『もしも、貴方の友人が助けを求めたら、貴方はその友人を助けますか?』ってね」

 

「あ…」

 

 それは1学期にかぐやのお見舞いに行った時、変装してた早坂が言った事だ。恐らくだが、あの時の早坂はいずれ来るであろうこんな日を予見して、ついあんな事を口にしたのだろう。

 

「あの時私は、当たり前だと言ったじゃないか。だったらそれを破るなんて真似、しないよ」

 

「いい、の…?」

 

「勿論。だって私達、友達だろ?」

 

 確かに、早坂とは色々あった。でも、京佳は早坂とかぐやを許すと決めたのだ。だったら友人を助けるためにも、早坂を見捨てる事はしない。

 

「…ありがとう……」

 

 そして早坂は、ゆっくりと京佳の両手を握って静かに泣く。

 

 

 

 

 

「あーーー!!早坂が立花さんに抱き着いてるーー!!」

 

「ええ!?もしかしてあの2人、マジでそういう関係なの!?」

 

「わかんないよ!?でも最近の世の中にはそういう人も結構いるし、無いて事は無いんじゃない!?」

 

「確かに…!!今時同性愛なんてちょっと珍しいくらいだし!!それに立花さんって女子人気凄い高いし!!」

 

(何してるの早坂ーーー!?)

 

 その様子を部屋から見ていた3人は、絶叫する。すばると三鈴は早坂が京佳とそういう関係かもという事に。そしてかぐやは、お前マジ本当に何してのといった感じで。

 京佳には既に白銀という恋人がいるのに、あんな風に抱き着いている。これは言うなら、NTRだ。あんな事件があったばかりなのに、これ。これでは白銀に申し訳が立たない。

 

(あなた、それならそうとどうして相談してくれなかったのよ!!立花さんが好きなら一言言ってくれてよかったでしょう!!)

 

 冷静に考えればそんな事は無いのだが、すばると三鈴の話を聞いた今のかぐやは冷静さを失っているので、それが中々出来ない。むしろ変な妄想をするばかりだ。

 

(ど、どうしましょう…?ていうかこれ、会長に対する不貞では?報告すべき?い、いいえ!落ち着くのよ私!まだそうだと決まった訳じゃない!先ずは証拠を集めないと!不確かな情報を鵜呑みにするなんてしちゃいけないわ!!)

 

 少しだけ冷静さを取り戻したかぐやだが、その思考はやや明後日の方向に行っている。

 

(あーもう!早坂の件もあるっていうのに、これどうすればいいのよーー!?)

 

 結局かぐやは、何をどうすればいいかわからずに頭を悩ませるのであった。

 

 

 

 

 

 翌日

 

(さて、今日の予定も全部考えたし、財布の中身もしっかりとある。スマホの充電も万全。後は、立花が来るのを待つだけだ)

 

 白銀はホテルを出たところで、京佳を待っていた。まだ風祭と豊崎は来ていない。2人が来るより前に、京佳と共に班を抜け出す。そして2人で、京都観光を楽しむのだ。

 

(今日は正月の時のようなミスはしない!絶対に立花と楽しむんだ!)

 

 無論全てが予定通りに行く事は無いだろうが、その時は臨機応変に対応すればいいだけ。伊達に秀知院で生徒会長をやっていない自分ならば、何とでもなるはずだ。

 

「ん?」

 

 そんな風に思いながら京佳の事を待っていると、白銀のスマホが鳴る。白銀は直ぐにスマホを開くと、京佳からのメッセージがあった。

 

 

 

『白銀へ。本当にすまないが、今日の予定は全部キャンセルで頼む。詳しい事は後で全部話すから、今日は班の皆と楽しんでいてくれ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい白銀、お前そんなとこで突っ立ってどうしたんだ?

 

 

 

し、死んでる!?

 

 その日、白銀は真っ白になったのであった。

 

 

 

 

 




 流石にここで早坂を見捨てる訳にはいかなかったので… 少し強引かもだけど、京佳さんで四宮家のイベント行く事にしました。
 因みにかぐや様ルートの場合は、普通に原作通りに会長が行ってます。

 どこか変なところがあったら言ってください。

 次回もなるべき早く投稿したい。
 がんばります。
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