もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・   作:ゾキラファス

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 修学旅行2日目です。好きなように書きました。結構長くなってしまいましたが、どうかよろしくお願いします。


立花京佳と修学旅行(2-1)

 

 

 

 

 

「皆~、今日は本当にありがとうね~」

 

「いいよいいよ。どうせなら大勢で観光した方が楽しいしね!」

 

「そうそう!今日は女子8人でわいわいしながら楽しもう!」

 

「まぁ、折角の旅行だしな」

 

 翌日、早坂の班は京佳の班に合流していた。事情は知らないが、京佳班の3人はこれを受け入れ、本日の京都観光を楽しむ気でいる。

 

「それじゃ行こ!京佳!」

 

「ああ、いいよ」

 

 そして早坂は、京佳の腕に抱き着くように密着する。

 

「あれ?なんだか2人とも距離近いね?」

 

「だねー。恋人みたい」

 

「ふふ、ありがとー。良かったね京佳。私達、ラブラブだってさ」

 

「いやそんな事言って無いから」

 

 奈央と由香はそんな2人の様子を見て微笑ましい物を見た気分になる。

 

「ねぇ…やっぱりあの2人って…」

 

「うん。これ本当にそうかもしれない…」

 

 反対に、早坂班の子らはどこかそわそわした様子。というのも今朝、早坂は急に京佳の班を行動を共にすると言い出した。これだけなら、ただ班が違う友達と行動を共にしたいという早坂なりのお願いになる。

 しかし昨日、早坂が京佳に抱き着いている現場を早坂班の子らは目撃している。その結果、早坂が友達としてではなく、恋愛的に好きな同性として京佳と一緒に過ごしたいと考えていると思ってしまったのだ。

 

「だったら私達のする事は…」

 

「2人に楽しく修学旅行を過ごさせる事だね!」

 

 そして早坂班のすばると三鈴は、今日は絶対に2人に修学旅行を楽しんでもらい、叶うならその恋が成就してほしいと願う。別に早坂が同性愛者だなんてどうでもいい。愛の形は、まさに千差万別。ならそれに対して何か言うような事はしない。むしろ、早坂の想いが京佳に届いてほしいとさえ願う。

 その為に、可能であればどこかで2人きりにしてあげよう。そうすれば、好きな人と楽しい時間を過ごせるだろうし、そこから2人の関係が進展するかもしれない。

 

(わかってるだろうけど、この事は)

 

(モチ。誰にも言わないって)

 

 更に2人は、絶対にこの件を口外しないと約束。だって早坂は大事な友達なのだ。だから早坂のプライベートに関わる事は、絶対に言いふらさない。そしてもし晴れて早坂と京佳が恋仲になった暁には、全力で祝福しよう。

 

(どうしましょう…)

 

 一方で、かぐやは1人で悩んでいた。

 

(幸せ…海外…貯金…読み取れたのはこれくらいでしたが…おおよその想像は出来ますね…)

 

 実はかぐや、昨日早坂と京佳が会話している時、ほんの僅かだが2人の口の動きを見て、いくつかの単語を読唇術で読み取る事に成功。全ての言葉を読み取れた訳ではないが、幸せ、海外、貯金などの単語は知る事が出来た。これまでの早坂の行動や昨日読み取れた単語から、かぐやは今後の早坂の行動を推理。

 

(つまりこれは、早坂は立花さんと海外に駆け落ちするという事にほかならない!!

 

 そしてその結果、とんでもない勘違いを発生させたのである。

 

(海外には同性でも夫婦になれる法律がある国が存在しまし、早坂は私程では無いけどかなり貯金がある。それに本人も複数の外国語を話せるし、何より長年四宮家に仕えてきたメイドで仕事も凄くできる子だから再就職も難しくない…!確かにこれなら、そういうのに厳しい日本にいるより、海外で2人の幸せを掴んだ方が良いに決まっています!)

 

 修学旅行前に突然メイドの仕事を辞めると言い出し、その詳細な理由を明らかにしない。そして昨日、2人が話していた時にかろうじで読み取れた単語。そこからかぐやは、早坂が京佳と海外に駆け落ちし、そこで結婚して幸せを掴もうとしていると考えたのだ。

 

 無論、この推理はかすりのしない全くの的外れである。現実はそんなロマンあふれる物では無く、もっと重い話なのだから。

 

(というか立花さん!あなたはそれでいいんですか!?貴方は会長の恋人でしょう!この私との恋愛戦争に勝利して会長の恋人になれたというのに、会長を捨てて早坂と一緒になろうとしているなんて何考えているんですか!?会長絶対に泣きますよ!?)

 

 更にかぐやは京佳に対して、怒鳴りたい気持ちを押さえながら静かに怒る。京佳はずっと、白銀を振り向かせる為に相当な努力をしてきた。

 そして遂に白銀と結ばれたというのに、突然の裏切り。正直、これはちょっと許されない。だが、ここでかぐやは考える。あれだけ白銀を振り向かせようと頑張っていた京佳が、こんな風に手の平を返して早坂と一緒になろうとするものなのか、と。

 

(いえ、待ちなさい…早坂は初歩的ではありますが、一応洗脳のやり方を知っている。そして今は、学生が羽を思いっきり伸ばしている修学旅行。立花さんの脳内が緩くなっていても不思議は無い。そこを早坂が洗脳して付け込めば、立花さんがうなずいてしまうのも仕方が無いかもしれませんね…)

 

 そしてかぐやは、早坂が洗脳技術を使って京佳が一緒に駆け落ちしてくれるよう仕向けたと考えた。んな訳ねーだろと普通なら考えるが、今のかぐやは冷静さを失いつつあるのでトンチキな考えしか出来ないのだ。

 要するに、何時ものアホ状態がかぐやの思考を支配しているのである。

 

(あーもう早坂!立花さんの事が好きなら相談してくれてもよかったじゃない!!どうして私に何も言わずにそんな真似をしたのよ!!相談してくれたら私も一緒に考えてあげたのよ!?)

 

 同時に、そんな事も考える。どうして自分に、一言も相談してくれなかったのか。更に言えばいくら好きな人と一緒になりたいとはいえ、こんな事していい訳が無い。

 というかこれ、少し前の自分が似たような事をしている。こんなやり方で結ばれても、幸せになれる筈が無い。その辺の事も、しっかりと言わないといけない。

 

(ならば私の役目は、立花さんの目を覚まさせる事!!そして早坂にこんなやり方は間違っていると説得する事!!)

 

 早坂には自分と同じ鉄を踏んでほしくないので、かぐやは何としてでも2人の駆け落ちをやめさせて、目を覚まさせる事にした。できれば今すぐにでも説得をしたいが、流石のこんなに大勢のいる場所でそんな話は出来ない。今はまだ耐える時。後でタイミングを見つけて、話をするとしよう。

 

(兎に角、2人から目を離す訳にはいかないわね…今日はずっと傍にいるようにしましょう)

 

「四宮さーん!早く早くー!!」

 

「ええ、今行きますね」

 

 こうしてかぐやは、明後日の方向に努力をしながら今日1日過ごす事となったのである。

 

 

 

 

 

「私の目的は2つ。1つは、四宮家からなんとしてでも逃げる事。私は幼い頃からずっと四宮家に仕えてきた。だから四宮家にとって重要な情報を持っているって考えている人も結構いる。四宮家の庇護下にいればそれも問題無いけど、庇護下から抜けたら間違いなく捕まって、何されるかわかったもんじゃない」

 

「四宮家というのは、そこまで危ない家なのか?」

 

「危ない家だよ。伊達にずっとこの国に根を張って生きてないからね。それこそ、私が捕まったら拷問される可能性だって普通にある」

 

「冗談だろ…?」

 

 拷問という、現代日本では先ず聞かないであろう単語に、京佳の顔が少し引きつる。

 

「本当。信じられないかもしれないけど、それが四宮家なの。今でこそ多少落ち着いてるけど、私が生まれる前は普通に敵対した家の人間をあの手この手で一族郎党皆殺しにしてきた時代もあるんだ」

 

「……戦国時代の話か?」

 

「いや、昭和だよ」

 

「割と最近じゃないか…」

 

 数百年前ならまだしも、この21世紀の日本で、子供相手にそんな真似をする家があるとは思わなかった。京佳は正直信じたくない気分であったが、早坂の言っている事は全部真実なので信じるしかない。

 

「……ん?」

 

 そして同時に、ある事に気が付く。

 

「……ちょっと待て。今更だがこれ、本気で命の危険とかあったりする?」

 

「……流石に一般人に手を出すとは考え辛いけど、可能性はある」

 

「マジかー…」

 

「本当にごめん…昨日もっと詳しく言っておけばよかった…」

 

 最近は昔に比べて大人しい四宮家だが、それはあくまで昔に比べて。今でも普通に、危険で表沙汰に出来ない事はしている。つまりもしかすると、京佳は本日四宮家によって殺される可能性があるのだ。

 

「今からでも、逃げてもいいよ。もし私が捕まったら、見捨てていいから」

 

「今更そんな事しないよ」

 

「……本当に、ありがと」

 

 正直言うと怖い。まさか本当に命の危険があるとは思っていなかったからだ。しかし、今更早坂を見捨てるなんて真似できないし、したくない。もしここで早坂を見捨ててしまえば、多分自分は一生喉に魚の骨が刺さったままになるだろうから。だから怖くても、このまま早坂に協力する。

 

「それにしても、国内に安全な場所が無いから海外か」

 

「うん。四宮家は国内だと絶大な影響力を持っているけど、海外だと影響がほぼ無い。だから海外に逃げてしまえば、もう簡単には追ってこれないと思う」

 

 少し見通しが甘い気もするが、それが早坂の目的。縁もゆかりもない海外にさえ逃げてしまえば、晴れて自由の身となる。貯金もかなりあるし、当面の生活に困る事も無いだろう。無論、それでも四宮家が絶対に追ってこないという保証は無いのだが。

 

「四宮家内の知り合いに、ボディーガードとか頼む事は出来なかったのか?」

 

「無理無理。四宮家の人間ってだけで信用できないから」

 

「あの執事の、高橋さんとかどうなんだ?」

 

「高橋さん?無理だね。だってあの人、かぐや様の父親に長年仕えている人だもん。別邸での役割はあくまでかぐや様の教育係りであって、彼の主人は四宮家当主の雁庵様。高橋さんには申し訳無いけど、それだけで信用できないよ」

 

 夏休みに会った老年の執事である高橋は、正確に言えばかぐやや早坂の味方とは言えない。無論、本人は2人と敵対する意志は全く持ち合わせていないのだが、それでも彼の本来の主人がかぐやの父親である雁庵というだけで、信用できないのだ。

 更に言えば、同じく夏休みに出会ったメイドの志賀も、四宮家傘下の出身では無いただの雇われメイドなので巻き込みたくない。

 

「後ろ、尾けられてる…」

 

「っ」

 

「大丈夫。そのまま落ち着いて歩いて。流石にこんな人通りの多いところで誘拐なんて真似はしないし」

 

 そうやって京都の町中を歩いていると、早坂が四宮家からの刺客に気が付いた。ぱっと見何処にでもいるサラリーマンにしか見えないが、どうやら彼は敵らしい。

 

「で、本当なら今すぐにでも海外に逃げたいんだけど、まだ最後の仕事が残ってる」

 

「それが2つ目の目的か」

 

「そう」

 

 早坂の2つ目の目的。彼女はそれを口にはしないが、とても大事な目的らしい。

 

「今更だが、難易度高いな…一応私だけでは荷が重かったから協力者を1人増やしたが、大丈夫だろうかこれ…いや、何とかするしかないか」

 

「さっきも言ったけど、いざとなったら私の事見捨てていいからね」

 

「だからしないってそんな事」

 

 普通に考えて、一介の女子高生にどうにか出来る事では無い。でも、ここでやめたりなんて絶対にしない。

 

「……京佳はさ、どうしてそこまでして私を助けてくれるの?クリスマスの事件もあったし、今更私を助けてメリットなんて無いでしょ?」

 

 京佳と並んで歩いている時、早坂が京佳に尋ねる。京佳は自分が友人だから助けると言ってくれたが、どうしても腑に落ちない。だってこんな危ない状況にいる自分を助けるなんて、普通はいくら友達でもしなからだ。

 

「何でそうメリット云々で考えるんだ」

 

「だって…私なんて助けても…」

 

「その私なんてって考えも辞めるんだ。まるで昔の私見ているみたいで嫌になっちゃうから」

 

「え?」

 

 ここで京佳は、あまり褒められた事では無いが早坂に少しだけ説教する事にした。

 

「いいか早坂。君は少し臆病が過ぎる。臆病な事は悪い事では無いが、臆病すぎると本当に何もできなくなるぞ。チャンスも手に出来ず、前に進む事も出来ず、最期には1人ぼっちになってしまう。だったら少しだけ勇気を出して、その臆病を取っ払え。そうすれば、案外色んな人が助けてくれると私は思うぞ?後、色々と複雑な事情があるのは理解できるが、もう自分の事を卑下するな。自分を卑下し続けると、本当にメンタルやられるぞ」

 

 臆病な事は、ある意味で美徳でもある。しかし京佳の言う通り、あまりに臆病すぎると色んな物を手からこぼしてしまう。時には臆病さを捨てて、勇気を出さないといけないのだ。

 

「……京佳も、そうだった?」

 

「まぁね。左目がこんな風になった時は、常に周りの視線が怖かったよ。まぁ、正直今でも怖いけどね。当時友達と思っていた子も、殆どが離れていったし。あの時は『自分がこんな風になったから当然だ』なんて思ったりもした」

 

 京佳も、自分の見た目がとてもコンプレックスで常に自分を卑下していた。しかし、唯一自分の傍を離れなかった恵美や、母親のおかげで京佳はそういった事をしないようにした。その結果京佳は勇気を出して前に進み、秀知院に合格したし、白銀という素敵な恋人も出来た。

 

「それと助ける理由だがな、友達だからだ。それ以上でも以下でもない。早坂は友達で、今困っているから助けるんだ」

 

 そして京佳が早坂を助けるのは、彼女が友達だからである。確かにクリスマスで早坂はあの件に協力しているが、それはもう終わった事。今更、あの件を蒸し返すつもりは無い。そんな彼女が、現在困っている。1人でどうしても対処できない問題があった時、それを助けるのが友達だ。故に京佳は、早坂を助ける。そこにメリットデメリットなんて話は、無いのだ。

 

「はは…やっぱ京佳は凄いや…」

 

「努力しただけだ。早坂ももっと頑張れば、良い結果を得られるかもしれないぞ?」

 

「……そうだね。もう遅いかもだけど、ちょっとだけ色々頑張ってみるよ」

 

 京佳のおかげで、早坂は少しだけ勇気を貰った。この後どんな事が起きるかまだわからないが、早坂はちょっとだけ周りに協力してもらうように決める。

 

 そして必ず、自分の最後の仕事を完遂するのだ。

 

 

 

 

 

「ねぇねぇ!立花さん!あっちの壁なんか和風って感じで良さげじゃない!?記念に早坂と2人の写真撮ってあげるから並んで!!」

 

「え?あ、ああ。じゃあよろしく頼む」

 

「ありがとー。京佳!ピースピース!!」

 

「ぴ、ピース」

 

 京都の町中を歩いていると、早坂班のすばるが早坂と京佳をなんか良い感じの壁に並ばせて写真を撮る。早坂もすばるのスマホに向ってピースサインを作り、笑顔で写真を撮られる。

 

「うん!2人共凄い良い笑顔だよ!後で2人のスマホに送っておくね!」

 

「ありがとうすばるー!」

 

「ありがとう」

 

「立花さん!今度はあっちで写真撮らない!?早坂と一緒に!!」

 

「い、いいけど」

 

「じゃあ撮ろう!ほらほら!2人共もっと肩を寄せて!!」

 

 今度は三鈴が2人のツーショット写真を撮ろうとしてきた。断る理由も無いので、早坂と京佳はまた写真を取られる。

 

(何だろう、あの2人やたらと私と早坂の写真を撮ってくるな…)

 

(だね…どうしたんだろ…?)

 

 流石に2人共、違和感を感じてきた。記念写真を撮るのはいのだが、いくら何でも多すぎる。ただ沢山写真を撮るだけならわかるのだが、どういう訳か京佳と早坂のツーショット写真ばかり撮ってくるのだ。

 

((これで立花さんも早坂を意識する筈!!))

 

 無論、これは偶然などではない。これはすばると三鈴が考えた作戦である。すばると三鈴は、これだけ早坂と京佳が沢山写真を取れば、京佳が早坂を意識するだろうと考えていた。何度も何度も体を密着させ、その度に2人きりの写真を撮る。

 そうすれば、将来2人が結ばれた時に楽しい思い出にもなるし、何より京佳だって多少はドキドキしてくれる筈。後はどこかで2人きりにしてしまえば、そのままの勢いで結ばれるかもしれない。故にこんな真似をしているのだ。

 

(あーもう!さっきから2人で写真撮りすぎでしょう!これじゃあ私が話す機会が無いじゃないですか!!)

 

 一方で、かぐやはそんな状況にやや怒っていた。何としてでも、京佳と話して洗脳を解かないといけないので、これではそれが出来ない。何とか2人きりで1度話たいが、中々機会に恵まれない。

 

(あまり時間が無いと思った方がいいのに、どうしましょう…)

 

 多分2人は、今日のどこかで姿を消す。そうなったら、もう2度と後を追えないかもしれない。そうなる前に、何とかして1度話をしなければ。

 

「あ!あそこだよ!ネットに乗ってた美味しいお団子屋さん!!」

 

 かぐやがどうするか悩んでいると、京佳班の奈央がとあるお店を指さした。そこには、まるで映画のセットのような如何にもなお団子屋さんが見える。

 

「へぇ、風情があっていいな」

 

「だねぇ。よし!あそこで皆でお茶しよう!」

 

『賛成』

 

 龍珠と由香がそのままお団子屋さんに向かう。その後を、残りのメンバーがゆっくりとした足取りで追う。店内は結構広く、かなり繁盛しているのか人が大勢いる。幸い自分達が座れるくらいの席は空いているとの事なので、座って団子を食べる事は可能らしい。

 

(ここならいける筈!!)

 

 そしてかぐやは、ここでなら京佳と早坂と腰を据えて話が出来ると考えた。店内は結構人が多いが、早坂と京佳の席で一緒になれば話は出来る筈。そこで何としてでも、京佳の洗脳を解こう。

 そして、必ず早坂を説得しよう。後はそのまま京佳を白銀の元に送り出し、早坂と一緒に京都を回れば万事解決だ。

 

 しかし、

 

「四宮さん!こっちの席で一緒に食べよう!」

 

「え!?」

 

「ほらほらかぐやさん!こっちに座って!」

 

「あのちょっと!?」

 

 すばると三鈴に両腕を掴まれたかぐやは、そのまま早坂がいる席の隣へと座らされた。これでは、話が出来ない。そして早坂と京佳も、そのまま2人で席に座る。

 

(もーー!!さっきから何なんですかこの子達は!?)

 

 すばると三鈴の2人は、別に悪意を持ってこんな真似をしている訳じゃないので、かぐやも怒るに怒れない。でも今は本当に辞めて欲しい。ほんの少しの時間でいいから、あっちの2人と話をさせて欲しい。

 

(もうお店を出たら、強硬手段でも取って話をしましょうかね…)

 

 こうなったら、団子を食べ終えたら早坂達の手を引いて無理やりにでもどこかに連れ去ろう。そしてどこかの公園にでも行って、話をしよう。

 

(その為にも、ここでちゃんと腹ごなしをしておきましょう。腹が減っては戦は出来ないと言いますし)

 

 かぐやは団子屋のメニューを開いて、とりあえずみたらし団子セットを食べる事にした。

 

(え?何これ美味しい…)

 

 因みに味は、舌が大変肥えているかぐやも驚く程美味しかった。

 

 

 

 

 

「うん。この生醤油団子美味しいな」

 

「こっちのこしあんも美味しい」

 

 店内にある席に座った京佳と早坂は、団子を食べて一息ついていた。何だかんだで結構歩いていたし、常に周りに気を付けないといけない緊張から、2人共それなりにお腹が空いてしまっているのだ。ここで食べておかないと、いざと言う時動けないかもしれないのでちゃんと食べておく。

 

「浮かれてんじゃねーかお前ら。しっかりしろよ」

 

「龍珠」

 

 そこに、手に3色団子を持った龍珠がやってきた。実は昨日の夜京佳は、これは流石に1人だけでは手に余ると判断し、龍珠にだけ協力をお願いしたのだ。

 龍珠は、それを引き受けてくれたのである。本来なら彼女に引き受ける理由なんて無いのだが、このまま四宮家に早坂が捕まると本当にろくでもない事になると知ると、直ぐに引き受けてくれた。

 そして龍珠は、京佳と早坂の前にあった椅子に座る。

 

「それで、どうだった?」

 

「いるな。私が見ただけで3人、明らかにこっちを見張っている奴らが。お、これ美味いな」

 

「やっぱり3人でしたか…」

 

 京佳の質問に、龍珠は団子を食べながら答える。実は彼女、この店周辺や店内にいるであろう四宮家からの追手とただの客を見分けていたのだ。その結果、3人の怪しい人物を見つける事に成功。

 

「それと姿は見えないが、ずっとこっちを見ている気配がする。多分、少し離れたところからこっちを見ているんだと思う」

 

「そうか。というか気配でわかるのか?」

 

「伊達にヤクザの組長の娘してねぇ。それくらいわかる。まぁ、わかるよう訓練はしたが」

 

 なんかさらっと凄い技を龍珠は使っていた。どうやれば訓練でそういった気配がわかるようになるのだろうか。しかしここで、龍珠は追加の情報を京佳に話す。

 

「ただなぁ、なんか他の3人と違ってどっか気持ち悪い気配なんだよなぁ…」

 

「気持ち悪い?」

 

「なんつーか、変に熱っぽい感じ?さっきから鳥肌が出て嫌なんだよ…」

 

「何だそれは…」

 

 どうやら姿の見えない4人目は、早坂の事を熱っぽい視線で見ているらしい。もしかすると、その姿の全く見えない4人目は早坂に変な感情でも持っているのかもしれない。

 なんせ早坂は、美少女と言っても過言では無い容姿をしている。実際、学校で告白された事だってある。そんな彼女ならば、そういった視線を向ける人がいても不思議は無い。まぁ、普通に考えて気持ち悪いが。

 

「兎に角、ここは人が多いし簡単に連中が仕掛けてくることはねーだろうが、用心しておけ」

 

「ありがとう龍珠」

 

「本当にありがとうございます、龍珠さん」

 

「別にいい。そもそもガキに手を出そうとする奴は大っ嫌いだしな。叶うならこっちから仕掛けてやりてぇよ」

 

 龍珠はヤクザの娘であるが、そういった仁義は大事にする子である。断じて子供を食い物にしたり、非道な事をするような真似はしない。

 だからこそ、今回の四宮家の行動には憤りを感じている。可能なら組に連絡を入れて、四宮家本家にカチコミしたいくらいだ。

 しかしそうなると関西最大の極道組織である近江連合が黙っていないので、そんな真似は出来ない。下手をすると抗争になってしまうし。

 

「それで、この後はどうするんだ?」

 

「この店を出たら、私達は2人でとある場所まで逃げます。そこで最後の目的を果たします」

 

「護衛はいるか?」

 

「龍珠さんがよければお願いしたいですが」

 

「よし、なら一緒に行ってやる」

 

「……よろしいのですか?相手は訓練を受けたプロですよ?」

 

「別にいい。乗り掛かった舟だしな。最後まで付き合ってやるよ。あとこっちも色々訓練は受けた。流石に相手をブチのめすのは無理だろうが、時間は稼いでやる」

 

 早坂が申し訳そうに言うが、龍珠は気にするなと言いながら団子を食べる。

 

「本当に、なんてお礼を言ったらいいか…」

 

「だから気にすんなって言ってんだと。その代わり、絶対にその目的ってやつは果たせよ」

 

「はい、必ず」

 

 正直早坂は、京佳以外に協力者を増やす事に反対だった。だって本当に危険なのだ。出来ればもうこれ以上、誰かの危険な目に合わせたくない。

 しかし、今は龍珠がいてくれて大変助かっている。彼女のおかげで、常時周りを気にする事も無いからだ。更に言えば、いざと言う時の護衛としてこれ以上もいないだろう。

 

「それじゃ、食べ終わったら行こっか」

 

「わかった」

 

「おお」

 

 そして3人は、残った団子を食べて次の行動を起こすのであった。

 

 

 

「実はね、2人に少しお願いがあるんだ」

 

 団子屋を出た早坂は、さっそく行動に出た。先ずは同じ班のすばると三鈴に、あるお願いをする。

 

「今からさ、私このまま京佳と2人で京都を観光したいの。だから、その間四宮さんの事お願いできる?」

 

 自分が目的地に向かっている間、かぐやの傍にいて欲しいと。流石にこのまま、かぐやを1人にしておくわけにはいかない。なので2人のかぐやの事をお願いするのだ。

 一応後でかぐやには迎えの人が行くが、それまで誰かにそばにいて欲しい。そのためのお願いである。

 

「勿論だよ!任せて!!」

 

「全然大丈夫!かぐやさんの事は気にしないで、立花さんと2人で抜けて来ていいよ!!」

 

「その変わり、絶対に2人で楽しんできてね!!」

 

「そうそう!私達との約束だよ!!」

 

「え?あ、うん。わかったよ」

 

 そしてすばると三鈴は、その早坂からのお願いを快く引き受ける。ただし何と言うか、その目はどこかワクワクしているように見えた。

 

(なんか、変な誤解してる気がする…)

 

 2人の様子を見た早坂は、何か誤解をしていると考えるが、別にそれを解く必要も無いと思い、そのままにしておくことにした。

 

「四宮さん!あっちでなんか面白いお店あるみたいだから行こう!」

 

「うんうん!そして写真撮ったりしよう!!」

 

「え!?あのちょっと!?私少しだけ用事が…!!」

 

 すばると三鈴はかぐやの両腕に抱き着いて、そのまま歩いて行った。

 

「仲良いねぇ。あの3人」

 

「だね。じゃあ立花さん、後でねー」

 

「ああ、後で」

 

 そしてその後を、京佳班の奈央と由香が追う。因みに京佳は、この2人に『早坂がどうしても行きたいところがあるらしいから、そこに龍珠と3人で行ってくる』と説明をしている。2人はそれを了承し、早坂班に着いて行く。

 そして龍珠は、近くの洋服店でパーカーを購入しそれを制服の上から着て変装。現在は、京佳と早坂から少しだけ離れた場所で護衛中である。

 

「それじゃ、行こう」

 

「うん」

 

 こうして京佳と早坂は、背後に龍珠という護衛を付けた状態で早坂のいう目的地へと向かう。

 

 

 

 しかし、

 

 

 

「「人多…」」

 

 中々前に進めない状態になっていた。

 

「京都は世界的に有名な観光地だから、そりゃ人多いよな」

 

「うん。冬だから少ないだろうって思ってたけど、舐めてた…」

 

 国内外の観光客や、京佳達と同じ修学旅行生。そんな人が大勢いる。おまけのこの道は、お土産屋や食事処ばかりの観光名所。そりゃ多くて当然だ。本来なら裏道を使って移動するべきなのだが、それはもう少し先でないと袋小路になっているのでそれが出来ない。なのでこの通りだけは普通に通らないといけないのだが、こうも人が多いとそれもキツイ。

 

「早坂。手を離すなよ?」

 

「わかってる」

 

 これだけ多いと逸れる可能性が高い。故に早坂は、京佳の腕に思いっきり密着している。その様子を一部の人が尊みを感じた目で見ていたが気にしない。

 

(この人込みだし、流石今は大丈夫だよね)

 

 いくら何でも、ここで仕掛けてくるほど四宮家からの追手も素人ではないだろう。この通りを抜けたら、一気に走っていけばいい。後は目的地まで全力疾走だ。

 

 

 

 そう思っていた時、

 

 

 

「騒がないで下さい」

 

「「っ!?」」

 

 

 

背後から声がした。

 

「下手に騒ぐと、こちらも容赦しません。意味はわかりますね?」

 

 2人が静かに後ろを振り向くと、そこには帽子をかぶった女性が1人。そしてその手には、布で隠れているが何か固い物が握られており、それは早坂の背中に当たっていた。

 

(嘘でしょう…?こんな人通りの多い場所で…!?)

 

 早坂にとっても、これは予想外。何せ周りには大勢人がいる。こんな場所で仕掛けてくるとは思わなかった。だが現実に、こうして四宮家は仕掛けてきている。

 

「もう1度言いますが、決して騒いだり大声を出したりはしないで下さい。私も未成年を手にかけたくは無いですが、いざいう時は容赦しませんので」

 

 マズイ。これはマズイ。何が当てられているかはわからないが、ほぼ間違いなく武器か何かだろう。力づくで振りほどけなくはないが、相手はプロ。

 そしてこっちには、素人の京佳がいる。ここで抵抗すれば、京佳に被害が及ぶ可能性が非常に高い。それはダメだ。なんせ京佳は自分が巻き込んでしまっている。なのに被害なんて出させていい訳無い。

 おまけに、龍珠がこの人に全く気が付いていない。恐らく彼女は、気配を消す事に長けた者なのだろう。訓練すれば人間、それくらいできるのだ。

 

「ゆっくりと、そこの路地裏に来てください。そうすれば被害はくわえませんので」

 

 このままでは、逃げる事が出来ない。だが大声を出したり、彼女に対して抵抗すればあちらも非常手段に出てくるだろう。自分が傷つくのはいいが、ここで京佳に傷をつける訳にはいかない。

 

「すまん、早坂」

 

「え?」

 

 早坂がどうするべきか考えていると、突然京佳が口を開いた。そしてあっという間に早坂が抱き着いている腕を振りほどき、

 

 

 

「ん」

 

 

 

 突然、早坂の口にキスをしたのであった。その様子は、まるで映画のワンシーンのようだった。

 

(くぁwせdrftgyふじこlp!?!?)

 

 早坂、混乱。そして顔が耳まで真っ赤になっていく。

 

「え?は?え?はぁ!?何で!?」

 

 同時に、四宮家の追手も混乱。そりゃ突然目の前で対象がキスされる現場を見れば、混乱もする。だって何でそんな事をするのか、理解できないからだ。

 

「え!?嘘!?あれって!!」

 

「キス!?しかもあれ、女の子同士じゃない!?」

 

「きゃーー!何あれ素敵ーーー!カメラカメラ!!」

 

「Oh!!Fantastic!!」

 

「!?」

 

 だが直ぐに、この状況はマズイと判断。今周りにいた人々は、突然こんな往来の場所でキスをしだした2人に釘付け状態だ。つまり、とっても注目されている。これでは早坂の誘拐なんて不可能。

 

「くっ!」

 

 それを悟った彼女は、直ぐにその場を退散。そして人込みの中に消えていくのであった。

 

「ちょっと目立ちすぎたな。走るぞ早坂」

 

 それを見た京佳は、早坂の手を引いて走り出す。早坂も何も文句言わずに手を引かれながら走る。そのまま2人は、表通りから外れた裏道へと入った。

 

「ふぅ…大丈夫か早坂?」

 

「ふえ!?あ、うん!大丈夫れす!!」

 

「れす?」

 

「あ!ん゛ん゛っ!ごめん、もう大丈夫」

 

 突然キスされた事により、早坂は混乱している状態。というかまるで茹で上がった蛸のように真っ赤になっている。こんな顔の早坂、見た事無い。というか普通に可愛かった。

 

「とりあえず、すまなかった。逃げる為とは言え、突然キスをしてしまって」

 

「……ううん、いいよ。あれのおかげで何とか捕まらずにすんだし」

 

 確かにびっくりして混乱してが、おかげで逃げ切れた。京佳のとっさの行動に、感謝すれど恨みは無い。それが理解できたので、早坂も多少は冷静さを取り戻せた。

 

「一応これで撒くことはできた。今の内にその目的地とやらへ急ごう」

 

「そうだね」

 

 京佳は普段と変わらない顔をしている。自分にキスをしたのに、全然いつも通りの顔。それに早坂は、少しだけムっとした。少しくらい動揺してくれてもいいのに、と。

 

(ファーストキス、だったな…)

 

 おまけに今のは、早坂にとって人生初のキスだった。ロマンチックな事が好きな早坂にとって、あのキスはいただけない。仕方が無いとはいえ、もう少し雰囲気とか大事にして欲しいと願わずにいられない。

 

(にしても…)

 

 早坂は、改めて京佳を見る。身長は高く、顔も整っており、性格だって良く、今回のように誰かの為に動いてくれている。

 

(もし京佳が男の子だったら、私好きになってたかも…)

 

 ありえない話だが、もし京佳が男として生まれていたら、早坂は多分落ちていただろうと考える。こんな良物件な子、そうそういない。もしそんな事があったら、多分かぐやに相談してでも京佳を落とすべく学校で生活していたかもしれない。

 

(まぁ、あくまでもしもの話だけどね…)

 

 でも、所詮はもしもの話。なんせ京佳は女の子だし、既に恋人がいる。早坂は異性愛者だし、略奪愛なんて真似しようとは思っていない。

 それに今は、そんな事を考えている場合じゃない。やっと追手がいなくなったのだ。今の内に行動しないと。

 

「おいこらてめぇら!!私を置いて行こうとすんじゃねぇ!!」

 

「「あ、ごめん」」

 

 そして人込みからやっと解放された龍珠が合流したので、3人は早坂のいう目的地へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 今回、京都市内で早坂を拉致する事を命じられた四宮家の側近、天野八雲。今彼女は、部下からの報告を聞いて頭を抱えていた。

 

「え?突然恋人らしき女生徒にキスされて騒ぎになって連れ出せなかった?何言ってるの?」

 

『いえ、全て真実を言っているんですが…』

 

「いやいや。そもそも早坂愛には友達も恋人もいないって調査レポートに書いてあったでしょ?それに相手が女の子なんでしょ?ありえないって」

 

『と言われても、実際そうなってましたし…』

 

「えぇー、あの子ってそういう趣味だったの…?」

 

 聞くだけで頭の痛い報告である。まだ誰かがタイミング悪く間に入ってきたなら納得できるが、突然同性の子にキスされたとか意味がわからない。

 

「はぁ、面倒だな…もういいや。どっかで普通に無理やりにでも連れ去って。最悪武器の使用も雲鷹様から許可されてるし、使っていいよ

 

 だが、それも直ぐに切り替える事にする。このまま早坂を拉致できないと、怒られるのは自分なのだ。それは嫌なので、もう強引な手段を使ってでも早坂を拉致する。幸いこちらには武器もあるし、それで脅せば流石に大人しく着いてくるだろう。

 

『了解しました。一緒にいる子はどうしましょう?』

 

「顔を殴るくらいはしていいよ。そうすればもう抵抗しないでしょ」

 

『了解しました』

 

 その為の障害になるのなら、そういう手段も普通に使う。なんせ、自分達は四宮家だ。もうとっくに色々と汚れているので、今更普通の手段なんて使わない。邪魔するなら、殺さない程度に痛めつけるくらいはする。これまでだってそうしてきたのだから、随分と悲しい大人になってしまったなと天野は思うが、今更抵抗なんて無い。

 

「全く。手間のかかる子だなぁ…本当に面倒」

 

 天野は通信を切って、今回の件が本当に面倒だと感じる。そういう命令を下した自分の上司も、中々思うように運ばない現状も、

 

「四宮に逆らうなんて、無駄でしかないのに」

 

 そして無駄とわかっているのに、逃げ続ける早坂についても。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「大きな星が点いたり消えたりしている。アハハ、大きい...彗星かな。イヤ、違う、違うな。彗星はもっとバーって動くもんな」

 

 「白銀ぇぇぇ!正気に戻れぇぇぇ!!」

 

 一方その頃、白銀は精神崩壊していた。

 

 

 

 

 




 流石に1人じゃ無理があったと思ったもので、京佳以外にも龍珠参戦。

 そしてすまない会長。この騒動が終わったらちゃんとイチャつかせるから、もう少し我慢してて。

 変なところがあったら言ってください。修正しますので。

 次回、いよいよあの兄貴登場。ついでにもう1人か2人原作にいなかった人が登場するかも。

かぐや様の父親が、立花家に謝罪に行くのは

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