もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・ 作:ゾキラファス
それと今回から結構原作と変わります。ご注意ください。
追記。感想にてご指摘があったので少し追記しました。
(本当に、どーしましょう…)
現在かぐやは、2つの班の子ら4人と歩きながら頭を悩ませていた。突然早坂と京佳、あとついでに何故か龍珠が姿を消し、後を追おうにもどこにいるか皆目見当もつかない。試しにスマホに電話をしてみたが、まったく出る気配が無い。これでは探そうにも探せない。
(このままだと、2人の駆け落ちが成功しちゃう…!!)
未だに早坂と京佳が駆け落ちをしようとしていると思っているかぐやは、何としてでもそれを止めたいと思う。こんな駆け落ち、絶対に幸せになんてなれないと思っているからだ。
(何としてでも、京都にいる間に捕まえないと…)
恐らく2人に今後の予定は、先ず京都から新幹線で脱出し、そのまま関西の空港へ向かう。そこで飛行機に乗り換えて、同性婚が出来る海外へ逃亡。早坂は外国の言葉も沢山話せ、更に貯金も相当あるので、2人が生活に困る事は先ず無いだろう。
その後は生活も安定した状態で2人仲良く暮らし、いずれ何かの奇跡か科学技術のおかげで2人の間には子供が生まれる。どっちに似ても、間違いなく可愛い子に生まれるだろう。このような感じで、2人は幸せに過ごす事も出来るかもしれない。
だがそれは、白銀を裏切った状態での事である。
(そんな事認める訳無いじゃないですか!!何としてでも阻止しなければ!!)
これではあまりにも、白銀に救いが無い。このままでは白銀は、京佳に裏切られ心を病んだまま生涯1人で過ごすだろう。失恋の痛みというのは、想像を絶するのだ。簡単に癒える事は無い。かぐやはそれを、身をもって知っている。誰かが傍で支えれば問題ないかもしれないが、そんな都合の良い人物そうはいない。
(……あれ?でもこれって、もしかして千載一遇のチャンスだったりしない?)
一瞬、ほんの一瞬だけそんな白銀に自分が寄り添えば、そのまま白銀を手にする事が出来るのではと考えるかぐやだったが、
(ってそんなのダメに決まってるじゃない!!いくらチャンスだとしても、それだけはダメ!!絶対にダメ!!そもそも私はもう会長に相応しい女じゃないもの!!なのにそんな事を考えるだなんて!!インドで何を学んだっていうのよ!!)
その邪な思いを直ぐに捨てる。確かにチャンスかもしれないが、ここで白銀を我が物にしようと思う程、かぐやの面の皮は厚くない。そもそもあの京佳が、簡単に早坂に乗り換える訳が無いのだ。絶対に早坂に、洗脳染みた何かをされているに決まっている。
ならばそれを解除しないといけない。洗脳の解除方法なんて知らないが、最悪頭を殴れば元に戻るだろう。そして早坂を説教した後、京佳を白銀の元へ帰そう。そうすればこれ以上誰も傷つか事も無く、全て元通りになる筈だ。
「かぐやさん。お久しぶりです」
「え!?奈央さん!?どうしてここに!?」
かぐやがそう心で決めている時、突然後ろから聞いたことのある声で話しかけられた。かぐやが振り返ると、何故かそこには早坂の母親である早坂奈央がいた。
「あれ?四宮さん。その人は?」
かぐや班のすばるが、奈央に気が付き声をかける。
「ふふ、初めまして。早坂愛の母親の、早坂奈央と言います。仕事でちょっと京都に来ていたのですが、偶然娘の友達である四宮さんを見つけたので、ちょっと挨拶をと思いましてね」
かぐやは学校では早坂との関係は伏せているので、奈央も自分の事をあくまで早坂の母親という事しか言わない。
「早坂のお母さん!?うっそ!?すっごい綺麗!!」
「子持ちに見えない!!お姉さんかと思った!!」
「ふふ、ありがとうございます」
三鈴とすばるが奈央の見た目に驚く。奈央も若いと言われて少し良い気分になったりした。
「奈央って言うんですね。私と一緒だ」
「こんな偶然あるんだねぇ」
そして京佳班の奈央と由香は、同じ名前と言う事にちょっとだけ親近感を抱く。
「かぐや様、今少しよろしいでしょうか?」
そして奈央は、かぐやにだけ聞こえるようにそっと耳打ちをする。
「すみません皆さん。ちょっとだけ失礼しますね」
「うんわかったー」
かぐやは4人に断りを入れて、奈央と共にその場を離れる。
「それで、どうしてここに?早坂なら今ちょっといないのですけど…」
「娘の変わりに、私がかぐや様の護衛としてやってきただけです」
「早坂の変わり?」
「はい。愛に頼まれまして」
どうやら奈央は、今現在行方知れずの娘の変わりにこの場に来たらしい。そもも、娘に頼まれた状態で。
「何かあったの?」
「実は本家でちょっとゴタゴタがありまして…詳しくはまた後で説明いたします」
「……一応聞くのですが、早坂が海外に行きたいからとかじゃないですよね?」
「はい?何の話ですか?」
「あ、違うならいいです」
詳しくはわからないが、どうやら本家関係でこの場にいるとの事。てっきり早坂が海外に駆け落ちしようとしているのが本家にバレて、そのせいで色々と面倒な事になっていると思ったが、何か違うようだ。
「愛から言伝を頼まれています。何でも、今回の件でかぐや様としっかりと話すプランを考えていたみたいですよ」
「あの子プランとか本当に好きね」
少しだけうんざりするかぐや。石上のデート相談の時もそうだが、ちょっとうんざりするくらいには早坂はこういった感じのプランを考えるのが好きである。言いたい事があるのなら、別邸にいる時に面と向かって言って欲しいものだ。その方が手っ取り早いし。
だが早坂は結構なロマンチストなので、シチュエーションにはかなりこだわりたいのだ。なので別邸で話すなんて真似は決してしない。
「読み上げます。『私達の関係が始まったあの場所で待っていてください』との事です」
「あの場所?」
「はい。かぐや様なら絶対にわかると言っていました。大事な話をするのなら、あそこ以外ありえないとも」
「そう…あの場所ね…」
早坂からの伝言を聞いたかぐやは考える。小さい頃からずっと一緒だった早坂。彼女とは、沢山の思い出の場所がある。当然、それは四宮本家があるここ京都でもそうだ。その思い出をひとつひとつ紐解いていけば、あの場所とやらを思い受かべる事も簡単な筈。
「え?あの子一体何処の事言っているの?私全然わからないんだけど…」
「さぁ?」
「というか伝言ならちゃんと場所言いなさいよ!!こんな言い方でわかる訳ないじゃない!!」
「そこは本当にそう思います」
しかし残念ながら、かぐやはそこがどこなのか全くわからないでいた。こうして早坂のプランは、初っ端から暗礁に乗り上げるのであった。
それから暫く時間が経過した。既に空は暗くなり、夕日も沈んで月が顔を出している時間帯。早坂達は、かぐやに伝えた思い出の場所の直ぐ近くまで来ていた。
「バイク、後でちゃんと返却しないとね」
「お土産はあそこの店で買う事にしよう」
「だな。つーか良いバイク持ってるなあのじーさん」
ここに来る道中で3人は、とあるお土産屋で『なんかやべー人に追われている』と説明し、店主から2台のバイクを借りる事に成功。そして早坂が運転するバイクの後ろに京佳、2台目のバイクに龍珠が乗って四宮家が所有する山の麓まで来た。
(おっきかったなぁ…)
因みに運転中早坂は、背中に京佳の豊満な胸の感触をめっちゃ感じていたりした。同時にかぐやのこれだけの胸があれば、とっくに白銀を落とす事も出来たのではと考えてりもした。
「でも驚いたよ。2人共バイクの運転出来たんだな」
「四宮家の従者ならこれくらいできるよ。流石に飛行機は無理だけどね」
「……もしかして船は操縦できる?」
「一応」
早坂は割と何でもできる万能メイドだ。当然、バイクや船などの乗り者も運転できる。流石四宮家に仕えている従者と言うべきだろう。
「お前すげーな…四宮家辞めてほとぼりが冷めたらうちにこねーか?好待遇で雇うぞ?」
龍珠は結構本気で早坂を誘う。料理洗濯掃除、バイクの運転や護身術。更に京佳と龍珠には言っていないが、変装技術や潜入技術も持っている早坂。こんな優秀な人材、中々いない。龍珠が欲しがるのも納得だ。
「魅力的なお誘いではありますが、反社組織に身を置くのはちょっと…」
「ま、そりゃそうだわな。忘れてくれ」
(ぶっちゃけ四宮も似た様な感じだけどね…)
だが流石に、反社会的勢力に身を置くのは勘弁したい早坂。四宮家も似たような感じだが、それでも勘弁しておきたい。
「それで、この先か?」
「うん。この坂を登ったところ。そこが、私の最期の仕事をする場所」
3人の眼前に、月明かりに照らされたそこそこ長い坂道が現れる。そしてこの先こそ、早坂が言う思い出のあの場所らしい。
「行こう。もうかぐや様が待ってるかもしれないし」
尚かぐやは現在、早坂との思い出の場所をいくつか思い出しながら京都市内とあっちこっちと行ったり来たりしているのでまだ来ていないのだが、その事を知らない早坂は急いで向かおうとする。
「待てっ!!」
だがその途中、突然龍珠が早坂の背負っている鞄を掴んで早坂の歩みを止める。
「え?龍珠さん?」
「やられた…」
早坂が振り返ると、龍珠の手には黒い何かが握られていた。
「それは?」
「GPSタグだ…」
「なっ」
それは、小型のGPSタグ。簡単に言うと発信機である。
「あの時か!!」
京佳は直ぐに心当たりを思い出す。人込みに紛れて、背後から声をかけてきた四宮家からの追手。あの時は直ぐに京佳がわざと目立つべく早坂にキスをして事無きを得たが、恐らく去り際にこれを早坂の鞄に取り付けたのだろう。
「くっそ!」
龍珠は直ぐにGPSタグを踏みつけて破壊する。
「おい急ぐぞ。もう向こうはこっちの居場所を知っている。用事があるなら直ぐに終わらせろ」
「わかりました」
追手を巻いたと思ったら、向こうはずっとこっちの居場所を把握していた。四宮家からの追手がこっちに来るのも時間の問題だろう。一刻も早く坂を登り、最後の仕事をすまさなければならない。
「あー、成程ここか。確かにこんな場所あったな。虫が多くて嫌いなこんな場所が」
『っ!?』
しかし、現実は無常だった。既に四宮家の追手が追いついてきたのである。
「よお早坂。久しぶりだな」
「雲鷹様…」
早坂達の視線の先にいるのは、四宮雲鷹。四宮家当主、四宮雁庵の息子で、かぐやの腹違いの兄である。そしてその後ろには、彼の部下であろう人が4人いる。その中には、先ほど人込みで自分達を攫おうとした帽子を被った女性もいた。
「ま、こうして人気の無い場所に来たのは助かる。あまり騒ぎにしたくなかったしな」
その言葉に、寒気がする。まるでこれから、本当に人をこの世から消そうとしているように聞こえたからだ。
「走れお前ら!!」
「「っ!!」」
龍珠が叫ぶと同時に、早坂と京佳は坂道を上がる。
「追え、逃がすな。多少手荒な真似をしてもいい」
「「了解しました」」
だが当然、雲鷹も逃がす気なんて無い。直ぐに部下に指示を出して、2人を追わせる。
「おらっ!!」
「ぐっ!?」
しかし、その前に龍珠が部下の1人の顔に蹴りを入れた。おかげでその部下は足を止めるが、他3人はそのまま龍珠を素通りして早坂と京佳を追う。
「随分狂暴だな。おい、お前はそいつをなんとかしとけ」
「っわかりました」
雲鷹は龍珠に蹴られた部下にそう命令を下すと、早坂と京佳が逃げた方向へ歩き出した。
「くっそ!」
「やらせませんよ?」
「ちっ!」
直ぐに龍珠が雲鷹を押せようとするが、そう簡単に行くはずもない。先程の部下が、鼻血を出しながら龍珠の前に立ちふさがって足止めをしてきたからだ。
「あまり子供相手に手荒な真似はしたくなりませんが、こちらも命令ですので」
何とかして、目の前の部下を倒さないといけない。そして早坂がと京佳と共に、この場を去らないと。でないと多分、いや確実に良くない事が起きる。そういった確信が、龍珠の中にあった。
「くそが…」
こちら素手な上に相手は明らかにプロだが、やるしかない。龍珠は自分を奮起させ、目の前の障害を取り除くべく動き出す。
「くっ!」
「大人しくしてください。さもなくば腕を折ります」
龍珠に言われ走った2人だったが、流石にプロ相手にこんな1本道の場所から逃げ切る事なんて出来ず、走ってから1分後には雲鷹の部下の八雲によって、地面に抑えつけられる形で取り押さえられていた。
「早坂、お前俺から逃げ切れると本気で思っていたのか?」
「……」
「そういうところはまだまだガキだな。逃げ切れる訳ねーだろ」
地面に取り押さえられた早坂の目の前で、雲鷹は早坂を見下ろしながら喋る。
「にしても、八雲から聞いたが驚いたぜ。お前、そういう趣味だったんだな」
「……何がですか」
「そこの無駄にでけぇ眼帯女、お前の恋人なんだってな」
「「え??」」
今度は京佳を見ながら喋る雲鷹。そして予想外の言葉に早坂と京佳がハマる。
「泣けてくるね。恋人に為に逃避行か。だが、そんなの全部無意味だ。現実はドラマのようにはいかない。お前達は逃げきれずにここで俺らに捕まっているのが良い証拠だ」
「いやあの、違うんですけど…」
「んな訳ねーだろ。恋人じゃなかったら人通りの多い場所で突然キスなんて普通しねーぞ」
「あー…」
それはそう。
「おい、早坂はこっちに連れて来い。そして八雲はそこの眼帯女を押さえてろ。抵抗するなら何してもいい」
「わかりました」
雲鷹に命令された部下は、早坂を立ち上がらせてその場から去ろうとする。
「は、早坂…!」
京佳は必死に抵抗するが、全く抜け出せない。なんせ相手はプロだ。素人の京佳がどう頑張っても、拘束から抜け出せる事なんて無い。
「早く歩け。出ないとそこのお前の恋人の眼帯女に、本当に何でもするぞ?ここには丁度池もあるしな」
「……わかりました」
このままでは本当に京佳の命が危ない。そう思った早坂は、素直に雲鷹の命令を聞く事にした。
「ごめんね、京佳…あと、ありがとう…」
最期に小声で京佳に謝ると、早坂は拘束されたまま雲鷹と共に歩き出す。京佳は何とかしようとするが、何にも出来ずにいた。そしてあっという間に、早坂の姿が見えなくなる。
「抵抗しないで下さい。生殺与奪の権利はこちらにあるのをお忘れなく」
「くっ…」
漫画やアニメなら、ここで不思議な力に目覚めて京佳は早坂を助ける事が出来るだろう。しかし、現実は違う。そんな力なんて沸いてこないし、頼りになる援軍も現れない。
こうして京佳は、成すすべ無く拘束されるのであった。
一方龍珠。
彼女は四宮家のプロ相手に、多少は善戦していた。相手が自分と同じ女性であるのが、善戦できている理由である。これが訓練を受けた大人の男性だった場合、龍珠も京佳のように成すすべ無く拘束されていただろう。
(畜生!せめて3段ロッドがあれば…!)
だがそれも時間の問題。何回か相手に攻撃を与える事は出来ているが、特別ダメージが入っているように見えない。せめて武器があれば違うのだが、無い物ねだりしても仕方が無い。
(喉狙うしかねーか…)
あまり使いたくない手だが、喉を思いっきり攻撃すれば相手も動けなくなるだろう。その隙に早坂達の元に行けばいい。力加減を間違えると命を奪いかねない手段だが、もう他に方法が無い。
だが龍珠が相手の喉に攻撃をしかけようとした時、
「っ!?」
龍珠は目の前が真っ白になり、視界を失った。
「がっ!?」
同時に、誰かに肩を掴まれて地面に無理やり座らされるような状態になった。視界が回復すると、四宮家からの追手の手には懐中電灯が握られているのを確認。恐らく、かなり明るい光を出せる懐中電灯だろう。彼女はそれを龍珠の目に当てて視界を奪い、その間に龍珠を無力化してみせたのだ。
「さっきはよくもやってくれましたね…」
四宮家の追手の声色には、怒りが出ていた。顔を思いっきり蹴られるなんて、彼女も思っていない抵抗だったのだ。同時に、こんな子供にやられた事に対して自分に怒りが湧いてくる。情けないし、ふがいない。
そしてもう攻撃を食らわないよう、もう少し龍珠を痛めつける事にした。殆ど八つ当たりだが、雲鷹からは多少手荒な真似をしてもいいと言われている。だから、やる。殺しはしないが、もうこれ以上抵抗できなくする。
「命までは取りませんが、腕の1本は覚悟してもらいますよ」
「っ…!!」
そうして彼女は、龍珠の腕に思いっきり力を入れる。このまま、龍珠の腕を折るつもりなのだ。腕さえ折ってしまえば、もう抵抗なんて出来ない。後は子供らしくその場に蹲って泣きじゃくるだけだろう。
「やめろてめぇーーー!!!」
「なっ!?」
だがその時、突然背後から大声と共に誰かが走ってきた。
「ふん!!」
「な、何を…!?」
そしてその声の主は、追手である彼女を腕を掴んで、
「おらぁぁぁぁ!!」
「がっは!?」
そのまま綺麗な背負い投げを決めてみせたのである。
「う、うぅ…」
とっさの出来事に受け身を取る事が出来なかった彼女は、そのまま意識を失った。
「大丈夫か!?龍珠!!」
彼女を投げえ飛ばした声の主は、直ぐに龍珠に駆け寄る。
「小島?」
その声の主は、龍珠とは犬猿の仲で有名な柔道部の小島であった。
「何でお前、ここに…」
「あ!えーっと、偶然…そう偶然こっちに来ていてな!それでお前がなんか襲われていたから、助けたんだ!」
龍珠に聞かれ、小島は説明をするが、その目は泳いでいた。
「……さてはお前、朝から私らの後ずっと着けてきたろ」
「……ナンノコトカワカラナイデス」
龍珠は思い出す。団子屋に行った時、自分の方を見つけるなんか熱っぽい気持ち悪い視線を。あれは間違いなく、小島だろう。思えば彼はここ最近、ずっと龍珠に付きまとってきた。
それまで顔を合わせれば喧嘩ばかりしていた筈なのに、最近は何でか普通に挨拶をしたり、何故か食事に誘ってきたりしてくる。そんな彼の行動を振り返れば、朝から自分に付きまとっていてもおかしくない。
「でもまぁ、ありがとよ」
普段なら文句どころか拳を飛ばすところだが、今はかなり危なかった。そんな危機的状況を助けられているので、いくらいけ好かない小島相手だろうと、お礼はくらいは言う。
「それで、怪我とかしてないか?」
「別にしてねーよ。それより、ここの上に行くぞ。このままだとあの2人が危ねぇ」
「よくわからんが、わかった。肩貸すか?」
「いや、いい。とにかく行くぞ」
「了解だ」
多少腕は痛むが、自分は大した怪我はしていない。そんな事より、今は早坂達の方が心配だ。直ぐに上に行って、2人を助けないといけない。小島もいるし、このままなら何とかなるかもしれない。
「いや、その必要は無い」
「「え??」」
だが龍珠が動こうとした時、小島に続いてまたしても知らない声がしたのだった。
「さて早坂。これでやっと落ち着いて話ができるな」
雲鷹は再び部下に早坂を地面に押さえつけさえ、早坂の目の前で早坂を見下ろしながら話す。
「お前たち早坂家の一部の奴らが、大兄貴に寄り添っていたのはもう知っている。ま、大兄貴もそれを理解した上でお前達を利用してたんだろうけどな」
「……」
「かぐやのところにお前が差し出されたのはそういう裏があるからだろう?母親と同じで、お前も薄汚いドブネズミの密告者って事か」
「……」
早坂は何も言わない。言い返せない。だって全部事実なのだ。言い返す事なんで出来ない。
「でもまぁ、そういった狡猾な動きは嫌いじゃない。だから提案だ。大人しくこのまま俺の下に着け。断るなら、裏切り者に相応しい末路を与えてやる」
そして雲鷹は、早坂をスカウトする。彼女自身優秀だし、長男である黄光の情報も手に入るかもしれない。ここでこのまま早坂を始末するのは、あまりに惜しい。だから最後のチャンスとして、こうしてスカウトしているのだ。
「嫌です…私はもう、これ以上かぐや様に…」
「はあ…10年も傍にいたら情も沸くか」
でもこれ以上、かぐやを裏切る事なんて早坂には出来ない。密告者のくせに何を言っているのかという話だが、もうこれ以上かぐやに嘘を着けない。
だって早坂愛は、四宮かぐやの事が大好きなのだから。
大好きだからこそ、これ以上巻き込めない。巻き込みたくない。これ以上、かぐやを裏切れない。何より自分がしでかした事を、知られたくない。
「だったら、それを断ち切ってやる」
雲鷹はそう言うと、スマホを取り出す。
「……まさか!!」
途端に嫌な予感がする早坂。それはダメだ。それだけはダメだ。それだけは、どうかやめて欲しい。必死になって抵抗するが、雲鷹はそのままスマホを操作してとある人物に電話をかける。
「おうかぐや、俺だ」
早坂の抵抗むなしく、雲鷹はかぐやと話し始める。早坂にかぐやに対する思い。それを完全に断ち切る為に、これまでの事を全部話す。そうすれば、もう早坂はかぐやを裏切る云々の言い訳は出来ない。
「やめて…!それだけは…!!」
早坂は何とか電話を切ろうとするが、拘束された今の状態ではそんな事出来ない。自分はどんな目にあってもい。それだけの事をしてきたのだから。でもかぐやに真実を知られ、嫌われる事だけは耐え切れない。それだけは絶対に耐え切れない。だからそれだけは、どうかやめてくれと涙を浮かべながら懇願する。
だが、現実は非情である。
「お前、裏切りとかそういうの嫌ってただろ?だから俺から可愛い妹のお前にプレゼントだ。早坂はずっと、お前の情報を大兄貴に渡し続けていた。お前と出会ったあの日から、10年間毎日な」
「っ…」
終わった。かぐやに知られてしまった。自分の罪を、全部知られてしまった。瞬間、早坂は血の気が引き地面に顔をつけうなだれる。
「裏切り者なんていらいないっていうなら俺のところで引き取るが、どうする?」
『―――』
「そうか。わかった」
雲鷹は電話を切り、早坂に向き直す。
「好きにしろってさ。ほら立て。場所移すぞ」
「……はい」
雲鷹はそう言いながら、早坂のサイドテールを掴んで無理やり立たせる。早坂も、もう抵抗なんてしない。たった今、自分が1番怖かった出来事を体験したからだ。もうどうでもいい。いっそこのまま、死んでもいい。そう思うくらい、早坂の精神はぐちゃぐちゃになってしまった。
「勘違いしないでちょうだい」
「……え?」
「好きにすればいいっていうのは、貴方に言ったのよ早坂」
そんな早坂の元に、かぐやは突然現れたのだ。
「ぐっ…!」
「もう暴れないで下さい。私は貴方の腕を折る事も可能なんですよ?」
京佳は全く動けずにいた。何度か拘束を抜け出そうと必死になってもがいたが、全く抜け出せない。自分が動く度に、部下の腕に力が入り京佳の腕を締め付ける。
このままでは、早坂が何をされるかわからない。だが京佳に、拘束された状態を抜け出す技術なんて無い。
「…武器も持っていない未成年の女子高生をこうも必死になって追うなんて、四宮雲鷹っていうのは随分と小さい男なんですね」
「……」
そこで京佳は考えた。力や技術で抜けだせないのなら、口でなんとかしようと。人は冷静さを失うと、普段できている事が出来なくなる。だから先ずは、今自分を拘束している彼女を煽って、感情的になった隙を見つけて抜けだす。その後は体当たりでもして、彼女を池に落とそう。そして早坂の元へ行く。
「それともアレですか?実は彼は未成年にしか興奮できないそういう趣味の変態なんですか?それならこんなに必死に早坂を追うのも納得できますね。だって女の私から見ても、あの子は綺麗な子だ。そういう趣味の人なら、どんな手段を使ってでも手にしたいなんて思ったりするでしょう。もしかして今頃、早坂に無理やり迫っていたりするんですかね?とんだ変態だ」
「黙りなさい…」
無論、黙らない。最初に比べると、明らかに声に感情が乗っている。このまま相手を怒らせて、何としてでもこの拘束を解く。
「私はそういった事に詳しくありませんが、あんな男では四宮家の上に立つ事は出来ないでしょう。それくらいはわかります。だって未成年を必死になって追っているんですよ?しかしこちらの命を奪うと脅しながら。そうやって人を権力で脅して、私腹を肥やすなんて絵に描いたようなクズだ。あの男はいずれ報いを受けるでしょうし、その内誰からも見捨てられて最期は1人で死ぬんじゃないですか?」
「黙れ…」
京佳を拘束している八雲の腕に、より力が入る。しかし京佳は口を閉じない。
「しかし、四宮家というのはどうしようも無い家ですね。いくら歴史が古いと言っても、やっている事はその辺のヤクザと変わらない。いやむしろ、その辺のヤクザ以下かもしれない。私が知っている四宮家の子は、偶に変な事をしますがとっても尊敬できるし、私が超えるべき壁だと認識した本当に凄い子です。だというのに、あの雲鷹という男はまるでそんな気配が無い。身に纏っているスーツのデザインもなんかダサイし、あの人を常に見下している目つきも気持ち悪い。一体どんな教育を受けたら、あんな風になってしまうんですかね?あんな男が上司で、貴方が可哀そうでなりませんよ」
「黙れと言っています!!」
京佳が尚も雲鷹の事について話していると、八雲が懐から何かを取り出してそれを京佳の目の前に向ける。
「っ!?」
それを見て、京佳も絶句する。なんせ八雲が懐から出したのは、拳銃だったのだから。
(嘘だろ!?まさか、本物か!?)
初めて見る拳銃を前に、京佳は体を硬直させてしまう。京佳も相手が武器を持っている可能性は考えていたが、せいぜいナイフくらいと考えていた。しかし八雲が取り出したのは、まさかの拳銃。いくら四宮家が物騒と早坂から聞いていたとはいえ、流石にそれは無いだろうと高を括ってしまったのだ。その油断の結果が、これである。
龍珠であればこの状況も何とか出来るだろが、この時点で京佳に出来る事はもう無い。なんせ体がすくんでしまったからだ。正直に言って、怖い。とっても情けないことだが、本物の拳銃が自分に向けられていると思うと怖くて動けない。
そして八雲は、その拳銃を京佳のこめかみに当てる。
「雲鷹様の事を、あの人の事を何も知らないくせによく口が回りますね!!それ以上雲鷹様の事を悪く言うのであれば、ここで貴方を始末します!!言っている事はわかりますね!!」
(しまった…!煽りすぎた…!!)
京佳はやりすぎたと悟る。相手を煽って感情的になったところで拘束を抜け出す気でいたが、これはダメだ。流石に拳銃を向けられた状態で動ける程、京佳は強くない。
(っ…)
現に今、京佳は自分が震えているのはわかる。怖い、とっても怖い。体に力が入らない。本物の命の危機に直面した結果、何もできなくなってしまった。これではもう、早坂を助ける事も出来ない。後はこのまま、全てが終わるまで八雲に拘束され続けられるだけだ。
「そこまでだ」
しかしそんな状況に、突然声が聞こえた。京佳が声のした方を向くと、
「昨日の、お爺さん?」
そこには、昨日京佳が財布を拾って渡した老人がいた。どうしてこんなところにいるのか、京佳は全くわからずに頭に疑問符を受かべる。
「な、なんで…?」
そして八雲は、信じられない者を見たような顔になる。だって彼が、こんな場所にいるわけないからだ。そもそも自分が直接見る事さえ稀なのに、なんでそんな彼がここにいるのか理解できない。
「八雲、今すぐその子から手を離せ。これは四宮家当主、四宮雁庵の命令である」
なんせ彼は、かぐやの父親であり、四宮家現当主である四宮雁庵なのだから。
兄貴と親父登場回。ここからどうするかは、次回まで待っててください。あと会長は、この話の裏でずっと精神おかしくなっています。
それと、変な箇所とかあったら言ってください。修正します。
ところで、修学旅行後にかぐや様の父親がクリスマスの件で京佳さんの家に謝罪にいかせるべきか悩んでいるのですが、どうしましょうね?
アンケート設置したので、どうかご協力お願いします。
かぐや様の父親が、立花家に謝罪に行くのは
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あり
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無し