もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・   作:ゾキラファス

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 修学旅行編の途中ですが、本日は11月22日の良い夫婦の日なので、本作ではおなじみとなっている特別編を投稿です。
 今回はいつもと少し毛色が違いますが、楽しんでいただけたら幸いです。


特別編 白銀父と再婚

 

 

 

 

 

「はぁ…」

 

 白銀御行と白銀圭の父親である白銀涼介は、ため息をつきながら街中を歩いていた。妻が出て行って数年経つが、未だに出て行った妻に未練があるからである。

 

(いい加減、踏ん切りつけないといけないんだけどな…)

 

 情けない事だとは、彼もわかっている。子供達の為にも、しっかりと離婚届に判子を押すべきなのだろう。でも無理だ。どうしても無理なのだ。だってまだ、妻の事が好きなんだから。

 もし今夜にでも、出て行ったはずの妻が再婚してくれと言ったら速攻で承諾するくらいには、今でも妻の事を愛している。

 

(俺はなんて情けない男なんだ…)

 

 彼も何時までもこのままだなんてダメだと頭ではわかっているのだが、やはりどうしても離婚届に判子を押せない。何かきっかけでもあればいいのだが、そう都合よくきっかけなんてある訳が無い。

 このまま自分は、死ぬまで一生情けないまま過ごすのかと思うと、憂鬱になる。

 

「きゃあ!?」

 

 そんな風に1人落ち込みながら歩いていると、背後から悲鳴のような声が聞こえた。

 

「誰かその人捕まえてーー!ひったくりですーー!!」

 

 涼介が振り返ると、1人の帽子を深く被った男が、両手に黒い鞄を持って走って来た。そしてその後ろには、倒れながらも男を指刺して訴えるスーツ姿の女性が1人。女性の言い分を信じるなら、男はひったくり犯なのだろう。

 

「どけぇ!!」

 

 帽子を被ったひったくり犯が、涼介のいる場所まで走ってきた。そしてすれ違いそうになった瞬間、

 

「えい」

 

「ぐえ!?」

 

 涼介はひったくり犯に自分の足を引っかけて、こけさせた。更に転んだひったくり犯から鞄を奪い去り、そのまま高校の時に通信教育で習った護身術をかける。

 

「いだだだだ!?は、離せてめぇ!!」

 

「すみません。誰か警察呼んでください」

 

「わ、わかりました!」

 

 近くにいた人に通報するよう頼み、涼介はそのままひったくり犯を拘束し続ける。

 

 その数分後警察が到着して、ひったくり犯は逮捕された。

 

 

 

「大丈夫ですか?」

 

 警察による簡単な事情聴取を終えた後、涼介は鞄をひったくれた女性に話しかけていた。

 

「ええ、少し膝すりむいてしまったけど、特に問題ありません。それはそうと、本当にありがとうございます!この中には大事な書類が入っていたもので!」

 

 どうやら女性に怪我は無いらしい。そして大事な書類も無事との事。特に大した事なくて何よりだ。

 

「あ、私こういう者です」

 

 すると女性は、名刺を差し出してきた。そこにはとある不動産会社の名前と、立花佳世という名前。

 

「これはご丁寧に。私はこういう者です」

 

 名刺をもらったのなら、こちらも差し出さないといけない。涼介も名刺を差し出す。

 

「白銀さんって言うんですね」

 

「ええ、一応経営コンサルタントとかの仕事をやってます」

 

 本当は他にも色々しているのだが、ここはとりあえずそれで通す。

 

「重ね重ね、本当にありがとうございます。これ失くしたら私クビになってましたよ。いや本当によかった…」

 

「いえいえ、何事も無いようでよかったです。それでは、私はこれで」

 

 立花という女性も特に怪我がないし、重要な書類も無事。これでこの1件は解決だ。これ以上ここにいてもしょうがないので、涼介はそのまま立ち去ろうとした。

 

「あの、今夜時間ありますか?」

 

「え?」

 

 だがその前に、佳世からそんな事を言われて、足を止めたのであった。

 

 

 

 

 

「お待たせしました、白銀さん」

 

「いえいえ、私も今来たところですから」

 

 その日の夜。2人は都内のとある居酒屋に2人揃って入っていく。あの後直ぐ、2人は時間と場所を指定して夜に再び会う事になった。

 そして今日のお礼と言う事で、佳世は涼介にご飯を奢る事にしたのである。勿論、涼介はそんなつもりで助けた訳じゃないと言いは最初断った。

 しかし、佳世の『いいえ!どうしても奢らせて下さい!』という謎の熱意に負けて、こうして奢らせてもらう事にしたのだ。

 

「それじゃ、白銀さんは何を飲みますか?私、これでもそこそこ稼いでいるので遠慮はいりませんよ?」

 

「そうですか。それじゃあお言葉に甘えて、ビールの大ジョッキを」

 

「わかりました。すみません。生ビール大ジョッキで2つ。あと焼き鳥セットください」

 

「わかりました」

 

 席に座った佳世が店員に注文をし、2人は向かい合って会話をする。

 

「改めて、今日は本当にありがとうございました」

 

「いえいえ。私は偶然居合わせただけですし」

 

「でもおかげで私は仕事をクビにならずにすんだんです。白銀さんは命の恩人ですよ」

 

「流石に命の恩人は言い過ぎな気がしますが…」

 

 涼介も1度仕事を失っているので、その怖さはよくわかる。突然収入が無くなり、下手すると住む場所も失う。こんなに怖い事は無い。でも流石に命の恩人は言い過ぎな気がしてならない。

 

「お待たせしました。ビール大です」

 

 若いアルバイトと思わしき店員が、ビールを持ってきた。そして2人はそれを手に取り、

 

「「では、乾杯」」

 

 軽くジョッキをぶつけてビールを飲む。

 

「ぷっはーー!やっぱり仕事の後はこれですねー!」

 

「ですね。仕事終わりの生ビールは本当に格別だ」

 

 色々と苦労の多い現代日本人。その疲れに1番効くのは、やはりビールだ。特にジョッキで飲むキンキンに冷えたビールは格別としか言えない。

 

「しかし、本当にビールなんて久しぶりだな」

 

「あれ?もしかして白銀さんってあまりお酒飲まない人ですか?」

 

「いいえ。お酒は大好きなのですが、ちょっと色々と事情がありまして」

 

 そして酒も入った事で、2人は口が軽くなり会話が弾むのであった。

 

 

 

「そうですか。奥さんが」

 

「ええ、そして今でも出て行った妻に未練がありまして。全部私が不甲斐ないせいなのですが、どうしても踏ん切りつかなくて…そして勝手に1人で落ち込んで寂しいと思ってたりするんですよ…」

 

「わかります。私も病気で夫を亡くして、その気持ちを仕事とかで誤魔化していますが、ふとした拍子に寂しくなりますし」

 

 既に飲み始めて1時間以上。最初は仕事や自分の趣味などの話をしていたが、気が付けば2人はそれぞれの家庭の事も話していた。そこでわかった事が、何と2人ともパートナーがいないという事と、子供が2人いると言う事だった。おまけにお互いの子供の1人は、どっちも同じ中学生。こうしてみると、思っている以上に共通点が多い。故に会話が弾むのも、当然と言える。

 

「おっと、もうこんな時間ですか。そろそろお開きにしませんか?」

 

「そうですね。じゃ、名残惜しいですがこの辺で」

 

 しかしその楽しい時間も、終わりが来てしまう。既に21時を過ぎている。明日も仕事がある2人にとって、これ以上家に帰らない訳にはいかない。子供も心配だし。

 

「それじゃあ、今日は本当にありがとうございました」

 

「いいえ、こちらこそ奢っていただいて感謝します。それでは」

 

 店を出て、2人はそれぞれ別方向に歩き出す。

 

「あ、あの」

 

「ん?」

 

 しかしその直後、佳世が涼介に話しかけてきた。

 

「またご飯どうですか?白銀さんとの話、とっても楽しかったですし」

 

 そして再び食事の誘いをしてくる。

 

「いいですよ。今度は私が奢ります」

 

「ふふ、そうですか。それでは」

 

 涼介も断る事はしなかった。

 

(なんか、久しぶりに心が楽しいと思えたな…)

 

 何故なら、佳世との時間はかなり楽しかったからだ。家族と過ごす以外で、こんなに楽しいと思えたのは出て行った妻と付き合っていた時以来かもしれない。

 最近はずっと精神的に疲れていたのもあってか、心がかなり安らいだ。やはり、人と話すというのはとても楽しい。なんせ誰かと話すだけで、溜まっている不安やストレスをかなり軽減されるからだ。

 

 

 

 その後も2人は、月に1~2回程食事を共にした。

 

「息子と娘の為にも、ちゃんと離婚届けを出さないといけないのはわかってるのですが…」

 

「無理して出す必要は無いんじゃないですか?あまり無理しちゃうと、心に傷がつきますし」

 

 ある時は、未だに離婚届を出せない事を相談した。

 

「上の子が将来は護衛艦の艦長になるって言っていて、ちょっと心配なんですよね。だって万が一の時って、戦場に行く事になってしまうじゃないですか。親としてはちょっとね」

 

「成程。それが仕事とは言え、親としては確かに不安ですね。私ももし息子が将来そうなりたいと言えば、手放しに喜ぶ事は出来ないでしょうし」

 

 ある時は、息子の将来について相談した。

 

「実は娘が、秀知院学園を受験しようとしているんですよ。将来色々と為になると言って」

 

「いいじゃないですか。あそこは奨学金制度もかなり充実していますし。うちの息子も受験させようかな」

 

「ふふ、もし一緒に受かれば、子供達は同級生ですね」

 

 ある時は、子供達の進路について話したりした。月に数回しか会わず、共に食事をしながら話すだけ。しかし、これがとっても楽しい。同年代の、それも境遇が似ている者同士。これで会話が楽しく無い訳ないのだ。最初はお礼として食事を共にした関係だったが、何時しか2人の関係は腹を割って話せる友人となっていた。

 

 だがそんな日々が数か月ほど続いたある日、それまでの2人の関係を変える出来事が起こる。

 

「ははは!これ凄いお酒ですねー!!」

 

「ですね。味も香りも良い。これは良い酒だ」

 

 その日、2人は何時もとは違う店で飲んでいた。そこで店がオススメとしていた酒を飲んで何時もの様に話していたのでが、この酒がちょっと問題である。

 とても飲みやすく、とても香りがよく、とても美味しく、そしてとっても強い。そんな酒なのだ。最初の1杯こそ普通に飲んでいたが、あまりに飲みやすいのでついグイグイと続けて飲んでしまう。その結果、こうして見事に出来上がってしまっているのである。

 

「お客さん、ちょっと飲みすぎですよ。そろそろ」

 

「あー、そうですね~。じゃああと1杯だけお願いします~」

 

「ですね。そういう事であと1杯だけお願いします」

 

「はぁ、わかりました。でも本当にあと1杯だけですからね」

 

「は~い」

 

「どうも」

 

 流石に店員に止められて、2人は最後の1杯を飲んでそのまま帰る事にした。

 

「えっと、駅ってどっちでしたっけ~」

 

「そうですね。多分あっちですね」

 

 並んで夜の街を歩きながら、2人は駅に向かう。

 

 そしてその道中、虹色に輝く建物が目に入ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

 

 朝日が顔を照らしたのに気が付き、涼介が目を覚ます。

 

「うーむ…まだ酒が残ってるな…昨日はちと飲みすぎた…」

 

 頭が少し痛く、体もダルイ。やはり昨日は、少し飲みすぎてしまったようだ。1度顔を洗えば、少しは気分もスッキリするだろう。

 

「……何処だここ?」

 

 しかし顔を洗おうと洗面所に行こうとしたが、直ぐに異変に気がついた。明らかに自宅じゃない。自宅に無い筈の大きなテレビがあり、壁紙も綺麗。そして何故か、家に無い大きなベットの上にいた。

 

「……」

 

 おまけに自分の隣には、何か大きなふくらみがある。具体的に言うと、人間1人くらいの大きなふくらみが。

 

「……」

 

 マズイ気がする。涼介が恐る恐る布団をめくってみるとそこには、

 

「すぅ…すぅ…」

 

 昨日一緒に飲んでいた立花佳世が寝ていた。

 

 全裸で。

 

「……」

 

 改めて涼介が周りを見渡すと、そこには脱ぎ散らかした服と下着。そして明らかに使用済みの防弾チョッキが数個。おまけに自分も全裸である。

 

「……やっちまった」

 

 ここで涼介は思い出した。昨日の夜、佳世と共に駅に向っていた時、偶然目に入ったホテル。お互い飲みすぎて疲れたいたのもあり、そこで休憩しようとしたのだ。

 しかし部屋に入って直ぐ、酔った佳世が涼介にキスをしてしまい、それが引き金になって事に及んだのである。

 

 要するに、酒の勢いからの一夜の過ちという奴だ。

 

(どーしよう…)

 

 これはマズイ。色々とマズイ。何せ自分達は今現在、一線を越えてしまっている。恋人でもないのに、これはマズイ。下手すると裁判沙汰だ。

 

「あ、白銀さん…」

 

 涼介が頭を抱えていると、佳世も起きて状況を察した。

 

「あ、あははは…お酒の力って、怖いですねぇ…」

 

「はは…そう、ですね…」

 

 お互い、乾いた笑いしか出てこない。いくら酒の勢いだからと言っても、これはもう色々とヤバイ。

 

(でも、立花さんと一緒にいるのは楽しかった…)

 

 しかし涼介、ここでふとこれまでの事を思い返す。元々ただ食事を奢られただけの関係。だがそれはいつしか友人関係となり、とても楽しい時間を過ごせるようになっていた。それこそ、出て行った妻の事を忘れるくらいには。

 そして今、こんな風になってしまっている。もしこのまま別れたら、多分もう2度と以前のような関係には戻れないだろう。もしかすると、2度と会う事すらなくなるかもしれない。

 

(それは、嫌だな…)

 

 それは絶対に嫌だ。このまま2度と会えなくなるなんて、絶対に嫌だ。叶うのなら、このままずっと傍にいて欲しい。涼介は今強くそう思ってしまった。

 

「立花佳世さん」

 

「ひゃ、ひゃい!!」

 

 故に白銀涼介は、腹をくくった。

 

「貴方さえ良ければ、責任を取らせてください」

 

 そしてそのまま、ベッドの上で土下座を慣行したのであった。

 

 

 

 

 

「御行、圭。大事な話がある」

 

「何だよ父さん、随分改まって」

 

「どうかした?」

 

「実は、今度2人に会って欲しい人がいるんだ」

 

「「え?」」

 

 

 

「ねぇ、京佳」

 

「何だ母さん?」

 

「あのね、ちょっと会って欲しい人がいるの」

 

「ん?」

 

 そしてその数日後、2人は自分達の家族に大事な話をする事にした。

 

 

 

 

 

「初めまして、白銀御行くんと白銀圭ちゃん。立花佳世って言います」

 

「は、初めまして」

 

「どうもです…」

 

 数日後、都内のレストランで、白銀家と立花家の者たちは集まっていた。

 

 あの日涼介は腹をくくり、佳世と再婚する覚悟を決めた。当然佳世が断ればそれ以上何かする気は無かったが、佳世も結構乗り気であったのだ。

 そして再婚の前に、先ずは自分達の子供と一緒に食事をしようと提案。そこで子供達も特に問題無いとあれば、再婚しようと思ったのである。

 

((美人な人だなぁ…))

 

 佳世を初めて見た御行と圭は、そんな感想を思う。出て行った母親とは違うタイプの美人。そして、その胸は豊満であった。

 

「えっと初めまして、娘の立花京佳と言います」

 

「初めまして。息子の立花透也って言います」

 

「どうも。白銀涼介です」

 

 同時に佳世も子供達である京佳と透也。2人も涼介とあいさつをかわしていた。

 

((すっごい良い声してるな…))

 

 因みに初めて涼介と会った時の感想が、それである。実際こんな良い声の人、早々いないだろう。

 

「それじゃ、今日は美味しいもの沢山食べてね」

 

「そうですね。そっちも、遠慮しなくていいから」

 

 そして両家は、向かい合って食事をする。

 

「へぇ、自衛隊の学校なんてあるんですね」

 

「うん。給料も出るし、そこを卒業できたらそのまま自衛隊に入れるから色々と楽なんだ」

 

「そうなんだ。私も入ろうかな?」

 

「でもやっぱり授業も訓練もキツイね。だからあまりおすすめは出来ないよ」

 

 圭は透也と向かい合って話す。兄御行とは違う兄である透也身長は高く、体は引き締まっており、顔も整っている。

 

(おにぃと全然違って、カッコいいかも)

 

 そんな透也に、圭はちょっと憧れのような感情を抱く。

 

「あの、聞いていいかわからないが、その左目は?」

 

「ああ、これか?少し前にちょっとあってね。だからしているんだよ」

 

「そうだったのか…かっこいいな」

 

「え?これがか?怖いとかじゃなくて?」

 

「え?全然怖くなんてないけど」

 

 そして京佳は、家族以外だと友達である恵美以外で初めて自分の見た目を怖がらない御行に対して、警戒心を解いた。

 

 お互い、最初こそどう接すればいいかわからずに警戒していたが、今ではそんな空気はどこにもない。楽しそうに話しながら、食事をしている。

 

「これなら、問題ないかもですね」

 

「ふふ、そうですね」

 

 そんな子供達の様子を見て、涼介と佳世は静かに笑い合う。

 

 

 

 白銀家

 

「父さんな、再婚したいって思っているんだ」

 

 食事が終わり、それぞれ帰宅した後。涼介は御行と圭に、自分が再婚したいという話を切り出した。

 

「父さん、一応聞くけど、それは母さんとって事じゃないよな?」

 

「勿論だ。再婚したいのは佳世さんとだ」

 

「マジか」

 

「あれだけお母さんの事ズルズル引きずっていたパパが…」

 

 ずっと出て行った妻に未練を残していた涼介。当然その事は、子供達も知っている。何度離婚届を出せと言っても、全然出さない。そんな彼が、ちゃんと離婚して再婚したいと言い出した。

 

「因みに離婚届けは?」

 

「何時でも出せる状態にした。何なら明日役所に行って出してきてもいい」

 

「おお…」

 

 おまけに既に離婚届に判子も押しているらしい。

 

「それでだ。どうだ?」

 

 そして涼介は、やや不安そうに子供達に尋ねる。ここでもし子供達が拒否すれば、再婚の話は無かった事にしようと考えていた。自分の想いより、子供達の想いの方が重要だからだ。

 

「まぁ、いいんじゃないか?突然新しい家族が増えるのはびっくりしたけど、佳世さんは良い人って事は俺もわかったし」

 

「私も、立花さん達となら上手くやれると思う」

 

 しかし子供達は、反対などしなかった。既に2人にとって、出て行った母親なんて他人。更に言えば、2人共立花家に良い印象を持っている。これなら、家族になっても上手く行けるだろう。

 

「自分で言っておいてなんだが、いいのか?」

 

「いいよ。俺は反対しない。何なら賛成だしな」

 

「私も、パパが良いならいいよ」

 

「……そうか。ありがとう、2人共」

 

 涼介は本当に良い子供と持ったと思い、翌日役所に行く事にした。

 

 

 

 同時刻 立花家

 

「私ね、白銀さんの事好きになってるの…」

 

 白銀家と同じように、佳世は子供達に今後について話をしていた。白銀家と違い、佳世は夫と死別している。今までもずっと夫の事を想っていたが、ここにきて涼介の事を想うようになってしまった。

 

 夫が死んで、もう数年。今までずっと夫を忘れた事なんて無かったのに、最近は涼介の事を考えてばかり。彼と一緒に飲んで話すのは、本当に楽しい。こんな日々が、続けばいいのにと思ってしまうほどに。

 そこにきてあの夜だ。勿論あれは酒の勢いだったが、それでも佳世は涼介を想うようになってしまった。最初こそこれは間違った想いなのかとずっと自問自答していたが、結果として佳世は涼介を選んでしまった。

 

「勿論、だからと言って死んだお父さんの事を忘れる訳じゃない。この先ずっと、お父さんの事は絶対に忘れない。それは多分、京佳も透也も同じなんだと思う」

 

 きっかけがアレなのもあり、これは夫に対する裏切りなのではと佳世は罪悪感で押しつぶされそうにもなっていた。それでも佳世は、涼介と一緒になりたい。そう思ってしまったのだ。もうこの想いは、覆らないだろう。

 

「お父さん、私の事許してくれるかな…?」

 

 佳世はまるで許しを請うように、静かに涙を流す。

 

「私としては、母さんが幸せならいいと思ってるよ」

 

 そんな母に、京佳は話しかける。

 

「母さんは、ずっと苦労してきたんだ。父さんが事故で死んで、それから1人で私と兄さんを育ててきた。毎日毎日夜遅くまで働いて、朝早くにまた仕事に行く。そんな生活をずっとしてきた」

 

 佳世はずっと働いてきた。子供を養うために、懸命に働いてきた。そんな母親の姿を、子供達は知っている。

 

「だから、ここでまた女の幸せを手にしてもいいと思ってるよ」

 

 だからこそ、そんな幸せを手にしてもいいだろう。

 

「俺も同じ気持ちだよ。それに白銀さんは良い人だしね。多分、上手くやっていけると思うよ」

 

 透也も同じ気持ちだ。母には苦労をかけている。ならばこそ、また幸せを手にしても罰なんて当たらない。

 

「それに父さんなら、許してくれるさ」

 

「うん、父さんなら許してくれるね」

 

 そして亡き父親も、母の幸せを願っていると確信している。

 

「ありがとう、2人共」

 

 こうして佳世は、再婚に向けて準備をするのであった。

 

 

 

 

 数か月後

 

「はい涼介さん。あーん」

 

「あーん。うん、やっぱり佳世さんの肉じゃがは美味しいですね」

 

「ふふ、そう言っていただけて嬉しいです」

 

 再婚した2人は、新しい家に引っ越してまるで新婚のように過ごしていた。

 

 (((キッツ…!!!)))

 

 子供達の前で。

 

(いやな親父。確かに俺は再婚してもいいと言ったよ?でも流石に歳考えろよ!!つーか場所選べや!!)

 

(母さんが幸せならいいと思っていたが、これ想像以上にキツイな…)

 

 新たに兄妹となった御行と京佳は、幸せいっぱいの両親を見てややゲンナリ。イチャつくのはいいが、ちょっとイチャ付きすぎだ。見ていてキツイ。

 なお透也は寮生活の為、このキツイ光景を見る事が無い。

 

(私も、透也兄みたいに、自衛隊工科学校に入ろうかな…)

 

 圭に至っては、寮がある工科学校に行こうと考えているくらいである。

 

 因みに白銀家には5億円の借金問題があったのだが、それは佳世が以前世話になった弁護士に依頼を出して解決を図った。弁護士が調べた結果、明らかに違法な手段、違法な金額である事が判明。

 そこを弁護士は徹底的に突いて行き、そのおかげで借金は2000万円にまで大幅に減っていったのである。更に言えば手放した工場も、近いうちに戻ってくる予定だ。

 

(良い事ではあるんだけどなぁ…)

 

 借金も減り、父親も離婚してからの再婚。今のところ良い事なのだろう。でも、父親のイチャイチャを見せられるのはキツイ。

 

「「「はぁ…」」」

 

 御行と京佳と圭は、揃ってため息をつくのであった。

 

 

 

 

 

「全く、厄日だな今日は…」

 

 その日白銀御行は、ずぶ濡れで帰宅していた。学校を終えて帰路についていた時、運悪く石につまづいて側溝に落ちてしまったのだ。そのおかげで全身ずぶ濡れ。一刻も早くシャワーを浴びて、清潔な服に着替えたい。

 そして家に入ると直ぐに、御行は風呂場に向う。

 

「え?」

 

「……え?」

 

 だが脱衣所に入ると、そこにいたのは新しく家族になった京佳だった。

 

 それも下着姿で。

 

「「……」」

 

 数秒、お互い動きが完全に止まる。その間、御行はじっと京佳を見つめてしまう。

 

(え…京佳ってあんなに胸大きいの?うちの中学の同級生より明らかに大きいんだけど。つーか下着姿エッロ…上下共に白い下着が実に似合って…ってそうじゃない!あの子は家族!血の繋がりは無いけど家族なんだ!そんな事思ったらいけないだろ!兎に角直ぐに目線を外さないと…!)

 

 御行はいけないとわかっているのに、全く視線が外せないでいた。目はばっちりと京佳の胸やら足やらに釘付けになっており、

瞬きさえしていない。

 そして京佳も、突然の事に動きを止めてしまっている。だがその顔は、みるみる真っ赤になっていく。

 

「ふん!!」

 

「ぐほぉ!?」

 

 その静寂を破ったのは、圭のとび膝蹴りであった。

 

「おにぃ最っ低!!ノックもしないでお風呂場の扉開けるとか何してるの!?しかもその後なんでおねぇの体じっと見てるの!?マジ最低なんだけど!?」

 

「お、おおお…」

 

 右頬に思いっきり膝蹴りを食らった御行は、呻き声しか出せない。マジで痛かったからである。

 

「あとおねぇ!いつまでも下着のままじゃなくて早く服着て!!」

 

「あ、うん…」

 

 御行が倒れている間に、圭は直ぐに京佳に服を着るように言う。そして京佳は、直ぐに服を着るのであった。

 

 

 

 

 

「えっと京佳。さっきは本当にごめん…」

 

「いや、私も鍵して無かったし…お互い様だよ…」

 

 数分後、リビングで2人は先ほどの事で謝りあっていた。

 

「次からは必ずノックするよ…」

 

「なら私も、次から絶対に鍵しめるよ…」

 

 今回のは、お互いの不注意が起こした事故。なら次からは、そんな事が無いように気を付ければいい。

 

(初めて、同年代の男の子に、裸見られた…)

 

(初めて、同年代の女の子の裸、見ちゃった…)

 

 しかし、起こった事故の内容を忘れる事は出来ない。お互い思春期の中学生。こんなラッキースケベな展開、どこかギクシャクしてしまいそうだ。

 

 より正確に言うと、相手を異性として見てしまいかねない。

 

((あの子は家族!あの子は家族!!))

 

 そして2人は、自分にそう言い聞かせながら先ほどの事故を忘れようとするのであった。

 

 しかし結局、その日は全然眠る事なんて出来なかった。

 

 

 

 

 

 因みにこの数か月後、たまたま家に帰ってきた透也が圭に似た事をしてしまう。しかし京佳の時と違い圭は全裸であったので、余計に酷い事になってしまうのだった。

 

 

 

 

 




 白銀父の名前は、中の人が演じた他作品のキャラから適当に付けました。

 そしてこの世界だと、義理の兄妹物の恋愛話になるのかもしれない。あと圭ちゃんは透也さんを好きになって、恋のライバルが藤原の姉である豊実さんになると思う。

 次回はちゃんと修学旅行の続きの予定です。
 それでは、また。

かぐや様の父親が、立花家に謝罪に行くのは

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