もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・   作:ゾキラファス

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 メリークリスマス!
 今回は、藤原の姉である豊実さんが主人公の特別編です。結構急いで書いたので、ところどころ雑な部分があるかもしれません。その時は言ってくださいませ。修正しますので。あと本編はもうちょっとだけ待っててね。

 因みに私のクリスマスの予定は、普通に仕事とレイド戦だけです。


特別編 藤原豊実は告らせたい

 

 

 

 

 

 秀知院学園生徒会書記、藤原千花の実姉である藤原豊実。

 都内のとある大学に通う女子大生である。見た目はおっとりしている美人であり、流石藤原の姉と言うべきかそのスタイルは抜群だ。

 特に目を引くのが、その豊満なバスト。生徒会で1番大きい京佳よりずっと大きい。まるで小玉スイカである。おかげで肩が凝って仕方が無いし、街や大学を歩くだけで大勢の男の視線を感じる事も多々ある。

 そして大学の様々なサークルから、よく飲み会に誘われる。最も、豊美はそういった飲み会にはほぼ参加しない。魂胆が見え見えだからだ。

 

 そんな彼女には、夢がある。幼い頃から、どうしても叶えたい夢が。その夢を持ったのは、まだ小学生になったばかりの頃まで遡る。その日豊実は、親族の結婚式に家族全員で参加をした。

 初めて参加した結婚式。そこで豊実は、人生で初めて花嫁を見た。白いウェディングドレスに身を包み、誰よりも綺麗で、誰よりも幸せそうな花嫁。

 

『きれい…』

 

 その姿に、豊実は心を奪われた。

 

『私も、あんな風になりたい』

 

 それと同時に、豊実は心の中で強くそう願った。自分もいつか、今世界で1番幸せであろう花嫁になるのだと。女の子なら誰もが通るであろう夢のひとつ、素敵なお嫁さん。豊実はそれを、今でも叶えたくてしょうがない。

 

『そのためも、ちゃんと努力しないと!』

 

 だが、ただ待つだけで叶うとは思っていない。故に豊実は、小さい頃から努力だけはする事にした。化粧のやり方や髪の手入れの仕方を覚えて美貌を保つようにしたり、勉強をして知識を蓄えたり、人との接し方を学んだりと、色んな事を努力した。

 その結果なのか、高校生になった頃には大勢の男子から告白をされるようになった。そして豊実は、実際に自分に告白をしてきた男子と付き合った事もある。それでいつか運命の人と知り合って、花嫁になれると思って。

 

 しかし、誰と付き合っても長続きしなかった。

 

 顔が整った男子もいた。とてもお金持ちの男子もいた。頭が良い男子もいた。家柄が凄い男子もいた。

 

 でも誰も彼も、本気で豊美を愛そうとしてくれない。彼らが欲しているのは藤原家という力と、豊美の男なら誰もがそそるであろう身体そのもの。大体3回目くらいのデートの後、決まって出てくる言葉が『俺の家にこない?』である。そしてその台詞を口にする男子の目は、全員例外なく欲にまみれていた。

 豊実自身も、別に結婚するまで清いお付き合いをしたいとは思っていない。そういう雰囲気になれば、そういう事もするだろうとは思っている。

 しかしそれでも、最初からそれが目的な男子とは付き合いたくない。あまりに長続きせず、寄って来る男子はどれもこれも身体や家目当てばかり。おかげで少し鬱になった時もあった。

 

 そこで豊実はふと考えた。そういった男子は、餌を見せながら最初からお断りするようにしようと。

 

 先ず豊実は、露出の激しい服装をするようにした。これでニヤけた顔をしながら寄って来る男は、それだけでもうハズレであると豊実なりに考えた結果である。

 実際その通りで、何時ものように露出過多な服装で街を歩くと、如何にもチャラそうな男がまるでホイホイに引き寄せられる黒い害虫のように寄って来る。

 当然豊実は、これで近づいてきた男子全員お断り。何を言われても絶対に付き合わないし、そもそも話すらしない。

 尚この露出の激しい服装をするようにした結果、父親が相当頭を悩ませるのだが、豊美はそんな事全然気にしなかった。

 

 更に豊美は、人を観察する癖をつけた。相手の顔や目線、しぐさ等をよく見て、そこからその人が何を考えているかを知れるようにしたのだ。これのおかげで大学生になった時には、相手の魂胆を見抜けるようになり、上手く欲望を隠してる男子とも付き合う事は無くなった。

 

 しかしその結果、豊実は割と絶望するようになってしまったのである。

 

 誰も彼も、本気で自分を大事にしてくれない。男は所詮、下半身で物事を考えている生き物。そんな男となんて、絶対に一緒にいたくない。これでは何時まで経っても、素敵な花嫁になんてなれない。

 

(もういっそ、お見合いでもしようかしらねぇ…)

 

 大学の授業を抜け出して、妹の体育祭を観に来ていた豊実は、こうなったら親の選んだ相手と結婚でもするべきかと考えるようになっていた。あの両親なら、ちゃんとした相手を見繕ってくれるだろう。

 なんせどこぞの家みたいに、政略婚なんて微塵も考えていない。しっかりと、自分達の娘が幸せになるような縁談を組んでくれるに違いない。そうした方が、幼い頃からずっと思ってきた自分の夢を叶える事が出来るかもしれない。

 

(でもやっぱり、相手は自分で探したいわねぇ)

 

 しかしどうせするなら、やはり相手は自分で探したい。だってその方が、誰にも文句言わせだいだろうから。そんな事を思いながら秀知院学園内を歩いていると、

 

「きゃ」

 

「あた」

 

 豊実は、運命の出会いをするのだった。

 

 

 

 

 

 クリスマス。

 大勢の家族や恋人が過ごす日であり、某休憩所が満員になる日である。非モテは仕事をしたり、男友達を愚痴を言い合いながら飲んだりする日もである。

 

「おい、あれ」

 

「うっわ。すっげー美人」

 

「胸でっけぇ…」

 

「足なげぇ…お前ちょっと声かけてこいって」

 

「いや無理だって。俺なんかが声をかけていい人じゃねーだろ」

 

 そんなクリスマスの夜の、とある駅前。そこでひときわ人目を引いている子がいた。勿論、豊実である。普段は露出の多い服装の彼女だが、流石の真冬の今日はそんな服装ではない。

 今の彼女はグレーのパーカーコート、白いニットセーター、ギンガムチェックのナロースカート、そして白いストレッチブーツを履いていた。背景のクリスマス風景と豊実本人のプロポーションも合わさって、とても綺麗で似合っている。まるでモデルのようだ。

 

「ね、ねぇお姉さん。もし今暇なら、一緒にご飯とかどう?」

 

 そんな豊美に話しかける、勇気ある無謀な男性が現れる。

 

「ふふ、ごめんなさいねぇ。私ぃ、人を待っているのでぇ」

 

「あ、そっすか…そりゃそうだよな…」

 

 しかし直ぐにそのお誘いを拒否。声をかけた男性も、そりゃこんだけ美人なら既に男くらいいるだろうと思い、それ以上の追撃をしない。そして彼は、1人でコンビニのフライドチキンを購入して家に帰宅する事にした。

 

「どうも、豊実さん。お待たせしました。それと、メリークリスマス」

 

「ふふ、こんばんわ、透也さん。メリークリスマスです」

 

 男性が去った後、豊実の元に別の男性が現れる。京佳の兄である、立花透也だ。透也の登場に、豊実はとても嬉しそうな顔をする。その顔は、まさに恋する乙女。

 

「あー、ありゃ勝てねぇわ」

 

「だな、身長高くてイケメンとか。俺らに勝てる要素ひとつもねーわ」

 

 それを見ていた野次馬は、勝手に敗北宣言をした。もし相手が如何にも金持ってそうな中年男性とか、

絵に描いたような陰キャとかだったら色々好き放題言ったかもしれないが、現れたのは高身長なイケメン。服の上からでもわかるくらい体もがっちりしているし、声も素敵だ。あれは勝てない。自分達じゃ勝負になんてならない。お似合いすぎて、嫉妬心すらわかない。

 

「それじゃ、行きましょうか?」

 

「ええ、お願いします」

 

 そして透也と豊実は、そのまま並んで歩きながらその場を去る。

 

「…俺らも行くか」

 

「…いつもの飲み屋でいい?」

 

 その様子を見ていた野次馬も、男2人で寂しいクリスマスを過ごす為その場を去るのであった。けど男2人での飲み会も、それはそれで楽しかったりした。

 

 

 

 

 

「ちょっと緊張しますね。こういったレストランなんて来た事ないし」

 

「そんなに緊張しなくていいですよぉ~?そこまで格式高い場所でもありませんしぃ」

 

 透也と豊実の2人は、都内にあるレストランに来ていた。しかし、その辺のファミレスではない。地上42階にある、そこそこお高いレストランだ。窓の外には東京タワーが見え、クリスマスの東京の街並みが綺麗に映っている。店内も非常にシックな雰囲気で落ち着く。早坂辺りが、凄く好きそうなレストランだ。

 

「それで、豊実さんは何を飲みますか?」

 

「それじゃぁ、折角なのでクリスタルのシャンパンでぇ」

 

「あ、じゃあ俺もそれでいいです」

 

「ふふ、わかりましたぁ」

 

 2人は飲み物を注文し、夜景を眺めながら会話をする。

 

「にしても、クリスマスにこんな場所でご飯食べるなんて初めてですよ。何時もは寮でテレビ見てるか、仕事でしたし」

 

「そうですかぁ。つまり、私が初めての人って事ですねぇ?」

 

「え?まぁ、そうですね」

 

「ふふふ、そうですかそうですかぁ」

 

 透也の初めての人という事実に、豊実は嬉しそうな顔をする。

 

 なんせ豊実は、透也に惚れているのだ。惚れた人の初めての相手。これはまさに特別。自分は今、その特別になっている。歓喜しない訳が無い。

 

 

 

 

 

 藤原豊実が透也に出会ったのは、秀知院の体育祭での事だ。

 

 体育祭の来ていた豊美は、偶々透也にぶつかってしまったのである。そしてお互い、ぶつかってしまった事を謝ってその場を去ろうとした。

 

「つ゛」

 

 しかしその時、豊実は運悪く足を捻ってしまったのだ。

 

「大丈夫ですか!?」

 

「え、ええ…大丈夫…痛っ…」

 

 口では大丈夫と言った豊実だが、痛い。普通に痛い。別に折れては無いが、それでも痛い物は痛い。暫くは歩けそうに無いので、どこか近くで座って休憩しようと考えた。

 

「すみません。ちょっとそこで座って待っててください」

 

「え?」

 

「直ぐに戻ってきますので!」

 

 だがそうしようとした時、透也にそう言われたのだ。そして透也は豊美にそう言うと、その場を足早に去って、両手に湿布や冷却スプレーを持って数分で戻ってきた。

 

「学校の保健係の子から貰ってきました。直ぐに処置しまが、足に触ってもいいですか?」

 

「え、ええ。ぞれじゃあ、お願いしますねぇ」

 

 豊美に1度ちゃんと断りを入れると豊実のサンダルを脱がして、透也は豊美の足に冷却スプレーで足首を冷やし、湿布を張りながらテーピングをしていく。

 

「もしかしてぇ、貴方はお医者さんですかぁ?」

 

「いえ、自衛官です。本業は船なんですが、訓練で応急処置を習っていますので」

 

「そうでしたかぁ」

 

 優しい人だなと思いつつも、豊実は警戒心を解かない。この人も、実は自分目的で今こんな事をしているのではないかと思ったからだ。

 今までも、自分に様々な理由をつけて近づこうとしてきた男は大勢いた。落としたハンカチを拾って話しかけてきたり、偶然を装って大学の講義が隣同士になった事で話しかけてきたり、時には態とぶつかってそれを会話の糸口にしたりと様々だ。今自分の足を処置しているこの人も、そういった目的ではないかと豊実は考える。

 

 そこで豊実は、彼を少し試してみる事にしたのだ。

 

 この日豊実は、かなり丈の短いショートデニムを履いていた。そして透也は今、豊実の足元で捻挫の治療をしている為、少し顔を上げれば豊実の股部分に目線が丁度合わさる。

 なので豊実は、少しだけ足を開いて透也を誘惑してみた。もしここで透也が顔を上げれば、ショートパンツの隙間から豊実の黒い下着が見えるだろう。それで透也が少しでも顔を上げてそういう目をすれば、結局彼も親切を装ってそういう目当てで自分に近づいてきた男でしかない。

 

「……」

 

(あれ?)

 

 しかし透也は、まったく顔を上げない。今もとても真剣に、豊実の足の治療をしている。

 

「よし、これで大丈夫です。後は安静にしておけば問題ありません」

 

「そ、そうですかぁ。ありがとうございます」

 

「いいえ。それと、足に触ってしまってすみませんでした」

 

「い、いえいえ!そんな!こちらこそ、手当をしてくれて本当にありがとうございます!」

 

 紳士的に、豊実の足を触った事を謝罪する透也。そこに、何時も自分に言い寄ってくる男達と同じような雰囲気は全くない。何より彼の目は、とても真っ直ぐに自分を見てくれている。

 

「それにしても、大した怪我じゃなくて良かったです」

 

 そして透也は、微笑みながら豊実の怪我を心配した。その笑顔は素敵で、どこか眩しく見えた。

 

(あっ…)

 

 その笑顔に、豊実は釘付けになる。顔が熱い。心臓の音がうるさい。そして開いていた足も閉じて両手でショートデニムの隙間を隠して透也に黒い下着が見えないようにしている。

 

(え?嘘嘘…これって私…)

 

 この感覚に覚えがある。もうずっと昔だが、初めて自分が異性に恋心を持った時の感覚だ。あの時の感覚と、まるで同じ。それが今、再び来た。

 

(これだけで?足の手当と笑顔だけで?)

 

 しかし、もしそうなら自分はあまりにチョロすぎる気がする。だって透也にされた事は、本当のそれだけ。

これでそうなっているとしたら、どれだけ自分は簡単な女なのだという話になる。

 

 けれど、人が恋をするのなんてとても簡単なのだ。

 

 俗にいう、一目惚れだってそういったもののひとつ。現実はゲームのように、いちいちフラグ管理をしながら特定の誰かと話して、徐々に好きになっていくものじゃない。

 なんせ生徒会長の白銀だって、かぐやに一目惚れをしている。別のおかしい事なんかじゃない。むしろ当たり前の出来事ともいえる。

 

(こんな感覚、久しぶりねぇ…)

 

 ここ数年、ずっと忘れていた感覚。その感覚に、豊実は高ぶる。おまけに相手は、紳士に接してくれた。いつも自分に近づいてくる、欲望を隠そうとしない輩とは違う。

 無論、まだまだ透也の事なんて全然知らない。今は良くても、今後思ってたのと違うなんて事もあるかもしれない。でも、この気持ちをこのままにしておきたくない。

 

(先ずは、少しずつ仲良くなってみましょう)

 

 彼の事をもっと知りたい。もっと彼と仲良くなりたい。だから、少しずつ距離を縮めよう。そしていつの日か、絶対に彼を自分に振り向かせてみせよう。

 

 この日藤原豊実は、立花透也に恋をした。

 

 

 

 お互いの妹が同じ秀知院の生徒で、しかも同じ生徒会に所属しているというのは豊実にとってこれ以上ないくらいの幸運だった。

 その関係を皮切りに、豊実は先ず透也と連絡先の交換を申し出た。透也も特にこれを断る事無く承諾。更にそこから畳みかけて、遊びに行く約束をする。

 

「それじゃぁ、機会が会えば遊びにいきませんかぁ?」

 

「いいですよ」

 

「ふふ、ありがとうございますねぇ」

 

 それから豊実は、透也と色々理由を作って話したり会ったりした。

 ある日は、一緒に映画を観に行った。

 ある日は、透也が働いている海上自衛隊のイベントに行ってみた。

 ある日は、共に秀知院の文化祭に行って遊んだりもした。

 豊実は、その全てがとても楽しく感じて、そして何より、会うたびに透也の事をどんどん好きになって行った。なんせ透也は、1度もホテル関係の話題は口にしないし、豊実の事をそういう目で見てこない。まるで、ただ友達を楽しく遊んでいるような感覚で豊実と一緒にいてくれる。それが豊実には、とても新鮮で嬉しかったのだ。

 

 そしてある日、豊実は思い切って聞いてみた。

 

「透也さんって、恋人とかいたりするんですかぁ?」

 

「え?俺ですか?いやー、中学卒業してからずっと働いていたので、生憎そういう人作れる機会無かったんですよね」

 

「ふふふ!そうですかぁそうですかぁ!!」

 

「あの、なんかめっちゃ嬉しそうですけど、なんかありましたか?」

 

「いいえ!気のせいですからぁ!!」

 

「そ、そっすか」

 

 その言葉を聞いて、豊実は心の中でガッツポーズをする。透也はフリー。つまり恋人がいない。これはチャンスだ。このチャンスを逃す訳にはいかない。この時点で豊実は、透也にベタ惚れであった。他人から重いとか怖いとか思われてでも、絶対に透也と恋人になりたいと思っている。そしていつの日か、彼の隣で素敵なウェディングドレスを着て見せる。その夢を叶える為にも、彼を手放すものかと豊実は決める。

 だから兎に角アプローチをして、豊実は透也を落とそうと奮起。一緒に食事に行った時にあーんをしたり、それとなくボディタッチをしたり、時には態と透也の腕にその豊満な胸を当てながら抱き着いたりもした。

 普通の男性なら、これでコロっと落ちて、そのままホテルにでも誘ったりするだろう。そうなった場合、豊実は透也にならば何をされてもいいと思っていた。

 

 だがこの間、透也から豊実には特に何もなかった。そう、何もなかったのである。

 

 基本遊びに誘うのは豊実からだし、一緒に遊びに行っても本当にそれだけ。家に行く事も無いし、ホテルに誘われる事も無い。ただ日のある内に遊んで帰るという、まるで門限のある中学生みたいなデートをするだけだった。

 

 おまけに透也には、デートの自覚がまるでない。それどころか、豊実の気持ちに全く気が付いていない。

 

 豊実は何度も何度もアプローチをしたのだが、透也はそれにまるで気が付かない。かなり奥手なのか、それともただ鈍感なのかわからないが、兎に角豊実からのアプローチに全く気が付かない。

 これでは透也と恋人になるなんて、夢のまた夢。ならば告白をすればいいと思うかもしれないが、豊実にはそれが出来ない。

 

 実は彼女、今まで告白をされた事はあっても、告白をした事が1度も無かったのだ。

 

 経験が無いので、もし告白をしてフラれたらと思うと怖くて出来ない。だから豊実は透也から告白をさせようと考えた。しかしその透也が、まるで告白してこない。このままでは、豊実は透也にとってずっと友達のまま。

 

 そこで豊実は、クリスマスに勝負に出る事にした。

 

 それなりに高いディナーのレストラン。可愛い服装。そして勝負下着。これらの用意して、クリスマスの夜に透也をそっち方面に誘う。そうすれば、透也とてひとたまりもない筈。

 今まで自分がされていた事を、今度は自分がする側になっている事に豊実は少しだけ自己嫌悪したが、それでも豊実は透也が欲しい。この想いに、嘘をつけない。そんな邪な想いを抱きながら、豊実はクリスマスに臨むのであった。

 

 全ては、好きな人と一緒になる為に。

 

 

 

「おお、美味しいですねこれ」

 

「ふふ、ですねぇ。このお肉もとっても美味しいです」

 

 シャンパンを飲んで、コース料理を食べる2人。出てくる料理はどれも美味しくて、いくらでも食べてしまいそうだ。

 

「ん…ふぅ、やっぱりお酒はいいですねぇ」

 

「えっと豊実さん?少し飲みすぎでは?」

 

「大丈夫ですよぉ。私結構強いのでぇ」

 

 マジである。

 豊実は酒にかなり強いので、自分がどれだけまだ飲めるかのラインを把握できるのだ。そして今日は、態と酔ってしまおうとも思っていた。

 クリスマスの夜に、男女がディナーをする。そしてその帰り、彼女は酔いが回って動けなくなる。そこに現れる、お城みたいな建物と休憩という文字。あとはそこに入ってしまえば、こちらの勝利だ。やり口が汚いと思うかもしれないが、ぶっちゃけ大人の恋愛はこんなものである。

 

「透也さんもぉ、どんどん飲んでいいですからねぇ…?」

 

「えっと、俺は程々にしときます…」

 

「そうですかぁ…」

 

 あまり飲まない透也に対し、豊実は作戦を実行するべくどんどん飲む。

 

 その結果、

 

「えへへ、ちょっと飲みすぎちゃいましたぁ…」

 

「だから言ったじゃないですか」

 

 豊実は見事に出来上がってしまい、透也に肩を貸されながら夜の街を一緒に並んで歩いていた。まさに計画通り。

 

「あ、こっちが近道ですよぉ…」

 

「え?そうなんですか?」

 

「ええ、行きましょうぉ…?」

 

 豊実はとある路地に指を差し、そこに透也と共に入っていく。暫くうす暗い通りが続くが、途中でやけに明るくなってきた。

 

(げ、ここは…)

 

 透也、この場はマズイと思う。なんせ今周りには、お城のような建物がズラリと並んでいる。そしてその建物に、自分達と同い年くらいの男女が続々と入っていっている。腕時計で時間を確認すると、夜の21時。そして今日はクリスマス。俗に言う、性の6時間開幕時間だ。

 実際ホテルに入っているカップルたちも、明らかにそういった空気を出しながら入っている。

 

(やっべ…急いで通り抜けないと…)

 

 これはマズイ。このままでは、豊実に変な誤解を与えかねない。直ぐに立ち去らなかれば。

 

「透也さん…」

 

 だがそうしようとした瞬間、豊実が透也の首に腕を回して抱き着いてきた。

 

「私、何だかぁ、結構酔ってるみたいなんですよねぇ…」

 

 そして透也の耳元で、色っぽく呟く。更に豊実は畳みかける。

 

「どこか休める場所で、一緒に休憩しませんかぁ?」

 

「あ……」

 

 美人で胸も大きく、一緒にいて楽しい女性からこんな事を言われたら、理性が持たない。実際この時の透也は、もう理性の糸が切れるギリギリになっていた。あとほんの一息豊実が何かすれば、その糸がぷっつりと切れる事だろう。

 

 だが透也は、耐える。このまま豊実をホテルに連れ込むなんて真似は、絶対にしてはならないと思いながら耐える。自衛隊で鍛えられたおかげだろう。

 

 そして、天は透也に味方をした。

 

 なんと透也の目と鼻の先で、1台のタクシーが止まったのだ。そのタクシーから、1組のカップルが出て来てホテルへと入っていく。そしてカップルを下ろしたタクシーが、丁度透也の元へ向かってきた。

 

「タクシー!!」

 

「え?」

 

 このチャンスを逃してはならない。そう思った透也は、直ぐにタクシーを呼び止めて豊実をタクシーに乗せる。

 

「すみません運転手さん!この人を〇〇区の〇〇までお願いします!」

 

「え、ええ。わかりました」

 

「それじゃ豊実さん!おやすみなさい!」

 

 そして豊実をタクシーに乗せると、直ぐにその場から立ち去っていく。

 

「それじゃお客さん。行きますね?」

 

「……」

 

 タクシー内に1人残された豊実は、何がなんだかわからない顔をして、そのまま帰宅するのであった。

 

 

 

 

 

「あっぶねー…理性消えるかと思ったぁ…」

 

 豊実をタクシーに乗せた後、透也は少し離れた場所でふぅっとため息をつく。さっきは、本当に危なかった。つい理性が消えて、そのまま豊実をホテルに連れこもうとしかけていた。

 

「まぁでも、ダメに決まってるよな。酔った勢いでそのままだなんて」

 

 そもそも透也は、それだけは絶対にしてはならないとずっと決めている。だってそんなの、最低だ。酒で酔った勢いでそんな事をするなんて、クズのする事だ。自分はそんなクズになりたくない。

 だから最後の最期で理性の糸をきゅっと絞めて、透也は豊実をタクシーに乗せて帰宅させたのだ。

 

「それにだ、豊実さんとは友達なんだから、そんな事して言い訳無いしな」

 

 それに、友達にそんな事をしていい訳無い。もしそんな事をしてしまえば、この友情が終わってしまうだろう。それは嫌だ。豊実といると楽しいのだ。この楽しい時間を、自ら終わらせるなんてしたくない。

 

(まぁ、もし付き合えたら絶対に幸せになるだろうけど)

 

 確かに豊実は美人で良い子だ。もし彼女と恋人になれたのなら、それはとても楽しくて周りからの嫉妬を一身に受ける事になるだろう。事実豊実は、透也とかなり距離が近い。もし今告白をしたら、付き合える事も可能かもしれない。でも、自分はそうなる事はないだろうと思っている。

 

(ああいう子って誰にでも優しいからね。勘違いしちゃダメだよ)

 

 実は透也、豊実のこの距離感の近さを、豊実は優しい子だから誰にもでああいう事をするのだろうというクソみたいな思い込みをしているのだ。今までずっと周りに女友達がおらず、恋愛に興味がなさ過ぎたせいである。

 おかげで透也は、女性からの本気のアプローチというものがわからないのだ。冷静になってみれば、先ほどの豊実の言葉も恐らくこちらをからかっていたのだろうとさえ考えている。

 そこで勘違いをして告白して豊実に引かれでもしたら、多分相当落ち込むし、勘違いをした自分を恥じるだろう。だからそんな勘違い、してはいけない。

 

「帰るか…」

 

 今日は色々あって疲れた。このまま帰って、朝までゆっくりと熟睡しよう。こうして透也は、帰宅するのであった。

 

 

 

 

 

「ふ、ふふふふ…」

 

 タクシーの中、豊実はクリスマスの夜の夜景を眺めながら不敵に笑う。まさか帰らされるとは思っていなかった。豊実もかなり覚悟を持ってあんな事を言ったというのに、今自分は家に帰っている。

 

 正直、あそこまでとは思わなかった。

 

 普通の男なら、あのままホテルに行くはず。だが透也は、自分を帰らせた。紳士と思えばそうだが、逆を言えば自分に恥をかかさたともいえる。だからといって別に屈辱を感じている訳ではないが、それでもちょっと思うところはある。

 

「透也さん、絶対に落として見せますから…!」

 

 こうなったら、絶対に彼を恋人にしてみせる。彼から自分に告白をさせるように仕向けて、必ず恋人になってみせる。そして、自分の長年の夢を叶えよう。

 

(怖い…顔は凄く綺麗なのに怖い…)

 

 その様子をバックミラーで確認しながら、都内ラーメン四天王 高円寺のJ鈴木は運転を続ける。

 

 

 

 

 




 この2人の恋愛は、まぁ来年どこかで続き書きます。

 来年はもっと多く投稿できるようにしたい。というか京佳さんルート完結させたい。頑張ります。

 それでは少し早いですが、皆さま、良いお年を。

理性が耐え切れなかった話(R-18)

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