もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・   作:ゾキラファス

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 ようやく四宮家関係が終わったので、2人のイチャイチャが書けます。そんな訳で修学旅行編、ちょっと短いけど一応最終回です。
 それでは、どうぞ。


立花京佳と修学旅行(3-1)

 

 

 

 

 

 ホテル 中庭

 

「以上が、今日あった出来事だよ」

 

「そうだったのか…」

 

 京佳達が泊っているホテルの中庭。昨日早坂と京佳が話していたベンチで京佳は

今日1日あった事を白銀に説明していた。

 因みにここに来るまで、白銀を落ち着かせる事に相当苦労していたりする。そして冷静になった白銀は、京佳の説明を一言一句聞き逃さずに聞いていた。

 

「……」

 

「白銀?」

 

 だが全部聞き終えた時、どういう訳か落ち込んでいるように項垂れたのだ。

 

「何で、俺に相談してくれなかったんだ?」

 

「あ」

 

 白銀が落ち込んでいる理由は、単純に京佳に頼られたかったからである。自分は京佳の彼氏だ。なのに京佳は、何も頼ってくれなかった。早坂と龍珠だけで、この問題を解決しようとしていた。相談しれくれれば絶対に手を貸したのに、京佳は何も言ってくれなかった。そんなに自分は頼りないのかと思い、白銀は落ち込んでいるのである。

 

「いや、結構急に言われたってのもあるが、あまり大勢の人を関わらせてはいけないと思ってね…」

 

 冷静に考えれば、白銀にスマホで一方的に言うだけ言って何もしないなんて酷いにも程がある。でも事が事なだけで、出来れば少人数で解決をしたかったのだ。それに、こんな危険な事に恋人を巻き込みたくない。だから京佳は、白銀には相談せずに行動をしていた。

 

「それにだ。危険な事もあったんだろう?聞いてて寿命が縮んだぞ…」

 

 でもそれは、白銀だって同じ。京佳が四宮家からの追手に捕まり、何とか脱出しようとした時に下手すれば死んでいたかもしれないという話を聞いて、血の気が引いていた。

 まだ恋人になって1月程なのに、危うく死に別れするところである。もし京佳が白銀に最初からちゃんと事情を説明して、彼と協力しておけば、あんな危険な事にはならなかっただろう。

 

(冷静になれば、私はなんて身勝手なんだ…)

 

 そして京佳は、自分の行動を反省する。早坂を助ける為とは言え、ちゃんと白銀に事情を説明すればよかった。そうすればもっとスマートな方法で早坂を助ける事も、自分達が危険な場面に出くわす事も無かっただろうし、白銀も正気を失う事は無かっただろう。

 

「本当に、すまない…」

 

「……いや、いいさ。もし俺が立花の立場だったら、多分同じ事をしていただろうしな」

 

 しかし白銀も、京佳が早坂の為に動いているのを理解できている。もしも自分が早坂に相談されていれば、京佳と同じことをしただろう。

 そして多分、その時は自分も京佳を巻き込まないようにして、1人かよくて2人で早坂を助ける為に動いていた筈だ。だから、これ以上は何も言わない。でも、気になる事があるのでそれは聞く。

 

「それで、四宮は?」

 

 それは、かぐやの事。京佳曰く、今回の騒動にはかぐやも参加していたらしい。かぐやの父親が登場した事により京佳は途中でホテルに戻る事が出来たが、かぐやと早坂は未だに戻ってこない。何かあったのではと、心配になるのも当然だろう。

 

「さっき連絡があった。このまま家の用事って事で修学旅行は中止。本家でちゃんと今後の事を話し合ってから、また学校にくるから心配しないでくれってさ」

 

「そうか」

 

 どうやら、かぐやと早坂はこのまま四宮家本家で今後について話う合う事になったとの事。確かにそれでは、もう修学旅行どころではないだろう。

 しかし、何も2度と会えなくなる訳ではない。再び学校に通えるようになったら、その時はまた生徒会の皆で仕事をしよう。

 

「あと、もうひとつ」

 

「ん?」

 

「私の事は気にせず、残りの修学旅行を2人で目一杯楽しんできてくれと言ってたよ」

 

「それは…」

 

 そのかぐやの伝言を聞いて、白銀は複雑な顔をする。確かに早坂の件は解決するらしいが、未だにかぐや達は四宮家で今後の話し合いをしている。そんな状況で、自分達が楽しんでもいいのだろうか。

 

(いや、そんな事考えても仕方ないか…)

 

 しかし、かぐやは心配しないでとも、自分の事は気にしないでとも言っている。それに自分は、京佳の恋人。ならばここはかぐやの言った通り、明日の修学旅行を京佳と楽しもう。

 そもそもまだ、京佳とはこの修学旅行で恋人らしい事を何もしてない。だったら、明日は絶対に楽しむ。それが今、自分に出来る事なのだから。

 

「わかった。じゃあ、立花は明日どこか行きたい場所はあるか?」

 

 そして白銀は、直ぐに思考を切り替えて京佳に明日の予定を尋ねる。

 

「そうだな。稲荷神社には行ってみたいな」

 

「ああ、あの赤い鳥居が沢山ある場所か」

 

「そうそう。それと八坂神社にも行ってみたい。何でも、厄払いや美容のご利益があるらしいからね」

 

「ほう、厄払いか。それはいいな。是非行ってみたい」

 

 その後も2人は、その場で明日の予定を一緒に考える。でも途中で寒くなってきたので、急いでホテルに戻ってから、再び予定を考えるのであった。

 

 

 

 翌日、白銀と京佳は、自分達の班に色々と説明をして、2人でホテルを出る。尚、この時の説明で風祭と豊崎が割とマジギレしていたが、どういう訳か白銀の後ろにめっちゃ機嫌の悪そうな龍珠がこちらに向けてガンつけていたので、それ以上白銀を攻めるのを辞めた。怖いし。

 因みに京佳の班の子らは、全然普通に了承してくれている。

 

「それじゃ白銀、今日はよろしく頼むよ」

 

「ああ、任せてくれ。それじゃあ、行くか」

 

「うん」

 

 白銀は京佳に手を差し出し、京佳もその手を握り返す。そして2人は、そのまま京都観光へと赴く。あと1日だけだが、この最後の1日を目いっぱい楽しんで最高の思いでにする為に。

 

 

 

 

 

「うーん…うーん…」

 

 白銀と京佳が京都の街に出て行った頃、小島は1人ホテルのロビーで某玉葱の騎士のように悩んでいた。今日が京都観光が出来る最期の日。なんとかして、龍珠と一緒に観て回りたい。

 

 (でも、どう言えばいんだよ…)

 

 しかし小島は誘い方がわからずに、こうして頭を抱えているのだ。昨日の件もあるし、何手言えばいいかわからない。そもそも、文化祭までは2人の関係はまさに犬猿の仲。顔を合わせれば喧嘩するくらい、仲が悪かった。何度か、お互い手が出そうになった事もある。

 

 しかしあの文化祭の演劇を観て以来、小島は龍珠に対する態度が一変。

 

 なんとか話そうとしたり、偶然を装って一緒に帰ろうとしたり、どうにか口実を作って昼食を共にしようとしたりと、それまでとは打って変わって小島は龍珠に対する態度を変えた。

 

 そうなった理由は勿論、小島が龍珠に惚れてしまったからである。

 

 文化祭で観たあの演劇。あの時の龍珠は、本当にとても綺麗で可愛かった。勿論演劇用に化粧をしていたり、着ている服の効果も相まって、普段からは想像も出来ないくらいに化けていたのだ。

 

 そして小島は、そんな龍珠に胸を撃ち抜かれてしまいそのまま一目惚れ。

 

 もう家同士が相反する関係だとかどうでもいい。兎に角自分は、あの龍珠桃を好きになっている。よく見れば顔は整っているし、身体もスレンダーでとても良い。だから何とかして、彼女と付き合いたい。

 しかし、これまでずっと喧嘩ばかりしてきた2人。それがいきなり仲良くなれる訳もなく、これまで進展らしい進展は全く無し。何とか話しかけても、龍珠の方が自分を拒絶する。

 おまけに昨日は、ついストーカー染みた事までしてしまった。あんな事もしているのに、今更どうやって誘えと言うのだ。

 

「てめぇ、さっきから何唸ってるんだよ」

 

「っ!?龍珠か」

 

 小島がずっと悩みながら唸っていると、後ろから龍珠が突然話しかけてきた。

 

「いや、ちょっと悩んでてさ…」

 

「ふーん」

 

 龍珠は興味が無さそうな顔をする。しかし、これはチャンスだ。今ここで龍珠を誘えば、一緒に京都観光出来るかもしれない。

 

(こういうのは、正面から思いっきり誘うべき!)

 

 もう言葉を飾らずに、ただ自分の思いを素直に伝えようと小島は決める。普通に断られるかもしれないが、このまま何もしないでいる方がダメだ。だから小島は、勢いにまかせて龍珠を誘おうとする。

 

「おい小島。お前今日予定あるか?」

 

「へ?」

 

 だが小島が言おうとする前に、龍珠からそんな質問がされた。突然の質問に、小島は時が止まる。

 

「あ、ああ。特に予定ないけど…」

 

「じゃあ丁度良い。今日はこのまま私に付き合え」

 

「え?」

 

「うちの組の連中に京都土産買いたいんだけど、女1人じゃ限界があるんだよ。今日暇なんだろ?だからこのまま私と一緒に来い」

 

 龍珠の発言に、今度こそ小島は動きを止める。どういう訳か、龍珠の方から誘ってきた。荷物持ちらしいが、それでも龍珠と一緒にいる事が出来る。ならば乗るしかない、このビックウェーブに。

 

「お、おお!わかったぜ!どこまでも付き合ってやるよ!!」

 

「キモッ…」

 

 龍珠は静かにそう言うが、今の小島には聞こえていない。それだけ有頂天になっているからだ。

 

 どうしてあの龍珠がこんな事をしているかというと、昨日の礼である。

 

 昨日龍珠は、四宮家の護衛に腕を折られそうになった。それを曲がりなりにも助けてくれたのが、小島だ。自分達をストーキングしていた事実はあるが、それでも彼は恩人に変わりは無い。ここでその恩を返さないのは、自分が許せない。

 だから今日だけ、龍珠は小島に付き合う事にした。でも素直に1日一緒にいてやるなんて言いたくないので、荷物持ちという事にして誘ったのである。

 

「ありがとよ…」

 

 そして龍珠は、本当に小さい声で小島にお礼を言う。でもその言葉が現在有頂天状態の小島に届く事は、無いのである。

 

 

 

 

 

 伏見稲荷大社

 日本中で見る事ができるお稲荷さんの総本宮。奈良時代に創建され、その歴史は平安の遷都よりも古く、なんと1300年もあるのだ。朱色の美しい本殿や鳥居が有名な神社で、日本どころか世界中から観光客が来る事で有名な神社である。

 

「はい、白銀」

 

「ありがとう。あむ」

 

 その道中のお店で、京佳は折角と言う事でいなり寿司を購入。それを白銀と一緒に食べていた。

 

「おお、美味いなこれ」

 

「だな。いなり寿司なんてあまり食べた事ないけど、これは美味しい」

 

「やっぱり観光客が大勢来る場所だから、こういった食べ物にはかなり気を使っているんだろう」

 

 一口サイズなので、さくっと食べられるのもポイントが高い。そしていなり寿司を食べ終えた2人は、次に地元で有名なソフトクリーム屋でソフトクリームを食べる事にした。因みに流石に寒いので、外では無く店内でである。

 

「ふむ…この抹茶ソフト美味しいな。流石地元限定商品ってところか」

 

 白銀が食べているのは、抹茶ソフト。口の中に広がる和の風味が、とても美味しい。普段はこういう物は割と高いので先ず食べない白銀だが、流石に今は恋人と一緒にいるのでそこは合わせて食べている。白銀はケチではあるが、セコくはないのだ。

 

「お、立花のソフトクリームも美味しそうだな」

 

 そして京佳のソフトクリームは、あずき味である。これも和の風味が口に広がり、とても美味しい。

 

「そうか、なら」

 

 すると京佳、何を思ったかスプーンで自分のソフトクリームを一口分すくい上げ、それを白銀に向ける。

 

「あーん」

 

 そしてなんと、そのまま白銀にあーんをしてきた。店内には他にも客がいるのにも関わらずだ。

 

「え、えっと立花?」

 

「あーん」

 

「いや、確かに俺は美味しそうと言ったけど、別にそういう意味で言った訳では無くてだな?」

 

「あーん」

 

「いや、その…」

 

「……あ、迷惑、だったかな?」

 

「そんな事ありません。よろこんでいただきます」

 

 恥ずかしさでつい断ろうとしたが、京佳がシュンとなったので白銀は羞恥心を放り投げた。そしてそのまま、京佳からのあーんを受け入れる。

 

「うん、美味い」

 

「よかった」

 

 ほっとする京佳。折角恋人になったので、こういう事をしたみたいと思いきって決行したが、もし白銀に断られたらと思うと不安だったのだ。でも、白銀はちゃんと受け入れてくれた。ちょっと卑怯な手段をしたかもだが、それでもちゃんとしてくれた。やってよかったと、京佳は思う。

 

(これからは、もっとこんな風にしたいな)

 

 白銀は、今年の秋には既にアメリカにいる。それまでに、もっといっぱい恋人らしい事をして

イチャつきたい。だから、我慢なんてしない。もっと積極的に、白銀とイチャついてやろう。

 

「た、立花。どうだ?」

 

 そう思っていると、今度は白銀があーんをしてきた。

 

「じゃ、遠慮なく。あむ」

 

 それを京佳は、嬉しそうに食べる。

 

「うん、抹茶も美味しいな」

 

「それは良かった」

 

 こうして店内に、ソフトクリーム以外の甘い空気が流れるのであった。

 

 

 

 ソフトクリームを食べ終えた2人は、移動を再開して伏見稲荷の境内に到着。

 

「いや、凄いな」

 

「ああ、本当に綺麗な朱色だよ」

 

 目の前に見えるのは、大きくて綺麗な朱色の楼門という大門。その両脇には、何かを加えているお稲荷さんもいる。

 

「よし、とりあえずここで写真を撮ろう」

 

「そうだな。是非撮ろう」

 

 是非この楼門を背景に1枚撮りたい。それは他の人も同じらしく、大勢の観光客が写真を撮っているのがわかる。

 

「白銀、もっと私に寄ってくれ」

 

「えっと、いいのか?」

 

「勿論。むしろもっと抱きしめるくらい寄って欲しいって思ってるよ」

 

「…そうか。なら、遠慮なく」

 

 2人は顔を思いっきり近づけて、楼門を背景にスマホで写真を撮る。2人共ちょっとだけ頬が赤いのは、寒いからだけでは無いだろう。

 

「ふふ、良い写真だね」

 

「そうだな。後で圭ちゃんにもこの写真を送っておこう」

 

 因みにこの写真を家で見た圭は、

2人が幸せそうでよかったと思ったりする。

 

 白銀と京佳が楼門を潜ると、外拝殿が見え、その奥に本殿が現れる。どれも鮮やかな朱色で、ここが歴史ある重要文化財だと言う事がひしひしと伝わる。そのまま境内を歩いていくと、伏見稲荷最大の見どころとも言われている場所、千本鳥居が現れる。

 

「凄い…」

 

「そうだな。圧倒されるよ」

 

 朱塗りの鳥居がズラリと並んでいるその光景は、まさに圧巻の一言。これはおよそ400年前に、願い事が通るように、または通ったというお礼を込めて鳥居の奉納が広まった事でこうなっている。

 因みに千本鳥居と言われているが、実際は1万以上の鳥居があるらしい。また、実はこの場所は幽界に繋がっているなんて伝説も存在する。

 

「まさに京都って感じだな」

 

「そうだな。あ、白銀。写真を撮ってあげるよ」

 

「お、じゃあよろしく頼む」

 

 2人が和気あいあいとしながら千本鳥居を通り抜けると、奥社奉拝所に到着する。そこには、おもかる石と言われる石が存在する。これは願い事を思いながら石灯篭の上に鎮座している宝珠石を持ち上げ、もし石が予想より軽ければ願い事が叶うと言われている石だ。

 

「よし、やるか」

 

「そうだな、やろう」

 

 白銀と京佳も、他の観光客と同じようにおもかる石を持ち上げてみる事にした。

 

(あ、結構軽い?)

 

 白銀が持ち上げてみると、想像よりずっと軽かった。ふと隣で一緒に石を持ち上げている京佳をみると、彼女も以外そうな顔をしている。そして石を再び置き、2人はその場を離れて話す。

 

「どうだった?」

 

「予想よりずっと軽かったよ」

 

 やはり京佳も、軽く感じたらしい。という事は、願いが叶うと言う事だ。

 

「ところで白銀。なんて願いをしたんだ?」

 

 そして京佳が、白銀にそんな質問をする。

 

「このまま、立花と楽しく過ごせますようにってお願いしたよ」

 

 その京佳の質問に、白銀は恥ずかしがる事も無く答える。

 

「ふふ、そうか。私と一緒だな」

 

「え?そうなのか?」

 

「うん。私も、このまま白銀と幸せに過ごせるようにお願いしたよ」

 

「そう、か。ふふ、俺達、やっぱり色々と似てるんだな」

 

「そうだね。これなら、この願いもきっと叶うよ」

 

 何時しか2人に間には、ぽわぽわした甘ったるい空気が湧き出る。それを感じ取ったのか、周りにいた独り身の人らはそそくさと去っていく。逆に恋人や家族、夫婦といった人らは2人を微笑ましく見ていた。

 

 因みに伏見稲荷は稲荷山の麓にあり、このまま道沿いに進むと山頂まで行けるのだが、標高が233メートルもある山なので、登るとしたら完全に登山になってしまう。この後も他に行きたい場所があるので、流石に2人は登る事を諦めて次の場所へ行く事にした。

 

 

 

 

 

 八坂神社

 スサノオノミコトを祀る全国約2300社ある八坂神社の総本社である。信仰に守られて、未だに数多くの自然を残しており、厄払いや縁結び、そして美容にご利益があると言われて、あの祇園祭が行われる事でも有名な神社だ。

 更に本殿は国宝に指定されており、祇園作りと言われる他に類を見ない建築様式をしている。そして龍穴と言われるパワースポットもあるのだ。

 

「へぇ、これが力水か」

 

「飲む事は出来ないのか」

 

「まぁ、触るだけでご利益あるらしいし、触っておこう」

 

 白銀はこういったパワースポットが好きなので、割と本気で力水を触ってご利益を得ようとする。今年はアメリカに行くし、もうこういった場所には来れないだろうから、念入りに触る。出来れば全身で浴びたいが、流石にそんな真似はしない。

 

「なぁ白銀。そんなに触って、手冷たくないか?」

 

「……ちょっと冷たいが大丈夫だ」

 

 嘘である。本当は超冷たいと思っている。なんせ今は真冬。おまけにここは京都。自宅の洗面所で手や顔を洗う時でさえ冷たいのに、こんな外で冷たい水に触ればそりゃ冷たい。何なら今、全身が冷えてきているし。今すぐ何かで、手を温めたい気分だ。

 

「なら」

 

「ん?」

 

「えい」

 

 そう思っていると、京佳が白銀の手を握る。

 

「ふふ、これなら少しは暖かいだろう?」

 

「……あ、ああ。そうだな」

 

「あ、照れてる。可愛いな白銀は」

 

「やめてくれ。そう言われると更に顔が熱くなるから」

 

 実際今の白銀は、顔がかなり赤い。心臓の鼓動もうるさく、体温も上昇している。

 

「やだ、何あれ尊い…」

 

「良い、素敵…」

 

「っ行くぞ」

 

「うん」

 

 ちょっと周りに人が集まりだしたので、2人はそのまま手を握ったまま移動する。

 

「ごふっ!?」

 

「かれんーーー!?」

 

「チギャウ…チギャウ…白カグコソ至高デアッテ、白立ハ解釈チガイダカラチギャウ…チギャウ…」

 

「かれん!しっかりして!!ていうか本当に何を言ってるの!?」

 

 その時の様子をマスメディア部の2人が偶然見ていたが、白銀も京佳もその事には気が付かずにいた。

 

 

 

 2人がそのまま境内の奥に進むと、美容水と書かれた看板のある湧き水が見つかる。

 

「これが、美容水か」

 

 これはそのまま、美容水と呼ばれている水だ。直ぐ後ろにある社に祀っている神様が、とても美人であり、そこから湧き出ている水。

 そしてこれを肌につけると、身も心も綺麗になると言われている湧き水である。因みにペットボトルに入れて持ち帰る事も可能だが、飲料水ではないので注意しよう。

 

「ちょっと肌につけてもいいか?」

 

「いいぞ」

 

 京佳も女の子。やはりこういう物は、どうしても気になる。そして水を両手につけて、それを自分の顔にふれさせる。

 

「冷たいが、これで私も綺麗になれるかな」

 

 ふと、そんな事を口にした時だ。

 

「別に立花は、そんな水使わなくても綺麗だろ」

 

 白銀が、本音で京佳にそう言った。

 

「……本当に?」

 

「勿論だ。恋人にそんな嘘なんてつく訳ないだろう」

 

「ふふ、ありがと」

 

 湧き水なんて無くても、こうして自分を綺麗と言ってくれる恋人がいる。ならば、もうこの水は必要ないだろう。京佳は水をかけるのをやめて、また白銀と歩き出す。

 

「あ、立花。俺ちょっとトイレに行ってくる」

 

「わかった。じゃ、そこで待ってるよ」

 

 1度白銀がトイレに行った後、2人はまた別の観光地に移動を開始した。

 

 

 

 その後、昨日バイクを貸してくれたお爺さんが営んでいるお店でお土産を購入したり、途中で龍珠と小島のペアに偶然遭遇して龍珠から口止めをされたり、観光地でぎゅうぎゅうになったバスの中で白銀と正面から抱き合うようにくっついたり、その時に白銀が顔が京佳の胸に埋もれそうになったり、かぐやの事を知らない藤原が泣きながらお土産屋で購入した木刀を持ってかぐやの実家に行ってかぐやを迎えに行こうとしたのを事情を説明して止めたり、京佳が芸能事務所にスカウトされたのを白銀が止めたり、いつの間にか早坂班の子と楽しそうに観光している風祭と豊崎を見たり、何でか道端で泣いている眞妃に会って慰めたりと色んな事があった。

 

 そして2人は今、京都タワーの展望台にいた。

 

「綺麗だな」

 

「うん。色んな神社がライトアップされているから、東京の夜景とは全然違うな」

 

「全くだ。お、あっちは大阪だな。少し見える」

 

「本当だ。いつか大阪にも2人で行ってみたいな」

 

「いいなそれ。大阪にも有名な観光地がある」

 

 街の夜景なんてどこも同じようなものだと思っていたが、こうして登って見てみると全然違う事がわかる。昨日は登らなかったが、こんなに綺麗なら昨日も皆で登っておけばよかった。

 

「今日は楽しかったよ、白銀」

 

「俺もだ」

 

 2人は京都の夜景を見ながら、今日の感想を言う。楽しかった。食べ物を食べたり、有名な神社を見たりと、本当に楽しい1日だった。恐らく、この日を忘れるなんて事は無いだろう。

 

「いつか、この時の事を思い出しながら、また京都に来たりしてみたいな」

 

「ふふ、うん。素敵だなそれ」

 

 卒業後、大人になった2人が再び京都に訪れ、かつて修学旅行の時に観て回った場所に想いをふける。そんな未来を思い浮かべてしまう。白銀はそういうのが好きだったし、京佳も割とそういうのが好きだった。

 

「っと、そうだ。はい、立花」

 

「ん?」

 

 並んで夜景を見ながら過ごしていると、白銀が懐から京佳に何かを差し出す。

 

「昼に神社で見つけたんだ。気に入ってくれるといいんだが」

 

 それは、兎の形をした掌くらいの大きさの可愛らしい置物だった。

 

「これは?」

 

「何でもそれに願いを書いておくと、その願いが叶うらしい。あの因幡の白兎にちなんだ物だから、これ自体結構な縁起物だってさ」

 

 因幡の白兎とは、古事記に登場する兎で、予言と縁結びを行ったとして有名だ。これは、その神話にあやかったお土産である。トイレに行った時、京佳と合流する前に白銀が京佳にと購入したのだ。

 

「へぇ、可愛いじゃないか。ありがとう、白銀」

 

 京佳が気に入らなかったらと不安があったが、どうやら気にいってくれたらしい。

 

「でも困ったな…私は何も白銀に買ってないし…」

 

「いやいや、気にしなくていいよ。俺もお返しが欲しくて買った訳じゃないし」

 

 これはあくまで、白銀が京佳にしたプレゼント。お返し目的じゃない。

 

「そうか。あ、白銀。あっちに見えるの何かな?」

 

「ん?どれだ?」

 

 京佳もそれに納得したのか、展望台から何かを指差す。白銀が何かと思いその先を見るが、特にこれといって何かあるようには見えない。

 

「なぁ立花。別に何も見えないぞ?」

 

 白銀が京佳の方へ振り返った時、

 

「ん」

 

「!?」

 

 突然京佳がキスをしてきた。

 

「ふふ、しちゃったね。キス」

 

「…不意打ちはやめてくれ。マジでびびるから」

 

「でも嬉しいだろ?」

 

「……超嬉しいです」

 

 これは、京佳なりのお返しだ。周りにも似たような雰囲気を持った恋人らしき人らがいるので、別に不自然でも無い。だとしても、突然のキスは心臓に悪い。もの凄く嬉しいけどね。

 

(やっべ…今の俺多分超顔赤い…)

 

 いきなりのキスに、白銀は少し動揺。出来れば外に出て思いっきり叫びたい気分だ。

 

(にしても、恋人になってから、立花ってかなり積極的になったよな)

 

 元々かなり積極的な京佳であったが、恋人になってからそれが更に増した感じがある。じゃないと、今みたいに突然キスなんてしない。だがそれだけ自分が愛されていると思うと、かなり嬉しい。

 

「今はまだキスまでだけど、その内もっと色んな事しよ?」

 

「……へぁ?」

 

 白銀が内心舞い上がろうとしていると、京佳がそんな事を呟いてきた。それを聞いて、白銀は素っ頓狂な声を出す。

 

「じゃ、そろそろ門限だし、ホテルに帰ろうか」

 

「ちょ、ちょっと待て立花!!もっとって何!?一体何の事を言ってるんだ!?」

 

「さぁ?なんの事だろうね?」

 

 動揺する白銀をよそに、京佳は先に歩く。

 

(あーもう!!何を言ってるんだ私は!?発情した犬じゃあるまいし、あんな事を言うなんて!!馬鹿じゃないのか!?)

 

 でも京佳も、実際はかなり動揺していた。突然キスをした事により、気分が高揚した結果が今の発言である。流石にスケベが過ぎる。でも1度言った事を無かった事には出来ないので、このまま顔を見られないようにして先を歩くしかない。

 

 でも結局2人共、ホテルに戻るまでの間ずっと顔が赤いままであった。

 

 

 ホテルに戻り、女子皆で枕投げをしたり、男子がまた風呂場で大きさ比べをしたり、翌日京都駅で藤原が大急ぎでお土産を買うのを手伝ったりして、皆は新幹線に乗って東京へと帰る。

 

 

 こうして、京佳達の修学旅行は終わったのだ。大変な事もあったが、とても楽しい最高の思いでの修学旅行であり、一生忘れる事の出来ない旅行であった。

 

 

 

 




 書いてて楽しかった。もう少しイチャつかせてもよかったかもしれないけどね。

 次回は四宮本家のお話書いてから、立花家謝罪回って感じです。まだ予定ですけどね。

 それでは、また次回。

龍珠と小島は

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