もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・   作:ゾキラファス

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 ようやくかえってきた日常回。これから暫くはこんな感じになると思います。連休のお供になれば幸いです。

 今回は、ちょっと関東やその他一部地域在住の人に失礼な回かもしれません。一切他意はないので、ご了承くださいませ。


白銀御行と引っ越し先

 

 

 

 

 

「今日は2月とは思えないくらい暖かいな」

 

「ですね。恐らくこれも温暖化の影響なんでしょう」

 

「私は暖かいより、寒い方がいいんだけどな」

 

「それはどうしてですか?」

 

「いや、暑いと汗かいて蒸れるんだよ。胸の周りが」

 

「あー…」

 

 まだ寒い筈の2月。京佳とかぐやは、並んで生徒会室に向っていた。何だかんだで、普通に会話できるようになっている2人。そこに、かつてのギクシャクした空気は無い。これなら、2人でどこかに遊びに行く事も可能だろう。

 

『~~~!?』

 

『~~!!~~!!』

 

「ん?」

 

「何でしょう?」

 

 生徒会室の前まで来ると、何やら中から何か大声が聞こえた。そして生徒会室の扉を開けると、

 

「そもそも渋谷はハロウィンで問題になっているじゃないですか!!あんだけ人様に迷惑かけてるくせによく言いますね!?」

 

「そっちこそ、葛飾って治安かなり悪いでしょ!!自転車泥棒が凄く多いし、交通の便もあまりよくないくせに!!」

 

「はーー!?治安なら足立区の方が悪いですけどー!?こっちには有名なお祭りがいっぱいある人気な場所ですけどー!?」

 

「なら渋谷は超有名なスクランブル交差点がありますけどー!?」

 

 何でか石上と藤原が、悪口を言い合いながら喧嘩をしていた。

 

「お。2人共来たか」

 

「あの、会長。あれはいったい?」

 

「何であの2人は、相手の地元の悪口を言い合ってるんだ?」

 

 石上は葛飾区在住で、藤原は渋谷区在住。その2人が、相手の住んでる区の悪口を言い合っている。

 因みに白銀は世田谷区で、京佳は目黒区で、かぐやは港区で、伊井野は品川区在住だ。

 

「実はな」

 

 そして白銀は、2人が喧嘩をした原因を話し出す。

 

 

 

 

 

 昨日 白銀家

 

「2人共、大事な話がある」

 

 夕食時、家族3人で唐揚げを食べていると、突然白銀父が口を開いた。

 

「何だよ改まって」

 

「動画配信でコラボでも決まった?」

 

 最近動画配信を始めて、それでかなりの収益を上げた父親。おかげで夕飯にお肉が出る事が増えた。チャンネル登録者数も5万人おり、普通に人気動画配信者として生活できている。そんな父親なら、どこかとコラボ配信が決まっても不思議は無い。

 

「いや。確かにコラボは決まったが、それよりもっと大事で重要な話だ」

 

 しかし、どうやら違うらしい。では一体何なのかと思う白銀兄妹。

 

「引っ越しをしようと思う」

 

「「本当にすっごく重要な話だった!?」」

 

 そして父親のその発言を聞いて、異口同音した。

 

「でも、どうして突然?」

 

「借金は無くなったし、工場も早ければ春頃には戻ってくるだろ?いい加減、この家からもっと広い家に引っ越して心機一転しようと思ってな」

 

 引っ越しの理由は割と単純で、お金に余裕が出来たから。これまで5億という借金のせいで、

白銀家は色々と苦労をしてきた。

 でも、その借金は既に帳消しになっている。そうなれば父親の動画配信の収益が丸々入ってくるので、随分と余裕が出来たのだ。これなら、もっと広くて家賃の高い家に引っ越せる。

 

「あと、この前動画の視聴者って名乗った女の人が家の近くまで来てな…胸元を大きく開けてて、グイグイきて怖かった…」

 

「嘘だろ…」

 

 おまけに最近、白銀父はリスナーからストーカー行為を受けていた。このままでは、この家に凸されるかもしれない。なので防犯の意味も込めて、引っ越しをするのだ。

 

「で、物件を探そうと思う。希望があれば言ってくれ」

 

 そして父親は、子供2人に希望を聞く。折角の引っ越しなのだ。この期に、家族全員が納得できる家に引っ越したい。その為の希望を聞く。

 

「やったぁぁぁ!!これでやっと、プライベートな空間が持てる!!お兄と同じ部屋で一緒に寝なくてすむ!!」

 

「俺も同じ意見だけどその言い方癪だなおい」

 

 とりあえず、全員の個室は必須となる事は間違いないだろう。

 

 

 

 生徒会室

 

(家賃は20万までか…これなら選択肢はかなり広いな)

 

 白銀は、スマホで都内の物件を見ていた。父親から、引っ越し先を勉強がてら選んでいいと言われたからだ。父親からの条件は、家賃20万円までで、広さは3Kから3LDKまでというものだけ。後は自分たちの好きにしていいとの事だった。

 

(ふむ…圭ちゃんや親父の事も考えて、オートロックは必須だな。それと近くにスーパーがある事と、夏場は蝉が超うるさいから公園から離れている事も必要だろう。それに俺と圭ちゃんの通学の事も思うと秀知院から近い方がいい。1階が飲食店やコンビニなのは絶対にNG。あとは場所だが…)

 

 スマホで確認すると、場所はバラバラだが今思った条件に合った物件がいくつか見つかる。残るは、場所だけ。学校に近いとなると港区になるが、ここはやはり家賃が高い。ギリギリ20万で収まる物件もいくつかあるが、どうせならもう少し抑えたい。

 

(立花の家の近くとか…いいかも?)

 

 だが同時に、白銀はそんな欲望を出す。折角の引っ越し。どうせだったら、恋人である京佳の家の近くに引っ越したい。そうすれば一緒に登下校出来るし、もしかすると、夕食に作りすぎて余ってしまった肉じゃがとかを家に持ってきてくれるかもしれない。白銀はそういうのが好きだった。

 

(よし!色々と選択肢は多いが、ここはちょっと欲張るか!!)

 

 結果白銀は、京佳が済んでいる目黒区内で物件を探してみる事にした。

 

(あった!!マジで丁度良い物件があった!!)

 

 そして京佳の自宅周辺で探してみると、かなりよさげな物件を発見。広さ3DKで、家賃は19万。オートロック付きもあるし、日当たりも良い。近くには商店街もあり、おまけに京佳の家から相当近い。駅からは15分とちょっとだけ遠いが、これくらいなら許容範囲だ。

 

(もしかすると、朝俺の部屋まで起こしにきてくれるかも…ふふ…)

 

 白銀は妄想を加速させる。朝京佳に起こされ、そこから一緒に朝食を取り、一緒に登校。まさに夢のような展開だ。

 

「会長、どうして賃貸のサイトみてるんですか?」

 

 ふと気が付くと、藤原が直ぐ隣に来ていた。どうも、かなり熱心に見てらしい。

 

「いや、実は色々あって引っ越す事になってな。で今ちょっと見てるんだ」

 

「ほへー。どこか目星はつけてるんですか?」

 

「いくつかは。今はこの目黒の物件とか良いなって思ってるけど」

 

「へぇ。いいじゃないですか」

 

「後はそうだな。通学の事も考えて港区ってのもありかって考えてる。条件に合う物件もあるし」

 

「……へぇ」

 

 何だか急に、藤原の目つきが変わった気がする。

 

「会長。目黒区も港区は高いですよ?下手すると家賃30万とか普通にありますし。贅沢じゃないですか?」

 

「いやそうだが、通学の時間を短縮できるならちょっとくらい無理してもいいかなって」

 

 どうも反応がおかしい。でも藤原がおかしい事なんて何時もの事なので、あまり気にしないようにしよう。

 

「そうだ!だったら私が選んであげましょうか?」

 

「え?いや別にいいけど…」

 

「まぁまぁそうおっしゃらず!他人の話を聞くだけでも違いますって!!」

 

「あー。じゃあ一応聞かせてくれ」

 

「はい!わかりました!!」

 

 そして突然、何故か白銀の物件選びを手伝うと言い出した。特に断る理由も無いので、一応聞いてみる事にした。

 

「会長におすすめな場所。それはズバリ、両国です!!」

 

「両国?」

 

「あの国技館がある事で有名な場所ですよー」

 

 両国と聞いて、白銀はスマホで調べる。その場所は墨田区。なんと京佳の住んでいる目黒区のほぼ反対側である。遠い。これなら今住んでいる三軒茶屋の方が京佳の家にずっと近い。

 

「いや、ここはちょっと…」

 

「住みやすい街として有名ですし、あのスカ〇ツリーも見える事で有名ですよ。更に近所のコンビニで現役のお相撲さんを見れたりできます」

 

「え。何それちょっと面白そう」

 

 でも藤原の話を聞いて、ちょっと興味が沸いた。

 

「そうですね。両国だと家賃13万で3DKとかありますよ?」

 

(安い!!それはマジ普通にありがたい!!)

 

 更に同じ広さえでも、目黒区と差額7万は大きい。これが1年続くと、その差額は84万円にもなる。京佳と同じ目黒区に住みたいが、そう考えるとちょっと躊躇ってしまう。白銀はケチなのだ。

 

「あ、蒲田とかもいいですねー。あの有名な怪獣王が暴れた場所でもありますし。ここなら家賃はもう少し安く済みますよ?もしくは川崎なんてどうですか?昔偶然見たヒモのヒーローが主役のアニメで有名な場所ですし」

 

(もっと遠くなってるじゃねーか!!そこは絶対に却下だ!!あのヒモのヒーローって何だよ!?)

 

 別に蒲田そのものが嫌じゃない。ただそこだと、今住んでいる場所より遠い。普通に却下だ。それと川崎は絶対に嫌だ。理由は言わずもがなである。

 

「別に好きな場所でいいじゃないですか。何処に住むかなんて会長の自由でしょ」

 

 その時、生徒会室でゲームをしていた石上が話しに割り込んできた。

 

「むしろ学校から近いなら移動時間が減ります。その方が絶対にQOLが上がるからそっちでいいじゃないですか。家賃が払えないとかなら問題ですけど、払えるなら別にいいでしょ。あそこ治安も良いし」

 

 石上の言っている事も最もだ。学校から近いと、それだけ移動時間が減る。それまであった長い移動時間が大幅に減るとなると、むしろ多少高くても近い場所に住んだ方が良いだろう。

 

「で、ですが!例えば港区とかだと色々あって贅沢を覚えるかもしれません!それに目黒区だって、おしゃれなお店が多いから誘惑だらけで、その誘惑に負けて会長が堕落するかもです!むしろ若い時は移動や欲望に苦労していた方が、大人になった時にそのありがたみがわかる筈です!!なので両国とか蒲田とかの方がいいんですよ!!家賃安いし!!」

 

 しかし藤原は、どういう訳か白銀が港区や目黒区に住む事を良しとしない。むしろ反対しているように見える。

 

「つか、なんで藤原先輩はそこまでして会長がその辺住む事に反対してるんですか?」

 

「……別に、反対はしてないじゃないですか。ただ、会長が港区在住っていうのがちょっと」

 

「……藤原先輩もしかして、都内カースト意識してますか?

 

「…………違うよ?」

 

「こっち見て言ってください」

 

 石上の指摘に、藤原は目を思いっきり反らす。

 

「都内カーストってなんだ?」

 

「東京人は都内23区の人間しか認めないとか、環七の内側以外はそもそも人じゃないとか、そんな歪んだ思想を持った人達が作り上げた都内の非公式の序列です」

 

 都内カースト。

 それは誰もが無意識に考えている自分が済んでいる地域の序列。例えば九州とかだと福岡が1番上で、最下位は佐賀とか鹿児島とか言われていたりするし、関西なら大阪が1番で、和歌山が最下位とかだ。そして都内カーストは、その東京23区版である。

 

「その中でも、千代田区、港区は常に上位!そして藤原先輩は渋谷区というそれに次ぐ上位カースト在住の人なんで、その辺の意識がかなり強いんでしょう!でないと会長が目黒区や港区に住む事をこうも反対しません!!」

 

「うっわ…お前、最低だな…」

 

「ぐふ」

 

 藤原は床に倒れ込みそうになるが、なんとか耐えた。

 

「その話だと、港区の四宮が1番上になるのか?」

 

「ですね。そして四宮先輩みたいに、最初からずっと住んでいるなら文句なんて言えませんが、会長みたいに引っ越すとなるとそれを阻止しようとする。この人はそんなみみっちい人間ですよ」

 

「あー…」

 

 なんかわかる。実際これまでの行いで、藤原はその辺かなりアレだ。こんな事だってするだろうという確信がある。

 

「ち、違いますって。私そんな差別主義者じゃないですって。ただ会長みたいな人は下町風情の街が似合うっていうか、如何にも勝組が住んでいる港区や、お洒落な街な目黒区は似合ってないっていうか」

 

「両国の人達ーー!!この人今超失礼な事言ってますよー!!怒っていいですよーー!!自分は渋谷区だからって超見下してますよーー!!これだから渋谷区は!!」

 

「あー!今これだから渋谷区はって言いましたねー!?それこそ差別ですよー!?渋谷区の何が悪いですかー!?」

 

 石上は大声で生徒会室の外に吠える。それの反応して藤原は石上に突っかかり、そのまま喧嘩へと発展。でも介入するのがもうなんか面倒なので、白銀は2人を無視して再び賃貸のサイトを見るのであった。

 

 

 

「と言う訳だ」

 

「成程。不毛な争いですね」

 

「だな。でもこれ以上はちょっと怒られそうだから、私止めてくるよ」

 

 白銀の説明を聞いて、2人は納得。なんともしょうもない喧嘩である。でも2人は、未だにその喧嘩を続けている。これ以上は色々とマズイ気がするので、京佳は2人の喧嘩を止めに入った。

 

「それにしても、引っ越しですか…会長、よろしければ四宮家が持っている物件を格安で紹介しましょうか?港区にセキュリティが厳重で広いマンションがありますし」

 

 因みにかぐやの言っているその物件は、常にコンシェルジュや警備員がいて5LDKとかいう広さで駅から5分とかいう天上人が住んでいるような物件である。もし白銀が望むなら、ちゃんと上に掛け合ってそこを格安で住まわせる気でいる。

 

「いや、それは正直ありがたいが遠慮しておく。あまり四宮の世話になりっぱなしも悪いし、なんかちょっとズルイ気がするしな」

 

「そうですか。ならわかりました。でも、必要なら何時でも言ってください」

 

「わかった」

 

 しかし白銀。それは流石に拒否。確かにありがたい申し出ではあるが、これ以上かぐやのそういった事で世話になる訳にはいかない。

 

(うーん。やっぱり目黒区がいいな…でも結構いっぱいあるし、何より隣人ガチャに外れたくない。一体何処がいいんだ?)

 

 そして白銀は、スマホでまた検索をする。丁度良さそうな物件はあるが、中々決まらない。なるべく早く引っ越しをしたいのに、これではいつまで経っても決まらないかもしれない。いっそ不動産に詳しい人に聞きたい気分だ。

 

「白銀、その、目黒区なんていいって私は思うよ?」

 

 ここで藤原と石上をガムテープで黙らせた京佳が、白銀に照れ顔でそう提案してきた。

 

「治安も良いし、桜で有名な目黒川もある。他の区へのアクセスだってしやすい。公園もいっぱいあって、かなり自然豊かなんだ。芸能人も結構住んでいるし、もしかしたら会える事もあるかもしれない。どうかな?」

 

 京佳はこう言っているが、本心は白銀とご近所さんになれるかもと思ったからである。もし白銀と歩いて行ける距離まで家が近かったら、絶対に頻繁に遊びに行くし、何なら朝登校前に起こしにだって行く。そういう事に、京佳は憧れを持っていた。

 

(私に足りなかったのは、こういう事を素直に相手に伝える精神だったんでしょうね…)

 

 そんな京佳を見て、かぐやは自分が敗北した原因を見た気がした。多分自分なら、こんな風に白銀に言ったりしない。相手が言うまで待つか、相手に言わせようとしていただろう。それが分かったかぐやは、ひっそりと2人の会話からフェードアウトし、京佳によって黙らされた藤原と石上の元へ行く。邪魔しちゃ悪いから。

 

「…そうだな。実は俺も、そうしたいって思ってた」

 

「そうって?」

 

「立花の家まで、歩いて行ける場所に引っ越したいって意味」

 

「ふふ、そうか。両想いだな」

 

 2人の間に、ポワポワした空気が漂う。

 

「ゴフッ」

 

 その空気を感じとったかぐやは、少しだけ吐血した。あと胃が痛い。また胃薬を買わないと。

 

「だが、実際どんな物件があるんだ?ネットだけじゃ心配だしな…今度不動産会社に行くか」

 

 もう白銀の中では、目黒区に引っ越し先を定めている。しかし、ネットで見ただけではちょっと決めきれない。確かに先程かなり条件の良い物件を見つけたが、世の中には隣人ガチャという悲しい問題があったりする。

 やはりここは、1度不動産会社に直接行ってプロの人と話ながら選ぶべきだろう。だが、不動産会社も当たりはずれがある。そういったところもしっかりと選ばないと、とんでもなくぼったくられる可能性があるのだ。

 

 

 

「だったら白銀。いっそ私の母さんに頼んでみるか?」

 

「え?」

 

 

 

 そうやって悩んでいると、京佳が白銀にそんな提案をしてきた。

 

 

 

 週末の日曜日。

 

「白銀くん。本日は来てくれてありがとうね」

 

「いえいえ、こちらこそ。今日はよろしくお願いします」

 

 この日白銀は、京佳の母親が所属している不動産会社に来ていた。来ている理由は勿論、引っ越し先を決める為だ。京佳の母親は、不動産鑑定士である。

 そしてその資格を取るまでは、営業でしっかりと働いてきた。なので今日、白銀の引っ越し先を一緒に決めようとしているのだ。実際物件選びは、信用できる知り合いと一緒に行うのが1番安心である。

 

 因みに本日、京佳はバイトで、圭は家で勉強。そして父親はコラボ動画撮影の為、家にいない。なのでこうして、白銀1人で来ているのだ。

 

「じゃあ、早速始めましょう」

 

「はい。よろしくお願いします」

 

 そうして、白銀の物件選びが開始された。佳世はタブレットを操作して白銀に物件を見せる。

 

「じゃあ先ずはこれ。港区の4LDKの物件から。駅から近くて、スーパーもあるわ。そして家賃は4万円」

 

「はぁ!?港区で家賃4万!?」

 

 しかし佳世は早速、なんかとんでもない物件を紹介してきた。超家賃が高い港区で、まさかの4万円。どう考えても、ありえない。

 

「あのこれ、普通の物件ですか?あまりに安すぎるんですが…」

 

 絶対に怪しい。なんと言うか、見え見えの地雷の気がしてならない。なので白銀は、佳世に質問をする。

 

「勿論普通じゃないわよ。なんせここ、事故物件だから

 

「事故物件!?」

 

 案の定、ヤベー物件だった。

 

「15年くらい前に、とある家族が一家心中したみたいなのよね。だからこんなに安いのよ」

 

「いきなりなんて物件を紹介してんだ!!」

 

 つい何時もの口調でツッコム白銀。もし何も知らずにここに決めていたら、後でとんでもない事になっていたかもしれない。まぁ、あの父親ならむしろ心霊現象を撮る為に契約しそうではあるが。

 

「あはは。ごめんなさいね。ちょっとした冗談よ。次からはちゃんとした物件を紹介するから」

 

「どうもです…てか、事故物件なんて扱ってるんですか?」

 

「偶にいるのよ。事故物件でいいから紹介してくれって人が。だから少しだけね」

 

「いるんですか!?」

 

「ええ。安かったらいいしって感じで。あと心霊系の動画配信者とか」

 

 白銀には理解できない精神である。いくら安くても、事故物件なんて絶対に嫌だ。そして場も少し和んだところで、佳世は今度こそちゃんと紹介をする。

 

「これなんてどう?品川区の3LDKでオートロック付き。家賃は19万よ」

 

「おお。これいいな。でもちょっと駅から遠いですね」

 

 中々良い物件だが、駅から少し距離があるので次に進む事にした。

 

「なら次はこれ。台東区の3DKのオートロック付き。家賃は13万」

 

 次は先ほどより少し小さいマンションだが、かなり家賃が安い。立地も良いし、日当たりも悪くない。

 

「あー、すみません。流石にそこは学校から距離があるのでちょっと…」

 

「あ、それもそうね。ごめんなさい」

 

 でも普通に遠いので、これも却下した。

 

「じゃあこれは?渋谷区の3DK。駅も近いし、ちゃんとオートロックもあるわ。そして家賃は20万円。今度は事故物件じゃなくてちゃんとした物件よ」

 

 今度は渋谷区の物件。これは中々良い。駅近でこの値段は破格だろう。

 

「…すみません。これもちょっと」

 

「あら、そう?じゃあ、他に場所とかの要望はあるかしら?」

 

 かなり良い物件の筈だが、これも拒否。これでは決まりそうにない。なので1度、佳世は白銀の要望を再確認する事にした。

 

 

 

「俺は目黒区の、出来れば立花の家の近くとかがいいです…」

 

 

 

 そして白銀は、少し照れながら佳世にそう答える。

 

「……ぷ、あっはははは!!白銀くん!やっぱりあなた良いわね!素直な子って、私大好きよ!!」

 

 その白銀の気持ちに、佳世は大笑い。本当に娘は、良い人を見つけたものだ。

 

「だったら、これはどう?目黒区の3DKのオートロック付き。家賃は18万。そして、うちから徒歩10分かからない距離よ」

 

「え?マジで?」

 

 白銀が佳世の紹介された物件を食い入るように見る。スマホで探した時は、こんなの無かった。

 

「偶にあるのよ。ネットに載ってない良物件ってやつがね。それで、どう?」

 

「内見予約していいですか?今度、家族と一緒に行きます」

 

「わかったわ。じゃあ、来週の土曜日とかどう?」

 

「構いません。家族には自分から連絡しておきます」

 

 もう決まったも同然だが、ここは慌てずちゃんと内見してから決めよう。急がば回れである。

 

(マジで楽しみだな…)

 

 白銀は、京佳との明るく楽しい未来に想いを馳せる。引っ越しがちゃんと終わったら、1度京佳を家に呼ぼう。そして一緒に食事をしよう。

 

「あ、そうそう白銀くん」

 

「何ですか?」

 

 そうやって内心心躍らせていると、佳世が話しかけてきた、

 

 

 

「京佳と結婚して、一緒に住みたいところが欲しい時は言ってね?私が最高の家を探してあげるから」

 

 

 

 そして凄い事を言ってきた。

 

「いやまだ気が早いですって!?俺たち付き合って半年も経ってないんですよ!?」

 

「でも私はもう、貴方の事義理の息子って思ってるわよ?」

 

「だから気が早すぎますって!!」

 

「あ、ところで京佳とはどこまでいった?キス以上の事はもうした?まだならする時はちゃんとゴムつけなさいよ?」

 

「お願い!反応に困るからちょっと黙っててーー!?」

 

 何と言うか、この人には今後も振り回されそうな気がする。そんな事を思った白銀であった。その後白銀は、内見予約をして、少しだけ佳世と世間話をしてから帰宅するのであった。

 

 

 

 

 

「って事で、来週の土曜日に皆で内見に行くから」

 

「了解だ。しかし、目黒区か」

 

「何だよ親父。何か不満でもあるのか?」

 

「いや、全然不満はない。見たところ本当に凄く良いマンションだしな。築年数もあまり経ってないし、部屋も広いし、防音対策もされている。おまけに近場に大きな商店街もあるし、病院と消防署だってある。こんな良物件、簡単には見つからんだろう」

 

「じゃあ、何だよ?」

 

 

 

「いや、折角なら港区に住んで、港区おじさんになってみたかったなって」

 

「それ意味違うから絶対に人前で口にするなよ?」

 

「パパ系動画配信者の港区在住おじさん。つまりパパ活する港区おじさんになってみたかったなって」

 

「マジで誰にもいうなよ?もし言ったらグーで殴るからな?」

 

「これが家庭内暴力か」

 

「ただのツッコミだわ」

 

 

 




 作者は九州在住なので、関東の悪口は全部ネットの知識によるものです。間違っていたらごめんね。
 そして石上と伊井野はどこに住んでるかわからなかったので、作者の勝手なイメージで葛飾区と品川区にしました。あとこのお話書く時に、東京の家賃調べていたけど、やっぱり超高いですね。流石東京。

 あと、少しだけアンケートにご協力ください。
 次回はネタ回の予定。それでは皆さん、またね。

 26年5月5日追記

 生徒会の皆が住んでいる地域、原作にあったのを普通に見落としてました。

 白銀  世田谷区三軒茶屋
 かぐや 港区泉岳寺
 藤原  渋谷区松濤
 石上  目黒区中目黒
 伊井野 渋谷区代官山
 つばめ 港区港南
 
 これが、原作での各キャラの住んでいる場所みたいです。
 でも今更訂正するのも面倒なので、本作では作中で書いている場所でいかせていただきます。

石上とつばめ先輩は

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