もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・ 作:ゾキラファス
今回『前と言っていること違うじゃねーか』という展開となっています。でも、色々悩んだ結果、こういう形にしました。本当に物語作るの難しい…
本当にごめんなさい。
「皆、色々あったが、1学期お疲れ様でした」
『お疲れ様でした』
突然決まった姉妹校との交流会、期末テスト、部活連の会合、生徒会総会など、本当に色々忙しかった1学期。しかし、それも遂に本日終わりを迎える。何故なら、本日は1学期の終業式なのだから。
「ふふふ、明日から夏休みですね~」
「ですね、ようやくって感じですよ」
そして明日からは夏休み。学生にとって最高の日々が来るのだ。それが待ち遠しいのか、藤原と石上は落ち落ち着きが無かった。
「四宮は何か予定はあるのか?」
「私ですか?少し買い物に出かけるくらいで、特に大きな予定はありませんね。そういう会長はバイト三昧ですか?」
「それが思ったよりシフトの調整に難航してな。結構ヒマがあるんだ」
「それは…勿体ないですね」
「ああ、何かしないと勿体ないよなぁ」
そして始まる白銀とかぐやの心理戦。
夏休みというのは様々なイベントがある。旅行、海水浴、夏祭り、花火大会等々。個人でもそれらを楽しめることはできるのだが、これらを男女混合で楽しむと、夏休み終了後に一定の男女は距離が近くなっていたり、恋人になっていたりするのだ。白銀とかぐやにとって、それらのイベントをスルーするなどありえない。
だからこそ、夏休みの予定を今ここで建てようとしているのだが、それを自分の口から言う事などしない。故に、他のメンバーに言わせて、それに便乗する形にしようと目論んでいた。
(さぁ藤原書記!言うんだ!皆と旅行に行きたいと!)
白銀は元々の言い出しっぺである藤原に期待した。だが、当の藤原は呑気に踊っている。余程、夏休みが楽しみだったのだろう。かぐやもかぐやで何も言わず、心を無にし始めている。このままではダメだと思い、白銀は少しだけ自分から仕掛けてみようと思っていた。
しかし、この場には白銀とかぐやと同じくらい夏休みを心待ちにしていた人物がいる。
「少し皆に聞きたいことがあるのだが、明日ヒマか?」
「「え?」」
そう、京佳である。
前々から、夏休みが自分にとって最後の攻勢期間だと思っていた京佳。もし、このまま何もしなければ、絶対に白銀を振り向かせることなど出来ないという確信があった。だからこそ、夏休みは多少強引でも徹底的に攻める事を決めていた。そしてさっそくこうして仕掛けたのである。
「私はヒマですよ~。明後日からは家族でハワイ旅行に行きますけどね~」
「僕も明日は特に用事はありませんね」
京佳の質問に答える藤原と石上。それを聞いた京佳は、ポケットから何かのチケットを取り出した。
「実はな、昨日帰りに買い物をした際に福引をしたんだが、その時に都内の遊園地の招待券が当たったんだ。フリーパス付きのやつが」
「ええ!?凄いじゃないですか京佳さん!!」
それは複数の遊園地のチケットだった。そして、そのチケットを見て目を輝かせる藤原。
「ただこれ、期限が何故か明日までなんだよ」
「え?普通そういうのって半年くらい期限ありません?」
石上の言う通りである。普通、福引の商品は基本的にそれなりの期限があるものだ。どうして明日までしか期限が無いのか不思議である。だが、京佳にとってそれは些細な事だ。
「そこでだ、明日ヒマなら皆で遊園地に行かないか?」
明日までしか期限が無いのなら、明日までに誘えばいいだけなのだから。
『ナイスだ(よ)立花(さん)!』
京佳の提案の聞いた白銀とかぐやは思わず心の中でガッツポーズをした。藤原から色々と言わせる筈だったが、別の誰かが提案するのならばそれでいいのだ。
「ふむ、明日なら俺も特に予定はないし、大丈夫だぞ?」
「私も大丈夫ですね」
「私もですよ~」
「僕も、大丈夫です」
「それは良かった。なら、一先ず明日の予定は決定だな」
生徒会メンバーは全員参加を表明した。特に白銀とかぐやはこの期を逃すものかと若干食い気味である。そんな2人をよそに、藤原がある事に気づいた。
「京佳さん?そのチケット8人までって書いてますよ?」
「そうなんですか藤原さん?それは少し勿体ないですね…」
京佳の持っているチケットには『8名まで』と何とも中途半端な数字が書かれていたのだ。
(これはチャンスね)
そしてそれを見たかぐやはある事を思いついた。
「立花さん、どうせなら会長と藤原さんの妹さんも誘ってはどうでしょう?同じ学園の生徒ですし」
「本人さえよければ私は構わないぞ」
それは白銀の妹である、白銀圭を誘うというものだった。数日前、かぐやは圭と初めて知り合い、どうにか仲良くなろうとしたのだが、あまり上手くいかなかった。だからこそ、明日の遊園地に共に行き、少しでも距離を縮めようと思いついたのである。
しかし、ここで白銀の妹である圭だけを誘うのは余りに不自然。故に、藤原の妹である萌葉も同時に誘う事により、不自然さを無くす事にした。
「じゃあ後で萌葉に聞いてみますね~。多分大丈夫でしょうけど」
「なら俺も後で圭ちゃんに聞いてみるか」
(よし!これで会長の妹さんとの距離が縮まって会長と家族ぐるみの付き合いができるかもしれない!)
藤原と白銀の2人がそれぞれ確認を取ると言い、かぐやはより気合を入れた。
「それでもあと1人余りますね。どうしましょう?」
しかしそれでも人数は7人。この人数でも問題はないのだが、少し勿体ない感じが残ってしまう。
「それなら大丈夫だ。私の友達を誘う。秀知院の生徒だし問題ないだろう」
「そうか、立花の友達ならば俺は構わないぞ」
「私もですよ~」
(友達…?一体誰でしょうか…?)
京佳は8人目に自分の友達を誘うと言い、かぐやは疑問符を浮かべた。というのも、かぐやは京佳の友達に心当たりが全くないのだ。
言っちゃなんだが、京佳は自分のクラスでは長い間ぼっちだった。入学当初より、その見た目のせいで怖がられてきた京佳。その期間が長かったせいで、あまり友達という存在を作る事ができずにいた。最も、今は普通にクラスメイトと喋るくらいには親密な関係を築いているのだが。
かぐやが1人疑問符を浮かべているそんな時、遂に白銀とかぐやが待ち望んでいた瞬間がやってきた。
「あ、そういえば前にみんなで旅行に行こうかどうかって話をしましたよね?」
「ああ、そんな話もしたな」
((よし来たぁぁぁ!!))
藤原の口から『みんなで旅行』という話題が出てきたのである。前回は色々あって有耶無耶になっていた話だが、今この流れでなら再びその事について話し合いを行う事が出来る。
(え…?僕それ知らない…)
前回、その場にいなかった石上は1人疎外感を感じた。
「言っておくが恐山に行くのなら私は断固拒否するぞ?」
「もぉ~あれは冗談ですって~。本気にしないでくださいよ京佳さん~」
京佳は絶対に心霊スポットで有名な恐山には行かないと言う。それだけ幽霊というものがダメなのだ。因みに、藤原はあの時のは冗談と言っているが、半分位は本気だったりする。
(四宮と旅行…!四宮と旅行…!)
(会長と旅行…!会長と旅行…!)
一方、白銀とかぐやはお互い全く同じことを思っていた。自分の口から『旅行に行きたい』とは決して言わない2人。だからこそ、他の人が言うのを今か今かと心待ちにしていた。そして遂にその時がやってきたのだ。今、2人の頭の中では様々な妄想が出来上がっていた。
「でも実際、学生で旅行って厳しくないですか?お金とか」
そんな妄想をしている2人が冷める様なことを言う石上。だがそれは正論でもあった。旅行というのは何かとお金がかかる。ましてや学生の身ではその負担も大きくなるだろう。
「ふむ、軽く見ても、やはりどこの宿泊施設もそれなりに代金がかかるな」
「交通費や食費もあるしな。やはり学生だけで旅行は色々ときついかもな…」
白銀と京佳はスマホを取り出し、ホテルや電車料金などを調べ始めた。やはり、そうそう安いものでは無い。
「それに仮にみんなで旅行に行けるとしても、お父様が許してくれるかどうか…やっぱり学生だけだと色々不安でしょうし…」
「他にもありますよ藤原先輩。未成年だけだと、ホテル側が泊まらせてくれない可能性もあります」
そして藤原と石上も別の問題を口にする。実際、未成年だけで旅行をするとなると、保安上の問題がある。いざという時、頼れる大人が居ないのは色々とマズイのだ。更に、石上がいう宿泊できるかどうかという問題。実際は、未成年でも宿泊ができるホテルが殆どなのだが、場合によってはそれが取り消されたりする。折角旅行について話しているのに、部屋の空気は重い。
そんな時、
「それならば皆さん、軽井沢にある、四宮家が所有している別荘に泊まるのはどうでしょう?」
かぐやがそんな提案をした。
「それって前にかぐやさんが言っていた場所ですか!?シアタール-ムや遊戯室があるっていう!」
「え?何それ凄い…流石ですね、四宮先輩…」
「ええ。私は使ってませんが、皆さんさえよろしければ直ぐにでも色々と準備をさせますよ?」
かぐやの提案は例えるならば、まさに地獄に仏であった。
「別荘には四宮家から使用人を何人か派遣しますので、藤原さんのお父さんも安心してくれると思いますよ?」
「はい!それなら大丈夫と思います!」
「しかし、いいのか四宮?その、代金とか…」
「会長、いくら何でも同じ生徒会の人からお金を徴収するなんて真似しませんよ」
「そうか。それはありがたい」
「でも四宮先輩、軽井沢までどうやって行くんですか?電車?バス?」
「いえ、四宮家からマイクロバスを出します。もちろん交通費なんて取りませんよ?」
至れり尽くせりである。もし、そういったレベルの別荘を借りるとなると、本来ならば相当な出費が発生するだろう。しかしそれらをタダで使えるという。流石、日本最大の財閥の令嬢。やれることのスケールが大きい。
「四宮、少しいいか?」
「何ですか立花さん?」
そんな中、京佳が質問をしてきた。
「軽井沢というと、山になるな?」
「そうですね」
「その別荘には、プールとかあるか?」
「ありません」
「…じゃあ近くに泳げる湖とか」
「ありません」
「……川は」
「川くらいはありますが泳げませんよ?」
「…………そうか」
(よし)
この夏に間に、水着を着て白銀を悩殺するつもりでいる京佳。逆に何としてでも京佳に水着を着させないつもりいるかぐや。そしてかぐやは勝利した。これで白銀が京佳の水着を拝むことは無いだろう。
(こうなった以上仕方ない。水着は旅行とは別の機会にするしかないな…)
だがここで諦めないのが京佳である。彼女は、直ぐに別の作戦を考える事にした。
「旅行に行く日は、お盆の前くらいでどうでしょう?」
「そうだな。その辺りならば、俺は大丈夫だ」
「私もですよ~。その日までにはハワイから帰ってきますし~」
「僕も大丈夫です。元々特に用事ありませんし」
「私も問題ない」
みんなで旅行に行くことが決定した生徒会。白銀とかぐやも何とか最低条件である夏休みの予定を異性と組むという目的を達した事のよりテンションが高い。
(四宮と旅行…!四宮と旅行…!!四宮と旅行…!!!)
(会長と旅行…!会長と旅行…!!会長と旅行…!!!)
因みに心の中のほうはもっとテンションが高かった。
「ところで、旅行に行くメンバーは生徒会の人たちだけですか?」
そんな中、石上が質問をする。
「そうですね。別荘は結構広いので、もう少し人数が増えても問題はありませんが、どうしましょう?」
「だったらかぐやさん!萌葉も誘っていいですか!?」
「四宮、圭ちゃんも誘っていいか?その、圭ちゃんってこういう機会が中々なくてな…」
「ええ、勿論構いませんよ」
遊園地に続きチャンスが巡ってきたと思い、藤原と白銀の妹達の参加を秒で可決するかぐや。これで更なる作戦を実行できそうである。
「楽しみだな。皆で行く旅行」
「ええ、本当に」
「えへへ~、楽しみです~」
「全くだ、もうこんな機会など無いだろうしな」
「ですね」
みんな旅行の計画を立てて嬉しそうな雰囲気をだしている。この生徒会も、2学期が始まれば直ぐに解散してしまう為、本当にこれが最後の機会になるのだからそれも仕方ない。
(何としてでも、この夏に四宮から告白させてみせる…!)
(何としてでも、この夏に会長から告白させてみせる…!)
(何としてでも、この夏に白銀を振り向かせてみせる…!)
そして白銀、かぐや、京佳はそれぞれそんな思いを胸に秘めて、遂に夏休みが始まるのだった。
「ところで立花さん?明日遊園地に誘う予定のお友達とは誰ですか?立花さんのクラスメイトですか?」
「いや、四宮と同じクラスの子だよ。金髪で頭にシュシュを付けている」
「……え?」
前に『現在旅行に行くことは予定していません』と言った作者ですが、その後、色々と考えた結果『旅行に行ったりしたほうが楽しそう。何より書きたくなった』と思い、結局旅行に行くことにしました。
ノリと勢いだけで書いた結果こんな事になってしまいました。本当にごめんなさい。今後は、こういった事の無いよう精進したします。
重ね重ね、本当にすみませんでした。拙い作品ですが、これからも読んでくれるとありがたいです。どうか、これからもよろしくお願いします。
次回、原作と大きく違う夏休み編、開始。