もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・   作:ゾキラファス

200 / 200
 祝、200話達成です。あと本作の連載が開始されて、とうとう6年が経ちました。これも全て、応援してくださった皆様のおかげです。応援してくれている皆様、本当にありがとうございます。
 偶に何か月も期間が空いたり、物語が右往左往したり、無駄に長く引っぱったりもしましたが、これからもなるべく早く完結目指して頑張ります。

 そして今回は、タイトルが全て物語っている話しです。
 それでは、どうぞ。


立花京佳と大人の階段

 

 

 

 

 

 数日前 純喫茶 りぼん

 

「それで京佳。もう白銀くんとえっちな事したの?」

 

「開幕早々何言い出すんだ恵美」

 

 久しぶりに恵美とご飯を一緒にしていた京佳は、突然の恵美の発言につい手が出そうになっていた。いくら親友の恋が気になると行っても、こんな場所で聞かないでほしいからだ。

 

「まだだよ…キスは、結構しているけど、それ以上の事は全然だ…」

 

「へー、意外。恋人って付き合って3か月で大体するもんでしょ?」

 

 恵美の言う通り、日本では大体、恋人は付き合って3か月以内に恋のABCのCまでする事が多い。最近のデータでは、付き合って2週間から1か月でする事が多いらしいが、ここでは3か月でいかせてもらう。

 

「タイミング、わからないんだ…」

 

「あー、それは確かに。でもさ、そろそろ強引にでも1歩進んでもいんじゃない?恋人ってさ、3か月で別れる事も多いって言うし。そうなる前に、新しい事をしたらいいじゃん」

 

「簡単に言わないでよ…」

 

 恵美の言葉に、京佳は少し苦しい思い。だってそれは、京佳も少し不安に思っている事だからだ。

 

 3か月で別れる事が多い。

 

 これは通称「恋の3か月の壁」と言われており、恋人たちにとって重要な転換点になるからだ。当初あった恋愛フィルターが外れ、お互い少しマンネリ化してしまい、遠慮が無くなる。

 そしてこの時に判断を間違えてしまうと、そのまま破局となってしまうかもしれないのだ。そうなる前に何か新しい事をすればいいのだが、そのタイミングがわからない。

 

「別に京佳もさ、そういう事したくない訳じゃないでしょ?」

 

「そりゃ、私だってそういう事したいよ…普通に性欲くらいあるし…」

 

 京佳も別に、菩薩のような精神を持っている訳じゃない。年頃の女子高生らしく、三代欲求くらい持っている。

 

「でも、女の私からそういう事言うのって、恥ずかしいし…そもそもタイミングがわからないし…」

 

「それはそうだねー。私もだよ」

 

 しかし、自分から言うのは恥ずかしい。いくらそういう事をしたい欲求があるとは言え、自分から言うのは恥ずかしい。それに、白銀にひかれてしまうのではないかという不安もある。

 だから未だに、キス以上の事は無い。それでいて、ちょっと物足りないと思うのは欲張りなのだろうか。

 

「いい、京佳ちゃん。それはね、別に恥ずかしい事なんかじゃないわ」

 

 そんな話しを恵美としていると、店主である朝子が最近メニューに追加した新作のワッフルを持ってきた話し出す。

 

「好きな人とそういう事をしたいって思うのは、普通よ普通。そこに男女の違いなんて、ありはしないわ」

 

 朝子の言う通り、好きな人とそういった事をしたいと思うのは別に恥ずかしい事でもおかしな事でも無い。健全な反応であり、むしろそう思わない方がおかしいまである。

 

「それに、自分の彼女にそんな事言われたら、男の子ならあまりの喜びで昇天しちゃうかもしれないくらい、嬉しい筈よ」

 

「そう、ですかね?」

 

「ええ。絶対にそうよ」

 

「そこは私も同意」

 

 朝子の言葉に、京佳に少し自信が湧く。それだけ、年長者で頼れる大人である朝子の言葉は凄いのである。

 

「因みに、朝子さん的にはタイミングっていうのはどんな感じでしたか?」

 

「うーんそうね。これはもう人によりけりだから、私のはあまり参考にしない方がいいわね。強いて言うなら、それっぽい雰囲気になりそうだったら、行けるところまで行けばいいって感じよ」

 

「なるほど…行けることまで…」

 

 実際、そういうタイミングはなんとなくとしかわからない。彼氏の家で2人きりになったとか、彼女の方がホテルに誘ったりとか、いっそ勢いでとか様々だ。

 こればかりは、自分で見極めるしか無いだろう。そしていざそういう空気になったら、あとは行くだけである。

 

「大丈夫。もっと自分に自信を持って。それに、自分の気持ちに素直になることが、1番幸せになる手段よ」

 

「っはい!ありがとうございます!」

 

 朝子に背中を押され、京佳は決めた。今度のデートで、思い切って前に進んでみようと。白銀と、より深い関係になってみようと。でもそのためには、色々と準備をしなければならない。

 

「恵美」

 

「何?」

 

「この後一緒に、新しい下着を選びに行くのに付き合ってくれないか?」

 

「よろこんで」

 

 とりあえず先ずは、勝負下着を買うところから始めよう。こうして京佳は、恵美と共に下着ショップへと足を運ぶのであった。

 

 

 

 

 

 白銀家

 

「ようこそ、新しい我が家へ」

 

「お邪魔します」

 

 デートの後、京佳は白銀の新居へとお邪魔していた。オートロックがついていて、エレベーターがあり、前の家に比べると凄く広い。家族3人で、広々と過ごせる家だ。

 

「ここが、俺の部屋だ」

 

「おお、初めて入った」

 

「今までは圭ちゃんと同じ部屋で過ごしていたが、これでようやくプライベートな空間を手にする事が出来た」

 

「あれはあれで仲睦まじいと思うが、確かにプライベートは無かったな」

 

「ああ。特に圭ちゃんには申し訳無いと思ったよ」

 

 思春期なのに、自分の部屋が無いのはかなりキツイ。色々と、ストレスが溜まるからだ。しかし、今は違う。白銀兄妹は、お互い完璧なプライベートを約束された自室を持っているからだ。

 ここならば、もう気を使わずに過ごせる。そして白銀は、自分が浸かっていおるベッドに座り、手でベッドをポンポンさせながら話す。

 

「見ろ!新しいベッドだ!これマジで寝心地良いんだよ!!」

 

「へぇ…」

 

「あ!いや違くてだな!?本当は机とベッドが一緒になっている物を買おうとしたんだが、親父に絶対に後悔するからやめておけっていわれてな!?だからこういう少し大きくて寝心地の良いベッドにしたんだ!!なんなら寝心地確かめてみるか!?」

 

「へ!?あ、いや…それって…」

 

「あ!違う!今のはそういう変な意味じゃない!!変なこと言ってすまん!!」

 

「わ、わかってる!わかってるから!!」

 

 しかし、その結果変な誤解が生まれそうになった。

 

(くっそ!何考えてるんだ俺は!!そういう話題を口にするなんて!!そういう事はもっと気をつけないと立花に引かれるだろうに!!)

 

 今日のデートで、白銀は京佳と沢山キスをしている。おまけにハプニングとはいえ、京佳のパンチラも見てしまった。おかげで今の白銀は、なんか悶々としているのだ。些細な事でも、色んな事を妄想してしまうくらいに。

 

 例えば、このまま京佳が家に泊まってくれて、そして恋人として更に先のステップに進むかもとか。

 

 今のベッドの話しもそうだが、そんな事を考えているからあんな事を言ってしまったのだろう。あまりそんな事ばかり言っていると、京佳に引かれかねない。所詮男は、狼なんだと思われてしまうかもしれない。

 

(落ち着け俺!こういう時こそ落ち着くんだ!今日はこの後立花と圭ちゃんと3人で夕飯食べて、その後立花を家に送り届けるだけ!だから変な期待をするな!!)

 

 白銀は、自分を強く落ち着かせる。恐らく今は、圭がいないのでこんな事を思っているだけ。ここに圭が帰ってくれば、こんな事を考える事も無いだろう。だから圭が帰ってくるまでは、冷静になって京佳と過ごそう。

 とりあえず、リビングのテレビで最近入ったばかりのサブスクで配信している映画とか見るといいかもしれない。そうすれば、この邪な気分も多少はなんとかなるだろう。

 

「それにしても、圭ちゃん遅いな。いい加減帰ってこないと、夕飯の時間がかなり遅くなるぞ?」

 

「確かに少し遅いな。何かあったのか?」

 

「今日は藤原の妹と一緒に遊びに行っているんだが、もしかすると遊びに夢中になっているのかもしれん」

 

 しかし、その肝心の圭の帰りが遅い。いつもなら既に帰っており、夕飯の支度をしていたりするものなのに、まだ帰ってこない。ひょっとして事故にでもあったのかと思い、白銀は少し不安になる。

 

「ん?」

 

 そう思っていると、白銀のスマホが鳴った。白銀が画面を確認すると、そこには圭からのメッセージが届いていた。

 

 そしてその内容は、

 

『おにぃへ。突然で悪いけど、私今日萌葉の家に止まるから。夕飯は、何か適当にデリバリーでもしといて』

 

「…………え?」

 

 なんと、圭が帰ってこないというものであった。

 

(嘘だろ…)

 

 この突然の事実に、白銀は暫く停止する。恋人と2人きりの自宅。悶々とした気分。おまけに今日、実は父親も同業者の飲み会に行っており帰ってこない。

 

 つまりは、マジのマジで今日はこのまま京佳と2人きりになる。

 

(俺、耐えられるかな…?)

 

 あくまで夕飯を一緒に食べて家まで送るだけだが、それまで自分の理性が持つか正直わからない。つい理性の糸が切れて、京佳に手を出してしまうかもしれない。

 

(だから!そういう事はやめろって俺!!そりゃ立花とそういう事はしたいけど、そういうのはもっと段階を踏んでヤルことだろうが!!)

 

 しかし、白銀は己の理性の糸をギュッと締め直す事でなんとかする事にした。確かに、京佳とそういう事はしたい。

 でも、その日思ったからするというのはムードが無いし、何より京佳も自分と同じ気持ちとは限らない。だから、なんとか我慢する。

 

「あー、立花。なんか圭ちゃん今日藤原の家に泊まるらしいから、帰ってこないってさ…」

 

「え?そうなのか?」

 

「ああ。だから夕飯は、なんかデリバリーとかでいいか?」

 

「私は良いよ。あ、ピザとかどうだ?久しぶりに食べたいし」

 

「わかった。じゃあピザにしよう」

 

 京佳に状況を説明した白銀は、とりあえず有名なピザチェーン店に電話をして、ピザを注文する事にした。

 

「やった…好都合だ…」

 

 そしてその時、京佳が小声で何か呟いている事には気が付かなかった。

 

 

 

 

 

 その後2人は、白銀の家でゆったりと過ごした。

 

「お、このマルゲリータ美味しいな」

 

「だな。しかし、ピザなんてマジで久しぶりだよ。特にこういうチェーン店のやつは」

 

「そうなのか?」

 

「ああ。便利だけど高いし」

 

「なるほど。まぁ確かに、そう何回も注文は出来ないよな。あまり食べすぎると太っちゃうし」

 

 注文したピザを2人で食べて、お腹いっぱいになった。久しぶりに食べたピザは、マジで美味しかった。それも恋人と一緒だと、なおさら美味しく感じるものである。だれかと一緒の食べるというのは、それだけで幸せになるのだ。

 

「いやー、石上に進められて見たが、面白かったなこの映画」

 

「そうだね。しかし、自分のお城を敵の作った堤防で囲まれ、そこに大量の水を流されて絶体絶命な中、お殿様自身が手傷を皆の前で追うことで士気を再び上げ、それを見ていた敵が作った堤防の外にいた領民が堤防を壊して水を抜くなんて、中々出来ない作戦だよ」

 

「確かにな。これも、主人公の殿様が領民に慕われていたからこそ出来た作戦だよ。もし殿様が悪逆非道な人だったら、こうはならなかっただろう。映画とはいえ、俺もあんな人になりたいな」

 

「ふふ、そうだな。でも白銀なら、絶対にこのお殿様みたいにもなれるよ」

 

「そう言ってくれると嬉しいもんだ。いっそ今から、田楽踊りでも習ってみるか?」

 

「はは、いいじゃないかそれ」

 

 サブスクで配信していた時代劇の映画を見て、その感想を言い合った。因みにこの映画の元となった戦い、史実ではお姫様の方が超活躍している。詳しくは、甲斐姫で検索してみよう。

 

「あ、この写真懐かしい」

 

「四宮がスマホを買った時に撮った写真だな。皆良い映画で、本当に良い写真だよ」

 

「確かにな。ちゃんと写真にして飾りたいくらいには、良い写真だよ。何かのコンテストに出したら、賞くらいもらえるんじゃないか?」

 

「言われてみればそうかもしれん。いっそ今度、何か送ってみるか?」

 

 映画を見終えた後、2人で部屋にあるソファに並んで座り、スマホに入っていた写真を見て懐かしんだりした。

 

 そんな風に楽しく過ごしていたのだが、気がつけば時刻は夜の10時前。いい加減、もう遅い時間だ。そろそろ京佳を家まで送らないといけない。

 

「立花。もう遅いし、今から家まで送るよ」

 

 白銀がソファから立ち上がり、玄関に向かおうとする。

 

「え?立花?」

 

 しかしここで、京佳はソファに座ったまま動かない。それどころか、白銀の服の袖を掴んだのだ。

 

「白銀」

 

 そして京佳は、意を決して口を開く。

 

「今日、このまま泊まったらダメ、かな?」

 

「え!?」

 

 突然の京佳の言葉に、白銀はすっごく驚く。まさか、京佳からそんな事を言われるとは思っていなかったからだ。

 

「今日、母さん仕事で家に帰ってこないんだ。兄さんは自衛隊の寮で生活してるから、そもそも家には帰ってこないし。それに最近割と物騒だから、家に1人でいるって言うのはちょっとね」

 

 尤もらしい事を言う京佳。しかし、それは全部方便だ。彼女は最初から、今日はこのまま白銀の家に泊まろうと思っていた。圭がいるので最後までは無理だろうとは思っていたが、その圭も帰ってこない。

 ならば、この期を逃すわけには行かない。こういう時は、行けるところまで行くべきだろう。

 

「え、えっとそれは…なんというか…そのだな…」

 

 そして白銀は、京佳にそう言われしどろもどろになる。しかしその顔は、期待半分不安半分といった感じ。実際彼も、こうなる事を望んでいた部分がかなりある。ある意味京佳の発言は、渡りに船なのだ。だがどうしても、最後の1歩が踏み出せない。

 

 何故なら、白銀御行は童貞だから。

 

 童貞であるが故、最後の最後が踏み出す勇気が無い。童貞は皆、チキンなのだ。そりゃ本能を解放してやれるならそうしたいが、童貞にそんな真似出来る訳が無い。

 そもそもそんな事したら、絶対に京佳に引かれるし、最悪別れを切りだされかねない。そういう理由もあって、白銀は最後の1歩が出ないのだ。

 

 しかし、ここで京佳が更に畳み掛けてきた。

 

 京佳は立ち上がって、白銀の耳元で囁くように言う。

 

「実は私、今日お泊りの準備してきてるんだ…」

 

「……」

 

「だめ、かな?」

 

 それは、これまでのどんな言葉より破壊力のある言葉であった。だってつまり、京佳はその気で今日ここにいると言っているようなもの。これに抗える男なんて、この世のどこにも存在しない。

 

「い、いいぞ…」

 

「っ!ふふ、そうか。ありがとう」

 

 京佳の最後の一押しにより、白銀は京佳の宿泊を許可した。それを聞いた京佳は、わかりやすく笑顔になって嬉しそうにする。

 

(俺、理性持たないかもしれない…)

 

 そして白銀は、もう自分の理性が限界に近いのを知り、この後どうなってしまうのかと不安になると同時に、期待に満ちる事になっていた。

 

(風呂、沸かすか…)

 

 とりあえず、京佳が泊まる事になったから、先ずはお風呂を沸かすとしよう。

 

 

 

 

 

「ふぅ…良いお風呂だったよ」

 

「そ、そうか」

 

 それからお風呂を沸かした白銀は、先ず京佳をお風呂に先に入らせた。そしてお風呂から上がった京佳は、白銀が浸かっている紺色のパジャマを着ている。

 おまけに、いつも左目に付けている眼帯も外していいる。完全な、プライベートな姿といえるだろう。こんな姿を見れるのは、京佳の家族か、恋人である自分くらい。その事実に、白銀は少しだけ優越感を味わう。

 

「これが、彼シャツってやつなのかな?なんだか、白銀に常に抱きしめられている気がして、凄くドキドキするよ」

 

「お、おおう!それはよかった…!」

 

 でも頼むからそんな事を言わないでくれと、白銀は内心思う。だって、我慢出来そうになくなるから。

 

「……」

 

 既にその片鱗が、自分の目に露わていた。今白銀は、自然と京佳の体をまじまじと見てしまっている。うなじや胸、そして足や尻。

 普段よく見る制服姿と違い、部屋着、それも自分のパジャマを着ているのだ。新鮮な上、そこはかとなくエロイ姿。だからそうやって、ついじっと見てしまう。

 

「ふんっ!!」

 

「突然どうした白銀!?」

 

「いやー!季節外れの蚊がいてな!!あっはっはっは!!」

 

 だがより見ようとした時、白銀は自分の顔を自分で殴った。これ以上は京佳に失礼だし、我慢出来なくなるかもだからだ。

 

「じゃあ、今度は俺が風呂入ってくる」

 

「うん。じゃあリビングで待ってるね」

 

 今は1度京佳と物理的に距離を取ろう。そう思った白銀は、京佳に一言言って風呂に入る。そして脱衣所で服を脱ぎ、浴室に入り体を洗って湯船に浸かったのだが、

 

(さっきまで、立花が入っていた風呂…)

 

 どうしても、そんな事を思ってしまう。

 

(いかんいかん!これじゃ変態じゃないか!!1度冷水を浴びよう!!)

 

 このままではマズイと思った白銀は、シャワーから冷水を出して頭から被る事にした。凄く冷たかったが、おかげで心身共に冷えて冷静になれた。

 

(私、強引過ぎないかな?白銀に引かれてないかな?)

 

 一方、お風呂から上がってリビングにいる京佳。こっちもこっちで、色々と不安が募っていた。自分でもう少し深い関係になりたいと思ったとはいえ、少し強引だったかもしれない。もしかすると、白銀から「うわっ」とか思われているかもしれない。

 

(でも、今更引かない…!私は今日、覚悟を持ってきているんだ…!こうなったら、最後まで行ってやる!)

 

 だが京佳、今更ヘタれる気は全く無い。もう白銀に引かれてもいい。ここまで来たのなら、最後まで行く所存だ。

 

(えっと、下着はこの前買った新品に変えてるし、お守りもちゃんと用意した。これなら、大丈夫の筈…)

 

 そして白銀がいない間に、必要な物を再確認したりするのであった。

 

 

 

 

 

「それでさ、石上は毎日が超幸せらしいんだよ。今日だって、俺のスマホに子安先輩と一緒にデートしている写真送ってきたし。それも10枚も」

 

「それ私にも来たよ。石上が幸せそうで良いんだけど、正直こうも毎回送ってくると迷惑なんだよなぁ…」

 

「……休み明けに、1度石上に言っておくか」

 

「だな」

 

 風呂から出た2人は、リビングのソファで他愛のない会話をしていた。石上のほぼ毎日送ってくる惚気話しとか、圭が最近試験で順位を上げたとか、白銀家の借金が無くなったから生活に余裕が出来たとか、京佳が例のモデル雑誌の表紙を飾る事になったとか、そんな事を話した。

 その時間が、とても楽しい。できればこのまま、こんな楽しい時間が続けばいいと思えるくらいに。

 

「あ、もうこんな時間か」

 

「流石に少し遅いね」

 

 気がつくと、既に深夜0時を回ろうとしている。そろそろ寝ないと、明日に響く。別に明日もまだ春休みなのだが、それでもあまり夜ふかしをするものではない。そもそも夜ふかしは、健康に悪いし。

 

「じゃあ立花。俺今から来客用の布団持ってくるから、立花はそれを使ってリビングで寝てくれ」

 

「え?リビングで?」

 

「ああ。他に空いている部屋無いしな」

 

「…わかった」

 

 少し残念そうにする京佳。しかし、流石に一緒の部屋で寝る訳にはいかない。耐えきれそうにないから。

 

「じゃ、おやすみ」

 

「うん。おやすみ」

 

 そしてリビングに布団を敷いた白銀は、自室のベッドに入り寝ようとした。だがその時、

 

「ん?親父?」

 

 突然、父親から電話がかかってきた。

 

「もしもし?どうかしたか?」

 

 白銀は小声で、京佳に聞こえないように電話に出る。

 

『ああ御行。今同じ配信業している若い子らと一緒の飲んでるんだけど、正直帰りたい』

 

「え?何でだ?」

 

『いや、ノリについていけないんだ。テキーラとかスピリタスとかバンバン飲んでる。流石の俺も、これは飲めて2杯とかだ』

 

 どうやら、同業者のノリに困っているらしい。確かに、中年には少しキツイノリだ。

 

「じゃあ、帰ってくるのか?」

 

『そのつもりだ』

 

 帰ってくる予定の無かった父親が帰ってくる。正直、これは困る。折角京佳と2人きりなのに。

 

(いや待て。ここで親父が帰ってくれば、俺も間違いを犯す事は無いんじゃないか?)

 

 しかし、ここで父親が帰宅してくれれば、2人きりという状況は無くなる。そうなれば、万が一にも間違いは起こらない。

 

「わかった。じゃあ、鍵開けとくよ。ただ、立花いるから、静かに部屋に戻ってくれよ?」

 

「…………え?京佳ちゃんいるの?」

 

「ああ。色々あって今うちに泊まってるんだよ」

 

『そうか……』

 

 暫くの間、父親は何かを考えるように唸る。そして息子に対して、こう言った。

 

『すまん御行。やっぱりこのまま俺は残る』

 

「は?」

 

『これでも若い頃、仕事の接待とかで結構飲み歩いたりしていたしな。偶にはそんな日を思い出しながら、強い酒を若い子らと飲むのもいいだろう。それに、若い同業者に色々と人生相談受けててな。それをしっかりとしないと、逃げたみたいになる』

 

「お、おい親父!?」

 

 なんと、やっぱり帰らないというのだ。これに白銀は少し慌てる。だが父親は、もう今日は何があっても帰らない気だ。そもそもこんな状況で帰ったら、京佳に申し訳が無い。

 

『兎に角、今夜は絶対に帰らない。だから、頑張れよ。あと、京佳ちゃんによろしく』

 

「そういうの言わなくていいから!!」

 

『じゃあな』

 

「あ!おい!!」

 

 そのまま、電話は切れてしまった。

 

「白銀?何かあったか?」

 

「え!?あーいや!?何でも無いぞ!?大丈夫だ!!」

 

「そうか?なら、おやすみ」

 

「ああ!おやすみ!!」

 

 大声を出していたせいで、京佳に少し心配されたが、白銀は大丈夫と言って、再びベッドで寝る事にした。

 

(寝よう。今は兎に角寝よう)

 

 寝てしまえば、変な事も無い。今は1秒でも早く、寝るべきだ。そう思い、白銀は瞼を閉じる。

 

 

 

 

 

「……」

 

 どれだけ、時間が過ぎたのだろう。未だ白銀は、寝る事が出来ずにいた。目はギンギンに冴えているし、心臓がうるさい。顔も、なんだか熱い気がする。とてもじゃないが、寝むれない。

 やはり、恋人が同じ屋根の下、それも2人きりというこの状況が、安眠を許してはくれないのだ。

 

「白銀」

 

 そして遂にというべきか、京佳が白銀の部屋の扉を開けて入ってきた。

 

「そっちに、行ってもいい?」

 

「……ああ」

 

 断るなんて出来ない。いや、そもそも断るなんてしたくない。だって白銀も、こういう事を期待しているのだから。

 

「じゃ、お邪魔します」

 

 京佳はそう言うと、白銀のベッドに入る。

 

「「……」」

 

 お互い、話す事も無く背中合わせでベッドで寝ている。だが流石にこのまま無言は辛いので、白銀は京佳に話しかける。

 

「狭くないか?」

 

「全然…ごめん、やっぱり少し狭いかも…」

 

「そうか」

 

「私が、大きいからだよね…」

 

「そんな事無い」

 

「そうかな?」

 

「そうだよ」

 

 どこか緊張していて、ぎこちない会話。おまけに、2人共心臓がとってもうるさい。まるで自分の心音が、相手に聞こえてしまうんじゃないかと思えるくらい、うるさい。

 

「狭いなら、もう少しこっちくるか?」

 

「……うん」

 

 このまま朝を迎えるなんて、流石に出来ない。だから白銀は、1歩を踏み出す事にした。そして白銀に言われた京佳は、体を横に回転させて、白銀の方を向く。

 同じように白銀も、京佳の方を向く。結果として、2人は目と鼻の距離で向かい合う事になった。

 

「キス、していい?」

 

「……ああ」

 

 京佳のお願いを、白銀は頷く。

 

「んっ」

 

 京佳の唇が、白銀の唇に触れる。何回もしている筈なのに、どこか甘い味がした。

 

「もう1回…」

 

「わかった」

 

 それからも、2人は何度も何度もキスをする。キスをする度に、体温が上がっていく。そして気分が高まる。

 

「んっ…あっ…」

 

 自然と白銀は、京佳の首にキスをし始めた。京佳も、嫌がる事なくそれを受け入れる。

 

「立花」

 

 そして白銀は、京佳に置いかぶさるようにベッドの上で体勢を変える。誰か見ても、そういう雰囲気だ。こうなれば白銀も、もう遠慮しない。

 そもそもここで何もしないのは、男として情けないし、京佳に恥をかかせる事になるからだ。それに京佳も、そういう意味で今日泊まっている筈。だったら、何も問題は無い。

 

「白銀」

 

「何だ?」

 

「私のこと、好き?」

 

「勿論だ」

 

「どれくらい?」

 

「昨日より、ずっと大好きだ」

 

「でも、明日以下だね」

 

「そうだな」

 

 そう言うと白銀は、再び京佳にキスをしようとした。

 

「あ、待って…」

 

「え?」

 

 だが突然の京佳の待て。それは無いだろうと思いながらも、白銀はぐっと堪える。

 

「名前…」

 

「名前?」

 

「うん、私の事、名前で呼んで欲しい…」

 

 それは、京佳の我儘。思えば今まで、ずっと苗字呼びであった。そろそろ、名前で呼んでも良い頃だろうと思い、京佳は白銀にお願いをしたのである。

 

「わかった、京佳」

 

「あう…」

 

 白銀は、京佳に言われた通りに名前で呼ぶ。そして京佳は、名前で呼ばれた事が嬉しくて、顔を赤らめる。

 

「俺も、名前で呼んでもらってもいいか?」

 

「いいの?」

 

「ああ。むしろ是非名前で呼んで欲しい」

 

「うん、わかったよ、御行」

 

「う゛」

 

 京佳に名前で呼ばれて、白銀も嬉しくなる。やはり、名前で呼ばれるというのは良いものだ。これで、お互い準備は整った。後は、思いのまましてみよう。

 

「すぅ…それじゃあ…」

 

 京佳は1度深呼吸をすると、手を広げてこう言った。

 

 

 

 

「めしあがれ」

 

 

 

 

 その言葉を聞いて、遂に白銀の理性の糸が切れたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん…」

 

 まどろみの中、白銀は目を覚ます。

 

「朝か…いや、もう昼前だわ」

 

 白銀が起きて枕元に置いてあったスマホで時間を確認すると、なんと時刻はお昼の11時半。どうやら、かなり寝ていたようだ。

 

「京佳は…?」

 

 ふと隣を見ると、昨日までいた筈の京佳がいない。もしかすると、昨日のあれは全部夢で、初めから京佳は自分の家には来ていなかったのかと、白銀は思う。

 だがそう思っていると、リビングの方から何やら物音がする。白銀は下着とパジャマを着て、自室から出た。

 

「あ、おはよう、御行」

 

 そこでは、京佳がパジャマの上からエプロンを羽織り、お昼の用意をしていた。まるで新妻のような姿に、白銀は目を奪われる。因みに、京佳が作っているのはナポリタンだ。

 

「お、おはよう…ってちょっと待ってくれ」

 

「何?あ、食器とか食材、勝手に使ってごめん。あとで使った食材費は返すよ」

 

「いや、それは別にいい。それよりもだ」

 

「ん?」

 

「何で、下は下着姿なんだ?」

 

 しかし、何故か京佳は下にはパジャマを履いていなかった。おかげで京佳のえっちな下着が、丸見えだ。かなり眼福な姿だが、なんでか凄い気になる。

 

「あの、昨日パジャマかなり汚しちゃったから、流石にあれは履けないなって思って」

 

「あー…すまん」

 

 尚そのパジャマは、現在脱衣所のカゴの中だ。あとで洗濯するとしよう。

 

「それで、体は大丈夫か?」

 

「うん。まだ少しだけ痛みがあるけど、全然問題無いよ。むしろ、嬉しい痛みだしね」

 

「そ、そうか…」

 

 面と向かってそんな事言われると、かなり恥ずかしい。

 

「ふふ、しちゃったね…」

 

「そう、だな」

 

 出来たばかりのナポリタンを机に置いた京佳が、白銀に近づく。その顔は、まるで小悪魔だ。おかげで、またおっぱじめそうな気になる。でも流石に我慢だ。

 

「ねぇ、御行」

 

「なんだ?」

 

 京佳は名前を呼ぶと、白銀の首に両手を回す。

 

「これからも、よろしくお願いします」

 

「…ああ、こちらこそ、よろしく頼む。京佳」

 

 そして2人は、またキスをする。本当に幸せだ。どうかこの幸せが、このまま続けばいいと願わずにはいられない。

 

 そう思っていた時である。

 

 

 

「おにぃー?なんか変な匂いするんだけど、一体なにし…て…」

 

 

 

 圭が、家に帰ってきたのは。

 

「「「……」」」

 

 見つめ合う3人。白銀がパジャマ姿で、京佳とキスをしているのは別にいい。問題があるとすれば、何故か京佳が下がパンツ丸出しの状態で、おまけになんだか部屋に妙な匂いが漂っている事。

 

「えっと、圭ちゃん。とりあえず1回落ち着いて欲しい」

 

 白銀が圭にそう話しかけるが、

 

「ごめん2人共!!お邪魔しちゃって!!私、今からまた萌葉の家に泊まるから!!じゃあね!!」

 

 それより前に、圭が凄い勢いで玄関に向かって行った。

 

「待って圭ちゃん!!お願いだから話しを聞いてーー!!」

 

「け、圭!少しでいいから話しを聞いてくれーー!!」

 

 結局、その日圭は家に戻ってはこなかった。圭が家に帰ってきたのは、それから3日後の事である。でも戻ってきてからも、暫くの間は兄と超気まずい感じになっていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!」

 

「どうしましたか?かぐや様」

 

「今、どこかでなんか本来私が体験する筈だった出来事が起こった気がする」

 

「は?」

 

 

 

 

 




 昨晩はお楽しみでしたね。

 尚会長の家は、この日の夜父親が鯛を買ってきて、それを捌いて食べました。
 因みに京佳さんも、家に帰ったら母親に察せられて、その日の夜に赤飯炊かれました。

 次回から多分3年生。それでは、またね。

昨晩のお話の需要(R-18)

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