もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・   作:ゾキラファス

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 お待たせしました。やっと書けました。

 もう少し、投稿速度を上げたい。

 それにしても、随分と熱くなりましたね。皆さんも、熱中症には気をつけましょう。アレ本当にキツイし、命の危機でもあるので。


立花京佳と新学期

 

 

 

 

 立花家

 

 春休みが明けた新学期初日。京佳は、自宅の洗面所で身だしなみを何時もより入念にチェックしていた。

 

「うん、問題無いな」

 

 寝癖も無く、歯もしっかり磨いているし、制服にも汚れもシワもない。鞄には財布やスマホ、ハンカチなどの必需品が入っているし、忘れ物もない。これで、いつでも出かけられる。

 

「じゃあ母さん。先に出るよ。行ってきます」

 

「いってらっしゃーい。事故には気をつけるのよー?」

 

「わかった」

 

 玄関で靴を履き、京佳は母親より一足先に出る。これまでならもう少し遅い時間でも大丈夫だったのだが、今日からは少しだけ早く出るようにした。

 

 その理由は単純で、とある人物と一緒に登校するためである。

 

 家を出た京佳は、ルンルン気分で待ち合わせ場所に向かう。その顔は凄く嬉しそうにしており、見ているだけでほっこりとする。人の笑顔には、そういう力が備わっているのだ。

 

 そして家を出て5分足らずで、京佳は待ち合わせ場所にたどり着く。

 

「おはよう、御行」

 

「ああ、おはよう、京佳」

 

「もしかして、待たせたかな?」

 

「いや、全然待ってないよ」

 

 そこには既に、京佳の恋人である白銀が待ってくれていた。

 

 これが、京佳が登校時間を少しだけ早めた理由。新学期から2人は、一緒に登校しようと約束をした。白銀は京佳の家の近くに引っ越したし、もう恋人になって3ヶ月以上も経っている。そろそろ、もっと恋人らしい事をしてもいいだろう。そのひとつが、この一緒に登校をするというものだ。

 

 白銀がアメリカに留学するまで、もうたった4ヶ月しかない。4ヶ月なんて、本当にあっという間に過ぎてしまう。それまでの間、恋人らしい事を沢山したいそういった想いで、京佳は白銀と一緒に登校をしようと決めたのだ。

 

 因みに本来、白銀は自転車通学である。これはバスや電車の運賃を節約する為に、自転車で通学をしていたからだ。しかし、既に借金はなくなり、工場も時期に返ってくる。おまけに父親の動画収入も、かなり安定している。

 結果、白銀の懐事情も改善。これまでより、お金を好きに使えるようになった。おかげで、こうして好きな人と一緒に通学する事も出来るようになっている。

 

「んじゃ、行くか」

 

「うん」

 

 そう言うと白銀は、京佳に手を差し出す。京佳はその手をしっかりと握り、並んで登校を開始した。

 

「恥ずかしくない?」

 

「全然。誰に見られても、恥ずかしいなんて思わん」

 

「ふふ、そっか」

 

 嬉しいことを言ってくれる。この人を好きになって、本当によかった。京佳は強くそう思う。

 

 その後2人は、学校まで行くことが出来るバスに乗り、同じ席に座ってにこやかに会話をしながら通学をする。

 

「え?嘘…あれって…」

 

「そ、そんな…!」

 

 その道中、同じバスに乗った女子中学生や他の高校の女生徒達が、京佳と白銀を見てショックを受けていた。彼女らにとって、毎朝同じバスに乗っている京佳は、いわば1日を頑張る事が出来る活力になっている子になっているのだ。

 同じバスに乗る、綺麗で憧れの人。稀に勇気を出して声をかける子もいるが、基本は見ているだけ。それだけで、頑張れちゃうのだ。

 

 そんな京佳に、明らかに距離の近い男の子がいる。どう見たって、恋人だろう。

 

 それを見てしまった彼女らは、まるで押しのアイドルに男がいたみたいなショックを受けてしまった。

 

「でも、凄く幸せそう…」

 

「だよね…あの人、あんな風に笑えたんだ…」

 

「笑顔、素敵…」

 

「なんか尊い…」

 

 しかし、それも一瞬の事。直ぐに京佳の幸せそうな顔を見て、彼女らはうっとりする。世の中には『自分を裏切った』なんて身勝手な事を思い、押しのアイドルを刺し殺すなんて輩もいるが、彼女らは違う。本当に好きなら、その人の幸せを願うべきだと思っているからだ。

 

「いつもの違うけど、これはこれで良いよね!」

 

「うん、これで今日も頑張れる!」

 

「新学期不安だったけど、なんとかなりそう!」

 

「押しの幸せが1番だしね!」

 

 結果として、白銀は彼女らに襲われるという未来は訪れない。むしろ、京佳を幸せにしてくれる王子様のような

印象を持たれてしまっていた。その後2人は揃って押されるのだが、その事実を当人は知らない。まぁ、むしろ知らない方がいいだろうが。

 

「ところでさ、なんか雰囲気少し違わない?」

 

「確かに。なんか、前見た時より大人っぽい気がする」

 

 そして京佳を見て、以前と少し雰囲気が違うなんて思ったりした。

 

 

 

 

 

 秀知院学園

 

 新学期といえば、クラス替えである。それまで中の良かった友達と一緒になれたり、むしろ離れ離れになったり、好きな人と一緒になれたりなれなかったり。そんなドキドキするのが、クラス替えだ。

 

「あ!同じクラスだよ!」

 

「やったね!」

 

「んだよ。またお前と同じかよ」

 

「こっちの台詞だわ」

 

 新しいクラスを見て、和気あいあいとする新3年生。因みに他の場所でも、新2年生が同じような事になっている。

 

「同じクラスに、なれるといいな」

 

「そうだな」

 

 そんな中、京佳と白銀はかなり緊張していた。今までずっと別のクラスだったが、最後の3年生の時くらい、同じクラスになりたい。だって、折角恋人になったのだ。

 だから、一緒のクラスになりたい。そしてより長い時間、一緒にいたい。そう思うのは、当然である。

 

(大丈夫!昨日しっかりと近くの神社にお参りに行ったんだ!だから大丈夫!神様だって、そこまで残酷じゃない…!)

 

 でも、不安は不安。だから京佳は、昨日の内に神社で願掛けをしてきた。神様だって、これくらいのお願いは聞き入れてくれる筈だ。そして京佳は、意を決してクラスの内訳表を見る。

 

「私は、A組か」

 

 京佳は、A組配属になっていた。

 

「俺も、A組だ」

 

 更に白銀も、A組配属になっている、つまりこれは、同じクラスと言う事だ。

 

「やっっっった…!」

 

「あーー…クラス表見るだけなのに、緊張したぁ…」

 

 結果を見た2人は、まだ朝なのにどっと疲れた気がする。もしも違うクラスだったらと思うと、不安で仕方なかった。白銀に至っては、もし違うクラスだったら校長に直談判しようかと思っていたくらいである。

 だが、その心配も消えた。これでめでたく、2人は同じクラスのクラスメイトとして一緒に過ごせる。おかげで残り少ない白銀との日々を、より長く過ごせる。最高だ。神様ありがとう。今度お礼参りに行くよ。

 

「おーす2人共」

 

「おはよう龍珠」

 

「おはよう」

 

 そんな2人に、龍珠が話しかけてきた。

 

「また1年、よろしくな」

 

「うん。こちらこそ、よろしく」

 

 龍珠も、A組である。見知った顔がいると、それだけで少し安心する。それは、龍珠も一緒だった。なんせ彼女、京佳以外に友達といえる子がいない。もし自分が京佳と違うクラスになったら、多分静かに泣いていただろう。

 

「ところで立花。お前、なんか雰囲気変わったか?」

 

「え?そうかな?」

 

「なんつーか、どことなく大人っぽくなった気がする」

 

 あいさつを終えた龍珠は、京佳を見てそんな感想を口にする。龍珠の言う通り、京佳はどこか艶っぽい気がするのだ。なんとなく、そんな雰囲気を出している。

 

「まぁ、白銀と付き合っているからじゃないかな?誰かを好きになるっていうのは、人を変えるしね」

 

「そういうもんか?」

 

 京佳自身、多分龍珠がそう感じたのは、自分達が大人の階段を登ったのが原因だと思っている。しかし、その事を口にはしない。恥ずかしいし、態々そんな事を口にするのは痴女みたいだし。当然白銀も、態々話すなんてしない。

 

「それじゃ、早速A組に行くとしよう」

 

「ああ。行くか」

 

「そうだな」

 

 そして3人は、これから過ごす事になるA組へと足を運ぶ。

 

「あれ?あの2人って、あんなに距離近かったっけ?」

 

「そういえば、なんか近いね?」

 

「あとなんか、立花さん雰囲気変わった?」

 

「わかる。なんだか、少し艶っぽい気がする」

 

 京佳と白銀を見て色々と訝しむ生徒もいたが、2人は全く気にならなかった。

 

 

 

 3年A組

 

「おーす田沼。同じクラスだな」

 

「やっほー。修学旅行以来って感じだね」

 

「そういえば、あの時の班全員いるのか」

 

 A組では、既に見知った顔ぶれがそれぞれこれからの新生活に思いをはせながら、会話に花を咲かせていた。

 

「えへへ、また一緒だね早坂」

 

「これで3年間ずっと一緒だよー」

 

「ふふ、そうだね。嬉しいよ」

 

 早坂も、同じクラスだった火ノ口と駿河と一緒に笑顔で話している。やはり、仲の良い友だちと一緒というのは良いものだ。

 

「まさか、叔母様と一緒になるなんてね」

 

「そうですね。なんだか、妙な運命を感じます」

 

 眞妃とかぐやは、なんだか奇妙な運命を感じていた。

 

「ところで叔母様。最近どうなの?」

 

「なんとか元の体重に戻りそうです…しかし、痩せるってこんなに大変なんですね…」

 

「ほんとね…太るのはあんなに簡単なのに…」

 

 そして実はこの2人、最近少し太ったので一緒にダイエットをしている仲でもある。太った理由は勿論、春休みのケーキバイキングだ。あれだけヤケ食いすれば、そりゃ太る。特にお腹周り、プニっとしていてヤバイ。1日でも早く痩せなければ、女として色々終わってしまう。

 因みに1番食べていた伊井野は、何故か全く体重が変わっていない。解せぬ。

 

「ふふ、楽しいクラスになりそう」

 

「ですねー。体育祭とか文化祭、すっごく盛り上がりそうです」

 

 そして新しいクラスをみて、渚と藤原はすこぶる楽しそうにしていた。確かにこの面子なら、どっちもかなり盛り上げられそうである。

 

「よ、よお龍珠!同じクラスだな!!」

 

「……お前と一緒かよ…」

 

「そうだな…!あ、あっと、これからよろしくな!」

 

「……おう」

 

 心底嫌そうな顔をする龍珠に、小島は少しギクシャクしながらも話しかける。そして龍珠も、以前なら『殺す』と言っていただろうが、今はそこまでは言わない。もしかすると、小島に少し絆されているのかもしれない。

 

「立花さん!また同じクラスだね!」

 

「うん、2人共。また1年よろしく」

 

「こちらこそー」

 

 去年と同じクラスで、修学旅行でも一緒だった奈央と由佳も同じクラスだ。

 

「かぐや様と、同じクラス…同じクラス…」

 

「まーたこの子は禁断症状みたいな事に…」

 

 マスメディアコンビである、巨賴エリカと紀かれんの2人も、A組である。

 

「皆、待たせたな」

 

「おお!神童!お前もA組か!」

 

「これならもうこのクラスは安心だぜ!!」

 

(誰だ?)

 

 京佳は全く面識が無いが、人気者の生徒である渡部神童もいる。

 

 その他にも、初めて見る生徒もいるが、多くは見知った顔ぶれ。そんなクラスを見て、京佳と白銀は凄く気になる事が出来てしまっていた。

 

「なぁ御行…」

 

「何だ?」

 

「このクラス、なんか偏ってないか?」

 

「だよなぁ…」

 

 それは、自分達のクラスが凄く偏った面子になっている事である。

 

 京佳、白銀、かぐや、藤原、早坂、柏木、田沼、四条、龍珠、小島、火ノ口、駿河、巨賴、紀、鍋島、甲斐、風祭、豊崎、渡部。

 

 見知った顔ぶれが、一同にクラスメイトになっている。おまけに多くは、成績優秀だったり、家が凄かったりと何かしらの特性を持っている生徒ばかり。ちょっとだけ変な気分だ。

 

「いや、本当にこのクラス濃ゆいな」

 

「そうだな。こんな風に偏るなんてあるか?」

 

 自分達生徒会のグループ。渚や眞妃のグループ。早坂達、女子カースト上位のグループ。修学旅行で一緒だった子達。元D組のリーダーだった生徒。錚々たる面子である。

 本来クラス分けは色々と平等に分けられる筈だが、このA組だけやたらと偏っている。何か、意図的な物を感じてしまう。

 

「まぁ、こんな事もあるか」

 

「そうだな。あまり気にしてもしょうがない」

 

 だが、こんな事もあるかと思い深く考えるのをやめる。色々と気になる事はあるが、今考えても仕方がない。だから考えないようにしよう。

 

 そして黒板に書かれていた出席番号に従い、京佳は自分の席に座る。

 

「やぁ田沼。よろしく」

 

「うん、立花さん。よろしく」

 

 京佳の後ろの席は、田沼であった。出来れば白銀の近くがよかったが、流石にそこまでは神様も面倒を見てくれなかった。少し残念だ。それは席替えの時に期待しよう。

 

「えっと、よろしくお願いします、会長」

 

「ああ、よろしく四宮」

 

 そして、白銀の前はかぐやであった。ちょっとだけ複雑だが、別に気にしない。そこまで京佳は、嫉妬深くないからだ。

 

(それはそれとして、視線を感じる…)

 

 しかし、世の中の彼女が全員京佳のような子では無い。実際今現在、京佳のことをじっと見ている子がいる。田沼の彼女である、渚である。先ほど京佳が田沼に挨拶をした時から、ずっとこちらを見ているのだ。それも、無表情で。正直、怖い。凄い怖い。

 

(とりあえず、弁明しとこ…)

 

 このままではとても落ち着かないので、京佳は渚の方を見て、身振り手振りで『これはただ友人に挨拶をしただけです』と弁明。それを理解したのか、渚は直ぐに笑顔になる。

 

(早く席替えしたい…)

 

 この際白銀の隣とかじゃなくていいから、席替えをしたい。そして田沼から離れて、渚の視線を外したい。そんな事を思う、京佳であった。

 

 

 

「あー、今日からこのクラスの担任になった、大林ヒカルだ。よろしく」

 

 少し気だるそうな男性教師、大林ヒカル。彼が今日から、このA組の担任である。元々公立の高校で教師をしていたが、校長の命を受けて今年から秀知院へと赴任してきた教師である。

 

(濃ゆいな…このクラス…)

 

 教壇から、自分が担当するクラスを見る。普通の高校では先ず見ない生徒ばかり。秀知院学園の生徒会長、四宮家の令嬢、元総理大臣の孫、四条家の令嬢、経理団体理事長の孫娘、暴力団組長の娘、警視総監の息子。

 普通なら、こんな一癖も二癖もある生徒の担任なんてしたくない。何が原因で、自分の首が飛ぶかもしれないからだ。おまけに女生徒は誰も彼も、美少女と言ってもいい。1人何故か物騒な眼帯を付けているデカい生徒もいるが、それでも顔は整っている。金持ちの学校は顔面偏差値も高いのかと、大林は思う。

 

(どこを見ても金持ちばかり…なーんでこんな学校に来ちゃったかね…)

 

 本当なら、これまでの学校で今まで通りの教師生活をするつもりだったのに、恩のあるあの校長に言われて秀知院へ。何でも、今年は四宮家関係で色々と荒れるかもしれないから、外部の経験のある教師で、秀知院の生徒の事をまだあまり知らなくて、秀知院で権力の影響を受けない一般家庭出身で、生徒思いの教師を探していたらしい。

 

 そしてその担当となったA組、実は校長のお気に入りの生徒で固めている。

 

 校長は既に、秘密の伝手を使って、今年が四宮家で騒動が起こる事を知っている。そしてその時、かぐやにどんな影響が出るかわからない。ヘタをすると、かぐやを標的にしたイジメが起こる可能性だってある。

 そうなった時用に、校長は事前にかぐやと近い生徒を同じクラスで固めた。これならば、例え四宮家と四条家が戦争になっても、かぐやだけに何かが起こる事は無くなるだろう。

 

 しかし、時間が立つにつれてどうやら少し違う事がわかった。

 

 まだちゃんと詳しい事はわからないが、四宮と四条は戦争をする事は無く、むしろ回避する為に動いているらしい。なので校長が当初想定していた事は、先ず起こる事は無いだろう。

 まぁそれはそれとして、かぐやには今後色々と助けが必要になると判断。あのクラスメイト達であれば、かぐやを助けてくれる。そう思い、あのクラスへと編入させたのだ。

 

(はぁ…なんで俺がこんな問題クラスを…)

 

 それを聞かされた大林は、絶対に面倒な事に巻き込まれたと直感。しかし、恩のある校長からの要請を断われる訳もなくその提案を受けいれたのだ。

 

(まぁ、普通に先生やって、面倒ごとは避けるようにしとこ)

 

 出来れば何事も起こらず、平穏に過ごしたい。A組担任である大林は、そう強く願う。

 

「あーそうそう。実はこのクラスには転校生が来る事になっている」

 

(転校生?)

 

 大林が今後について色々と説明をし終えると、最後にそんなサプライズじみた事を言い出した。そう言えば、ひとつだけ空席がある。てっきり休みなのかと思ったが、転校生の席らしい。こんな時期に転校生とは、随分妙だ。一体どんな子なのだろうか、京佳を含めたクラスメイト達は気になる。

 

「……筈だった」

 

『筈だった?』

 

 しかし、どうも様子がおかしい。

 

「いや、なんでも本当なら今日転校してくる予定だったんだが、先方の都合が突然凄く悪くなったらしくてな。なので昨日、転校そのものをやめる事になったって連絡が来たんだよ」

 

 どうやらその転校生は、転校できなくなったとの事。一体、何があったのだろうか。

 

「そんな訳で、そこの席は暫く空席のままにしとく。近い内に整理するから、それまでそのままだ」

 

 暫くちょっとだけ寂しい席になるが、そういう事なら仕方がない。その内席替えもあるだろうし、殆どの人は直ぐに忘れるだろう。

 

「そういう事だ。じゃあまたな」

 

 伝える事全部伝えた大林は、そのまま休憩時間になったと同時に教室を去る。

 

「一体、何があったんだろうな?」

 

「転校やめるって、そうとうだよな?」

 

「だねー。何があったんだろ?」

 

 休憩時間になった教室は、皆転校生の話題でもちきりとなった。

 

「立花さん。少しよろしいでしょうか?」

 

「ん?別にいいけど」

 

「では、ちょっと来てください」

 

「待って叔母様、私も行くわ。それと御行。あんたも来て」

 

「え?俺もか?いいけど」

 

 かぐやに言われ、京佳は眞妃と白銀と4人で廊下に出る。そして教室から出て階段を登り、屋上に近い階段の踊り場で足を止める。ここならばあまり人が来ないので、秘密の話しには持ってこいだ。

 

「それで、何かあったのか?」

 

「ええ。少し込み入ったお話が」

 

 そしてかぐやは、京佳と白銀に話し出す。

 

「実は例の転校生って、眞妃さんの弟なんです」

 

「「え?」」

 

 なんと転校をやめた噂の転校生とは、眞妃の弟のことらしい。そしてかぐやに続いて、今度は眞妃が説明をする。

 

「本当ならとある事情で、今年度から秀知院に来る予定だったのよ。そのために、以前から色々裏で準備もしてきた。何も無かったら、今頃クラスメイトだったでしょうね」

 

「四条、聞いていいのかわからないが、何で転校をやめたんだ?」

 

「その必要が無くなったから」

 

「……本当に何があったんだ?」

 

「実はね」

 

 眞妃は白銀の疑問に、しっかりと説明をする。

 

 数年前から四条家と四宮家は、水面下でバチバチに抗争をしてきた。四宮派閥の人間の買収や、関連企業の乗っ取り。スパイも大勢活動しており、中には銃撃事件に発展しかけた事もあったらしい。全ては、四宮家に復讐する為に。そして四宮家は、目障りな四条家を今度こそ潰すために。

 

 だが、今年の2月からその対立に大きな変化が起きた。四宮家が、突然和解を申し込んできたのだ。

 

 最初こそ、この和解を何か罠だと思った四条だったが、四宮の和解の条件が破格の内容であり、おまけに四宮家次男の首も差し出すと言い出した。流石にこれは無視できず、四条は1度話会いを行う事にする。その後、両家の現当主が集まり、秘密の会議が行われた。

 

 その時なんと、四宮雁庵が四条家に対して頭を下げるという事が起こった。

 

 あの雁庵が、頭を下げて和解を申し込む。それも、圧倒的に四条に有利な和解を。当初こそ、四宮に対する強い恨みを忘れていない四条の古参幹部達は、それでも四宮を潰そうと息巻いていたが、四宮からの破格の条件、四宮家次男や重役についている幹部の首、何より、四条家当主がそもそも戦争を望んでいなかった事が原因となり、両家は現在和解に向けて話を進めている。

 

「でまぁ、本来なら四宮家に備えて準備していた作戦が、ぜーんぶ無くなったのよ。その作戦のひとつが、私の弟の転校」

 

「なるほど。恐らくだが四宮に近づいて、何かしようとしていたって感じか?」

 

「その通りよ御行。まぁ、本人はすっごく嫌そうにしてたけどね。でも、あいつも四条の思惑には逆らえないのよ。時期当主なんて言われてるけど、まだまだ子どもだし」

 

 眞妃の弟の転校も、本来なら対四宮家の作戦だった。だが、両家が和解に向けて歩んでいる今、それももう必要無い。この事を聞いた眞妃の弟の帝は、当初こそ複雑な気持ちだったが、慣れ親しんだ学校や、大事な友達や部活仲間と離れる必要が無くなったので、今では普通に元いた学校で学校生活を楽しんでいる。

 

「そんな事が…でもなんで、その事を私達に?」

 

「叔母様はもう知ってるし、あんたらも一応関係者だからね」

 

「関係者?」

 

「俺らがか?」

 

「まぁ、その辺は気にしないでください」

 

「わかった」

 

 なんでこんな事になったかと言えば、かぐやが失恋した事もひとつの要因なのだ。失恋したかぐやは暴走し、京佳と白銀に対してあんな事をしてしまった。

 おかげで雁庵はかぐやとちゃんと向き合うことにし、その結果四条との和解へと向かったのである。ある意味、京佳のおかげでもある。まぁ、その事を態々口にはしないが。

 

「ま、そういう訳で、転校生の事はもう気にしないでいいわ」

 

「どうせよく知らない人ですしね」

 

 かぐやは幼い頃、普通に帝と話した事もあるのだが、かぐやにとってはもうどうでもいい記憶であるので、マジで帝の事はよく知らないのだ。哀れ帝。

 

「っと、そろそろ時間だし、戻るか3人とも」

 

「そうだな」

 

「ですね」

 

「そうね」

 

 休憩時間も終わりそうだったので、1度教室に戻るとしよう。

 

 こうしてひとつだけ空席のある3年A組は、新学期を迎えたのであった。

 

 

 

 放課後。

 教室の生徒達は和気あいあいと過ごしていた。新学期初日なので大した授業も無いし、新しいクラスにワクワクしているせいだろう。

 だが悲しいかな、生徒会は普通にこれから仕事である。いつまでもここで、新しいクラスメイト達と楽しくお話とは行かない。

 

「よし京佳、行くか」

 

「うん、御行」

 

 白銀は京佳に声をかけて、共に生徒会室に向かう。そんな2人の声は、教室内の雑音にまぎれて殆どの生徒には聞こえなかった。

 

(あれ?今、会長が立花さんを名前で呼んでましたよね…?)

 

 しかし、耳の良いかぐやは普通に聞こえていた。

 

(いつの間に2人は名前で呼び合う中になったのかしら…?)

 

 恋人なのだから、いずれは名前で呼び合うものだろうと言う事は、かぐやも理解している。実際、田沼翼と柏木渚の2人は、いつの間にか名前呼びになっていたし。

 

(そういえば、恋人が名前呼びになるのは、何か特別な事をしたらとあったような…)

 

 かぐやはふと、以前読んだ恋人のステップなどが書かれた雑誌の事を思い出す。それによると、恋人は恋人として何かをするとより親密な関係になり、自然と名前呼びをするものであると書いていた。それはキスだったり、デートだったり、そして肉体関係だったりだ。

 

(おまけに立花さん、なんだか雰囲気が違う気がします…なんて言いますか、艶っぽい?)

 

 そして京佳の雰囲気。あれには、覚えがある。

 

 去年、渚が見せた雰囲気にそっくりなのだ。あの時渚は、生徒会の皆から大人の階段を登ったと疑惑を持たれていた。結局真相は闇の中であったが、十中八九彼女は、大人の階段を登っていただろう。そして本日の京佳は、その時の渚に近い雰囲気を纏っている。

 

「あっ…あっ…」

 

 それを思い出した瞬間、かぐやはなんだか気分が悪くなった。思えば、今朝から2人は随分と距離が近かった。その上、いつの間にかの名前呼び。少なくとも、鳴る休み前は名字呼びだったのは間違いないつまり春休みの間に、2人は大人の階段を登った可能性がある。

 

「ごふっ」

 

「かぐや!?顔凄い事になってるよ!?」

 

「どうしたの叔母様!?」

 

「かぐやさんーー!?」

 

 この日かぐやは、そのまま保健室に運ばれて、生徒会を休む事になり、そのまま一足早く帰宅。

 

 そして後日、かぐやは再び眞妃と一緒にとあるホテルまで行って、そこで美味しい物を沢山食べた。

 

 体重がまた増えて、ダイエットに苦労するのであった。

 

 

 

 

 




 そんな訳で、帝くん転校ならず。理由は、既に四宮関係の問題がほぼ片付いてるから。なので態々転校させる理由が無い為、こんな風にしました。

 どこかおかしなところや、矛盾している箇所があれば言ってください。修正いたします。

 次回はまたイチャイチャを書きたい。

 それでは、また次回。じゃあね。
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