もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・   作:ゾキラファス

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 マキちゃんが情緒不安定気味です。ご注意ください。

 作者はマキちゃん好きですよ?かわいいし本当に良い子だし。


立花京佳と新しい友達

 

 

 

 四条眞妃。

 言わずと知れた四条家の令嬢であり、四宮かぐやの遠い親戚である。学校では白銀、かぐやに次いで3位という好成績を常にキープ。また、芸術のセンスも抜群、聴覚過敏持ち等、かぐやに負けず劣らずの才能の塊である。

 そんな彼女は今、

 

「ううっっ…!うあぅぅぅぅぅ!!!」

 

 真昼間に、公園のベンチに1人座って泣いていた。

 

 どうして彼女が泣いているのかは、少し時間を遡る必要がある。

 

 この日、眞妃は気分転換を兼ねて1人で街に出かけていた。1学期に、自分の親友と想い人が交際するという最悪の出来事があって以来、部屋で1人泣いてたり、学校で2人を影から見ながら泣いていたりと散々な日々を過ごしていた。

 それを見ていた双子の弟が、心配しながら『気晴らしに出かけてみてはどうか?』と提案。眞妃は弟のその提案を受け入れ、街に出かける事にしたのだ。

 

 最初は良かった。

 

 服屋でかわいらしい服を見たり、ペットショップで犬や猫を見たり触ったり、有名な店のアイスを食べたりとちゃんと気分転換をしていた。これで少しは気分が晴れて、少なくとも今日くらいは晴れやかな気分で眠れると思うほどには気持ちが楽になっていたから。

 そんな気持ちになりながら街中を歩いていた。

 

 しかし角を曲がった瞬間、自分の親友と想い人が腕を組んで歩いているところを見てしまい、それまで何とかなりそうだった気持ちが再び復活したのだ。

 

 その光景を見た眞妃は、その場から脱兎の如く逃走。かなりの距離を走り、たまたま目についた公園に入り、公園内に設置されていたベンチに座った。

 

「ううぅ…うあぅぅぅ…」

 

 そして涙腺が決壊し泣き出したのだ。

 

 こうして冒頭へと至る。

 

「うわああ!!うわああああああん!!!」

 

 時間が経つにつれ、遂に人目も気にせず泣き出す眞妃。それを見ていた公園に来ていた人々は、そのあまりな泣きじゃくり方に何て声をかければいいか分からず、ただ見て見ぬふりをする事しか出来なかった。

 中には『あれ関わっちゃいけない人だ』と思い、公園を出ていく人もいた。最も、真昼間の公園でこれだけ泣きじゃくっている人がいたらそう思うのも仕方ないだろうが。

 

(あれは、四条か…?)

 

 暫く経った時、京佳が偶然その公園を通りかかった。京佳の数十メートル先には、今も泣きじゃくっている眞妃がいる。

 

(どうしよう…あれ)

 

 京佳は考えた。即ち、ここで眞妃に声を欠けるべきか否か。あれほど泣いている人間をほっておくというのは気が引ける。しかし何と言って声を欠ければいいかがわからない。

 

(でもあれをほっとくのはなぁ…)

 

 眞妃は今もワンワン泣いている。そんな泣いている眞妃のせいなのか、いつの間にか公園内には人気が無くなっている。彼女をこのまま1人にして置くのは色々と心配だ。

 少し悩んだ末、京佳は声を眞妃にかける事にした。やはり、あれだけ泣いている眞妃をほっておくのはどうしても出来なかった。

 

「あー、確か四条だったよな?一体どうしたんだ?」

 

 眞妃に近づき、何があったのかと声をかける京佳。そして声をかけられた眞妃は、

 

 ガシ!

 

「!?」

 

 前と同じように、京佳の手を掴むのだった。やはり少しだけホラーである。

 

「お願い…お願いだから…また話を聞いて…お願いします…お願いします…」

 

「……わかった。でも先ず涙を拭いたほうがいい。ほら、ハンカチ貸してやるから」

 

「ううぅ、ありがと……」

 

 京佳に涙を流しながら懇願する眞妃。そして前と同じように眞妃の話を聞く事にした京佳は、先ずハンカチで眞妃の涙を拭き、その後再び眞妃の手を取り、ゆっくりと歩き始めた。

 

「…どこいくの?」

 

「近くに行きつけの喫茶店があるんだ。この日差しだし、先ずは空調の効いた場所で休もう。その後に話を聞くよ」

 

「うん、わかった…」

 

 本日も例に漏れず夏日である。

 空は快晴で、日差しはかなり強い。そんな夏日に、眞妃は帽子も被らず日差しで泣いていた。このままでは眞妃が熱中症になるかもしれないと思った京佳は、自分がよく行く喫茶店で眞妃を休ませながら、話を聞く事にしたのだ。

 

 因みに喫茶店に着くまでの間、眞妃は京佳の手を離すことは無かった。

 

 

 

 

 

 暫く歩くと、眞妃の前に『純喫茶 りぼん』という喫茶店が現れた。京佳がドアに手をかけ、眞妃と共に店内に入っていく。

 

「いらっしゃいませ。あれ?京佳ちゃんじゃない」

 

「こんにちは、朝子さん」

 

「ええ、こんにちわ」

 

 京佳に挨拶をしてくたのは少しお年を召したどこか気品のある女性だった。どうやら名前は朝子と言うらしい。

 

「今日はお友達と一緒?それならカウンターより机の方がいいわね」

 

「あー、出来れば奥の方の机を使ってもいいですか?」

 

「…成程。今空いているし、かまわないわよ」

 

「ありがとうございます」

 

 店主であろう女性は何かを察したのか京佳の頼みを聞き入れ、京佳はそのまま眞妃の手を握った状態で、店内奥に設置してある微妙に死角になっている机まで歩いて座った。

 

「何か飲むか?」

 

「……」

 

 京佳にメニューを渡され、それを受け取る眞妃。

 

「……アイスコーヒー」

 

「砂糖とミルクは?」

 

「……いる」

 

「なら私も同じものにしよう」

 

 飲み物を頼むため、京佳は机の上に設置してあるベルを押した。

 

「いらっしゃいませ。ご注文は?」

 

「アイスコーヒーを2つ。砂糖とミルク付きで」

 

「かしこまりました。少々お待ちください」

 

 ベルが鳴って直ぐ、先ほどとは別の女性がお冷を持った状態で注文を受けにやってきて、注文を取ると手にしていたお冷を机に置いて、直ぐにその場から立ち去って行った。

 

「ところで四条大丈夫か?気分が悪いとかないか?」

 

「うん、大丈夫……」

 

 京佳は眞妃に体に不調が無いか聞いたが、どうやら眞妃は大丈夫らしい。とりあえずは安心である。それから直ぐに注文していたアイスコーヒーが運ばれてきて、2人はそれを飲みんだ。

 

「美味しい…」

 

「ふぅ、外が暑かったから数倍美味しく感じるな」

 

 未だに気温も高く日差しが強い外。そことは真逆に空調の効いた店内。そこで飲む冷えたアイスコーヒーは特別美味しく感じる。そして自身の身体が涼んでいくのを感じる京佳と眞妃。これで一息ついたと言えるだろう。

 

「で、何があったんだ?」

 

 アイスコーヒーを半分程飲んだ頃、ようやく落ち着いたであろうを眞妃に、京佳が何故泣いていたのかを聞き出した。眞妃は目元こそまだ赤いが、既にに泣いておらず、今ならば聞いても大丈夫だろうと思ったからである。

 

「えっとね…」

 

 そして眞妃はゆっくり話し出した。今日、自分が見た事を。

 

 

 

 

 

 1時間後―――

 

「もうさぁ!私本当にどうすればいいの!?2人が幸せそうなのを見るたびに泣きそうになって!ていうか泣いて!でも2人の事を嫌いになれる事なんてできなくて!かといって心から祝福もできなくて!一体さぁ!どう動くのが正解なの!?私は何をすれば正解なの!?神様でも悪魔でもいいから誰か教えてよ本当に!!」

 

 そこには京佳に愚痴を零す眞妃がいた。余程色んなものが溜まっていたのだろうか、勢いが衰える様子が全く無い。

 

「ううぅ!何でよぉ!そもそも何で翼くんと渚の2人は付き合う事になったのよぉ!!それまでそんな雰囲気全く無かったのに!!渚だってそんな気はないって言ってた筈なのに!あの壁ダァンとかいうふざけたやつのせいでいきなり付き合いだして!ていうか誰よあんなふざけたの教えたの!翼くんはある人に教えて貰ったとか言ってたらしいけど、本当に誰なのよそんなの教えたの!」

 

「確かに気になるな。誰だろうな、そんな入れ知恵をしたのは」

 

「そうよね!気になるわよね!?だってそれが無ければ2人が付き合う事は無かったかもしれないんだし!!」

 

 教えたの白銀なのだが、京佳も眞妃もその事を知る由もない。そして京佳は、眞妃の話(というか愚痴)を黙って、時に相槌を打ちながら聞いていた。

 

 それから更に30分後―――

 

「あーーーー、スッキリしたぁ…ほんとにスッキリした…」

 

「そうか、それは良かった」

 

 溜まっていたものを吐き出した結果なのか、眞妃は最初とは全然違う顔つきになっていた。

 

(まさか1時間以上も止まらずに喋るとは思わなかったなぁ…)

 

 逆に京佳は少しだけ疲れていた。眞妃の愚痴をひたすらに聞いていたから仕方ないが。

 

(というか、私も失恋するとこんな風になるのだろうか?)

 

 同時に不安も覚えた。やはり眞妃の現状を見て知って、どうしても他人事とは思えないからだ。

 

「本当にありがとうね。またこんな愚痴に付き合ってもらってさ」

 

「かまわないよ」

 

「ところでさ、何で私に声かけたの?自分でいうものアレだけど、声かけづらくなかった?」

 

「まぁ、確かにかけづらくはあったが、あれだけ泣いている子を無視する何て出来なかったんだ」

 

「そ。優しいのねあんた。てかやっぱ噂は噂でしかなかったって訳ね。噂通りだったらこんな事しないだろうし」

 

「まだ噂があるのか…」

 

 ようやく何時もの調子を取り戻した眞妃。その顔は少しだけ晴れやかだ。京佳も眞妃が元気になったのを見て安心した。これならもう泣き出すことはないだろう。

 

「ねぇ」

 

「なんだ?」

 

「この際だからさ、連絡先交換しない?」

 

 眞妃がスマホを取り出しながら提案する。

 

「別に構わないが、急にどうして?」

 

「これも何かの縁ってやつよ。あと何でか知らないけど、私とあんたは色々と話が合いそうな気がするのよね」

 

「……話が合いそう?」

 

「そう。本当に何となくだけどね」

 

「……まぁいいが」

 

 何故か一抹の不安を覚えた京佳だが、特に断る理由も無いので連絡先を交換する事にした。

 

「一応言っておくが、流石に毎日愚痴を聞く事は出来ないからな?」

 

「いや流石に毎日は言わないわよ!…………多分」

 

 こうして京佳のスマホには、生徒会メンバー以外の連絡先が増えた。因みに、京佳は家族と生徒会メンバー以外だと、早坂と年上の先輩2人くらいしか連絡先を登録していなかったりする。

 入学当初と違い、今ではクラスメイトと普通に会話できるようになっている京佳だが、その後連絡先を聞くタイミングを逃してしまっている。結果このような事になっているのだ。

 

「あー、なんかお腹空いちゃった…この店のオススメって何?」

 

「そうだな。ホットケーキがオススメだぞ。値段も手ごろだしな」

 

「じゃあそれ食べるわ。あ。あと、私の事は眞妃でいいわよ」

 

「そうか。なら私も京佳でいいぞ」

 

「それとね…」

 

「ん?」

 

「自分から言っておいて何だけど、私ばっかりあんたに話を聞いて貰うばっかりじゃ私が自分を許せないのよ。だからさ、何か悩みがあったら私に言いなさい。悩みを解決できるかはわからないけど、聞くだけならちゃんと聞くから」

 

「わかったよ。その時は是非よろしく頼む」

 

 この日、京佳に新しい友達が出来た。

 その後、色々と雑談しながらホットケーキを食べる京佳と眞妃だった。

 

 

 

 

 

 因みに、京佳がオススメと言ったホットケーキを食べた眞妃は、そのあまりの美味しさに驚愕し、その後3枚も食べたのだった。ぶっちゃけヤケ食いの部分もあっただろうが。

 

 そして眞妃は体重が2キロ増えた。

 

 

 

 

 




 そんな訳で、マキちゃんと友達になった京佳さんです。

 あと喫茶店も店長もオリジナルです。今後もちょくちょく出すかも。

 次回は旅行編かも。あくまでも予定ではですが。

 感想お待ちしております。

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