もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・ 作:ゾキラファス
今回は導入編みたいな感じなので少し短いです。
「おはよう、皆」
「おはようございます」
「ああ、おはよう2人共」
「おはようございます会長に圭ちゃん~」
「おっはよー!」
「おはようございます、会長」
お盆が数日後に迫った8月上旬。生徒会メンバー+αの6人は荷物を持った状態で、駅前に集合していた。1学期最後の日に、生徒会メンバーで旅行に行こうと決めてはや半月。遂に、その日がやってきたのだ。
「会長、今日は流石に学生服じゃ無いんですね」
「まぁな。と言っても、これ全部バーゲン品だが」
「制服じゃない会長ってなんか新鮮ですね~」
白銀も流石に今日は、遊園地の時みたいに学生服では無い。彼は今、ボーダーの入ったTシャツに、その上から紺色のコーチシャツ。黒いパンツと動きやすそうな白いスニーカーを履いている。
流石の白銀も、山に行くのにどう考えても動きにくい学生服は着れなかった。そこで、全国に展開している有名な服屋に行って、これらの服を揃えたのだ
因みに、このコーディネートは全部圭である。
「今日の白銀はいつもよりかっこいいな」
「え?そ、そうか?」
「ああ、似合っているよ」
「お、おう。ありがとな立花」
京佳は本心を白銀にぶつけた。すると、白銀は少しだけ照れ臭そうにする。白銀も同年代の異性からそう言われると気恥ずかしいものなのだ。
一方で京佳の服装は、薄ベージュトップスに黒インナー、緑のショートパンツ、そして茶色のワークブーツ。山でも動きやすく、尚且つかわいらしい服装だ。
しかもショートパンツを履いているおかげで、京佳の普段見えない綺麗な足が、太腿の半分くらいの位置までよく見える。京佳も今回の旅行は気合が入っている証拠だ。
(何でおにぃはそこで京佳さんの服装を褒めないのよ…褒められたんだから誉め返せっての…)
圭は内心ため息を付いた。今のは、完全に褒めてきた相手の服装を褒め返す流れだった。しかし、白銀は特にそういった事を言わない。その辺の経験値が絶対的に足りていない証拠である。恐らくだが、相手がかぐやでも同じだろう。
(京佳さん本当に脚綺麗…ていうか長い…)
(京佳先輩って本当に私と同じ人間なのかなぁ…?)
(なんか今日の立花先輩エロいな…足とか…)
藤原姉妹は京佳の脚を見ながらそんな事を思っていた。石上は邪な事を思っているが。
「そろそろ四宮先輩が迎えに来る時間ですね」
邪念を振り払った石上がスマホで時間を確認すると、時間は午前9時の集合時間になろうとしている。そんな時、6人の元に一台の豪華そうなバスが迫ってきた。
そして6人の前で止まり、横の扉が開くと、
「皆さん、お待たせしました」
藍色のワンピースを着たかぐやが出てきた。
「おはようございますかぐやさん!」
「おはようかぐやちゃん!」
「ええ、おはようございます」
元気に挨拶をする藤原姉妹。
「おはよう四宮」
「はい、おはようございます」
「……ひとつ聞きたいんだが、その人は?」
あいさつの後にかぐやに質問をする白銀。白銀の目線の先には、運転席から降りてきたであろう壮年の執事服を着た男性がいた。
「初めまして。
綺麗な姿勢のお辞儀をする男性。どうやら四宮家の使用人のようである。
「か、会長…!執事です!生執事ですよ…!僕ちょっと感動してます…!」
「ああ、俺もだよ石上」
石上と白銀は初めて見る生の執事にテンションを少し上げた。高橋と名乗った男性は目つきが鋭く、髪と顎鬚には少し白髪が混じっている。そしてバッチリと着こなしている執事服に、男でも思わずうっとりするようなイケおじボイス。まるで漫画の中から出てきた壮年の執事そのものだ。
石上は、彼が実はワイヤー使いか武術の達人ではないのかと思わず思った。それほどまでに、まさに執事という男性だったのだ。
「本日は、私が皆様を責任を持ってお送りいたします」
「ああ、成程。本日はよろしくお願いします」
どうやら彼が、このバスの運転手を務めるらしい。そして高橋が頭を上げると、白銀達に近づいてきた。
「それでは皆さん、お荷物を」
「え、いやいや悪いですよ」
「いえ、これが私の務めですので」
「そ、そうですか。ではお願いします」
白銀達が荷物を渡すと、執事の高橋は6人の荷物全部を1人で持ち、バスの側面にある収納スペースに収納していった。その間、僅か20秒。しかも荷物である鞄は全て崩れていない。まさにプロの技である。
「四宮家の使用人ならこれくらい誰でもできますよ?」
高橋の完璧な仕事に驚愕している6人に、かぐやは当たり前のようにそう言った。
「想像の3倍くらい凄い!?」
「うっわ!?マジで凄い!?」
バスに入った藤原と石上は思わず大声を出した。外から見た時から薄々感じてはいたが、バスの中は普通のバスとは全然違ったのだ。
ゆったりと移動できる広々とした通路。座席はまるで飛行機のファーストクラスのようで、座って脚を伸ばしてもまだ余裕がある。おまけにバスの後ろには小さいが給湯室のようなものまでついている。
豪華絢爛とまではいかないにしても、断じて学生が乗るようなバスでない。
「四宮…本当にお金とかいいのか?」
「勿論ですよ。皆さんから運賃なんて一切取りません」
「そうか…」
自分が想像していたバスと違い、ビビって足がすくむ白銀。だがかぐやに言われ、何とか足を動かす。
(さて、ここが勝負所ですね…)
そんな白銀の後ろで、かぐやは考え始めた。
どうやって白銀の隣に座るかをである。
今バスには運転手である高橋を除けば、7人乗っている。バスに設置されている座席は2人席が5列。人数的に1人余ってしまうが、それは大した問題ではない。最悪藤原か石上を当てればいいだろうとかぐやは思っている。
そして、白銀の隣に座る事ができれば、軽井沢に着くまでの間に色々と話せる。この間の遊園地での事。夏休み後半に予定している花火大会の事や2学期の事等々。更にそれ以外にも様々な話題を振リ、会話が弾めばおのずと白銀との距離は近くなり、この旅行が終わる頃には、遅くとも花火大会までには、白銀は自分を意識して、白銀の方から自分に告白をしてくるだろうというのがかぐやの考えである。
(私から隣に座ろうなんて言えませんから、どうにかして会長から言わせるか、他の人に言わせるかをしなければなりませんね…)
しかしここでも決して自分からは言わないかぐや。いいかげん早坂あたりからビンタが飛んできそうである。かぐやがそんな事を思っていると、
「あ、京佳さん。一緒の席に座りませんか?」
「かまわないよ」
「ありがとうございます。それと、その服装、凄く似合ってますよ」
「ふふ、そうか。ありがと、圭」
(なっ!?)
圭が京佳と同じ列の座席に座りだした。そして京佳の服装を褒める圭。まるで仲睦まじい姉妹である。(かぐや主観)
(ま、まぁいいです…会長の妹さんの隣は立花さんに譲ってあげますよ…)
もし白銀の隣に座れなくても、圭の隣に座り、外堀を埋めようとしていたが、その作戦はもうできない。
しかし目的はあくまでも白銀の隣であると自分に言い聞かせるかぐや。
「会長、隣いいですか?」
「おお。いいぞ」
「……」
だが、自分に言い聞かせている間に白銀の隣には石上が座った。
(あれ?このままだと私だけ1人…?)
ボッチになるという不安をかぐやが襲う。もしこのまま皆が座り、自分だけ1人席になったら、それだけでひたすらに寂しいのは明白。
(仕方ありません…あまり使いたくありませんでしたが、背に腹は代えられませんし…)
しかしかぐやには奥の手が存在していた。
「皆さん、どうせならいつもと違う座り方をしませんか?」
「え?どういう意味ですかかぐやさん?」
「通路側の座席の右下にあるスイッチを押すと座席が回せるんですよ。そうすれば全員が向かい合うような形にできますよ?」
「いいじゃないですかそれ!楽しそうです!」
「だな。折角の皆での旅行なんだ。どうせなら道中も皆で楽しみたいし、そうしよう」
かぐやの作戦通りに皆が席を動かし始める。そしてバスの席はカタカナの『コ』の様な方になった。因みにだが、コとなっている間には机が置かれている。
「これいいですね。なんかパーティールームみたいで」
「ですね!これなら着くまでの間色々と皆で遊べそうです!」
席順は、バスの前方から藤原姉妹、京佳、圭、石上、白銀、かぐやである。これでかぐやは多少思う所はあるが、白銀の隣に座れるということに成功したのだ。
「軽井沢まで大体2時間ですね」
「じゃあその間皆でゲームをしましょう!!」
全員がバスに乗り込み、座席を動かしてから数分。既にバスは高速道路に乗った。ここから、四宮家のコテージがある軽井沢までおよそ2時間の移動である。その間、高校生の男女が何もせずじっとしているなどありえない。よって、藤原がそう提案するのも仕方ない。
「でも何をするつもりなんだ藤原?」
「ふふふ。この日のために色々用意しましたよ。伊達にTG部に所属してません!」
京佳の質問に、藤原は手にしていたバッグを漁りながら答える。
「やりましょう!TRPGを…!!」
そしてカバンから黒い本の様なものを取り出した。
執事の高橋。
四宮家に長年仕えている執事。年齢50代半ば。見た目は某大墳墓のあの執事長が少し黒髪になっている感じ。かぐやの兄たちの刺客などではなく完全なかぐや派の人間。既婚者。
次回はバスの中でのお話。可能なら今週中に完成させたい。