もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・ 作:ゾキラファス
A、言い訳だけどいきなり仕事が増えた。
いやね?急にあんなに増えるなんて思いもしなかったんです…ごめんなさい。
あと稲作とかイベント海域とか5.5部とか…
それと今回書いたTRPGはなんちゃって感丸出しのため、細かいところは大目に見てくれたら幸いです。
「TRPG?何ですかそれは?」
「昔のテーブルゲームですよ~」
TRPG
簡単にいうと『想像力を働かせて遊べる対話型RPG』である。専用のルールブックとサイコロと紙とペンさえあればどこでもできるゲームだ。性質上、多人数で行う事と、1人がゲームの進行役であるGMを務める必要があるが、今なお遊ぶ人が多くいるゲームである。
藤原はTG部に所属しており、日ごろから部活仲間と様々なゲームで遊んでいる。その為、生徒会の中では石上と同じくらいゲームには詳しい。
そして今日の旅行に、こうして皆で遊べるゲームを持ってきたのだ。
「成程、そういうゲームがあるんですね」
「これが楽しいんですよ~。前に遊んだときはつい時間を忘れて遊んじゃいましたし」
藤原は笑顔でTRPGの魅力をかぐやに説明した。
「でも藤原先輩。TRPGって色々ルールが複雑だったりしますから、皆で遊ぶならもっとわかりやすい双六とかトランプとかのほうが良かったんじゃないですか?」
「いいじゃないですか!私は皆でTRPGを遊びたかったんですよー!」
「結局自分本位じゃないですか」
「兎に角遊びましょう!」
石上の最もな正論にギャイギャイと騒ぐ藤原。そしてそのままTRPGの準備を勝手に進める。
「じゃあ私が進行役のGMやるね!」
「え?萌葉さんがですか?」
「うん!一度こういうのやってみたかったし!」
「じゃあお願いしますね萌葉!」
「了解!」
(大丈夫かしら…?)
先ほどの説明を聞く限り、TRPGにはルールブックがあるものの、ゲーム内のイベントは基本的にGMまかせになる。そんなGMに萌葉が名乗りを上げた。姉の千花よりマシかもしれないが、色んな意味で不安になるのも仕方がない。だがそんなかぐやの事などほっておいて、ゲームの準備は出来ていく。
「それじゃあ先ずはジョブを決めましょう!」
「ジョブ?」
「いわゆる職業です。職業によって得意な事や苦手な事があります」
「そうなんですか?でもどうやって?」
「サイコロを3つ転がして、その合計で決めます」
藤原がまずはそれぞれのジョブを決めようと言い出し、皆がそれに従いサイコロを振るう。
その結果がこうだ。
白銀 考古学者
かぐや 学生
京佳 元軍人
藤原 修道女
石上 町人
圭 異邦人
「見事にバラバラだな」
「私は学生ですか…なんか新鮮味がありませんね」
「待ってくれ藤原。私の職業の『元軍人』って何だ?」
「簡単にいうと戦闘能力が高い職業です。でも移動が遅いです」
「ねぇ萌葉、私の異邦人っていうのは?」
「えっとね、幸運値が1番高いやつだよ。それ以外は平均やや下」
(なんか僕が1番パッとしない…)
それぞれの職業が決まり、いよいよゲームが始まるのだった。
「それじゃあ始めるよー。『あなたは目が覚めると見知らぬ場所にいた。どうやら診察台の上で寝ていたようだ。しかし、どうして自分が診察台の上で寝ていたかは全く思い出せない。起き上がり周りを見渡すと、自分以外にも数人の人間がいるようだ。そしてその数人も自分と同じように診察台の上で寝ており、同じ時間に目が覚めた様だ』さぁ、皆さん。先ずはどうしますか?」
GMの萌葉がルールブックに書かれている物語を読み出し、ゲームは進行する。
「そうだな、まずは周りにいる皆に話しかけてみる」
「私もだ。いいんだよな?」
「はい、どんな行動をとってもいいですよ」
GMの萌葉に確認をとり、行動を開始する白銀と京佳。
『俺の名前は学者のシロガネという。皆は?』
『私はカグヤといいます。学生です』
『私はキョウカだ。元軍人だ』
『チカっていいます!これでもとある協会のシスターなんですよ!』
『えと、ユウって言います。どこにでもいる町人です』
『ケイです。遠くからきました。でもどうやってここに来たのか思い出せません』
『君もか。俺もなんだが、他のみんなはどうしてここにいるか覚えているか?』
全員が自己紹介をした後、白銀の質問に全員が否定する。
「ていうか藤原先輩。修道女じゃなかったですか?」
「いいじゃないですか!修道女もシスターも変わりませんよ!それにシスターのほうが呼びやすいでしょ!?」
「まぁ、そりゃ…」
藤原が何故か自分の職業の読み方を変えていたが、ゲームの進行には特に問題は無い為そのままにした。
「えっと次は、『自己紹介をしていると、自分たちがどんなところにいるのかを把握した。ここは古い診療所のようだ。周りには点滴や薬棚。手術道具などが置いてある。しかし、自分たち以外に人の気配は全くしない』だよ」
「萌葉さん、私たちの持ち物って調べられますか?」
「勿論です」
かぐやがそう言いうと、皆がそれぞれの持ち物を調べ、萌葉がルールブックに書かれている物を発表する。
白銀 望遠鏡
かぐや オルゴール
京佳 ナイフ
藤原 十字架のペンダント
石上 数枚の硬貨
圭 手記
「望遠鏡か。遠くを見るには役立ちそうだな」
「私だけ武器だな」
「元軍人って設定ですもんねー」
「オルゴール?何かに使えるのでしょうか?」
「手記って日記?何で?」
「硬貨って…」
皆の中で武器と言えるものを所持していたのは京佳だけのようだ。これではいざという時心もとない。それを察知した石上は行動に出る。
「えっとじゃあ、周りを調べるっていうのは?」
「いいですよー石上先輩」
「どうせなら皆で調べましょう!」
石上の提案を受け入れ、参加者は診療所の中を調べ始めた。すると様々なアイテムと思わしきものが発見される。
「萌葉さん。こういうのって、拾って装備したりできるのですか?」
「はい。勿論全部持ち運べるわけじゃありませんけどね」
それぞれが発見したものを装備する。白銀は救急箱を。かぐやはノコギリを。京佳は消毒液を。藤原は何かの液体が入ったガラス瓶を。石上は頑丈な杖を。そして圭はランタンを拾い装備した。
「ここに居ても仕方ない。この部屋からでることはできるか?」
「えっと『奥に扉のようなものがある。カギは掛かっておらず、押せば簡単に開きそうだ』です。どうしますか?」
「勿論開ける。じゃないとゲームが進まないしな」
白銀が扉を開けると、その先には階段があった。どうやら下に進んでいるようである。そしてその階段を下りていった一行の前に、
「階段を降りたね。『目に前に突然黒い狼のようなものが現れました。しかし狼というには大きく、まるで人間のような手足。そして明らかな殺意をもってキョウカに襲い掛かってきました』です」
「え?私か?」
「1番移動速度が遅いので。とりあえずサイコロ降ってください」
「わかった」
京佳がサイコロを振るう。
「あ、その出目だと相手の攻撃を避けられませんね。『大きな狼の様な獣はその鋭い爪で元軍人のキョウカを攻撃した』ダメージを負うのでまたサイコロを振ってください」
再びサイコロを振るう京佳。
「うわ、5ですか。結構大きいですね~」
「序盤からこれはキツイっすね」
最大HPが15にも満たない状態で京佳は5ダメージを負った。因みにダメージが大きかったので反撃はできないらしい。
「えっと、次はお姉ちゃんだね。どうする?」
「じゃあさっき手に入れたこの『何が入っているかわからない瓶』を投げます!」
ダメージを負った京佳をよそに、今度は藤原が行動する。そしてサイコロを振った。
「あ、奇跡的成功」
「なんと!」
そしてまさかの奇跡的成功である。
「『修道女フジワラが投げたのは実は火炎瓶だった。そしてそれに当たった狼のような獣はそのまま燃え上がり、灰になった』という訳で最初のモンスター撃破だよ」
「えへへ~。やりました~」
結局1人が怪我をしたが、こうしてチュートリアルのようなバトルは終わった。
「とまぁ、こんな感じの流れですけど、皆さん大丈夫ですか?」
藤原の問いに全員が傾く。
「なぁ藤原。あー、妹さんの方な?さっき俺が手に入れた救急箱で立花を治療することはできるか?」
「勿論できますよ白銀会長。まぁサイコロの結果次第ですけど」
そのままゲームを続行しようとした時、白銀が京佳を治療すると言い出した。そしてサイコロを振るい、治療判定が成功したため京佳を治療し始める。
「いいのか白銀?貴重なアイテムだろ?」
「たとえゲームでも、ケガ人をそのままにするなんてしないさ」
「えっとじゃあここは『学者のシロガネは怪我を負った元軍人のキョウカを治療し始めた。そんな2人の距離は近く、傍から見ればまるで長年連れ添った夫婦のようにも見えなくもない』」
(は?)
「いや待て藤原妹。何で治療しているだけでそんな風に見えるんだよ?」
「だってその方が面白そうと思ったんですもん」
「流石です萌葉!私がGMでも同じような事を言いましたよ!」
「「いぇーい!!」」
手を合わせてはしゃぐ藤原姉妹。
(夫婦…私と白銀が…例えゲームでも嬉しいな…ふふ…)
(京佳さん、よかったですね。そしてありがとう萌葉)
京佳は内心嬉しがり、圭は祝福の言葉を送った。
一方、かぐやはと言うと、
(夫婦!?会長と立花さんが!?しかも長年連れ添った!?は!?ええぇぇぇ!?)
焦っていた。これが萌葉の言ったただのアドリブだというのに。更にいえばゲームなのに。
そして妄想する。
―――――
『すまないミユキ』
『気にするな。嫁が怪我をしていたら治療するのは当たり前だ』
『やはりそういうものなのか?』
『当然だ。なんだって世界で一番大切な人なんだからな』
『ふふ、そうか。ありがとう、私の旦那様』
『ああ、どういたしまして。俺の奥さん』
―――――
(つまりそういう事じゃないの!?)
相変わらず想像力が豊かである。かぐやはある意味TRPGに最も向いているだろう。
(い、いえ!落ち着きなさい私!今のは萌葉さんが言ったただのアドリブ!真に受けてはいけません!)
しかし直ぐに正気に戻り、己を律する。
その後もゲームは進んでいく。
道中、この診療所の患者のような人達に襲われそうになったり、石上がうっかりトラップを作動させてHPがごっそり減ったり、アイテムだと思ったら何の使い道も無いゴミだったりと。参加者はあらゆる行動をとりながら診療所内を探索していった。
そして一行は、ようやく診療所の入り口までやってきた。
「ようやくここから出られそうだな」
「ですね。というかここは本当に診療所何ですか?何かの実験施設だと言われた方が納得します」
「確かにな。とても人を治す所には見えない」
「まぁまぁ、これはゲームですから。細かい事気にしてはいけませんよー」
「じゃあ扉を開けます」
「はーい『診療所の入口の扉を開けると広場があった。空はどんよりと曇っており、人気は無い。しかし直ぐに唸り声のようなものが聞こえた。そしてあなたたちの前に、体長5メートルはあろう大きな怪物が現れた。左腕は異常に大きく、頭にはヘラジカのような角が生えている。そしてその怪物は貴方たちに襲い掛かってきた』です。つまりボス戦だねこれ」
どうやらボスにたどり着いたようである。
「今度は石上先輩からですよー」
「じゃあ先ず、僕ががさっき拾った火炎瓶を怪物に投げます」
石上が火炎瓶を投げるを選択。サイコロを振るうと判定は成功。
「『怪物は町人ユウの攻撃を食らいよろけた。しかし直ぐに攻撃を放ってきた』サイコロを振ってください」
「了解」
石上がサイコロを振るう。成功判定。ノーダメージだ。
「今度は俺だな。なら俺は怪物の頭めがけて思いっきり石を投げる」
白銀は道端に落ちていた石を拾い投げる。しかし判定は失敗。次はかぐやの番なのだが、かぐやは考えていた、
(もしもここで私がダメージを負えば、次のターンで会長が私を治療してくれるのでは?)
かぐやは先ほど白銀が京佳を治療した事をまだ考えていた。正確には、その時の萌葉のアドリブを。
(萌葉さんだったら再び言ってくれる筈…それに私はまだHPも多いですしやってみましょう)
「私はノコギリで怪物に攻撃します」
そしてわざわざ近づいて攻撃するを選択。なお判定は失敗である。
「えっとね『怪物はその巨体に似合わず俊敏であった。そして学生カグヤに攻撃をする』」
再びサイコロを振るうかぐや。
「あ、6ダメージ」
「うっわ。四宮先輩マジっすか。大ダメージじゃないですか」
「あらあら、困りましたね」
どうやらダイスの女神はかぐやの味方のようだ。
「『怪物の攻撃をくらった学生のカグヤはふっとばされ、大怪我を負った』かぐやちゃん危なかったねー。下手したら今のでHP0にもなってたよー?」
「ええ、本当に…」
(萌葉さん。期待してますからね?)
かぐやは自分の思惑通りの展開になり、内心微笑んだ。これならば次のターンで白銀が治療をしてくれるだろう。
「えっとじゃあ、松葉づえで怪物を殴るで」
圭は松葉づえで攻撃を選択。判定は成功。
「『松葉づえで攻撃された怪物は結構なダメージが入り動けないようだ』意外としぶといねこのボス」
「なら私は近づいてナイフを刺す」
そして京佳はナイフで怪物に攻撃。判定は失敗。攻撃は避けられた。
「ふふふ。トリはまかせてください!私は診療所内で手に入れたこの『よく燃える火炎瓶』を投げます!」
最後に藤原の攻撃で終了しようとしていた。
(しかし、初めてやりましたが結構楽しいですね。藤原さんの話ではこういった冒険物だけじゃなく、推理物や恋愛物まであると言ってましたが…)
かぐやは初めて遊ぶTRPGを楽しんでいた、当初こそこれを持ってきたのが藤原で、進行役が藤原の妹の萌葉だったので多少の不安があったが杞憂だった。
(もしかしたら、今後何かに使えるかもしれません。帰ったら1度調べてみますか)
そして旅行が終わったらTRPGについて調べてみようと考える。
(まぁ今は会長からの治療です。ここで藤原さんがボスを倒せば会長は私を治療してくれる筈そしてその時に萌葉さんが先ほどみたいなナレーションをしてくれれば…)
かぐやは次のターンの事で頭がいっぱいだった。しかしその時である。
「あ。致命的失敗」
『え?』
藤原が致命的失敗をした。
「あー。ここは『修道女フジワラが投げた「良く燃える火炎瓶」は怪物ではなく明後日の方向に飛んでいき、そのまま一塊になっていた他のメンバーの中心に落ちた』……お姉ちゃん、もっかいサイコロ降って?」
「はい…」
藤原が再びサイコロを振るう。
「……致命的失敗」
「……」
「えーっと、『中心に落ちた火炎瓶は勢いよく燃えだし、修道女フジワラ以外のメンバーは全滅しました』です。……うん」
そしてまさかの全滅である。全員これまでにダメージを負っており、HPがあまり多くなかったのも災いした。
「藤原書記…」
「藤原さん…」
「藤原…」
「藤原先輩…」
「千花ねぇ…」
「うわぁぁぁん!ごめんなさーい!!」
藤原は自分がやらかしたことによりゲームがなんとも最悪な終わり方をしたため泣きながら謝った。
「皆さん。そろそろ到着ですよ」
しかし、運転していた執事の高橋がもうじき目的地に着く事を言うと、直ぐに泣き止み、皆と一緒にいそいそとゲームを片付け始めた。
そして一行は、軽井沢にある四宮家別荘に到着するのだった。
今回正直蛇足感あるとは思ってましたけど、書きたかったんだよ。皆がわいわい楽しく遊ぶ姿が。
次回も頑張って書きます。とりあえずエタることだけはありません。