もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・ 作:ゾキラファス
そして今回は説毎回みたいになっちゃいました。
一言、でかい。
目的地である四宮家が所有するコテージを見た一同の感想はそれだった。四宮家は国内最大の財閥である。そんな家が所有するコテージとはどれほどのものかと思っていたが、実際に目にしてみるとちょっとしたホテルだった。
白銀達の目の前にある建物は地上3階建て、反対側にはテニスコートがあり、更に聞けば後ろにある山もコテージの敷地内とのことだ。つまり敷地内で登山すら可能なのである。
あまりにもスケールが大きく、かぐやと執事の高橋以外は唖然としていた。
「四宮先輩やばいですね…何かこう、スケールがやばいっす…」
「ああ、俺もこれほどとは思わなかったよ」
「ですねー…もうホテルですよこれ」
石上と白銀と藤原がそんな事を言っていると、コテージの玄関が開き、中から2人メイドが現れた。
「「いらっしゃいませ、お客様」」
2人のメイドはスカートの裾を摘まみ、頭を下げながらあいさつをする。
「本日から皆様のお世話をさせて頂く、メイドの志賀です」
「同じく、メイドのハーサカです」
メガネを掛けた志賀と言うメイドは、茶色い髪を夜会巻きにしている知的な美人である。もう1人のハーサカというメイドは、長い金髪に整った容姿の清楚な美人であった。
「会長…!メイドですよ!?本物のメイドですよ!!」
「流石四宮…執事だけじゃなくてメイドまでいるとは……」
そしてそんなメイドをみた男子2人は少し高ぶっていた。日本の若者は皆メイドが好きなのである。
「ハーサカさん。お久しぶりです」
「はい京佳様。お久しぶりです」
男子2名が高ぶっていると、京佳が金髪のメイドのハーサカに話かけた。
「ん?何だ、立花の知り合いだったのか?」
「ああ、1学期に四宮の家にお見舞いに行った時に会ってね」
「ほう、そうだったのか」
京佳からすれば数か月ぶり、ハーサカこと早坂からすれば大体2週間ぶりの再会である。
(やっぱどこかで会った事あると思うんだがなぁ…)
そして京佳はハーサカをみて既視感を感じていた。
「おにぃ、何かメイドさん見ている目線がやらしいんだけど?」
「待って圭ちゃん待って。違うから。そんな目で見てないから」
圭の言葉を必死で否定する白銀。しかし目は少し泳いでいる様に見える。
(もしかして白銀はメイドが好きなのか?それとも金髪?)
京佳は白銀の僅かな反応から色々考え始めた。もしも白銀がメイド好きならどうにかしてメイド服を着てみようと考えた。
(ちょっと早坂?会長を誘惑するなんて一体どういう事?)
(いや言いがかりですよかぐや様)
一方かぐやは早坂に嫉妬の眼差しを向けた。それに早坂はアイコンタクトで返答した。
『すっご!?』
玄関からコテージに入った一同は再び驚愕した。外から見た時から何となくわかってはいたが、実際に見てみると中も想像以上だったからだ。玄関ホールは広く吹き抜けになっており、天井にはシャンデリアのようなものが吊るされている。壁にはなんか高そうな絵画が飾られており、よくわからないオブジェのようなものもあった。
「流石かぐやちゃんだねー。こんな凄い別荘持ってるなんて」
「所持しているのは私個人では無くて本家ですけどね」
「だとしても凄いですよかぐやさん。玄関だけで一体何畳あるんですかこれ」
「確かに凄いな…」
「ほんとですね。少し畏縮しちゃいますよ」
「僕の部屋、ここの玄関ホールより小さいですよ」
「俺の部屋もだよ石上」
「それでは、荷物を部屋に置いたら1度ここに集合しましょうか。先ずコテージ内を色々と案内したいですし」
「そうだな。そうするか。じゃあ10分後くらいにまたここに」
玄関ホールで会話をする一同。そんな一同に執事とメイドが話かける。
「「「それでは皆様、お部屋へご案内いたします」」」
「おお、息ピッタリだ」
「四宮家の使用人ですので」
「僕、こういうの少し憧れてました」
皆の荷物を持った3人の使用人に案内されて、7人はそれぞれの部屋に向かう。
(いや凄いなここ…)
案内された部屋に入った白銀はそんな感想を思った。
部屋の中には長机にソファー。クローゼットに大型テレビに冷蔵庫。そして白銀の家では見ない大きいベット。普通に考えたら学生が泊まれるような部屋ではない。一体一泊おいくらするのか考えてしまう。しかも全員個室。何とも贅沢である。
(しかしこれ、本当にタダで泊まっていいのか?)
白銀は少し申し訳なさそうにしたが、折角の厚意を無碍にする訳にもいかない。何よりこんな場所に泊まれる事など、少なくと在学中はもう無理だろう。なので思いっきり使う事にした。
鞄から着替えを出し、それをクローゼットに入れ、洗面用具をソファーに置き、参考書と筆記用具を机に置いてから白銀は部屋を出た。そしてほぼ同じタイミングで部屋から出てきた石上と一緒に下に降りるのだった。
「これで皆さん集まりましたね」
玄関ホールには生徒会メンバー+αの7人とメイドのハーサカが集まっていた。
「では、私ハーサカがコテージ内を案内させていただきます」
『よろしくお願いします』
「かぐやさん、高橋さんと志賀さんは?」
「2人は別の仕事に取り掛かってますよ」
「ほえー、やっぱり忙しいんですねー」
先ほどまで皆を案内していた他2人の使用人は、どうやら既に別の仕事をしている為この場には居ないようだ。
「それでは、先ずは1階からご案内いたします」
ハーサカを先頭に、皆はコテージ内を歩き出した。
1階 リビング
「ここがリビングです。最大20人まで食事をすることができます」
「やっぱり広いっすね」
「テレビも凄く大きい」
「ここだけで私の家のアパートくらいあるな」
「あのー、外にあるのはバーベキュー設備ですか?」
「はい千花様。あちらは四宮家が特注で制作したドラム型バーベキューグリルです」
「いやデカイな」
「最大10キロのお肉を同時に焼くことができます」
「……需要あるんですかそれ?」
「対してありません」
「え?無いの?」
「はい。そもそも最後に使用したのはもう10年以上前と聞いています。今ではただのオブジェと化しています」
談話室
「ここは談話室です。設置してある本棚には有名な小説や絵本があります。あちらにある全自動コーヒーメーカーはお好きな時にお使いください」
「あの、図鑑とかもありますか?」
「はい御幸様。右の本棚の上から3段目にございます」
「本当に何でもあるなここ」
「漫画とかはありますか?」
「申し訳ありません優様。そういった低俗なものはありません」
「そ、そっすか…」
浴場
「ここが浴場です。右が男性、左が女性となっています」
「ハーサカちゃん!!中見てもいい!?」
「え?ちゃん?い、いえ。どうぞ萌葉様」
「んじゃ早速…ってひっろーい!」
「本当におっきい…もう銭湯だよこれ…」
「これなら女子皆でお風呂に入れますね~かぐやさん」
「ええ、そうですね」
「…ところで白銀と石上は見ないのか?」
「いや流石に女湯を見るのは、なんかなぁ…」
「です。いくら誰も入っていなくてもちょっと…」
「そういうものなのか」
1階を見終えた一同はそのまま2階へと進んだ。
「2階は右側がシアタールーム、左側が遊戯室となっております」
「遊戯室には何があるんですか?」
「各種ボードゲーム。ビリヤード。そしてダーツがあります」
「設置しているのもなんか洒落てますね」
「ありがとうございます、優様」
2階は遊戯室とシアタールームわずか2部屋しか存在しない。しかしこれなら、例え外が土砂降りでも遊ぶ事は可能だ。
「皆でシアタールームで映画を見るのもいいかもねー」
「そうなったら何見ましょうか?夏だしホラー?」
「そうなったら絶対に私は見ないからな?」
「京佳さん本当に幽霊ダメなんですね~」
「むしろ何で皆は大丈夫なんだ?怖いだろ、幽霊…」
藤原姉妹の提案に断固として反対する京佳。やはりホラーはダメらしい。
と、そんな時である。
くぅぅ
藤原のお腹から音が鳴った。
「千花ねぇ…」
「お姉ちゃん…」
「し、しかた無いじゃないですか!?だってもうお昼なんですよ!?お腹も空きますよ!?それにこれは生理現象ですし!!」
顔を真っ赤にして弁明する藤原。白銀がふと壁にあった時計をみてみるともうすぐ12時である。確かに昼食時だ。
「では皆様、1度1階に降りましょう。高橋と志賀が昼食を用意しています」
「そういえば確かに美味しそうな匂いが…」
ハーサカに言われて1階に降りていく。そして先ほど見たリビングに行くと、机の上には本当に昼食であろうオムライスが7人分用意されていた。
「凄い、さっきまで机の上には何もなかったのに…」
「僕たちが上に上がったのってほんの5分くらいですよね?その時間で用意したんですか?」
「石上くん。四宮家の使用人なら可能ですよ?」
「なんかそれ便利な言葉ですね」
「では皆様、どうぞお好きな席へお座りください」
そう言われた7人はそれぞれ好きな場所へ座りだす。
「えっと、ハーサカさんは座らないんですか?」
「私は使用人ですので。皆様が食べ終わったら別の場所で頂きます」
「そういうものなんですか」
「はい。それでは皆様、何かありましたらいつでもお呼びください」
白銀の質問に答えたハーサカは、そのまま奥の厨房の方に行ってしまった。
「では、皆さん頂きますか」
「そうだな。じゃあ」
『いただきます』
皆が手を合わせて用紙された昼食を食べだした。
「美味しい!このオムライス本当に美味しいですよ!」
「ほんとだねお姉ちゃん。すっごい美味しいよこれ」
「こんなの初めて食べた…」
「ふふ、喜んでくれて何よりです。あとで志賀に言っておきますね」
どうやらこの昼食を作ったのはメイドの志賀らしい。皆の口に合ったようで何よりだ。そうやって皆が食事をしている時、京佳がかぐやに話しかけてきた。
「四宮、少しいいか?」
「何ですか立花さん?」
「いや、正直至れり尽くせりで少し怖いんだが、本当にお金とか払わなくていいのか?」
京佳がそう思うのは当然だった。迎えのバス、学生が宿泊するにしては豪華な個室、そしてこの美味しい料理。これら全てがタダなのだ。不安に思うのも仕方ない。
「勿論ですよ。ここだって殆ど使われていなかったんですから。こうして皆さんが使ってくれた方が建物明利に尽きるでしょうし」
「そうか。すまなかった、変な事を聞いて」
「いえ、気にしていませんから。その変わり、目一杯楽しんでくださいね?」
「ああ、そうさせてもらうよ」
かぐやにそう言われた京佳は笑顔で答える。そしてこの旅行をより楽しむことにしたのだ。
(ふふふ、そうやって気を緩めていなさい…)
だが、あの四宮かぐやがただの善意でこのような事をする訳がなかった。何時もなら京佳に邪魔をされたり、先を越されたりするかぐや。しかしここは四宮家が所有するコテージでこの辺り一帯は四宮家の私有地。それはすなわち、かぐやにとって有利に事が運びやすい場所である。
そして使用人3人は全員かぐやの命令に忠実である。これだけの布陣ならば、白銀を落とすことも可能だろう。
(さぁて、会長。旅行が終わる頃には、貴方は私に告白をしてきますから、今のうちに告白する時の台詞でも考えておくことですね。ふふふ)
そしてかぐやはひっそりとほくそ笑むのだった。
(すまない四宮。私はただ旅行を楽しむというのはちょっとできないな…)
だが京佳も、皆と同じようにただこの旅行を楽しむわけなど無かった。
(この旅行は四宮の方に分があるのは間違いないだろう。ただでさえ戦況は悪いというのに…)
京佳は今現在、自身があまりにも分が悪い事を理解している。相変わらず、白銀を振り向かせることはできていない。
(だが、決してチャンスが無い訳じゃない)
しかし、それが諦めていい理由にはならない。白銀とかぐやが正式に恋人になっていないのであれば、可能性はゼロではないのだから。
(この旅行で何とか白銀に私を意識してもらえるようにしないとな)
立花京佳は諦めない。例え白銀を振り向かせられる可能性が那由他の彼方であろうとも。
メイドの志賀。
四宮家のメイド。年齢は20代前半。代々四宮家に使えている人では無く、メイドの募集を見て働いている異例の存在。扱いは一応正社員らしい。元ネタは某大墳墓の7人姉妹の長女。
次回も頑張ります。