もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・   作:ゾキラファス

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 新年あけましておめでとうございます。年末は大変でした…仕事納めが遅くなったり、家に帰ったらネズミが出現してそれの捕獲と駆除に時間が掛かかったり、BOXガチャを開けたりと…

 今年もノリと勢いで完結目指して書き続けますので、どうかよろしくお願いします。


生徒会メンバーと小旅行(その6)

 

 

 

 

 

 旅行の楽しみといえばなんだろう?

 皆でわいわい遊ぶこと?普段行かないところに行けること?何時もと違う日常を味わえるところ?他にも様々なものがあるだろうが、その中に『美味しい料理』というのがあるのではないだろうか?

 旅先では様々な料理がある。その地元の郷土料理。有名なレストランや旅館のコース料理。そして―――

 

「楽しみですね~、バーベキュー!」

 

「だねー!」

 

 旅行に参加したメンバーとの料理である。

 

 散歩を終えた7人は、暫くの間リビングで休憩を挟んだ後、四宮家別荘の庭に設置されている屋根付きバーベキュー設備に来ていた。

 

「夏といったらバーベキュー!これはもう鉄板ですよね!」

 

「まぁ、確かに夏=バーベキューのイメージはありますけど、テンション高すぎません藤原先輩?」

 

「だってこんな素敵な景色を見ながらの皆でバーベキューですよ?テンションも上がりますって!」

 

「だよねー!この前ワイキキビーチを見ながら食べた夕食とは違っていいよねー!」

 

(そういえばハワイ旅行に行ってたんだっけ?)

 

 藤原姉妹がテンションを上げる理由。それは彼女らの目の前にある様々な肉や野菜が原因である。そう。これから7人は夏の定番『バーベキュー』をするのだ。

 

 バーベキュー。

 それは夏の定番であり、陽キャが何故か好き好んでするイベント。焚火や火を灯したバーベキューコンロの上に肉や野菜や魚介類を置き、それらをゆっくりと焼きながら食すという簡単な調理法。キャンプや旅行でもよく行われる事でもあり、若者から年配まで楽しめるイベントでもある。

 因みに、北米ではバーベキューの大会が行われている州もある。そんな陽キャ御用達のイベントを、これから7人は行うのだ。尚、バーベキューや焼肉では、どうしても着ている服に煙などの匂いがついてしまうのだが、そこは四宮家が用意した最高級匂い消しのおかげで解決済みである。そのお値段、1本8万円である。とんでもない高級品だ。

 

「すっごいお肉…あの、四宮先輩。本当にこれ食べてもいいんですか?」

 

「勿論ですよ白銀さん。ぜひお腹いっぱい食べてください」

 

「あ、ありがとうございます…!」

 

 普段、まず食べる事の出来ない食材の山を目の前にした圭は思わず涎をたらしそうになる。そんな圭に、かぐやは優しい言葉をかける。

 

(よし!これで少しは妹さんとの距離も縮まった筈ね…!)

 

 邪な想いを隠しながらだが。というか餌で釣っているような感じになっているが、それでいいのだろうか?

 

「こちらの食材、そして複数のバーベキューコンロ、全て皆さんのお好きにお使いください」

 

「お飲み物はこちらに用意しています。炭酸からお茶まで様々。お好きにお飲みください」

 

「何かほかに用意して欲しいものがあれば、いつでもお声をおかけください」

 

「ありがとうございます皆さん!では早速焼きましょう!」

 

 執事の高橋とメイドの志賀とハーサカがそう言うと、藤原が勢いよく肉だけを取り、それらをステンレス製の串に刺して焼き始めた。

 

「藤原先輩、食いつき凄いっすね。何か意地汚いっすよ?」

 

「意地汚いって何ですか!?お腹空いているんですからこれくらい普通ですよー!?」

 

「いえ、だとしてもその量は多くないですか?」

 

「べ、別に多くありません!」

 

 藤原が串に刺してい肉の量はあきらかに多い。というか肉しか刺さっていない。石上がそう言うのも仕方無い様にも思える。しかしそんな石上にギャイギャイと藤原は反論する。最も、反論しているその顔は少し赤いが。

 

(さて、私も準備をしますか)

 

 そんな2人の事を無視し、かぐやは肉と野菜をバランスよくステンレス製の串に刺していく。これはかぐやが自分で食べる分を焼くからではない。古来より言われている『男を落とすなら胃袋を掴め』。かぐやはこのバーベキューでそれを実践するつもりなのだ。

 

(串焼きバーベキューというのは、実はかなり焼くのが難しいもの。焼く食材の大きさを均等に整えたり、全体的にムラ無く焼いたり、誤って焦がさない様にしたり…もしそれらの工程を難なくこなし、それを会長に食べさせることができれば『料理上手な女性』と会長に認識される筈…!)

 

 そんな思いを胸にしながら串に食材を刺すかぐや。

 

(そうなれば、会長も『一生俺に料理を作ってもらいたい』と思うのは明白!そして会長から告白をしてくる筈!!)

 

 そして相も変わらず、決して自分から告白をするという思いは微塵も存在しない。因みに当初、この作戦を早坂が提案した時、かぐやはいつもの様に駄々をこねるように反論していた。

 

 回想―――

 

『そんなのまるで私が会長に料理を食べてもらいたいみたいじゃない!』

 

『立花さんは前に白銀会長とお弁当のおかず交換していましたよね?しかもその時に良いお嫁さんになれるって言われてたんですよね?正直これ相当好感度高くないと言われませんよ?いいんですか?お2人が結婚しても?』

 

『…………やればいいんでしょやれば!!』

 

『何で逆切れしてんですか?』

 

『いい事早坂!これは貴方がやれって言うから仕方なくやるんだからね!私の意志じゃありませんからね!!』

 

『ほんといい加減にしません?』

 

 ―――――

 

 この時、早坂は一回くらいひっぱたいてもいいのでは?と思っていたが何とか抑えた。

 

(では、さっさと焼いてこれを会長に恵んでさしあげますか…)

 

 串に食材を刺したかぐやがバーベキューコンロに向かおうとしたその時である。

 

「すまない四宮。少しどいてくれ。そこの肉を取りたいんだ」

 

 京佳がかぐやの後ろから声をかけてきたのは。

 

「あら、すみません。私邪魔でしたか」

 

「いや別に邪魔という訳ではないが…」

 

 若干棘の入った言い方をするかぐや。だがそれも仕方ないかもしれない。何たって、先ほど皆でしていた散歩中に、京佳は白銀とキスをしかけたのだから。

 あの後、皆で2人を問い詰めた時、最終的に『していない』という判決に至ったが、それでも事故とはいえ白銀と身体を密着させ、キスをするほど顔が近かったのは事実。かぐやはそれが気に入らなかった。故にこうして少し棘のある言い方をしてしまったいる。

 

(っていけません…私ったらなんて子供っぽい事を)

 

 しかしかぐやは直ぐに自分の言動を恥じた。これではまるでただの癇癪を起しそうな子供。四宮家の人間としてそんな真似は許されない。

 

「申し訳ありません立花さん。今のは失礼な言い方でしたね」

 

「別にいいさ。気にしていない」

 

 直ぐに京佳に謝罪するかぐや。そしてそれを受け入れる京佳。ここにわだかまりは無くなった様に見えた。

 

「それは立花さんの分ですか?殆どお肉しか刺さってませんね?」

 

「いや、これは私の分じゃないよ。白銀に食べて貰おうと思ってね」

 

「……はい?」

 

 京佳がそう発言するまでは。

 

「えっと、何で会長に?」

 

「ああ。白銀は普段こういった肉類をあまり食べる事がないらしくてね。どうせならこの機会に、圭も含めて沢山肉を食べてもらいたいって思ったんだ」

 

 京佳の手には肉が多めに刺さっている串。いかにも男の子が好きそうな感じだ。

 

(白銀には是非、私が焼いた肉を食べてもらいたいからな…)

 

 そして京佳は、かぐやと同じ様な事をしようとしている。

 

(いけません!これは何としてでも阻止しないと!!)

 

 これ以上、京佳にだけ美味しいイベントを起こさせる訳にはいかない。かぐやは直ぐに動き出した。

 

「立花さん?その串は殆どお肉ばかりです。流石にそれはバランスが悪いので会長も口に合わないと思いますよ?」

 

「いやいや、ちゃんと僅かではあるが野菜も刺さっているだろう?それに白銀は男だ。こうした肉ばかりのほうがいいに決まっているさ」

 

「それは偏見です。会長だってバランスの取れた方がいいに決まってますよ」

 

「それこそ決めつけじゃないか?白銀本人に直接聞いたわけでもないだろう?」

 

「「……」」

 

 本人たちは覚えていないが、1学期に生徒会が修羅場になったのと同じような展開になるつつあった。尚、周りの皆はこの空気に気づいていない。

 

「ではこうしましょう。お互いそれぞれ焼いて、直接会長に選んでもらうというのはどうでしょうか?」

 

「ああ、受けてたとうじゃないか」

 

 京佳はかぐやの提案を受け入れた。こうして、突然料理対決が始まり、かぐやと京佳はそれぞれ串に刺さった食材を焼き始めた。

 

(大丈夫。この日のために態々アメリカからバーベキューの講師を呼んでまで練習したんだもの。私が負ける筈ありません…!)

 

(ここで無様を晒せばまた四宮に優位を取られてしまう…負けるものか…!母さんの代わりに台所に立って6年の力、見せてやる!)

 

 その顔は真剣そのもの。2人共、決して負けないという強い想いの元、それぞれ食材を焼く。

 

(何やってんでしょう、あの2人…)

 

 そしてハーサカこと早坂は、そんな2人を疑問符を浮かべながら眺めていた。

 

 数分後―――

 

((よし、焼けた!!))

 

 それぞれ、今自分が出せる全力を出し切ってかぐやと京佳は串に刺さった食材を調理し終えた。

 

「では、立花さん。会長の元に行きましょうか」

 

「ああ。そこで勝負といこうか、四宮」

 

 大きめの皿に串焼きにした食材を置き、かぐやと京佳は白銀の元へ向かう。

 

(会長なら間違いなくバランスの取れた方を選ぶでしょう。焼き加減も完璧ですし、私の勝利は揺るがないでしょうね)

 

(白銀だって食べ盛りの男の子だ。肉が多い方を選ぶ筈だ。焼き具合も良いし、今回は私が勝つぞ四宮)

 

 そして2人が白銀の方に行くとそこには―――

 

「いや会長凄いっすよ!?何すかこの焼き加減!?最高なんですけど!?めっちゃ美味しいです!!」

 

「本当に美味しいですよ!お肉と野菜を別々の串に小分けてして刺さっているから食べやすいですし!」

 

「圭ちゃん、白銀会長って料理上手なんだねー」

 

「えっと、おにぃは飲食店でバイトしていたし…」

 

「いやー。前に焼き肉屋でバイトしていた事があってなー。そこの店長に無駄にシゴかれたんだよ。おかげで肉と野菜の焼き方は完璧だぞ。正直ちょっと自慢できるくらいには」

 

 白銀が肉と野菜を完璧に調理していた。そして皆が白銀の焼いた食材を美味しそうに食べていた。

 

「「……」」

 

 かぐやと京佳は動きを止め、そして同じ物を見た。それは白銀が焼いた肉や野菜などの数多の食材。それらは本当に美味しそうに焼かれていた。今すぐにでも食べてみたいと思うほどに。

 

「凄いですね白銀様。この焼き加減、実に見事です。四宮家の使用人として尊敬に値します」

 

「はい。私もまだまだということがわかりましたよ」

 

「本当ですね。もっと精進を重ねなくては」

 

「ぷ、プロの人にそう言われるとちょっと照れますね。はははは」

 

 何故か使用人の3人も白銀が焼いたのを食べていた。

 

「ん?四宮と立花。食わないのか?」

 

 そう言い、焼いた肉を2人に差し出す白銀。

 

「「いただきます」」

 

 かぐやと京佳の2人は、差し出されたものを直ぐに受け取り、食べ始める。

 

((あ、本当に美味しい…))

 

 白銀が直接焼いた料理を食べれた2人はご満悦となった。

 

 

 

 

 

 因みに、かぐやと京佳がそれぞれ焼いたものは、各自自分で食べて処理をした。

 

 

 

 

 




 肉や野菜を取る時は使い捨てのビニール手袋を使用しています。因みに最初はカレーのつもりでしたが「カレーじゃ勝負できねーな…」と思いBBQにしました。いやBBQで勝負ってのもおかしいけどね。

 次回は夏の定番。肝を試す予定です。

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