もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・   作:ゾキラファス

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 これで旅行編は終了です。長かった… 早く2学期いきたいけど、夏休みはまだ少し続きます。このペースだと2学期書けるのは、温かくなったころかなぁ…(遠い目)




 それと今回重い話です。注意して下さい。


生徒会メンバーと小旅行(その10)

 

 

 

 

 

「さて、いざ話そうにもどう話したらいいものか…」

 

 身体と髪を洗い、女子全員で湯船に入った後、京佳は自分の左側の説明をしようとし、悩んだ。なんせ結構難しい話なのだ。あんまり詳しく言いすぎると萌葉に嫌な気分をさせてしまうし、ぼかして話すと萌葉は納得しないだろう。ちゃんと話すと言った手前、後者は選択できない。

 

「京佳さん、私やかぐやさんに説明した時と同じでいいと思いますよ?」

 

「そうですね。その方が、萌葉さんも納得するでしょうし」

 

「そう…か。なら、そうしよう」

 

 京佳が悩んでいると、藤原とかぐやがそう提案した。かつて、今の生徒会が発足されて間もない頃、京佳は2人に左側の事を説明している。

 当初、既に京佳の左側の事を知っていた白銀は無理に説明をする必要は無いと言ったのだが、これから一緒に仕事をする人達にこの左側の事を隠しているのは京佳自身が納得できなかった。

 それゆえ、藤原とかぐやには火傷の跡を見せたうえで、火傷の経緯を説明した。結果、藤原は泣きながら京佳の友達になろうと決めて、かぐやは京佳を信用はできる人物であると決めた。

 

「先に言っておくと、私のこれは事件であり事故だ」

 

「事件であり事故?」

 

「こうなったのは中学の時の話だ」

 

 京佳は萌葉に説明を始めた。だが、最初の言葉からして疑問符を浮かべざるを得ない。

 

「中学に入学して直ぐに、バレー部の顧問に声をかけられてね。そのまま私はバレー部に所属したんだ」

 

「あー、確かに京佳先輩の身長ならスカウトされても…え?待って。京佳先輩って中学の頃にはもう身長高かったの?」

 

「まぁな。中学入学時点で170はあったな」

 

「はい!?」

 

「更に言えば小学校5年生の時には既に170になろうとしていた」

 

「そうなの!?」

 

 余談だが、当時の京佳はその身長のせいで周りからは殆ど小学生に見られなかった。そして小学校の男子からは『だいだらぼっち』や『巨人女』などとからかわれていたが、基本的に京佳はそういった事全てを無視していた。反応すると逆に面倒だから。

 

「話を戻そう。それでバレー部に所属したんだが、まぁ目立ったよ。なんせ同じ部活内の3年生の先輩より身長の高いのが入ってきたんだ」

 

「まぁ、そうなっちゃうよね」

 

「最も、身長のせいで目立った事なんて今更だったからな。特に気にする事もなく私は部活動に励んださ」

 

 今まで、身長が高いせいで色々と言われてきた京佳はそういった目線に耐性がついていた。なので、部活に入った時もさほど気にせず練習に励む事が出来た。

 

「練習は、まぁきつかったな。顧問が結構厳しい人でな。でも同時に、楽しかったよ」

 

「わかる!部活動って努力して練習してるとなんか楽しくなってくるんだよね!」

 

「萌葉のいう通りです!私も部活を毎回努力をしながらやってますから楽しくてしょうがないんですよ~」

 

(千花ねぇって確かTG部とかいうやつだったような…努力する部分あるの?)

 

(藤原さんはTG部で何を努力するんでしょうか?)

 

 圭とかぐやは同じ事を考えた。

 

「それで暫く経った時、地区大会が迫ってきてね。私はその大会のレギュラーメンバーに選ばれたんだ」

 

「1年生で!?凄い!」

 

「そしてそれがきっかけになった」

 

「え?」

 

 突然、雲行きが怪しくなる。既に事の真相を知っているかぐや、藤原、圭も暗い顔をする。

 

「レギュラーに選ばれたその日、私は3年の先輩3人に呼び止められたんだ」

 

 そして話している京佳も、あまり良い顔とは言えない。

 

「3人の先輩は、部室で私を囲むようにしてこう言ったんだ。『レギュラーを辞退しろ』とね」

 

「え、どうして…?」

 

「先輩達の言い分はこうだった。『自分たちは3年でこれが最後の大会になるかも知れないから変わって欲しい。貴方はまだ1年生なんだからチャンスはあるでしょ』」

 

「そ、そんなのって…!」

 

「ああ。ただの我儘だ。当然私もそんな願い何て拒否したさ。私も練習を頑張ってレギュラーになったんだ。そう易々とレギュラーを変わるなんてする訳がない。でも先輩達はそれが気にくわなかっただろう。私がそう言うと罵声を浴びせてきた」

 

「ば、罵声…?」

 

「『ただデカイだけでレギュラーになれた女』ってね。似たような事を何度も何度も言ってきた。暫く私を罵倒したら速足でそこから出て行ったけどね」

 

 一通り喋ると、京佳は手でお湯をすくって顔にかけた。やはり、当時の事を思い出してしまい気分を悪くしたようである。

 

「…すまない、話を続けよう。それで終われば何も問題はなかったんだがな、その後直ぐに先輩達はある事を考えたんだ」

 

「ある事?」

 

「私を怪我させて、レギュラーを降板させようという考えだ」

 

「な!?」

 

 萌葉は驚愕するしかなかった。いくらレギュラーになれなかったからと言って、そこまでする人間がいるとは思わなかったからだ。

 

「それで数日後、私を理科室に呼び出して、そこに保管されてあった薬品を私にかけたんだ。薬品をよく確認せずに」

 

「えっと、その薬品って…?」

 

「硫酸だ」

 

「っ!?」

 

「しかも先輩の手元が狂ってしまって、当初私の腕にかけようとしていたのが私の顔の左側に思いっきりかかってしまったんだ。あの時はあまりの激痛に叫んだよ。本当に顔が焼けている感覚だった。あとはご覧の通り。私は左目を失明して、顔の左側にこんな焼け爛れた跡を残してしまったんだ。まぁ、これでもかなりマシになったけどな。最初は目が真っ赤になっていたし」

 

 話し終えた京佳は、自分の顔の左側を指でさしながらそう言う。

 

「ほんと、今聞いても虫唾が走る話ですね…」

 

「ですね。だって京佳さん何も悪い事してないんですもん」

 

 かぐやと藤原は改めて聞いた京佳の話をそう評する。どこをどう聞いても、京佳は被害者だ。そうなるのも当然だ。

 

「えっと京佳先輩…聞く限り事故の要素が無いんだけど…?」

 

「手元が狂ったという部分が一応事故だ。本人達も、まさか顔に当たるとは思っていなかったらしいしな」

 

「えぇ…」

 

 正直、どう聞いても事件要素しかない。

 

「それから私は入院した。当然、大会に出れる訳もなく暫くの間はずっと病室だったさ。入院して暫くしたら3人とその両親が謝罪にきたよ。最も、私も母さんも許す気は全く無かったがな」

 

「当然ですよ!女の子の顔に傷をつけたんですよ!私だって許せるかわかりません!」

 

「全くです。私もそうなったら何があろうと絶対に許しませんね」

 

 京佳に同意する藤原とかぐや。女なら当然だろう。因みにだが、女性の顔に消えない傷が出来た場合、同じように顔に傷が出来た男性より多く慰謝料を貰える事があるらしい。

 

「あとは治療費やら慰謝料の話になるが、この辺は割愛しよう。長くなるだけだし」

 

「その後、その3人はどうなったの…?」

 

「詳しくは知らん。どこかに転校したらしいが興味も沸かん」

 

 京佳にとって、自分の顔をこんな風にした3人は未だに許せない存在だ。願わくば、地獄に落ちろとさえ思っている。だが同時に、向こうから関わってこなければ、最早思い出す事さえ無い存在でもあった。なので、自分から相手がどうなったかなど調べる事さえ無い。

 

「以上が、私のこの火傷跡の経緯だ」

 

「……」

 

 話を聞き終えた萌葉は思わず俯いた。あまりにもひどい。偶発的な事故であれば、まだ救いはあったかもしれない。だが実際は人為的な事件だ。しかも原因はただの逆恨み。

 萌葉はやや特殊な環境ではあるが、幸せで温かい家庭で育ってきた。友人にも恵まれている。人間の悪意と言うものを知らない訳ではないが、それでも自分の目でそういった人間を見た事は無い。

 世の中には、そういった行いを平気でする人間がいると知り、少なくないショックを受けていた。暫くショックを受けていると、萌葉はある事を思い出した。

 

「そういえば、京佳先輩はどうしてあんな事を聞いたの?」

 

「あんな事?」

 

「自分の顔が気持ち悪いかってやつ」

 

「ああ。それか」

 

 京佳は萌葉の疑問に答える事にした。この話も、京佳にとっては大事な話だからだ。

 

「退院して再び学校に通えるようになった時の話だ。その時はまだいつも使っている黒い眼帯じゃなくて包帯の様な眼帯を使っていたんだが、ある日それを同級生に取られたんだ」

 

「え?何で?」

 

「眼帯の下がどうなったのか気になったらしい。そして私の左側を見た同級生は皆こう言ったよ。『ゾンビみたいで気持ち悪い。2度と学校に来るな』ってね」

 

「あ……」

 

「それが本当にショックでね。あの時は、今すぐその場から逃げ出したかったよ。もう2度と、学校へなんか行きたくないとも思ったさ」

 

 京佳が眼帯をしているのはこの出来事のせいだ。この時言われた台詞がきっかけで、彼女は自分の顔の左側の火傷の跡にとてつもないコンプレックスを抱いている。

 もし今、秀知院で眼帯を外してしまえば、また周りからそういう事を言われるかもしれない。だから京佳は、自分の顔の左側を必死で隠している。また言われるのが怖いから。一応、TPO的な事も理由としてはあるが、眼帯をしている理由の殆どはそれだ。

 

「でも直ぐにその考えは消えた」

 

「えっと、どうして?」

 

「友達が眼帯を奪った同級生をひっぱたきながら怒ってくれたんだ。私以上に」

 

 ―――

 

『謝れ!京佳に謝れ!!』

 

『は、はぁ!?何だよいきなり!!』

 

『そうだよ!こんな気持ち悪い顔したやつが悪いんじゃん!』

 

『それ以上私の友達を悪く言うな!!』

 

 ―――

 

「本当に、嬉しかったよ。あの子のおかげで、私は学校に通う事ができた。今は別の高校に行っているが、その友達とは今でも連絡を取り合っている」

 

「…良い、友達なんだね」

 

「ああ…」

 

 自分の代わりに怒ってくれたという友達の話をしている時、京佳の顔は安らかだった。そんな京佳を見た萌葉は、その友達は本当に良い人なんだろうと確信する。

 

「まぁそんな訳で、眼帯を外すのであればどうしても聞いておきたかったんだよ。試すような真似をしてしまって、本当にすまなかった」

 

「いや大丈夫だよ!だってそんな事があったら聞きたくなるのも当然だし!というか頭上げて!!」

 

 脱衣所の時と同じように、萌葉に頭を下げる京佳。萌葉は慌てて京佳に頭を上げるように促す。そんな事があれば、誰でもそれを見せた相手の反応を知りたがるものだ。

 

「でもよかったよ。京佳先輩の噂ってやっぱりただのデタラメだったんだね」

 

「え?萌葉、中等部にも京佳さんの噂ってあるんですか?」

 

「うんあるよ。物騒な噂ばっかり。ね、圭ちゃん」

 

「うん、あるね。酷いのがいっぱい」

 

 京佳の見た目しか見た事が無い者は、一様に噂をする。京佳の人柄を知れば、それら全てがデタラメだとわかるが、そもそも中等部と高等部の生徒は接点が殆ど無い。ある意味仕方ない事である。

 

「あ、大丈夫だよ京佳先輩!私は最初からそんな噂信じていなかったし!」

 

「そうか。ありがとう、萌葉」

 

 萌葉は、元々姉である千花から京佳の話を聞いていた。その為、噂については最初から全く信じていなかった。『姉の友達がそんな人な訳がない』として。

 

「っと、少し長く入りすぎたみたいだな。のぼせてきたよ」

 

「大丈夫ですか、京佳さん?」

 

「私も少しのぼせてきたみたいですね…」

 

 いつの間にか、随分長い間話していた。このままではのぼせてしまうかもしれない。

 

「じゃあもう出よっか!汗と汚れも全部落とせたし!」

 

「そうだね。これ以上は暑いし…」

 

 萌葉の言葉に従い、全員湯船から出ていく。そして脱衣所で身体をタオルでふくのだった。

 

「「「「……」」」」

 

「いや、今度は何だ」

 

 しかし再び、皆は京佳をじっと見はじめた。

 

「いや…なんていうか…」

 

 藤原が口ごもる。何か言いたそうだが、中々言わない。そんな姉に代わって、妹の萌葉が皆の言葉を代弁した。

 

「京佳先輩のお風呂上りの姿がなんかエッチだったんだよ~」

 

「え?」

 

 今現在、タオルで髪をふいている京佳だが、その姿が非常に扇情的に見える。皆、そんな京佳に目を奪われていたのだ。同性でこれなのだ。異性がこの姿を見ればどうなるか見当もつかない。

 

(ふむ。これは何か白銀に使えるかもしれんな…)

 

 京佳はそんな事を思いながら下着を履くのだった。

 

 

 

 因みに男子2人は、女子達よりずっと早く風呂を出ていたため、2階のシアタールームを使ってレースゲームしていた。その後、風呂上がりの女子達も一緒になりゲームをして楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやーほんっとに楽しかったですね~!朝ごはんも美味しかったし!」

 

「だねー!ハワイとはまた違った楽しさだったよー!」

 

「明後日のエジプト旅行も楽しみですね~」

 

「は?エジプト?藤原先輩また旅行に行くんですか?」

 

「前から予定してたやつなんですよ~。ピラミッドとスフィンクスの写真を送りますね~」

 

(この人勉強してんのかな?いや僕も人の事言えないけど)

 

 翌日、身支度を終えた一行は玄関ホールに集まっていた。これから東京に帰る為である。たった1泊2日の旅行。文字にすれば短い。しかし、この旅行は全員が簡単には語れない程楽しめた。

 

「本当にありがとうな四宮。こんな場所をタダで使わせてもらって」

 

「構いませんよ会長。それより皆さんが楽しんでいただけたようでよかったです」

 

 白銀はかぐやにお礼を言い、かぐやは穏やかな顔で謙遜した。

 

(くっ!本来ならばこの旅行の帰りには既に会長から告白をされて晴れて恋人同士になれていたというのに…!)

 

 だが内心は穏やかではなかった。色々作戦を実行したが、結果は失敗。結局白銀から告白をしてくることは無い、こうして帰路に着こうとしている。

 

(いえ!まだです!まだ花火大会があります!そこを最後の砦として、作戦を練りましょう!まぁ、正直花火大会は普通に楽しみたいですけどね…)

 

 これで、夏休みに生徒会メンバーが集まるのは花火大会だけである。それを逃せば、この夏休みに白銀と恋人になる事は不可能だろう。

 

(って違うから!別に私は会長と恋人になりたいとは思っていないから!)

 

 自分で言って自分でツッコむかぐや。

 

「そうだ!せっかくだから集合写真を撮りましょうよ!」

 

 そんな時、藤原が写真を撮ろうと提案してきた。

 

「賛成!思い出として必要だよね!」

 

「僕も賛成です」

 

「私も」

 

「いいじゃないか。もう皆で旅行に行くことなどないだろうし、撮ろう」

 

「だな。四宮はどうだ?」

 

「勿論、賛成ですよ」

 

 全員が藤原の提案に賛成した。

 

「それでは、私がこのカメラで写真を撮りましょう。後ほどプリントして皆様にお送りします」

 

 いつの間にか執事の高橋の手にはデジカメが握られていた。流石四宮家の執事。準備が早い。

 

「それじゃあ外に行きましょう!」

 

「レッツゴー!」

 

 藤原姉妹を先頭に、外へ出ていく7人。

 

「ところでどう並びます?」

 

「まぁフィーリングでいいんじゃないか?どうだ白銀?」

 

「そうだな。偶にはそれでいいだろう」

 

 外に出て各自フィーリングで並び始める。前列左側から、萌葉、圭、かぐや、藤原。後列左側から、京佳、白銀、石上。そしてそれを見た高橋がカメラを構える。

 

「それでは撮らせていただきます。はい、チーズ」

 

 こうして旅行は終了した。そして最後に撮った写真は、その後ちゃんと高橋がプリントアウトして各家庭に郵送で送った。

 

 

 

 その写真は全員が楽しそうに写っており、7人にとって最高の思い出の品となった。

 

 

 

 

 

 尚、帰りのバスの中では、運転手の高橋以外全員が寝ていた。昨晩、少し夜更かしをした影響である。

 

 

 




 という訳で、旅行編終わりです。10話も書くとは思わなかった。もっとちゃんとプロット書かないとダメだね。

 そして京佳さんの火傷の理由ですが、石上くんの時に荻野がいたし、こういう事をする人がいてもいいかなーって思い書きました。実際に似たような事件は世の中沢山ありそうですし。あと実際に硫酸でこうなるかは知りません。創作マジックって事でお願いします。

 今後は幕間挟んで花火大会にしようかと思ってますが、花火大会が難しい。原作通りだと京佳さん(身長180cm)がタクシーに乗り込めそうにないし、かといってオリジナル書こうとすると難しい。 悩む…! それと京佳さんの友達はいずれ出します。

 時間はかかるかもですが、今後も書きます。

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