もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・   作:ゾキラファス

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 バレンタイン特別編です。時系列的に石上くん不在です。



 ところでバレンタインガチャでイベント礼装すらこないのってバグかな?


特別編 四宮かぐやとバレンタイン

 

 

 

 

 

 2月14日 聖バレンタインデー!

 世界中で恋人、または夫婦が愛を確かめ合う日である。その起源は古代ローマ帝国のキリスト教司祭のヴァレンティヌスにあると言われている。彼は結婚の仲介人だったのだが、当時のローマ帝国では『兵士は結婚してはいけない』という決まりがあった。理由は『妻や子供がいると兵士が家に帰りたくなって士気が下がるから』というもの。

 だがヴァレンティヌスはこれを無視して兵士の結婚も数多く仲介。その結果、当時のローマ皇帝クラウディウス2世が激怒。そしてヴァレンティヌスの処刑を命じた。

 その処刑が執行された日が2月14日。そんな愛の使者である彼を称えて出来たのが『ヴァレンティヌスの日』であり、後世でバレンタインデーとなったのだ。

 愛を確かめる日というのもあって、海外では愛する人に花やプレゼントを渡す習慣がある。

 

 そして日本では―――

 

「ねぇねぇ、一体誰に渡すの?」

 

「えっとね、サッカー部の…」

 

「あー!彼ね!うまくいくといいね!」

 

「私は陸上部の先輩に…」

 

「私はねー」

 

 意中の人にチョコレートを渡す習慣になっている。

 

 何故日本ではチョコレートなのかというと、お菓子会社の宣伝のせいであると言われている。戦前、海外のお菓子会社が日本に初めてバレンタインという習慣を持ち込んだとされ、その時『贈り物はチョコレート』という広告を作った。

 しかし、当時の時代背景もあり殆ど効果は無く、全くと言っていいほど馴染まなかった。バレンタインの習慣が根付いたのは戦後である。

 そして現代では、様々な独自進化を遂げた結果『女子が意中の男子にチョコレートを贈る』というものに変貌している。

 

 

 

 生徒会室

 

「全く、今日は学校全体が浮かれているな」

 

「ですね。ですが今日くらいはいいのではないでしょうか?なんたって今日はバレンタインデーですし」

 

「まぁ、確かに今日くらいはいいいか」

 

 生徒会室では仕事をしている白銀とかぐやの2人がいた。2人はここに来るまでの間、学校全体が甘い雰囲気になっているのをひしひしと感じていた。だがそれも仕方ないと割りきる事にする。何故なら今日はバレンタインデーなのだから。

 

「そういえば、会長はもう誰かからチョコを貰ったのでしょうか?」

 

「俺か?いやひとつも貰っていないぞ」

 

 嘘である。

 実は白銀、既にいくつか差出人不明のチョコを貰っている。しかし、いざ箱を開けてチョコを確認してみると、何かの毛が入ったチョコ、明らかに食べ物ではない異物の入ったチョコ、ただひたすたに愛という文字が刻まれているチョコなど、とてもではないが普通とは言えないチョコしか無かったのである。流石にこういったチョコレートを食べる自信は無く、チョコレートをくれた人に悪いとは思いつつも、白銀はこれらのチョコの廃棄を決めた。

 そしてかぐやには『ひとつも貰っていない』という嘘をつくのだった。というか、誰だって流石にあんなのを貰ったうちに入れたくない。

 

「そうですか。てっきり既に沢山貰っていると思っていました」

 

「そんな訳無いだろう。所詮生徒会長なんてただの役職だ。特別異性にモテたりしないぞ」

 

 他愛の無い会話をしながら書類を整理する2人。

 

(ふふ、良かったです。これなら私が会長の1番になれそうですね)

 

 しかし、かぐやの内心はバレンタイン一色だった。かぐやはこの日の為に、態々有名パテシエを家に呼んでバレンタインチョコを作っていた。かぐや自身は決して認めないが、それの理由は勿論白銀にチョコを渡すためである。

 

(さぁ会長。早く私のチョコレートが欲しいと言いなさい!会長がどうしてもチョコレートが欲しいというのであれば、この私が直々に作ったチョコレートを恵んでやってもいいですよ?最も、会長は未だにひとつもチョコレートを貰っていない様ですし、直ぐにチョコレートが欲しいと泣きながら私に懇願するでしょうけどね!バレンタインデー当日にチョコレートを貰っていない男性は必ずそう言うと早坂も言っていましたし!)

 

 相も変わらず上から目線でそう思うかぐや。それと世の中の全ての男性がそうでは無い。

 

「失礼しまーす!」

 

「あら、こんにちは藤原さん」

 

 そんな時、藤原が手に紙袋を下げて生徒会室に入ってきた。

 

「藤原さん、その紙袋は何ですか?」

 

「あ!これですか!」

 

 藤原は手に持った紙袋をゴソゴソと漁りだす。そして、

 

「はいかぐやさん!ハッピーバレンタインです!」

 

 かぐやにチョコレートを渡すのだった。

 

「え!?わ、私にですか!?ど、どうして!?」

 

 かぐやは困惑した。かぐやの中では、バレンタインにチョコレートを渡すのは異性という認識である。しかし藤原は同性であり、渡されたチョコレートは結構な高級品。そしてある結論に至った。

 

(ま、まさか…!藤原さんは私の事が…!?)

 

 壮大な勘違いである。かぐやの中では『チョコを渡す=限りなく告白に近い行為』という図式が出来ているため、こういった勘違いをしてしまったのだ。しかし、その勘違いは直ぐに解消される。

 

「どうしてって、かぐやさんは私にとって大事なお友達だからですよー。当然じゃないですかー」

 

「え?バレンタインというのは友達同士でもチョコレートを渡すものなんですか?」

 

「はい。所謂友チョコってやつですね」

 

「そ、そうだったんですか」

 

 友チョコというのは、その名の通り友達に送るチョコレートである。近年、学生の間で急速に広まっていったバレンタイン文化のひとつだ。異性に渡す訳では無いので誰でも気軽に渡す事が出来る。藤原もそういった事に則り、かぐやにチョコレートを渡したのだった。

 

「ふふ、ありがとうございます藤原さん。大事に食べますね」

 

「はい!美味しく食べて下さい!」

 

 にぱーという笑顔で答える藤原。そしてかぐやも嬉しそうに藤原に感謝をする。

 

「そしてこっちは会長のチョコレートです!どうぞ!」

 

(は?)

 

 しかし藤原が白銀にチョコレートを渡すのを見て笑顔が凍り付いた。

 

「え?俺にか?」

 

「はい!会長には普段からお世話になっていますし、これは日ごろの感謝の印です!」

 

「そうか、そういう事なら貰っておこう」

 

 白銀は藤原からチョコレートを受け取った。

 

(藤原さん。貴方の事は本気で友達と思っていたんですよ?もう金輪際、貴方が困っていても私は手を差し伸べませんからね)

 

 かぐやは藤原に殺意を向けた。折角白銀にチョコレートを渡すのは自分が一番になる所だったのに、それを藤原に奪われたからである。一応、藤原が『日ごろの感謝の印』と言った為、告白では無いだろうとしているが、それでも殺意を向けるには十分だった。と、そんな時、

 

「すまない。誰か扉を開けてくれないか?ちょっと両手が塞がっているんだ」

 

 生徒会室の扉の前から京佳の声がした。どうも自分で扉を開けられないようである。

 

「あ、京佳さんですね。私が開けますよ」

 

 藤原は扉を開ける為近づき、扉を開けた。

 

「はい、どうぞ京佳さん」

 

「ありがとう藤原」

 

 扉を開けると、そこにはダンボールを持った京佳がいた。

 

「京佳さん。このダンボールは何ですか?何かの資料?」

 

「ああ、これか?私宛のチョコレートだよ」

 

「「「え?」」」

 

 3人の声がハモる。そんな中、京佳は両手で持っていたダンボールを生徒会室にある長机の上に置き、ダンボールの蓋を開けた。するとそこには様々な梱包をされたチョコレートが大量に入っていた。

 

「こ、これ全部チョコレートですか!?」

 

「そうだ。朝来た時の下駄箱の中だったり、机の中だったり、ここに来るまでに渡されたりとあってな。何時の間にかこんな量になっていたよ」

 

「いやこれいくつあるんでですか!?」

 

「さぁな。30個はあると思うが…」

 

 藤原は驚愕するがそれも当然だろう。まさかダンボール一箱分もチョコレートを貰う人が現実にいるとは思わなかっただろうし、いたとしてもそれを自分の目で見る事があるとは思わなかったからだ。因みに声には出していないが、白銀とかぐやも藤原と同じくらい驚いている。

 

「しかし、まさかこの高校でもこれだけ貰うとは思わなかったよ」

 

「え?京佳さん中学の頃もこんなに貰っていたんですか?」

 

「ああ。流石にこれほど多くはなかったけどね。どういう訳か昔からよくチョコを貰うよ」

 

「因みにですけどそれって異性ですか?」

 

「いや、私と同じ同性だよ」

 

「あー、でもわかる気します。京佳さんって王子って感じしますし」

 

「何で藤原はそんな言葉知っているんだ。でもうちの中学は男女共学だったんだが」

 

(あー、確かに立花はそんな感じするなぁ)

 

(王子?何でしょうかそれ?)

 

 因みに王子とは、女子校で女子でありながら女子にモテる女子の通称である。どんな女子校にも必ず1人は存在すると言われているらしい。

 

「そうだ。皆に渡すものがあったんだ」

 

「渡すもの?」

 

 京佳は思い出した様に鞄を開ける。そして2つの箱を取り出した。そしてその箱をかぐやと藤原の2人に刺し出す。

 

「はい、藤原に四宮。チョコレートだ。受け取ってくれ」

 

「わぁ!ありがとうございます京佳さん!」

 

「あら、ありがとうございますね立花さん」

 

「どういたしまして」

 

「そうだ!これは私から京佳さんにです!どうぞ!」

 

「ああ、ありがとう藤原」

 

 どうやらバレンタインチョコだった様である。京佳からチョコレートを受け取った2人は嬉しそうにした。そして2人に渡すと同時に、京佳は藤原からチョコを受け取った。

 

「そしてこっちは」

 

 2人にチョコレートを渡した京佳は、もうひとつの箱を持って白銀に近づく。

 

「はい白銀。私からのチョコだ。どうか受け取ってくれ」

 

「おお、ありがとな立花」

 

「どうせなら勘違いしてくれてもいいぞ?」

 

「いやそんな事言われて勘違いする訳ないだろう」

 

「ふふ、そうか。残念だ」

 

 そして白銀にも、少しからかいながらチョコレートを渡した。

 

「一応全部手作りだ。皆気にいって貰えるといいが」

 

「ええ!?これ手作りなんですか!?」

 

「チョコは意外と簡単だぞ。凝ったものさえ作らなければだが」

 

 京佳のバレンタインチョコは手作りらしい。それを聞いた藤原は驚く。

 

(だからどうして立花さんも藤原さんもそんなに堂々と会長にチョコを渡せるのよ!異性にチョコを渡すのはもう告白と同じようなものなのに!!)

 

 一方でかぐやは焦っていた。

 

 かぐやの中では、バレンタインに異性にチョコレートを渡すのは告白に近い行為という事になっている。だというのに、藤原も京佳も平然と異性である白銀にチョコを渡す。しかも京佳に至っては手作りだ。それはもう、それだけ白銀に対する愛が強いと言う事に他ならない。

 そして未だに自分は白銀にチョコレートを渡せていない。このままでは今日中に白銀にチョコレートを渡すことなくバレンタインが終わってしまうかもしれない。

 

(って!どうして私が焦らないといけないのよ!別に私は会長にチョコレートを渡したいなんてこれっぽちも思っていないのに!)

 

 だがプライドの高いかぐやは素直になれない。自分で作ってきたチョコも、あくまで白銀が欲しいと言えば渡す予定だ。自分から白銀に渡すなんてマネはどうしてもできない。

 

(でも、私だけまだ会長に何にも渡してないし、このままじゃ…)

 

―――

 

『そうか、四宮は俺にはチョコをくれないのか。つまり俺は特に四宮に感謝もされていないし好かれてもいないと言う事だな』

 

『違うです会長!違うんです!』

 

『白銀。だったら私と付き合わないか?チョコも渡したし』

 

『そうだな。むしろこっちからお願いするよ立花。俺と付き合ってくれ』

 

『ああ、これから末永くお願いします』

 

『おめでとうございます2人共~』

 

『会長ーーーーー!?』

 

―――

 

(なんて事になるかもしれないじゃない!!)

 

 とんだ被害妄想である。というか過程を色々すっとばしすぎだ。

 

(どうしましょうどうしましょう!このままじゃ会長と立花さんが付き合っちゃう!でも私から会長にチョコを渡すなんてできる訳無いし!)

 

 焦るかぐや。何とか打開策を見つけたいが、どうあっても自分から白銀に渡す事が出来ない。そんな時である。

 

「こっちは市販品のやつだな。小分けされている。折角開けたし、皆で食べるとしよう」

 

「え?いいのか立花。それはお前が受け取ったものだろう?」

 

「いや白銀。ダンボール1箱分もあるんだぞ。流石に1人では全部食べ切れないよ。それぞれ一口は食べるが、それ以外はみんなで分けて食べた方がチョコも無駄にならないだろう?」

 

「ふむ、確かに。じゃあ俺も少し食べるか」

 

「あ!じゃあ私コーヒー淹れますねー」

 

 何時の間にか、京佳が受け取ったチョコレートの梱包を開けて中を確認していたのは。箱を開けたチョコレートのひとつは、一口サイズに綺麗に小分けされていた。それを見たかぐやは閃く。

 

(こ れ で す !)

 

 かぐやは直ぐに鞄に手を突っ込み、綺麗に梱包されたチョコレートの入った大きめの箱を取り出した。

 

「皆さん、これは私から皆さんへのバレンタインです。どうぞ」

 

 かぐやが閃いた事。それは『ここにいる皆に手作りチョコレートを食べて貰う』というものだった。これならば、自分から白銀に直接チョコレートを渡している訳ではないし、何より白銀に手作りのチョコレートを食べてもらう事ができる。

 

「え!?かぐやさんからのバレンタインチョコですか!?」

 

「はい藤原さん。日ごろの感謝の気持ちです」

 

「わーい!ありがとうございますー!」

 

「いいのか四宮?私達も食べて」

 

「はい。これは私が皆さんに送っているんです。遠慮しなくていいですよ」

 

「そうか。ではありがたく受け取るよ」

 

「会長も、是非どうぞ」

 

「あ、ああ。ありがとう四宮」

 

 かぐやが作ったチョコレートは所謂生チョコであり、食べやすい一口サイズに作っているのがいくつも入っている物だった。それゆえ、とっさに閃いたこの作戦も成功したのである。これが普通のチョコレートだったら成功していないだろう。

 なお、最初はかなり大きいチョコレートケーキを作る予定だったのだが、早坂に『本気でやめてください。マジで引きますから』と真顔で言われた為、一口サイズの生チョコにした。

 

(う、美味い!どんな高級品なんだこれ!?)

 

(美味しいです!どこのお店のチョコでしょう?)

 

(美味いな。どこで売っているんだこれ?)

 

 因みに手作りという事を言い忘れていた為、皆には市販品の高級チョコと思われていた。

 

 

 

 

 

 貰ったチョコレートの数

 

 白銀 2個(差出人不明のやつ除く)

 

 かぐや 2個(藤原と京佳から)

 

 藤原 10個(クラスの友達からとかも含む)

 

 京佳 32個(その内差出人不明の物は16個)

 

 

 

 

 

 

 おまけ バレンタイン前日

 

「どうかしら早坂。四宮家の伝手を辿ってようやく手に入れたキューバリファカチンモよ」

 

「…」

 

「なんでも、これを異性に送る事でその異性は金運と仕事運が上がり、体は健康を保ち続け、良縁に恵まれ、例え事故にあっても4回は無傷で過ごせ、未来はずーっと明るくなるらしいわ」

 

「…」

 

「これを明日、会長が私のチョコレートが欲しいと言った時に一緒に送るつもりよ。そうすれば会長は自分の身を案じてくれたと思い、私にぞっこんになると思うの」

 

「…」

 

「まぁ、ただ送るだけじゃ効果が無くて、相手の血をこれにしみ込ませる必要があるらしいのよね。だから明日、何とかして会長の血液を手に入れるわよ」

 

「…かぐや様」

 

「何かしら早坂」

 

「それ捨てましょう」

 

「嫌よ!これを手に入れるのに随分骨を折ったのよ!?何で使用する前に捨てなきゃいけないのよ!!」

 

「いや捨てましょう。どうみてもそれヤバイじゃないですか」

 

「絶対に嫌!兎に角明日は会長の血液を手に入れるわよ!」

 

(もうやだ…)

 

 翌日、生徒会室に持っていったところで我に返り、生徒会室の戸棚の奥に放り込んだ。でも後日、藤原にばれた。

 

 

 

 

 




 京佳さんが貰ったチョコの数の32っていうのは風水的に良い数字らしいので。それとバレンタインの起源は諸説あるうちのひとつです。


 次回は花火大会編の予定。

夏休み中にオリ主である京佳さんメインの水着回を書きたいと思っているんですが、書いてもいいですか?

  • 好きに書いていい
  • 別にいらない
  • どちらでもいい

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