もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・ 作:ゾキラファス
今回、趣味に走りました。花畑表現注意です。
「いや、何だお前?」
「でかいな」
かぐやの前に現れたのは、
「た、立花さん!?」
同じ生徒会メンバーで浴衣姿の京佳だった。
「この子は私の連れだ。それ以上乱暴するような真似はやめてもらおうか」
京佳はかぐやを自分の背中に庇うように男2人に言い放つ。
「おい待てよ。お前そいつの連れって言ったよな?だったら詫びとして俺たちと一緒に来てもらおうか」
「お前まだやんの?もうこれ無理だろ。諦めようって」
「うるせぇ!こっちは腕捻られてるんだぞ!」
「いやだからあれはお前の自業自得だって。つか落ち着けよ」
金髪の男はまだ諦めていない。むしろ、京佳が現れた事により『これなら男女2人づつで遊べる』と考えている始末だ。一方で茶髪の男は、流石に往生際が悪い自分の友達を何とか落ち着かせようとしている。
「それは無理だ。そもそも私とこの子はただの連れではない」
「「は?」」
「え?」
そんな時、京佳が再び口を開いた。しかしその発言は何か意味深である。京佳の台詞を聞いた男2人、そして京佳の背中に隠れているかぐやも頭に疑問符を浮かべる。
そして3人は直ぐに驚くべき光景を目にした。
「この子は私の恋人なんだ。今日は2人でデートの約束をしていてね。だから私たちは君たちとは行けないんだよ」
「「は!?」」
「はいぃぃぃぃ!?」
京佳は自分の後ろにいたかぐやを、右腕でゆっくりと自分の胸元に抱き寄せた後、まるでかぐやを包むように両腕で抱いてとんでもない発言をした。
「た、た、た、立花さん!?一体何を…!?」
「立花さんなんて他人行儀な呼び方はやめてくれ、かぐや。何時もみたいに京佳と呼んで欲しいな」
「かぐや!?京佳!?」
突然の京佳の行動と台詞にパニックになるかぐや。その顔は真っ赤である。
「いや…えっと…え…?」
「あー、そういう…」
金髪と茶髪の男2人も、思考を停止させている。
「そういう事だ。折角恋人同士でデートをしているんだ。その間に割り込むなんて真似はしないでくれ」
京佳はかぐやを、自分の胸に抱いたまま言う。そんな2人の後ろの空には花火が打ちあがっており、まるで1枚の美しい絵画のように見える。
「いやいや!まてまてまて!そんな事ある訳ねーだろ!?何で女同士で恋人何だよ!?見た事ないぞ!?お前口から出まかせ言ってるんじゃねーのか!?」
だが金髪の男はまだ納得がいっていないようだ。
「それは君の主観だろう?世の中には同性で結婚をする人だって大勢いるよ。それに海外だと決して珍しくないさ」
京佳は金髪の男に反論している間も、時折かぐやの頭を優しく撫でながら、かぐやを自分の胸に抱き続けている。
(いや何これ!?何でこんな事になってるの!?というか恋人!?何で!?どうして!?一体何時!?あとすっごい柔らかい!?何これ!?)
そんなかぐやはまだパニックになっていた。
突然の京佳の恋人発言。両腕で包まれるように抱かれている自分。顔をうずめそうになっている大きな胸。かぐやは並みの精神力ではない為まだ何とか意識を保っているが、並みの女子、または男子ならこれ一連の流れで陥落しているのは間違いない。
因みにもしこれらの行いを白銀がやっていたら、かぐやは既に心停止していた事は想像に難しくない。その時はAEDが必要だろう。
「いや、でも…!?」
「おいやめろ。これは俺たちが汚しちゃいけない聖域だ。今日はもう帰ろう」
「聖域!?」
茶髪の男は何かを感じたのか、金髪の男と一緒に帰ろうとする。
「あ、あの、立花さん!?そろそろ離してくれませんか!?」
いい加減恥ずかしいのか、かぐやは京佳の腕の中から出ようとする。しかし京佳は未だに離そうとはしない。
「何だかぐや。もしかして恥ずかしいのか?
昨日はベットの上であんなにこのまま離さないで欲しいって何度も何度も言ってたじゃないか」
「ぴ」
「!?」
「ほう」
京佳の核兵器級の発言により、かぐやは茹蛸のように真っ赤になり、頭から湯気を出し始めた。
「それで、まだ何か言いたい事があるのかな?」
そんな状態のかぐやを腕に抱いてまま、京佳は男2人に尋ねる。
「いえ…ないっす…」
「ごちです。それでは」
意気消沈したのか、男2人はその場からゆっくりと離れて行った。最も茶髪の男の方は何故か微笑んでいたが。
「ふう、行ったか。やはり夏祭りにもああいった輩はいるんだな。ところで四宮、大丈夫か?」
「ひゃい!?な、な、な、何がでしゅか!?」
「いや本当に大丈夫か?」
ようやく面倒な輩がいなくなったのを確認した京佳は、かぐやをゆっくりと自分の腕から開放した。しかし解放されたかぐやは色々と大丈夫に見えない。
「とりあえず落ち着け。ゆっくりと深呼吸をするんだ」
「は、はい!!」
京佳に言われ、スーハ―と何度も深呼吸をするかぐや。深呼吸をするたびに真っ赤だった顔は正常に戻っていった。
「どうだ?落ち着いたか?」
「ええ。取り乱してしまってすみません」
「いや、謝るのは私の方だ。いきなりあんな真似をしてしまったんだからな。本当にすまない」
「いえ大丈夫です。なので頭を上げて下さい。おかげで面倒だった人を追い払う事が出来ましたし」
落ち着きを取り戻したかぐやに頭を下げる京佳。しかし、かぐやは京佳の行動の意図を理解したのか京佳に頭を上げるように言う。そして同時に、別の疑問が浮かんだ。
「ところで、どうして立花さんはここに?」
「ああ、それはだな」
―――――
『なあ皆、提案があるんだが』
『提案?何ですか会長?』
『このままだと四宮が花火の時間までに間に合わないかもしれない。だから、俺たちの方から四宮に近づくってのはどうだ?』
『僕たちの方から?どういう意味ですか?』
『会場の外で花火を見るって事だ。実はな、会場の外に小さい公園があるんだ。そこはここほど花火が綺麗に見える事は無いだろうが、今四宮がいるであろう方向に近い。今から皆でそこに行って、そこで四宮と合流して花火を見ないか?』
『私は賛成ですよ!いくらここで綺麗な花火が見れてもかぐやさんがいないんじゃ意味がありませんし!』
『僕もいいですよ。やっぱ皆で見たいですし』
『反対する理由が無い。私も賛成だよ』
『そうか。すまん、皆ありがとう』
『じゃあ早速かぐやさんに連絡しますね』
『頼む藤原』
『……あれ?』
『どうしました藤原先輩?』
『なんか、電話が通じません。電源が入っていないって…』
『何だと?』
『ひょっとして、電池切れですかね?』
『わかりませんけど、その可能性はあるかも』
『……皆、今すぐ移動しよう。俺は自転車で四宮を探してみる』
『いや白銀。ここは皆で手分けして探そう。その方が効率が良い』
『京佳さんの言う通りです!私も走ってでもかぐやさんを探します!』
『僕も協力します。場所なら後でメールくれたら何とでもなりますし』
『そうか、わかった。なら皆で四宮を探して、公園に集合だ』
―――――
「と、言う事があってね。それぞれが探している途中だったんだが、私が四宮を探し当てたっていう事だ」
「そう、だったんですか…」
「さっき皆に連絡はしておいた。じゃあ、今から公園に行こう」
「そうですね。行きましょう」
説明を終えた京佳は、かぐやと一緒に公園を目指して歩き出した。
「あの、立花さん。ひとついいですか?」
「ん?何だ?」
「どうして、私を助けたのですか?」
公園へ移動中、かぐやは京佳にそんな質問をした。
かぐやは口にこそ出したりしないが、京佳の事を白銀とはまた別の意味合いのライバルと認めている。もっと言えば、恋敵であると。
そして先ほどの出来事。普通はあのような面倒な場面に出くわしても中々助けに入る事など簡単には出来ない。それがライバルであれば蹴落とすチャンスですらある。
しかし京佳はかぐやを助けた。かぐやはその理由が聞きたかった。
「友達を助けるのに理由が必要なのか?」
かぐやの質問に、京佳は素直にそう答える。
かぐやは色々と複雑な家庭で育っている。おかげで、無償で人を助けるというのが理解しがたい性格をしていた。その性格が災いし、少し前までは『氷のかぐや姫』なんて呼ばれてもいた。
だが、かぐやは出会ったのだ。利権に群がるような上っ面だけの人では無く、理由も無く人を助けてくれる友達に。勿論、京佳だってその1人だ。色々と自分にとっての最大の障害になる彼女だが、かぐやは京佳を友達と認めている。
そして京佳自身も、かぐやを友達と思っている。故に助けた。それ以外に理由など微塵もない。
「ふふ、そうですか。すみません。変な質問をしてしまって」
「?そうか。納得したのならいいが」
京佳の答えを聞いたかぐやは、再び歩き出した。
(あぁ、本当に、皆に出会えてよかった…)
胸にそんな暖かい思いを抱いて。
「かぐやさーーん!京佳さーーん!こっちですよーー!」
「いや藤原先輩、声大きいですって」
「まぁいいじゃないか。この方がよく聞こえるだろうし」
会場の外にある小さな公園には既に、白銀、藤原、石上の3人がいた。それ以外には人はいないようだ。
「皆さん、遅れてしまって、本当にごめんなさい」
かぐやは直ぐに頭を下げ謝罪する。
「大丈夫ですよかぐやさん!まだ花火大会は途中ですし!」
「そうですよ。だから頭を下げないでください四宮先輩」
「2人の言う通りだ。今は頭を上げて、皆で花火を見ようじゃないか四宮」
「っ…はい!」
思わず目から涙が流れそうになる。遅刻をしたのは自分なのに、態々会場の外で見る事になったのは自分のせいなのに、ここにいる皆はそんな事を何一つ気にせずそう言ってくれる。かぐやはそれが嬉しくて仕方が無い。
「あ!また大きい花火が上がりましたよ!」
藤原が夜空に指を指しながら言う。すると言った通りに、夜空には大きな花火がいくつも上がっていた。
「おおー。やっぱ夏といえば花火っすね」
「そうだな。夏の風物詩といえばこれだな」
「しかし本当に、綺麗だな」
「ええ。そうですね…」
生徒会メンバー5人全員が花火を見上げる。ビルに隠れていたりして全ての花火が綺麗に見える訳ではないが、それでもこの場にいる5人には満足だった。
なんせ生徒会メンバー5人全員で花火が見れているから。
(神様…本当にありがとうございます…私に花火を見せてくれて)
無神論者のかぐやだが、今日この瞬間だけは神を信じ、感謝をした。
その後およそ10分間、花火は夜空に上がり続け、かぐやはそれらの花火を、瞬きを忘れる程見ていた。
こうしてかぐやの『皆で花火を見る』という夢は叶い、かぐやはこの日の出来事を、生涯忘れる事の出来ない大切で暖かい思い出にすると決めた。そして花火が打ちあがった後、皆で屋台を少しだけ見て回り、帰路に着いたのだった。
余談だが、かぐやにナンパをした男2人は、京佳とかぐやの絡みを見て何かに目覚めたのか、その後突然2人で漫画の執筆を開始。数年後『天照様がみている』という漫画を連載。
アニメ化もする大人気作品となった。
これで花火大会は終わり。どうあっても原作のようには出来なかった。その一番の理由が『京佳さんでかくてタクシー後ろに4人乗りできねーなこれ』です。だからもう趣味に走ることにしました。
そしてかぐやも京佳さんも、お互いをライバルと思っていると同時に、大切な友人とも思っています。なので助けが必要な時は助けます。
次回も投稿できるように頑張ります。
夏休み中にオリ主である京佳さんメインの水着回を書きたいと思っているんですが、書いてもいいですか?
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好きに書いていい
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別にいらない
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どちらでもいい