もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・ 作:ゾキラファス
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白銀御行と羞恥心
新学期初日。
大勢の生徒が、憂鬱と期待を胸に日常へと舞い戻っていた。しかし夏休み明けというのは、兎に角気だるいもの。実際、殆どの者が夏休みに戻りたいという顔をしている。
それは生徒会長である白銀も例外では無い。
彼にとって、今年の夏休みは非常に充実しているものだった。遊園地、旅行、そして花火大会にプール。去年とは全く違う夏休み。妹である圭も楽しめた夏休み。出来る事なら、またあの楽しい日々に戻りたい。
だが、生徒会長がそのような考えをしてはいけない。白銀は気持ちを切り替える為にも、生徒会室の掃除を始めた。ふと白銀は、生徒会室の掃除をしながら夏休みの出来事を思い返す。
生徒会の皆で遊んだ遊園地では、最後の観覧車でかぐやと京佳に抱き着かれて疑似ハーレムみたいな展開を味わった。かぐやが所有していた別荘に旅行へ行ったときは、京佳とキスしそうになったり、恐怖で泣き出した京佳を背中におぶって、その豊満な胸の感触を感じた。花火大会では、ちょっとしたアクシデントがあったが皆で綺麗な花火を見ることも出来た。
更に、
『凄く、似合っているとは、思ったぞ』
『このままだと四宮が花火の時間までに間に合わないかもしれない。だから、俺たちの方から四宮に近づくってのはどうだ?』
という台詞も口にした。
そしてこれらの出来事を思い出した白銀は、
(あれ?俺かなり恥ずかしい事言ってない?)
急に羞恥心が芽生えたのだった。
京佳に『似合っているぞ』と皆の前で言った事、その後生徒会の皆に『四宮を迎えに行こう」(キリッ!)みたいな事を言った事。今思い返してみると、かなり恥ずかしい事を言っている様に思える。あの時はテンションのせいで特に気に留めなかったが、今になって恥ずかしいと思いが沸き上がる。
黒歴史。
去年とは何もかもが違う夏休みを謳歌した白銀は、テンションが上がりっぱなしだった。そのテンションの中、途中途中で口にした台詞。それらは今後数十年に渡って、時折思い出しては激しく悶える事になる事は必須な出来事、『言ってしまったエピソード』として今後の白銀の人生に刻まれてしまった。
因みに黒歴史の語源は、口元に髭を生やした白いロボットが主役のロボアニメだと言われている。
(それだけじゃない…!立花に関しては、あんな昔のラブコメ漫画みたいな事をぉぉ!?)
だが、それらの出来事だけならまだ大丈夫だった。京佳に関しては更に上乗せされる話がある。それが夏休み最後の週に2人だけで行ったプールでの出来事。もっと言えばポロリである。
(あの時は1周回って冷静だったが、今になって思うと本当に何してんの俺!?一応立花は許してくれたけど、だからといってあれはやっぱダメだろう!?)
なんせあの時の京佳は上半身裸である。いくら事故でやった事で、周りの人達が気づいていなかったとは言え、白銀は公共の場で京佳を裸にひん剥いたのだ。時代が時代ならその場で打ち首である。
(やばい…なんか今になって立花と顔を合わせ辛くなってきた…)
2人だけで行ったクイズ大会。そこでのラッキースケベ的なハプニング。その事を思い出した白銀は、京佳と顔を合わせ辛くなっていた。
「遅れてすみません会長!今学期もよろしくです!」
「よろしくお願いします。会長」
「……」
白銀が羞恥心と生徒会室の汚れを消し去っている時、かぐやと藤原と京佳が現れる。
「お、おう3人共。今学期もよろしくな」
「はい!」
当たり障りのない会話をする白銀。今の彼は、夏休みの事を話題にされたくない。下手に話題にしてしまって、京佳からあのプールでの出来事を話題にされたらと思うと気が気がじゃない。
(兎に角ここは穏便にいこう。夏休みの事など喋らない様にしよう)
白銀は兎に角夏休みの事を言われたくない。よって行動を起こす。
「よし3人共、さっそく掃除をしてくれ。夏休み中はここに来なかったから結構埃が溜まってるんだ」
「了解です!」
「はい、わかりました」
白銀に言われて掃除を始める藤原とかぐや。
「じゃあ立花も…」
箒を持って京佳に近づく白銀。しかし、京佳の顔を見た瞬間、白銀はあのプールでの出来事を思い出してしまった。そして、全く見えていなかった筈なのに、水面下に確かに存在した京佳の上半身裸の姿を妄想してしまう。
プイッ
白銀は直ぐに京佳を自分の視界から外した。そして京佳も、
プイッ
白銀から顔を反らす。その理由は、概ね白銀と一緒である。
(どうしよう…白銀の顔を見たら、あの時の出来事をどうしても思いだしちゃう…)
京佳にしてみれば下着が見えたどころの話では無い。なんせ裸、それも胸である。あの時はお互い慌てていた為、見ているかどうかという確認をしていなかった。それ結果京佳は、『ひょっとして自分は白銀に裸を見られたのでは?』という不安が時間差でやってきたのである。
(後でいいから白銀に聞こう。何も見えていなかったかどうか…)
そんな事を思いながら、京佳は雑巾を手にして掃除を始めた。
(なんでしょう、今のは?)
白銀と京佳の2人の反応をみたかぐやは、頭に疑問符を浮かべる。
(まぁどうでもいいですね。そんな事より、今年の夏休みは本当に楽しかったですね)
しかし直ぐにそんな事を頭から切り離し、夏休みの思い出を思い返す。
(やはり1番楽しかったのは花火大会ですね。初めて皆と一緒に花火を見れましたし、しかも会長ったら態々私の為に花火を見れる場所を変更してくれましたし…!)
思い返すのは花火大会。自分のせいで本来の会場では無く、少し離れた場所で見る事になってしまったが、それでもかぐやは嬉しかった。初めて友達と、そして好きな人と見れた花火だったのだから。
(って違いますから!私は別に会長の事なんて好きじゃありませんから!)
自分で思い返しておいて、直ぐに否定をするかぐや。
(でも、あの時会長は、態々私の為に皆さんを説得してくれたって聞きましたし…)
そう思いながら掃除をするかぐや。すると、いつの間にか白銀に近づいることに気づく。
(そうですね、やはりもう1度、会長にはきちんとお礼を言うべきですね)
かぐやはそのまま白銀に近づき、お礼を言おうとした。しかし、
スッ
そのまま、白銀と話すことなくお互い交差しながらすれ違う。
(いや何よ今のは!?)
かぐやは自分と白銀の行動に驚く。別にぶつかりそうになった訳ではない。にも拘わらず、寸前の所で避けてしまっている。かぐやの場合これは、照れや緊張によって引き起こされるアクション、俗にいう『好き避け』である。
花火大会の時、自分に花火を見せようとし、皆を説得してくれた白銀。その結果かぐやは花火が見れた。かぐやはそれが嬉しかった。何より、白銀が自分の為に動いてくれた事が。
しかしそのせいで、こうして無意識に『好き避け』を発動してしまっている。
(こ、これじゃまるで私が会長を意識しているみたいじゃない!?)
かぐやもそのことを理解したのか、必死でそれを否定する。
一方、白銀がかぐやを避けた理由は違った。丁度かぐやが近づいた時、たまたま掃除をしている京佳が視界に入ってしまったのだ。それ故、京佳が視界に入らない様に体を方向転換させたのである。また、邪な妄想をしない為に。
(くそ!いっそ目隠しでもするか!?)
白銀は本気でそんな事を考え始める。
(こ、今度こそちゃんと会長にお礼を…!)
(やはりもう1度謝ろう…あれはどう考えてもダメだ…)
(ちゃんと聞こう…本当に白銀は見ていないのかを…)
それぞれ思っている事は違うが、今度は、かぐや、白銀、京佳の3人が近づく。しかし、
スッ
誰も話しかけることなく、再び交差する。
(だ、だめ!近づけば近づく程会長の顔を直視できない!!)
(ダメだ!立花を視界に入れるとどうしてもあの出来事を思い出して、変な妄想をしてしまう!!)
(ダメだ!何でだ!?ただ聞くだけなのに!どうしてこんなに恥ずかしいんだ!?)
3人共思う事は大体一緒だ。ようは恥ずかしいのである。
(新しい遊び?)
そんな3人を見ていた藤原だけはそんな能天気な事を思っていた。
(そうよ、いつも通りにすればいいのよ。それこそ夏休み前みたいに)
(平常心だ俺。煩悩を捨てろ。そしてちゃんと謝るんだ)
(いつもの様にすればいいんだ。そしてただ質問をすればいい)
再びかぐやと白銀と京佳の3人が近づく。そして、
スッ
ダイヤモンド・テイクオフ!
何故か3人と同じような動きをした藤原も参加して、またそのまますれ違った。
「藤原さん、もしかして私たちをバカにしてます?」
「真面目に掃除しろ」
「そうだ藤原、遊ぶな」
「えええ!?これ遊びじゃないんですか!?」
3人にいきなり怒られた藤原は困惑する。
(((今度こそ!)))
(あ!そうか!つまり…!)
「こんちわー」
スッ
スタークロス!
(こっちだったんですね!)
石上が巻き込まれる形になって、5人が交差した。上から見たら星のような形に見える。
「何なんですか!!石上くんも私をバカにしてるんですか!?」
「え!?いきなり何すか!?」
かぐやにいきなり怒られた石上は困惑する。
「石上、お前まで藤原と同じようなマネを…」
「ぷぷ。石上くんダメですよーそんなんじゃー」
「会長まで!?」
敬愛する白銀にもいきなりダメだしされた。
「なんかよくわかりませんが、今日はもう帰ります…」
石上撃墜。
「あーあ。石上くん邪魔なんてしちゃうから」
「藤原さんも邪魔です」
「…え?」
藤原を見ているかぐやの目はひどく冷たかった。
「うわぁぁぁん!どぼじでーー!」
藤原撃墜。
(あーもう!ただお礼を言うだけなのに!どうして私がこんなにドキドキしないといけないのよ!!)
かぐやは今度こそちゃんと白銀にお礼を言おうとする。しかしその時だった。
「白銀、ひょっといいだろうか?」
「あー、いいけど、どうしたんだ立花?」
「にゃにがだ?」
「いや、何んでほっぺをねってるんだ?」
「気にしゅるな」
何故か京佳が、頬をつねながら白銀に話かけていたのは。
(いや何あれ!?どうしちゃったの立花さん!?)
京佳の突然に奇行に驚くかぐや。勿論これは趣味なのではない。これはほっぺをつねって痛みを伴う事により、恥ずかしがらずに白銀の方を向けるという京佳苦肉の策である。絵面はひどいが、効果はある。
「ひょっと聞きたい事があるんだ」
「お、おう。何だ」
ほほを思いっきりつねながら質問をしてくる京佳にたじろぐ白銀。
「ひつはな、その、あれだ」
「ん?」
「あのひょき、本当に何も見ていないのかと思っへな」
「あ…」
京佳の質問を瞬時に理解する白銀。
「それは断言しよう。俺はあの時何も見ていない。本当だ」
「……ひょうか」
白銀が一切嘘を言っていない事がわかった京佳は安心し、頬から手を離す。
「すまなかった。疑うような質問をしてしまって」
「いやいいさ。仕方ないことだ。というか、俺こそ悪かった。あんな事をしてしまって」
「大丈夫、気にしていないよ」
「そうか。そう言って貰えるとこっちも助かる」
京佳は質問の答えを聞けて、白銀は再び謝罪することが出来て満足だった。
(やっぱり見えてはいなかったか…でも、ちょっとだけ残念かもしれないな…)
少しだけ残念そうにする京佳。もし白銀が色々と見てしまっていたら、それを理由にして『責任』を取らせる事が可能かもしれないと思ったからだ。
(いや、そんなのはダメだな。そんなのはあまりにも卑怯じゃないか)
だが、そんなやり方で白銀と一緒になれても嬉しくない。京佳は直ぐにその考えを消した。
(この2学期のうちに、何としてでも白銀を振り向かせよう)
そう思いながら、京佳は再び生徒会室の掃除をするのだった。
(いや待って!?何の話!?何を見たの!?そして会長は立花さんに何をしたっていうの!?)
1人だけ蚊帳の外だったかぐやはもう掃除どころでは無かった。
本編に一切関係ない超勝手なイメージ。
白銀=Fー15C または零式艦上戦闘機
かぐや=F-35 またはスピットファイア
藤原=タイフーン または雷電
石上=F-16C またはBf109
京佳=F-22A またはP-51
早坂=ラファール またはMC.205
伊井野はグリペンと3式戦闘機かな?
次回も頑張ります。