もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・ 作:ゾキラファス
でもそれだと酒癖ヒドそう。
追記・少しだけ編集
「オオ、丁度よかったデス。立花さん」
「学園長?何でしょうか?」
生徒会室に向かっていた京佳に、学園長が話しかける。
「実ハお願いがありまシテ、この雑誌を処分シテおいてくれまセンカ?」
学園長は、手にしていた雑誌を京佳に手渡す。その雑誌の表紙には『バイクカタログ』と書かれていた。
「わかりました。ところでこれはどこで?また生徒からの没収したものですか?」
「イエ、これは私が昔持ってきたやつデス。タダずーっと読まずに引き出しに入れっぱなしにしてたノデ、もう処分しようと思っていたんデスヨ」
「えぇ…」
呆れる京佳。秀知院学園の学園長ともあろう人が、普通に私物を持ってきて、しかもその処分を頼んできたのだ。呆れない方が無理である。
「デハ、頼みましたヨ。私は今から愛馬のレースのため育成をしないといけないのノデ」
そして学園長は、一方的に京佳に雑誌を渡して、スマホ片手に立ち去って行った。
(あの人ちゃんと仕事してるのか?)
内心そんな事を思いながら、京佳は雑誌を手にして生徒会室に向かった。
生徒会室
「失礼する」
「あ!こんにちはです京佳さん」
「こんにちは、立花さん」
生徒会室には珍しく、藤原とかぐやの女子2人だけだった。そしてそんな2人は現在、長椅子に座って紅茶を飲んでいる。
「こんにちは。ところで2人だけなのか?」
「はい、会長は日直なんで遅れるって言ってましたよ~」
「石上くんは今日用事があるらしいので、先ほど資料だけ取って帰りました」
「そうか」
因みに石上がいう用事とはゲームを買いに行く事である。
「立花さんも、紅茶を飲みますか?」
「そうだな、頂こうか」
かぐやに言われ、京佳も紅茶を頂く事にする。
(そういえば、さっき渡された雑誌はバイクカタログだったな。少し読んでみるか)
そしてかぐやが紅茶を入れている間、京佳は学園長から無理やり押し付けられた雑誌を開き、読み始めた。
「へー。やっぱり色々あるんだな」
「京佳さん、何を読んでいるんですかー?」
「ああ、これだよ」
藤原に尋ねられた京佳は、手にしていた雑誌手渡す。
「バイク雑誌?もしかして京佳さんバイクを買うんですか?」
「別にそういう訳じゃないが、あったら便利だなとは思うな」
藤原が中身を見て見ると大型のバイクから3輪の変わった形のバイク、誰でも簡単に乗れそうなバイクまで様々なバイクが掲載されていた。
「今はバス通学なんだが、バイクだとその分の運賃も浮くし、荷物がある時も自転車よりは楽に運べるんじゃないかなと思ってね。バイクの値段も決して手が届かない金額じゃないし」
「成程。確かにここに載っている原付とかだったら10万円くらいで買えちゃいますね」
「ああ。それくらいなら私の貯金でも買える」
藤原が目にしている雑誌には原付バイクのページもあり、そこには10万円以下のバイクもあった。
「でもバイクって危なくないですか?車と違って身体が外に出ている状態ですよ?」
「そこは安全運転を心がけるしかないだろうな」
バイクは人間の身体をむき出しの状態で走る。その為、バイク事故はかなり悲惨になりやすい。しかし、それらはもう安全運転を心がけるしかない。
一応体に身に着けるエアバックの様なものも存在するが、それだけで原付が買えるくらいの値段がし、中々購入する人が居ない。
「まぁ、あくまでもあったらいいなーって話だよ。今の所、買う予定はないさ」
「そうですか。でも京佳さんってバイクとか似合いそうですね」
「ふふ。ありがとう、藤原」
「ところで京佳さん、この雑誌はどうしたんですか?」
「ここに来るときに学園長から貰ったんだ。何でも昔持ってきて、そのまま机に入れっぱなしだったらしくてね。もう読むことが無いから処分しておいてほしいと頼まれたんだ」
「いや何で学園長普通に学校に私物持ってきてるんですか。何してんですかあの人」
学園長の行動に藤原からツッコミが入った。
因みに、その学園長はというと、
「イヤッタァァァ!!遂にこのレースに勝ちまシターー!!」
学園長室でスマホゲーを大いに楽しんでいた。仕事しろ。
(バイクですか。乗った事はありませんね。まぁ、今後も自分で乗るつもりもありませんけど)
2人の会話を聞いていたかぐやは、京佳の前の長机に紅茶を置きながらそんな風に思う。かぐやは幼い頃より、専属の運転手が運転する車に乗って様々な場所に移動をしてきた。バイクなどは目にすることはあっても自分で運転する事など無い。
それにもし今後、かぐやがバイクに乗ってみたいと言っても、屋敷の者が賛同するとは思えない。理由は先ほど藤原が言った通り、危ないから。
(そういえば、会長は確かバイクの免許を持っていた筈…)
ふと、白銀が原付の免許を持っている事を思いだすかぐや。
(それに、確かあの雑誌の特集にはバイクの事が書かれていましたね)
かぐやは少し前に、早坂と一緒にたまたま読んだ雑誌の記事を思い出す。その雑誌には『女性の為のバイクデート特集』というのが書かれていた。
男というものは、1度は好きな女性を自分の愛車のバイクに乗せてみたいと思うもの。そして特性上、体を必ず密着させるので、男は後ろに乗せた女性をより意識する。それはつまり、常に男の温もりを感じる事が出来るという事だ。もしそうなったら、女性は必ず誰でも幸せになれる。
そのような事が書かれている特集だった。いささか信頼に欠ける内容である。普段なら、かぐやはこのような特集は無視するのだが、白銀から告白させるために何か使えるかもしれないと思い、特集の内容をしっかりと読み込んでいたのだ。
そして、その雑誌の事を思い出したかぐやはある事を閃く。
それは白銀にバイクを買わせ、その後ろに乗ってバイクデートをしようというものである。
更にかぐやは妄想する。
白銀が運転するバイクの後ろに乗り、白銀に背中から抱き着き、夕焼けの下の海沿いをバイクを走らせながらバイクデートをしている自分の姿を。
(何これ!?すっごい素敵!すっごい素敵じゃないですか!!まるで映画のワンシーンです!!)
妄想を終えたかぐやはテンションを上げた。
(その為には先ず、会長に2人乗りできるバイクの免許を取ってもらわないといけませんね。その後に前にスマホを買わせた時と同じように会長にバイクを買わせるようにしましょう。最悪、四宮家の伝手で十分に使えるけど使われていないバイクを懸賞が当たったとして、会長の家に送り付ければ問題ありません)
そして何としてでも、白銀に免許を取らせ、バイクを購入させようと画策する。全ては、自分が今思いついた妄想の光景の為に。
(では先ず、このバイクの話題を会長が来るまで持たせないといけませんね)
そしてかぐやは行動を開始した。
「お2人とも、私にもその雑誌を読ませて貰っていいですか?」
「ああ、いいよ」
「はい、どうぞかぐやさん」
かぐやは藤原から雑誌を受け取り、ページをめくる。
「へぇ。本当に今は色んなバイクがあるんですね」
「かぐやさんはこの中ならどんなのが好きですかー?」
「そうですね…」
藤原から質問をされ、考えるかぐや。
「この赤いバイクは素敵だなって思いますよ?」
「おお、確かにこれはちっちゃくて可愛いですね~」
かぐやが選んだバイクは、赤い色をした丸みを帯びたデザインの50CCの原付バイクだった。50CCの為その大きさは小さい。しかし、そこがなんか可愛いと思える。
「藤原さんは、どれか気になるものはありましたか?」
「私ですか?そうですね…」
今度はかぐやが藤原に逆に質問をして、藤原が考える。
「あ!これいいですね!バイクなのになぜか3輪で面白いですし!」
藤原が選んだのは、車体が黄色い色をしており、前輪が左右に2つ付いている3輪の125CCのバイクだった。かぐやが選んだバイクよりも大きく、値段も結構する。
「これは、変わった形をしていますね」
「面白いですよね~これ。もしバイクに乗る機会があったら是非これに乗ってみたいですよ~」
「確かに。これは面白い形をしているな」
「京佳さんはどれがいいなーって思ったんですか?」
「私か?そうだな…」
最後に、藤原から質問をされた京佳が雑誌を手にしながら考える。
「私はこれがいいなーって思ったな」
「どれどれ~?」
京佳が選んだのは、如何にもなスポーツバイクだった。青色の車体は細く、曲線的な形をしており、誰が見ても『スピードが出そう』と思えるデザインをしている。
「これ、ですか?」
「ああ、かっこよくないか?」
「か、かっこいいですか?」
藤原が言葉を詰まらせる。
「えっと、可笑しいかな?」
「ああ!ごめんなさい!別におかしいとかじゃありません!ちょっとだけ驚いただけですから!」
「そ、そうか…」
藤原が驚くのも仕方ない。まさか同年代の女子から、いかにもなスポーツバイクをかっこいいと言われるとは思わなかったからだ。そもそも藤原はバイクに疎かったし、何よりこういった話をしたことが今まで1度も無い。故に驚いたのだ。
「で、でも!もし京佳さんがこういうバイクに乗っていたら、すっごいかっこいいって思いますよ!」
「そうなのか?」
「はい!絶対に似合いますって!」
藤原、必死のフォローである。しかしそれは本心からの言葉だ。京佳は所謂かっこいい系の女子である。そんな京佳がもし、このようなスプーツバイクに乗っていたら、多くの女子が目を奪われる事だろう。
「ふむ。そう言われたら、今は無理だが、いつかは免許を取ってこういったバイクに乗ってみたいな」
藤原のフォローが効いたのか、京佳はバイクに興味を示した。
(でもどうせなら、白銀が運転するバイクの後ろに乗ってみたいがな…)
そして京佳もかぐやと同じ事を考える。
(もし白銀が運転するバイクの後ろに乗れたら、白銀に思いっきり抱きつけるな。ふふ…もし本当にそうなったら、どれだけ嬉しいのかな…)
少しだけそんな妄想をする京佳。恋する乙女にとって、これくらいの妄想など容易い。
「すまん皆。遅れた」
「あ!会長日直お疲れ様です~」
京佳が誰にも気づかれない様に妄想に耽っている時、ようやく白銀が生徒会室にやってきた。
(よし!この流れならいけますね!)
かぐやは今の生徒会室の空気なら、バイクの話を白銀に振るのは何ら不自然ではないと確信する。そして、どうにかして白銀にバイクの話を持っていこうと考え始めた。
「そうだ!会長、ちょっといいですか?」
「何だ藤原?」
「会長は、この中のバイクだったらどんなのが好きですかー?」
(ありがとう藤原さん!)
かぐやが考えていたそんな時、藤原が白銀にかぐやが聞きたい事を直接聞いたのだ。かぐやにとっては棚から牡丹餅である。そして白銀は、藤原から雑誌を手にし、読み始める。
「ほー、バイクか。バイトで乗った事はあるな」
「そうなんですか?」
「ああ、ピザ配達のバイトの時にな」
どうやら白銀は、実際にバイクを運転したことがあるようだ。
「白銀は、バイクに興味があったりするのか?」
「特別興味がある訳じゃないぞ。だけど、男だったらやっぱりバイクや車には憧れたりするもんだ」
「それで会長。どういうのが好きですか?」
「そうだなぁ…」
雑誌を手にした白銀が考える。
「お、これがいいな」
そして、とあるバイクのページを指さす。
「…え?これですか?」
「ああ。これなら運転も難しく無いし、雨の日や風が強い日も安心だろうしな。何より、俺はこれを運転した事がある」
((ん?))
白銀のすぐ隣にいた藤原が、何やら妙な反応をする。それを見ていたかぐやと京佳は首を傾げた。
((まさか))
かぐやと京佳は白銀の方に近づく。そして白銀が開いているぺージを見る。
そこには『デリバリーバイク』というのが載っていた。
所謂、宅配ピザの人が乗っている、屋根が付いているあのバイクである。
((えぇ…))
かぐやと京佳の2人も絶句する。まさか白銀が、こんなバイクを選ぶとは思っていなかった。2人共、バイクに詳しい訳ではないが、これはカッコ悪いとわかる。流石に、これには乗りたくない。そもそも原付なので2人乗りは出来ないのだが。
「皆さん、そろそろ仕事をしましょうか」
「そうだな。やるとしよう」
「あ、はい、そうですね」
3人は早々にこの話を終わらせる事にした。もしここで、白銀がもっと別のバイクを選んでいれば、かぐやも色々と言葉巧みに策を巡らせたことであろうが、このようなバイクを選ばれては仕方が無い。
そしてかぐやは、これ以上このバイクの話題がバイクデート等に広がる事は無いと思い、早々に話題を切り上げたのだった。京佳と藤原もかぐやと同じ様な気持ちになったのか、かぐやの言葉に従い仕事を始める。
「?」
そしてそんな3人の様子に、白銀はただ1人頭に疑問符を浮かべるのであった。
因みに後日、藤原が雑誌を持って石上に全く同じ質問をしたところ「興味が無いので選べない」といい、藤原はイジリがいが無く面白くないと思い、その後雑誌を処分した。
かぐやが選んだバイク=イタリア語でワイン
藤原が選んだバイク=鳥街
京佳が選んだバイク=赤いヨーグルト
解った人いるかな?
それと、あくまでも実在するやつじゃなくて、それらをモチーフにしたそれっぽいバイクってことでお願いします。
次回も頑張って書きます。