もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・ 作:ゾキラファス
白銀の方じゃなくて皇帝の方です。
それと沢山の誤字報告本当にありがとうございます。っていうかあんなに誤字していたのか… 恥ずかし
約1年前
『あら、白銀さんってこの前誕生日だったんですね?』
『ああ、そういえばそうだったな』
『もしかして忘れていたんですか?』
『誕生日なんてここ数年祝った事なんて無いからな。平日と全く変わらん。いや、まぁ今年は少しだけ祝ってもらったが』
『そういうものですか』
『何だったら、来年は四宮が祝ってくれてもいいぞ?』
『はぁ?何を言っているんですか?天地がひっくり返ってもそんな事しませんよ』
(本当にどうしましょう…)
現在、かぐやは焦っていた。
その原因は、数日後に迫っている白銀の誕生日に関係する。白銀の誕生日は9月9日。あと4日しかない。日数は少ないが、まだプレゼントを用意して白銀の誕生日を祝う事は十分に可能だ。
だが、かぐやにはそれが出来ない理由がある。それが、約1年前に白銀と生徒会室で話した出来事だ。あの時かぐやは、『天地がひっくり返ってもそんな事しませんよ』と白銀に口にした。そう言った手前、自分の口から白銀を祝うとは言いづらい。
(ってこれじゃ私が会長の誕生日を祝いたくて仕方ないみたいじゃない!!)
相変わらず素直にならないかぐや。正直これでは、例え1年前にあのような事を言っていなくても同じだっただろう。
(別に私は祝わなくてもいいんですよ?会長だって祝い事を重視する人ではないし。気づかないふりさえしておけば何も問題は…)
『誕生日なんてここ数年祝った事なんて無いからな』
(んん~~っ)
誕生日
それは生きてさえいれば年に1度必ず訪れる特別な日。海外では日本以上に誕生日を大事にする国もあり、祝う方も祝われた方も幸せになれる日だ。
しかし、白銀は経済的事情から誕生日に特別感は無く自分からアピールする事も無い。つまり、誰かが言い出さなければ、白銀の誕生日が過ぎ去っていくのは明白。
「かぐやさん、どうかしましたか?何か悩み事ですか?」
「いえ、まぁ、悩みと言えば悩みと言えますが…」
かぐやが1人で悩んでいると、藤原が声をかけてきた。
「ふふふ!ならば!この占い師千花がかぐやさんを占って差し上げましょう!」
「占い?」
「はい!このサイトに性別と誕生日を入力するだけでかぐやさんのお悩みをあっという間に解決しちゃいますよ!」
「いや機械だよりじゃないですか」
どこからともなく出した三角帽子を頭に被った藤原が、スマホ片手にかぐやにそう言う。藤原が持っているスマホには『誕生日占い』と書かれたサイトが移す出されていた。
「占いなんてばかばかしい…そもそも性別と誕生日だけで何がわかると…いえ、誕生日?」
藤原のスマホを手に取り、サイトを見ていたかぐやにある考えが浮かぶ。
「いいですね。面白そうですし、ぜひ皆でやりましょうか」
「わーい!」
「え?僕たちもですか?」
「ええ、勿論。立花さんもどうですか?」
「ふむ。あまりそういうのはやった事がないが、面白そうだし私はいいぞ」
「よし!じゃあ早速やりましょう!」
白銀以外の生徒会メンバーは、誕生日占いをする事に賛成した。
「私の誕生日は1月1日の元旦ですよ。藤原さんは確か…」
「3月3日!ひな祭りの生まれです!」
まずはかぐやが自分の誕生日を口にし、次いで藤原が誕生日を口にする。こうすることで、全員の誕生日を聞いていけば、いずれ白銀の誕生日を白銀の口から聞く事が出来るだろう。
そうなればあとは簡単。白銀の誕生日を聞いた生徒会メンバーはまず間違いなく白銀を祝おうとする。これなら、かぐやは自分の手を一切汚す事無く、白銀の誕生日を祝う事が出来るという算段だ。
しかし、直接聞けば楽なのに、どうして毎回こうも面倒なやり方をするのだろうか?
「えーっとですね、『1月1日生まれのあなたはアレキサンドライトのような人です。王の名を冠するこの宝石のように高貴でプライドが高い人のようです。またアレキサンドリアは環境に応じて赤くなったり青くなったりする珍しい特性を持ちます。あなたは周囲の環境によって天使にも悪魔にもなりえます。プライドを捨てて素直になれば必ず幸せは訪れます』ですって!」
占いの結果、かぐやは宝石のアレキサンドライトのような人物らしい。因みにこの宝石の名前の由来は、発見されたばかりのまだ名前が無かった頃、当時のロシア皇帝に献上されたのが皇太子の誕生日だった為、その皇太子からとっていると言われている。
「プライドが高い…天使にも悪魔にもなる…?」
「何 で す か ?」
「い、いえ…」
石上は恐怖した。
(はぁ。全然当たっていませんね。私の人物象とはまるで違うじゃないですか)
かぐやは占いの結果を全否定したが、客観的に見れば概ね当たっている。この場に早坂がいれば、間違いなく占いの結果を全肯定していただろう。
(所詮、占いなんて思わせぶりな事を言って受け取り手が都合よく解釈するバーナム効果でしかありません。こんなのちっとも意味なんてありませんね)
かぐやが占いを全否定している時、藤原が自分を占った結果を読み上げる。
「えーっと私は『あなたは蠟燭のような人です。周囲を照らしているささやかな熱は少しづつ氷を溶かします。蝋燭は光を与えると同時に自分を燃やし続ける存在。その姿は献身と慈愛の象徴です。これからも惜しむことなく愛を注ぎ続ければ願いは叶います』ですって!いや~これ照れちゃいますね~」
(献身?慈愛?何ですかそれ?強欲と自愛の間違いでしょうに)
藤原の占い結果も全否定するかぐや。しかしこれは少し納得かもしれない。
(全く。やはり占いなんて当てにできませんね)
「じゃあ次は京佳さんの番です!何月生まれですか?」
「私は11月11日生まれだよ」
「ほー!ゾロ目なんですね!なんか縁起がよさそうですね!」
藤原は京佳の誕生日を聞いて、スマホにそれを入力する。
「はい!出ました!『あなたはドリルのような人です。ドリルはどんなに固い岩盤でも、ゆっくりと少しづつ進み続けて何れは岩盤を破壊して、更にその先へと掘り進みます。また、ドリルは普段人の目に見えないところで活躍をします。それはつまり、どんなに困難な壁も突き破って進む事が出来る強い意志があるという事と、人の見えていない所で誰よりも努力をしている証拠です。これからもドリルのように真っすぐ掘り進めて行けばあなたの想いは必ず届きます』です!なんかかっこいいですね!」
「ど、ドリル?」
「へぇ、ドリルっすか。確かにかっこいいですね」
「そうなのか石上?」
「はい。個人的な意見ですけど、男子はドリルにロマンを感じるんですよ」
「成程、そんな事が」
「でも京佳さんにピッタリですね~!ドリル似合いそうですし!」
「……それは褒めているのか?」
「勿論です!」
「そうか。しかし、ドリル。ドリルかぁ…」
京佳はドリルという結果が出た。おおよそ、女の子には合わない例えである。京佳は少しだけ複雑な気分になった。
(ドリルって…流石にそれはちょっと…やっぱり占いなんて当てになりませんね)
かぐやもこの結果には苦笑い。いくら何でもドリルは無いだろうと思った。
「石上くんは誕生日いつですかー?」
「僕は藤原先輩と同じで3月3日です」
「…え?」
石上を占おうとし、誕生日を聞いた藤原が固まる。
「何てことするんですかボケナスーー!!」
「え?は?何でいきなり怒っているんですか?」
そして急に石上にキレた。
「だって誕生日が同じって事は、祝ってもらう時絶対に同時開催になるってことじゃないですかーー!!1年に1度の誕生日は私だけを特別扱いして欲しいのに石上くんと一緒だと私だけ特別扱いされないじゃないですかーー!!このバカー!!アホー!!何であと1日遅れて生まれてこなかったんですかーー!!今すぐ生まれ直してきてくださいよーー!!」
「落ち着け藤原。とんでもない事言ってるぞ」
「ほんとめちゃくちゃ言いますね。っていうか藤原先輩から献身と慈愛とかが何1つ感じないんですけど。強欲と自愛の間違いじゃないですか?」
「何ですってーー!?」
ギャイギャイと叫びながら怒る藤原。そんな藤原を落ち着かせる京佳と、正論を言う石上。
(さてと、こんな下らない茶番はさっさと終わりにして会長の誕生日を聞き出すとしますか)
そしてかぐやは、そんな3人をほっといて白銀に近づき、白銀の口から誕生日を聞き出そうとした。
「次は会長の番ですよ。会長の誕生日はいつですか?」
「やらん」
「……はい?」
「俺はやらん」
しかし、ここでかぐやにとって予想外の事が起こる。
「そもそも占いなんて思わせぶりな事言って受け手が都合よく解釈するだけのバーナム効果でしかない。そんなものに俺は興味無い」
「!?」
机の上に置いてある書類に目をやりながら、白銀は占いに参加する事を拒否した。これでは白銀の口から誕生日を聞き出すことが出来ない。
「そ、そんな事ありませんよ!例えば風水には建築学や統計の要素が組み込まれていますし!」
「だがこれは誕生日占いだろう。誕生日っていうのは、ただ純粋に『生まれた日付』だ。それ以外の要素なんかない」
「いえ!誕生日には意味があります!だって年に1度の大切な日ですよ!?」
白銀が一向に誕生日占いをやろうとせず、焦るかぐや。このままではダメだ。何とかして白銀の口から誕生日を聞かないと自分の計画が破綻してしまう。
「はぁ。そもそも四宮は前に俺の誕生日を聞いた事があっただろう。記憶力のある四宮が忘れる程度のものだ対して意味なんてないさ」
(覚えていますよ!!会長の誕生日は9月9日のおとめ座!血液型はO型で出生体重は2118グラム!生まれた病院は都内の△□病院!)
そこまでは白銀も言っていない。一体、かぐやはどうしてそのような事を知っているのかは考えない方が良いだろう。
「まぁまぁ~。そんな事言わずにやりましょうよ会長~。これは人格診断だけじゃなくて相性診断も出来るんですよ~?」
(ナイスよ藤原さん!そのまま会長を説得してちょうだい!)
ここで藤原も白銀に占いを勧め、そんな藤原をかぐやは応援する。
「いや!俺は絶っっっ対にやらん!!」
だが白銀の意志は固く、梃子でも動かぬといった感じだ。
(もーーー!!何なんですか!!人が折角ノーブレスオブリージュの精神で会長の誕生日を祝ってあげようと思っているのに!どーせ会長は私の誕生日を知らなければ祝ってくれるつもりもないんでしょうね!!もういいです!!)
頑なに占いをしない白銀にかぐやは怒り、そっぽを向いた。因みにノーブレスオブリージュというのは、西洋の道徳観のひとつで『貴族というのは身分にふさわしいふるまいをしなければならない』というものだ。元はフランスの諺から来ているとも言われている。
断じて破壊天使砲を背中に積んでいる白いロボットの事ではない。
ところで、かぐやの一連の行動はノーブレスオブリージュといえるのだろうか?どちらかといえば、我田引水や牽強付会と言えるかもしれない。
「もー何でですかー?いいじゃないですかー?やりましょうよー?」
「兎に角だ!俺は絶対にやらん!!」
「むー。仕方ありません。じゃあしょうがないから石上くんやりましょう」
「いやなんすかその言い方。めっちゃイヤなんですけど」
藤原の説得もむなしく、白銀が占いをする事は無い。そんな白銀を標的から外した藤原は石上の占いをする事にする。なお、石上の占い結果は『カナリア』で失言に注意せよと書いてあった。
(何で白銀はあそこまで占いをやりたがらないんだ?何かトラウマでもあるのか?)
京佳は白銀の行動に疑問を浮かべる。そして白銀が頑なに占いをしない原因は、占いを信じていない訳では無い。ここまでやりたがらない原因は、先ほどから皆がやっている占いサイトにある。
実は白銀、既にこの占いサイトで自分を占っているのだ。因みに占いの結果は『純銀』。案外凹みやすい人間であるという結果が出ている。しかし、その後にやった相性占いが問題だった。
白銀はかぐやと自分の相性占いをした結果、50%というやや微妙な結果を出している。それだけでは無い。白銀はついでにと思い、自分と他の生徒会メンバーとの相性占いもしてみた。
その結果、藤原とは40%。そして京佳とは80%という結果が出ている。因みに石上とは90%だった。もし石上が女性として生まれていれば、歴史は変わっていたかもしれない。
(もし、そんな事がこの場でバレたら、絶対に面倒な事になる。主に藤原が)
藤原は恋愛脳だ。自分と藤原との相性が低い事がわかればそれはそれでうるさいだろうが、京佳との相性が思っている以上に高いと知れば、必ずそれをネタに色々と騒ぎだす。この前の選択授業を選ぶ時が良い例だ。
(いや、別に立花と相性が良い事が嫌なんじゃないが、なんかこそばゆいんだよなぁ)
白銀は別に京佳を嫌ってなどいない。むしろ好きの部類に入る。しかしそれはそれとしてこそばゆい。というか恥ずかしいのだ。
(そういう事もあるし、何より俺と四宮の相性が50パーセントという占いの結果を見られたくない。俺は絶対にやらん)
そういった事もあり、白銀は頑なに自分の誕生日を言わないのである。だが、そんな白銀の思いは勿論かぐやには伝わっていない。
(こっちはもう誕生日ケーキも予約しているんですよ!!私がそこまでしたっていうのに会長は私に誕生日を祝って欲しいって気持ちは微塵も無いんですね!!)
(今この場で誕生日を言えば、去年と違って今年は生徒会の皆が祝ってくれそうだけど、あの結果を見られて色々言われるくらいならマシだ)
お互いの気持ちがドッチボールのように交差する。
「はぁ。伝わらないもんだな」
(え?)
白銀が小さな声でそう呟いたのを、かぐやは聞き逃さなかった。
(どういう意味でしょう、今のは…?)
かぐやは白銀がつぶやいた言葉の意味を考え始める。
(会長はお守りを沢山付けているからオカルト否定派という訳でもありません。にも拘わらず占いをここまでやりたがらない原因は一体何?考えられるのは会長が誕生日を言いたくないというものだけど、他人に誕生日を言わないメリットって?そもそも会長の誕生日を知っているのは私だけですしその私が祝わないと…まさか)
そして、かぐやはある結論にたどり着く。
(会長は、私だけの誕生日を祝って欲しいという事なんじゃ!?)
何とも見当違いな結論である。
(もう!そういう事なら仕方ないわね!ふふふ!全く会長ったら!私と2人っきりで祝いたいだなんて我儘な人!でもいいですよ!年に1度の誕生日ですものね!そして私しか誕生日は知らないんですから!ぜひ祝ってあげますよ!)
かぐやはもの凄く上機嫌になる。ニコニコと笑い、体をクネクネと動かす。正直、気持ち悪い。
「あ、あの?四宮先輩、どうかしましたか?」
「ふふふ、何でもないわよ?」
(天使の笑み!?)
「心配してくれてありがとう!石上くんも、困った事があったら遠慮なく相談してね?」
(え!?いやなにこれ!?気持ち悪い!?ていうか怖い!?)
かぐやの突然の笑顔に石上は恐怖し、今すぐ逃げ出したい気分になる。こうして、白銀がそう思っているのなら仕方が無いと勝手に勘違いをしたかぐやは、単独で白銀の誕生日を祝う事になった。
(まぁ、他の皆さんが参加しないのは少しだけ、ほんの少しだけ気が引けますけど仕方ありませんね。何たって私しか会長の誕生日を知らない訳ですし、会長が私と2人きりで誕生日を祝いたいって思っているんですもの!これは仕方がありませんね!そしてこれなら立花さんも邪魔してくる事もないでしょう。後は当日までにプレゼントを選んで会長に予約しているケーキと一緒に渡すとしましょうか!家に帰ったら色々調べないといけませんね!)
そしてかぐやは、白銀への誕生日を1人で祝うため、色々と準備をする事にした。
(さて、来週は白銀の誕生日だが、今年は何をプレゼントしようか)
かぐやが1人で上機嫌になっている時、京佳も白銀の誕生日の事を考えていた。かぐやは自分だけが白銀の誕生日を知っていると思っているがそれは違う。京佳も白銀の誕生日はしっかりと把握している。
そしてそれだけでは無い。
(去年は確かホットアイマスクを渡したが、今年も睡眠や目に関係するものの方がいいだろうか?)
そう。実は京佳は去年、白銀の誕生日をしっかりと祝っているのだ。ちゃんと白銀にプレゼントとして、レンジで温めれば何度でも使用できるホットアイマスクを直接渡している。
その時の白銀は、数年ぶりに誕生日を祝ってもらえたのでかなり嬉しがっていた。
(誕生日といえば、去年の私の誕生日には白銀からハンカチを貰ったな)
それだけでは無い。京佳は去年、白銀から誕生日プレゼントを貰っている。白銀も自分だけが貰うのは嫌だったし、秀知院に入学してから京佳には色々と世話になってきた。そのお礼の意味も込めて、京佳にプレゼントを渡している。
(仕方ない。1度圭に聞いてみるか)
そしてかぐやと同じように、白銀の誕生日を祝うため色々と準備をする事にした。
原作読み返していて思った事
『ほんと面倒くさいな、こいつら』
次回も頑張る。ご意見、ご感想お待ちしております。